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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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ALO:フェアリィ・ダンス~両刃の剣と天駆ける龍~
  いざ、妖精郷へ

「なんか・・・ごめんな、琥珀。ほんとは来なくてもよかったのに付きあわせちゃってさ」
「ううん。いいの。ハザードも大切な私の仲間の一人だし。・・・あっ・・・い、一番はセモンだからね?ってな、何言わせてるのよ!」
「・・・そっちが勝手に一人で盛り上がってるだけじゃ・・・まぁ、いいや。ありがとな」

 
 清文の家は、東京都の端、二十三区にぎりぎり入っているかいないかの町にある。

 そこに、清文と琥珀はナーヴギアと、そしてついさっき購入したばかりの《ALO》・・・《アルヴヘイム・オンライン》を持ち寄っていた。


「(セモンの家で、セモンの部屋で、二人っきり・・・!)」

 琥珀はALOの内容どころではなく、それにひたすら気を取られていたが。清文の家に来るのは初めてではない。しかし、彼氏の家と言うのは来るだけで緊張するものなのだ。・・・琥珀だけかもしれないが。


「・・・で、飛行の仕方は・・・琥珀、聞いてる?」
「ふぇ!?き、聞いてるわよ!?」
「あやしいなぁ・・・まぁいいや。飛行の仕方は、一応最初は補助コントローラーを使うことにするぞ。ええと、左手を立てて、握るような形をつくると。で、出現したジョイスティック型コントローラーを、手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回、ボタン長押しで加速、話すと減速、だそうだ。どう?」
「あとは慣れるだけ、ね」

 
 セモンはニヤリ、と笑うと言った。

「それじゃぁ、いよいよお待ちかねのダイブと行きますか。ALOは九つの種族があるんだけどさ、琥珀はどうする?」
「う~ん・・・セモンが前衛なら、あたしは後衛でしょ?基本的にはバランスが取れた方がいいから・・・この、《シルフ》っていうのがいいかな」
「奇遇だな。俺も同じだ。アバターの外見はランダムで決まるらしいけど、ダイブ時間が同じなら大体わかるかな・・・。とりあえず、この《スイルベーン》とかいうところに最初はいくらしい。そこの中央広場に降り立つらしいから、そこで合流しよう」

 奇遇じゃなくて、運命だって、相思相愛だからだって、言ってほしかったな・・・。

 と漠然と考えてから、私は何を考えているのだ、と琥珀は邪念を振り払った。


 琥珀がしっかりうなずいたのを確認すると、清文はもう一度にやり、と笑った。


 そうして、二人はナーヴギアをかぶると、あの時の様に、その言葉を唱えた。


「「リンク・スタート!!」」


 
 二人の意識は、肉体を離れ、仮想の世界へと旅立って行った。



                     *


『ようこそ、《アルヴヘイム・オンライン》へ』

 やわらかい女性の合成音声が、暗闇の中に響く。


 ALOのセットアップメニュー。もう一度、今度は詳しい説明を聞きながら、清文は意識を切り替えていた。

 
 SAOで《勇者》と呼ばれたプレイヤー、セモンのそれへと。

 
 プレイヤーネームやログインIDはSAO時代のものを流用。初期装備には刀を選択、種族は事前に琥珀と打ち合わせしていた通り、《風妖精シルフ》を選択。

 この世界で初めて触れることになる《魔法》。それに対する得手不得手もかなりバランスが整っているこの種族は、セモンにとって理想的と言えた。


『ゲームは種族のホームタウンからのスタートとなります。幸運を祈ります、セモン』


 そういって、闇は晴れ――――――セモンは、大空をゆっくりと落下していった。


                     *

 
 ALO内では、学生のプレイヤーなどに対する配慮の為、ゲーム内の時間と現実の時間がかみ合っていない。これは、時間によって出現するモンスターが変わるエリアを、その時間帯にログインできるプレイヤーのみに独占させないためのものであるという。

 
 そういうわけで、午後三時あたりにダイブしたはずだったが、内部はまるで早朝のようなすがすがしい光に満ちていた。

 翡翠色のシルフ領首都《スイルベーン》もまた、その光を浴びて一層美しく輝いていた。現実が休日の午後、と言うこともあって、ダイブしているプレイヤーは多いようだった。


 中央広場の噴水の前に、一人の女性プレイヤーを見つけた。見るからに初期装備と言った感じのチュニックに、背中には長いスピアがおさめられている。髪の毛の色はシルフに多いのだろう金をベースに、どちらかと言うと茶色身が勝った感じの色をしている。現実世界の琥珀の髪の色を、もう少し金色に近づけるとあんな感じだろう。偶然にも髪型はSAO時代と変わっていない。

 
「コハク!」

 
 セモンは彼女に声をかける。振り向いたコハクは――――とても驚いたような顔をして、続けて、大爆笑し始めた。


「・・・?ど、どうした?」
「ど、どうしたって・・・セモン、もしかして自分の容姿見てない?」


 コハクに言われるまま、セモンは背後の噴水のため水を覗き込み・・・

「な、なんじゃこりゃぁ!!?」

 
 と、大声を上げた。


 きっちりと撫でつけられた髪の毛。色は依然と同じ明るい茶色だが、なんと肩あたりまで届く長さなのだ。加えて、かなりの女顔。

  
 

 もともとセモンは女顔である。しかしいかんせんぼさぼさの髪型は、男にしかみられることはない。

 しかしこうなると・・・女に間違われる可能性もなくはない。

 
 
 ――――――追加料金払って外見変えてもらおうかな・・・。



 と思ったりもしたが、別に遊びに来たわけではないのだ、と、結局容姿はあきらめることにした。


 こうしてセモンとコハクの、ALO初日は始まったのであった。

  
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