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100年後の管理局

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第二十話 空、靴

 
前書き
誠也に希望が差し込みます。
 

 
「今日の予定ですか?」
「うん。どこに行くつもりだったのかなぁって。」
朝食が終わった後、りんかからどこに行く予定か尋ねられた。
誠也達は一応観光目的で地球に来ているため、どこを巡っていくのかというのは割と大事な問題だ。
けれども、りんかからの質問に対し、誠也から出た答えは意外なものだった。
「えーと、あんまり決めてないです。」
「そうなの?」
りんかはアリスの方へ真偽のほどを尋ねるが、アリスも同意するように頷く。
「そっかぁ……。」
ちなみにこの時、りんかの頭の中ではどこを案内しようかなという目測を立てていた。
夏休みで、りんかたちも特にこれと言ってやることがないのだ。
「それじゃあ、あそこに行きましょう。」
「あそこ?」
エリの言葉に和也は疑問を問いかける。
エリは得意げな表情で和也に返す。
「森林公園よ。」
「へ??」
「うん、さすがエリちゃん。そこにしよう!」
和也はいまいち分かっていない様子疑問の表情を浮かべるが、りんかは非常に納得した様子で大賛成していた。
勿論、誠也達は何を言っているのかさっぱりである。
「そこはどんな場所なんですか?」
誠也の疑問に、エリは腰を落として誠也と目線を合わせて答える。
「誠也にとってある意味ルーツって言える場所。なのはさんの始まりの場所よ。」


「やっぱり地球は機械で溢れていますね。前回来た時よりもさらにいろんな種類の機械が増えていますし。」
アリスが思わずと言った様子で、呟く。
誠也もアリスに賛同するようにきょろきょろと周りを見ている。
誠也やアリスが地球に初めて訪れた時、地球に抱いた印象は『高い水準の機械文明』というものだった。そしてその印象は今でも変化がない。
今も地球の機械文明は発達し続け、機械という一点に関して言えばミッドチルダすらも超えているかもしれなかった。
「そんなに珍しいのかしら?」
きょろきょろと田舎から出てきた少年のようにあっちこっちへ顔を向ける誠也を見て、エリがそう尋ねる。
「半年前に来た時も思いましたけど、やっぱり凄いですよ。何度見ても飽きないです。」
そこまで目新しくはないとはいえ、自分達が普段使っているものとは全く異なる機械群に興味をそそられるのは仕方ないと言えよう。
誠也はその時ふと影が差すのが見えた。
その影の形は非常に人に近くて、しかも影の大きさから考えて大分距離が近い。
疑問に思った誠也は上を向く。
「………!!」
誠也の眼は驚愕に見開かれ、驚きのあまり歩みを止めてしまう。
「誠也、どうした?」
急に歩くのを止めた誠也に驚いたのだろう。
和也は誠也に問いかける。
「……なあ、和也……、あれ。」
誠也は空を指差す。
和也だけではなく、アリスたちも上を見上げる。
その光景にアリスも驚きに目を見開き、他の三人はああ、あれか。と頷いた。
「つい一ヶ月くらい前に発売されたウィングドブーツって言ってな。個人が空を飛ぶための機械靴なんだよ。」
金属の靴を履いた幾人もの人が、空を飛び交っている様子を見て、和也はそう答える。
「世界初の単身飛行補助装置で、今すごい人気なんだよ。同時にすごく高くもあるけどね……。」
りんかはウィングドブーツについて簡単に補足する。
ウィングドブーツは非常に高価だ。ある企業が夢を追い続けて開発したという経緯があるが、その開発費用の回収も含めているのだろう。凄まじく高い。
具体的に言えば、一般家庭ではまず買えない。相当裕福な家庭でなければ購入の検討にすら至らないほどの代物だ。
「誠也?」
上を見上げたままピクリとも動かない誠也を見て、エリは心配そうな表情で誠也に呼びかける。
「………………………アリス。」
「………そうね、誠也。あれなら何とかなるわよ。」
「……だよな!!」
誠也の声は強い喜びに満ちていた。
誠也はその声の勢いのまま和也に問い詰める。
「なあ!!和也!!」
「な、なんだよ?急に。」
「あれどこで買える!!!?」
「はあ?藪から棒に、どうした?」
「やっと見つけた空への希望だぞ!!捨ててたまるかよ!」
地球人の多くは魔力を持っていない。つまり、ウィングドブーツは魔力がなくても空を飛べるのだ。
空への憧れを魔法の適性ゆえに諦めなければならなかった誠也にとって、これは空へとつながる希望とも言えた。
「誠也、一体どうしたのよ?」
「エリさんは!?どこであれが売ってるか知りませんか!?」
エリの問いかけにも答えず、逆に質問を迫る誠也。
完全に我を見失っている状態であった。
そんな誠也をエリは怒鳴りつける。
「落ち着きなさい!!」
「っ!!」
その強い声に誠也はびくっとなって、我に返る。
「急にどうしたのよ?」
エリは誠也と目線を合わせ、優しく問いかける。
誠也は少し居心地の悪そうな表情をしながらゆっくりと語り出した。


