真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第3話
悠斗side
2日間の休みで松笠市の実家に戻りフラワーショップ椰子の手伝い等をして過ごした。あれから2週間が過ぎた。現在九鬼家の方々は七浜市のみなとみらい地区にある九鬼ビルに戻られて生活されている。此方に戻って来てから俺は揚羽様の専属執事として働いている。 時刻は間も無く朝の6時になる。俺は揚羽様の部屋の前の開き戸の前で控えている。小十郎も俺の隣で控えている。
腕時計を確認する。時刻は朝6時になった。
俺は扉越しに揚羽様に声をかける。
「おはようございます揚羽様。朝でございます」
「う~ん。朝か。悠斗、おはよう」
「はい。おはようございます」
「揚羽様!おはようございます!」
「小十郎もおはよう。朝から元気が良いのはお前らしいからな。我は着替えるゆえ、暫く待っておれ」
「「はは。お待ちします(しております!)」」
俺と小十郎は扉越しに頭をさげる。中からは、もぞもぞと音がする。揚羽様が着替えておられるのだ。暫くすると、物音がしなくなった。
「悠斗。小十郎。入って良いぞ」
「はい。失礼します。おはようございます揚羽様。本日は天候は晴れておりますので、絶好の修行日和です」
「ふはははは!おはよう悠斗。そうか。今日も晴天であるか」
「おはようございます揚羽様!この小十郎。揚羽様の様に立派な武人になるため、今日も粉骨砕身の気持ちで頑張ります!!」
「うむ!それでこそ、我が侍従よ!悠斗。小十郎。朝の訓練に向かうぞ!付いて参れ!」
「はい。揚羽様」
「はい!揚羽様!!」
制服に着替えた揚羽様に俺は返事をしつつ、先程まで揚羽様が眠っていた布団を畳み、着ていたハジャマを洗濯籠に入れてかたずけてる。
揚羽様と小十郎が先に部屋を出る。俺は最後に出てから扉を閉めて二人の後ろを歩いて付いて行くと、広い道場に付いた
中に入ると、ヒュームさんが待っていた。
「おはようございますヒューム師匠!本日も稽古をお願いする!」
「おはようございます!!本日もご指導よろしくお願いします!」
「おはようございます、ヒュームさん。本日もよろしくお願いします」
「うむ。おはよう。では、朝の訓練を開始する!先ずは、全力で正拳を放つのだ!ワシが良いと言うまでやるのだ!」
ヒュームさんを正面にして、小十郎、揚羽様、俺の順で並ぶ。揚羽様の正面にヒュームさんがたっている。全員が準備を完了した。
「では、始め!」
ヒュームさんの掛け声と共に俺は拳を宙に放つ。ヒュンヒュンと風切り音が道場に響く。
「せい!せい!」
揚羽様の拳は鋭く早い拳だ。風切り音こそしないが見てるだけで充分重い一撃だと分かる。
「執事パンチいいいい!!」
大きな声で叫びながら拳を放つ小十郎。なんだか、必殺技のような言い方だが威力は普通のパンチにしか見えないのだが。
ヒュームさんが、小十郎の前に立ち向かい合う。
「小十郎。元気なのは良いが、まだまだ甘いぞ。確りと力を込めて放つのだ!」
「はい!分かりました!」
「うむ。ならば良い」
それから10分程拳を打ち続ける。ヒュームさんが「止め!」と声をかける。次のステップに進む。
「よし。次は模擬戦を行う。揚羽は俺が相手をしよう。悠斗は小十郎と相手をしてやってくれ」
「よろしくお願いします!今日こそは勝たせてもらいますぞ!」
「はい。分かりました。小十郎。よろしくな」
「ああ。よろしくお願いします」
俺と小十郎は、ヒュームさんと揚羽様から離れてた場所で互いに向かい合う。
「じゃあ、始めるぞ。準備はいいな?」
「ああ!負けるきはしない!」
「「なら。行くぞ!」」
俺と小十郎は掛け声と共に模擬戦を始める。
先ずは小十郎が俺に接近してきた。
「先手必勝おおお!!くらえ!手刀16回斬りいいいいいい!!」
小十郎の両手で津波の如く、怒濤の勢いで手刀が放たれる。俺はそれを体を軽く動かしならが回避する。常人ならば見切るのは難しいだろうが、一定以上の実力がある武人や軍人には通用しない。 ましてや俺には、スローモーションで動きが見えているから余計に当たらない。
「どうした悠斗!俺の技に恐れをなしたか!?」
「いや、小十郎。俺当たってないからな」
「言ったな!くらえ!」
怒涛の勢いで放っていた手刀を止め、行きなりジャンプした小十郎。
「ジャンピングソバットおおおおお!!」
いきなり回転蹴りを放つ小十郎。俺は伸びてきた小十郎の右足を右手で掴んで、一本背負い投げする。小十郎の勢いを利用して投げた。
「ぐぅはぁ!」
