100年後の管理局
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第二十一話 事件、突破
前書き
WARNING!!事件発生です!
アリスと誠也の共闘シーンもあります。
頼みごとについてはまたあとで言うよ。
りんかはそう言って、森林公園へと一行は足を進めた。
「ここが森林公園。あっちの森林の奥がなのはさんが初めて魔法に出会った場所よ。」
「ここが……。」
『I haven’t come here for a long time.(久しぶりにここに来ました)』
レイジングハートも懐かしむような声をしていた。
高町なのはが魔法の師匠となるユーノ・スクライアと初めて出会い、魔法少女となるきっかけを得た場所であり、レイジングハートとなのはが初めて出会った場所でもある。
レイジングハートは百年という長き時を経て、もう一度始まりの場所へと戻ってきたのだ。
懐かしむのも当然と言えよう。
そして一行は林の奥に進んで行く。
そこにある、わずかに開けた場所こそが、
「ここがなのはさんの始まりの場所よ。」
「ここが……。」
誠也はその場所を心に刻みつけていく。
きっと普通の人が見ても何の変哲のない場所だろう。
でも誠也にとっては特別な場所になり得る。ただの林に囲まれた少しだけ開けた場所であっても、誠也やミッドチルダの高町家の人にとっては特別な場所だ。
偉大なる始祖、高町なのはの始まりの場所なのだから。
「「……っ!」」
「どうしたの、誠也君?アリスちゃん?」
しかし、そんな時間は突如として流れ出してきた気配によって中断させられる。
誠也とアリスはほぼ同時に同じ方向へと振り向く。
そんな、突如とした行動に疑問を覚えたりんかが二人に尋ねる。
しかし、二人はりんかの質問に答えない。
「アリス……。」
「分かってる……、バルディッシュ。」
『Yes, sir. Get set.』
「レイジングハート。」
『All right. Stand by ready』
「「セットアップ」」
『『Set up.』』
その声と同時、二人は黄色の光と桜色の光に包まれる。
その光が晴れた時、二人はそれぞれのバリアジャケットを纏っていた。
「な、なに?二人ともどうしたの?」
二人がいきなり何か言い始めたと思ったら、次の瞬間には光に包まれだした挙句、次はコスプレじみた衣装をしているのだから、魔導師の実態について詳しく知らない地球人組は驚くよりほかにない。
三人ともいきなりの出来事に目をぱちくりさせていた。
誠也とアリスはそんな三人の状態を無視し、比較的驚きの少ないりんかに問いかける。
「りんかさん。」
「な、なに?」
「最近、ここら辺で妙な事件とか起こっていないですか?」
「え?ここらへんじゃないけど……、なんで分かったの?ってまさか……。」
「確証は持てませんが、恐らくそのまさかです。」
「アリス!来るぞ!」
林の奥で複数の影がうごめいた。
「誠也!お願い!」
「分かった!アクセル!」
『Accel shooter』
「シュート!!」
影へ向けて魔力弾を撃ち込む。
しかし、それらは影に当たることなく通り過ぎていく。
誠也はさらに魔力弾を操作し、影へと向けていくがこれもまたかわされる。
「くっ!アリス!」
「OK!任せなさい!」
それを合図にアリスは一気に駆けだす。
林の中という悪条件もなんのその。影の一つに一気に迫り、二振りの雷剣を振り抜く。
影は雷剣に切り裂かれ崩れ落ち、アリスはそれを一瞬だけ見てすぐさまもう一つの影へと走り出す。
そしてアリスがもう一体を倒した時、影達の行動が少し変化する。
いくつかの影が一か所に集まり、二つの小集団を為していったのだ。
アリスがいくつかの影を倒している間に、二つの集団はアリスを挟みこむ位置へと回り込み、全くの同時にその距離を詰めた。
「誠也!」
アリスはただ一声そう呼び掛ける。
正面の集団にのみ気を配り、そいつらを倒すことだけに全神経を集中させる。
背後には一切の気を配らない。
「クロスファイア!」
『Cross fire.』
「シュート!!」
誠也の砲撃がそいつらを殲滅してくれると信じていたからである。
影は為すすべもなく桜色に飲み込まれていった。
そしてアリスもまた、影達を斬り伏せていた。
「アリス、大丈夫だったか!?」
アリスが影達を回収し、誠也達のもとに戻った時和也がアリスに安否を問う。
「大丈夫です。特に問題ありません。ちなみにさっきの奴らがこれなんですけど……。」
そう言ってアリスが差し出したものは、身長160程度の人型のロボットであった。
ロボットはアリスに動力機関を一突きでやられていて、その機能を停止させていた。
「これは……!?」
見覚えがあったのだろう。りんかはアリスの持ってきたロボットに近づき、詳しく見ていく。
「やっぱり……、これ作業用ロボット……。じゃああっちは……。」
りんかはすぐさま立ち上がり、別のロボットの方へ走っていく。
「こっちは家庭用ロボット……。まさかこっちの方に移ってたなんて……。」
りんかはロボットを見て何かわかったのか、愕然とした表情を見せる。
その表情から事情に明るいことを読み取ったアリスはりんかに近づいていく。
「りんかさん。一体何が起こっているのかご存じなんですね……。」
「……うん。ただ、こっちで起こってるのは知らなくて……。」