道中、誠也は己の過去を四人に話した。アリスは大体知っているので、聞かせた対象は主に三人だが。
そして、それを聞いたりんか達は誠也の取り乱し様を納得してくれた。
「そっか。だからあれだけ取り乱してたんだね。」
「す、すいません。」
りんかから改めて取り乱していたことを告げられると何とも恥ずかしい思いを感じてしまい顔を真っ赤にしてしまう。
「ううん。別に大丈夫だけど、ちょっと驚いたな。」
「そうね。大分大人びてると思ってたから、急にああやって落ち着きなくなるなんて。子供っぽいところもあって驚いたわ。」
エリは少し意地悪そうに誠也をからかう。
誠也はそれを聞き、ますます真っ赤になる。
「誠也のそんな顔を見るなんて珍しいわね。お願い、バルディッシュ。」
『Yes, sir.』
アリスが誠也にバルディッシュを向ける。
「バルディッシュ!?記録に残す気か!?」
『Recording complete.(記録完了)』
誠也はアリスとバルディッシュのやり取りの意味に気付いたのか、抗議の声を上げるも無視されてしまう。
「でだ。誠也、さっきの質問の答えだがな。」
和也が口を開き、誠也が取り乱しながらした質問について回答する。
「今のところ購入するのは難しいと思う。」
「な、なんで!?」
和也の答えに誠也は疑問の叫びをあげる。
和也はまた落ち着きをなくしかけていた誠也を落ち着かせる。
「落ち着け、あくまで今はだ。あれは現在、世界的人気を持っていてな、入荷の度にすぐ売り切れ続出の商品なんだ。」
「……嘘……だろ……。」
がっくりと肩を落とす。
ついに掴めると思っていた希望だけに、掴み取るのに時間がかかると言われ、思わずショックを受けてしまう。
「誠也……。」
アリスが思わずそうつぶやく。
誠也の落ち込みようは、傍から見ると今生の希望を失ったかのように見える。
とぼとぼと歩く背中は若いのにもかかわらず哀愁が漂っているような錯覚を覚えた。
「ええと、誠也君。なんだったらウィングドブーツ、融通してあげようか?」
あまりの落ち込みっぷりについ出てしまったのだろう。りんかがそう誠也に提案する。
「ほ、ほんとですか!?」
「う、うん。ウィングドブーツの開発企業とも縁があるから。」
目をキラキラと輝かせてりんかに迫る誠也に、やや圧倒されながら頷くりんか。
「ありがとうございます!」
「じゃあ、その代わりと言っては何だけど、後で一個だけ頼みを聞いてくれるかな?」
誠也の中に頷く以外の選択肢などない。
 
 

 
後書き
展開が早いのは重々承知。

しかし、誠也は夢を叶えそうになっていますが、ところがどっこい。

そう簡単に叶えさせたりはしませんよw

まだまだ飛べない状態が続くのです。 
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