床に顔面から叩きつけられる小十郎。無論、受け身がとれるように投げたため、顔面に怪我をすることはない。案の定ゆっくりとだが、小十郎は立ち上がった。
「大丈夫か小十郎?」
「ああ!受け身はとったからな!だが、ダメージは食らったが、真の執事はピンチになってからが本領なんだああ!!」
互いに距離が開いているため、小十郎が駆け出して俺に向かって突進してくる。
「くらえぇぇぇぇ!!ベッドバッドクラァァァァッシュゥゥゥゥゥ!」
小十郎が駆け出した勢いを付けたまま、人間魚雷の如く頭突きを放つ。
俺はそれをひらりと体を半身ずらし、片足を小十郎の足に引っかける。
「な!うわぁ?!」
ドゴンと鈍い音と共に小十郎が壁に激突した。体をくのじにさせて、床にダウンする小十郎。頭の上に星が回っている様に見えた。
「あ、揚羽様。も、申し訳ご・ざ・いませ・・・ん」
そう言って小十郎は完全に気を失なった。俺は小十郎を介抱しつつ、揚羽様とヒュームさんの模擬を見ると、かなり白熱した戦いをしていた。
「はあぁ!でや!」
「ふん!甘いぞ揚羽!」
揚羽様が激しく拳で攻めるも、ヒュームさんは余裕の表情で受け流している。
「は!やあ!せい!」
「は!ふん!そら!」
揚羽様が2発拳を放ち、最後に蹴りを放つ。
ヒュームさんは、拳を避けて蹴りを蹴りで止める。
(やはり、二人とも良い戦いをしているな。スタミナ的にはまだまだ揚羽様にも余裕があるし、ヒュームさんに至っては汗すらかいていない。圧倒的に経験豊富なヒュームさんが有利だな)
両者が激しく動き回る。 攻防がより勢いを増してきた。
ガキャリ等、人がぶつかったとは思えない音が聞こえる。既に道場のあちこちに穴や亀裂が入っている。
「ふははは!流石ヒューム師匠!我に決定的なチャンスをくれぬな!」
「当たり前だ。まだまだ、揚羽に負けてやるつもりはないからな!」
揚羽様が渾身の力を込めた右ストレートを放つ。 ヒュームさんも、カウンターで左ストレートを放った。両者の拳が当たる寸前で止まった。ヒュームさんの左ストレートが揚羽様の真っ正面で止まっている。逆に揚羽様の拳はヒュームさんの右手で押さえられていた。
「く!我の負けか。流石はヒューム師匠。まだまだ、我も精進が必要だな」
「今のは良い一撃だったぞ。だが、まだまだ修行が足りん。ワシを越えるつもりなら、確り精進せい」
両者が構えを解く。互いに向かい合い頭を下げる。二人とも此方にやって来た。二人の足音で、気絶していた小十郎も目を覚ました。
「う、う~ん。俺は負けたのか?」
「小十郎。目が覚めたか?無理するなよ。頭を強打してるんだから」
「ああ。ありがとう。もう、大丈夫だ!」
小十郎は起き上がる。俺も立ち上がり、揚羽様とヒュームさんに向かい合い。準備していたタオルを揚羽様に差し出す。このタオルは洗って乾かした清潔なタオルだ。道場の入口に置いてあるのを持っておいたのだ。
「お疲れ様です揚羽様。タオルをどうぞ」
「うむ。悠斗は良く気が利くな。我はこれよりシャワーを浴びる。悠斗。小十郎。付いてまいれ」
「はい。揚羽様」
「はい!揚羽様!!」
「では、ヒューム師匠。稽古をつけてくださってありがとうございました」
「うむ。確りと勉強を頑張るのだ。ワシも紋白を起こしに行かなくてはならんからな」
俺と小十郎は、ヒュームさんに頭を下げる。ヒュームさんは道場を出ていった。揚羽様と小十郎も道場を出て行く。俺も二人の後を追って道場を後にするのだった。
悠斗sideout
揚羽side
朝の稽古を終えた我は、汗を流すため風呂で熱いシャワーを浴びている。 産まれたままの姿でシャワーを浴びてはいるが、風呂の外には悠斗と小十郎が待機しておる。
(まあ、小十郎は目隠しをされているがな。悠斗はそもそも目隠しをする必要がないしな。むしろ、見てほしいのだが悠斗は心眼を開眼させているため、目を閉じていても問題が無いらしいからな)
悠斗を拾ってから一月が過ぎた。悠斗が目覚めてから、我は戦いを挑み敗北した。対外的には手合わせと言っているが、我は死闘と思って相手をした。だが、結果は我の敗北だった。武道四天王と呼ばれる我が、一撃すら入れる事も出来ずに敗北したのだ。
(負けて気を失って目覚めたら、悠斗の顔が近くにあったからな。あのとき、初めて我は鼓動の高なりを感じた。以来、悠斗の顔を見ると鼓動の高鳴りが止まらん)
今も熱いシャワーを浴びておるのにも関わらず、悠斗の事を考えると胸の鼓動が早くなる。頬も紅くなっているやも知れん。
(我はこう言った恋愛事には疎い。しかし、悠斗を振り向かせるにはどうすれば良いのだ?)