「教えていただけますか……?」
「アリス。ストップだ。」
アリスがりんかに質問したタイミングで誠也が待ったをかける。
「どうしたのよ?誠也。」
「囲まれてる。」
「「「なっ!?」」」
女性陣三人は誠也の言葉にひどく驚く。
和也は気付いていたようで驚きは見せていなかった。
「林の中に紛れているから分かりにくいが、数はおよそ150。しかもご丁寧に道もしっかり封鎖してきてる。」
林の中、先ほど通ってきた道。その全てをロボットたちが円形に囲み封鎖している。
そのためこの場から脱出するのは難易度が高いと言わざるを得ない。
「誠也。一体どうする?」
和也は誠也に問いかける。
「……。」
誠也は考える。
現状において戦力となるのはアリス、和也、そして誠也の三人。
エリとりんかの二人は戦力として数えることは難しい。
そしてこの場で留まって戦うとなると、二人を守りながらの戦闘になる。
不可能ではないが、いない状態で戦うよりも難易度は跳ね上がる。
誠也はわずかな逡巡の末、決断を下す。
「和也、アリス。エリさんとりんかさんをつれてこの場を脱出してくれ。」
「だ、だめよ!そんなの!誠也一人だなんて無茶よ!」
「そ、そうだよ!誠也君も脱出しないと!」
エリとりんかが誠也の提案に反対する。
しかし、それは誠也の能力、強さを知らないからこそのセリフである。
「分かった。危なくなったら必ず引けよ。」
和也は誠也の提案にすぐ頷き、反対し続けるエリを抱き上げる。
「ちょっと和也!?本当に誠也を置いていくつもり!?」
「ああ。誠也なら大丈夫だ。」
「そんなはずないでしょ!!まだ小さい男の子なのよ!?」
「それは見た目の話だ。あいつが本気で魔法を使えば俺より強いんだ。」
「でも――!」
「いいから黙ってろ!」
和也は突如としてエリの唇を塞ぐ。
お姫様だっこをしている相手を強制的に黙らせる方法などこれ一つくらいしかないだろう。
「な、な、なっ――!!??」
「誠也!道を作ってくれ!」
「……なんか一気にやる気削られた感じがする……。」
誠也は顔を真っ赤にする和也とエリの前に立ち、レイジングハートを構える。
「アリス!りんかさん!」
「分かった!りんかさん、はやく。」
アリスがそう言ってりんかを背中に乗るように促すが、りんかは先ほどの光景のショックから立ち直りきれていなかった。
「……そんな……でも……嘘……。」
ぶつぶつと呟き、アリスのことが見えていなかった。
その目も心なしか虚ろだ。
「りんかさん!」
アリスが強くりんかを呼ぶ。
りんかはハッとしてアリスの存在に気付く。
「早く乗ってください。」
アリスがりんかに背中を向けて背負う体勢を作っている。
「だ、大丈夫だよ。私は和也君と同じくらい足が速いから。」
「そうなんですか?」
「うん。だからアリスちゃんは誠也君を手伝ってあげて。」
「なら、アリスは途中まで護衛していって、その後こっちのフォローに回ってくれ。」
「分かった。」
「じゃあ、行きます!!レイジングハート!!!」
『All right. Master』
誠也が全員にそう呼び掛けた後、レイジングハートに呼びかける。
ガコンガコンガコンとレイジングハートから薬莢が排出され、巨大な一つの魔力球が生成されていく。
「一点突破!ディバイン――」
『聖域ヲ汚ス者ニハ死ヲ!!』
誠也が魔力を収束させはじめたタイミングで周りのロボットたちが距離を詰め始める。
しかし、それは遅すぎた。
もう誠也は一点突破するだけの魔力を集めていて、四人が抜け出すくらいの時間がかかる程度にはまだ距離が開いていたからだ。
『Divine buster』
「バスタ――!!」
魔力球から極太の光線が吐き出される。
それは木々を薙ぎ払い、その射線上にいる敵も全て吹き飛ばしていく。
「今だ!」
誠也のその掛け声で、四人は一気に駆けだす。
誠也が作った道は幅広く、周りの敵が近寄る前に四人は駆け抜けることができた。
「誠也!無事に戻ってきなさいよ!」
エリの叫びが聞こえると同時に誠也はぽつりと呟く。
「ここからが本番か……。」
ディバインバスターで蹴散らすことのできた数は良く五十。
アリスたちを追っていった相手がおよそ三十。
つまり、この場には約七十もの敵が残っている計算になる。
その全てが今、誠也の周りに迫っていた。
『聖域ヲ汚ス者ニハ死ヲ』
「聖域とは一体何だ?」
『聖域トハ王ノ住マウ土地』
『王ノ安ラギノ場所』
『ヨッテ――』
『『『『『『『聖域ヲ汚ス者ニハ死ヲ』』』』』』』
七十のロボットたちから発せられた言葉はロボット故かひどく無機質で、聞く者に不気味な印象を与えるものだった。
しかし、誠也はそれを聞いても怯えるどころか不敵に笑う。
「だったら、その王とやらのところまで一直線に行くだけだ!行くぞ!レイジングハート!!」
『All right. Master』
「時空管理局本局340部隊所属高町誠也一等陸尉、全力全開!推して参る!!!」
後書き
正直に言いましょう。
これから出てくる恋愛がらみのシーンはやりたかっただけであると!!
………………………
いやね。元々設定にはあったんだけど、別にやらなくても物語には支障はないんです。
だけど、なんかやりたくなっちゃったので書いた。
反省も後悔もありません!!
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