我は考えてみるが、何か妙案が浮かんでくるわけではなかった。
シャワーを止めて浴室を出る。
「揚羽様!タオルでございます!」
「うむ」
小十郎からタオルを受け取り、体に付いている水滴を拭き取る。
「揚羽様。髪を拭かせていただきます」
「うむ。頼む」
悠斗がハンドタオルで我の髪の毛を拭く。優しく馴れた手付きで髪から余分な水分を拭き取る。無論、耳に付いた水分等も拭き取って行く。
「服を着る。先に出てしばし待っておれ」
「「はい。揚羽様」」
我はバスタオルを篭に入れて、制服に着替える。 悠斗と小十郎は部屋で待機している。
扉を開けて自室に入る。 小十郎と悠斗が目隠しをして(目を閉じて)待機していた。
「二人とも目を開けて構わね」
「はい。揚羽様。湯浴みの後の揚羽様は艶やかですね」
「流石揚羽様にございます!今日も一段と輝いております!」
「ふははは!そうであろう!さて、朝食を食しに行くぞ!朝食は1日の活力になるからな!」
「そうですね。朝御飯はきちんと摂取する事が大事ですからね」
「はい!揚羽様!腹が減っては戦が出来ませんから!」
我は自室を出て、食堂に向かう。食堂に着くと、紋白と英雄が朝食を食べていた。我も椅子に座ろうとすると、悠斗が椅子をそっと後ろに引いてくれる。我は悠斗が引いてくれた椅子に座った。
「おはよう。英雄。紋白。皆、元気であるか!」
「ふははははは!おはようございます姉上。我は英雄(ヒーロー)ゆえ、常に元気であります!」
「おはようございます。姉様。我も元気であります!」
二人から元気な挨拶が返ってくる。我の前に朝食が用意される。今日の朝食は、ご飯(白米)。ワカメとネギの味噌汁。牛乳。鮭の塩焼き。漬物と、シンプルな朝食だ。
(まあ、我は基本的に和食が好きだからな。シェフ達はそれをよく分かっておる)
いただきますと言ってから、箸を持ちご飯を食べる。キチンと噛んでから飲み込む。
英雄も我と同じ和食を食べておる。
紋白を見ると、目の前に出された人参とにらみ合いをしている。
「紋白様。好き嫌いをしてはなりませぬ。確りと食べてください」
「う~。あまり人参は好きじゃないのじゃ」
ヒュームに怒られながら、恐る恐る箸で皿の上にある人参を掴む。そして、口に放り込んで咀嚼する。あと2個ほど残っている。
「さあ、紋白様。早く食べないと学校に遅れますぞ」
「る~」
涙目になりながら人参を全て平らげる。すると、我の後ろで控えていた筈の悠斗が紋白の頭を撫でていた。
「偉いですよ紋白様。好き嫌いはしないようにしましょう。ましてや、紋白様は成長期なのですから。好き嫌いせずにキチンと食べれば、いずれ揚羽様の様な美人な女性になれますよ」
「(ゆ、悠斗が撫でてくれる!好き嫌いしないで食べれば、また撫でてくれるかの!?)わ、分かった。我も揚羽姉様の様になりたいからの!」
ヒュームは苦笑いしつつ、やれやれと言った感じだ。紋白は眩しい位の笑顔を悠斗に向けている。悠斗はニッコリと微笑んでおる。
(く!悠斗に美人と言われた!胸の奥が熱くなる! 紋白め、悠斗に撫でられおって!悠斗も悠斗だ!我の侍従だと言うのに、我を撫でずに紋白ばかり撫でおって!)
既に食事を終えた我は小十郎が淹れたお茶を飲む。我は落ち着きを取り戻すように、ゆっくりとお茶を味わう。
「ふう。小十郎。まだまだだ。確りとお茶の淹れかた勉強するのだ」
「はい!揚羽様!この小十郎。確りと精進致します!」
紋白の頭を撫でていた悠斗が我の側に戻ってきた。我はごちそうさまと言ってから、席を立つ。
「悠斗。小十郎。これより学校に参るぞ!付いてまいれ!」
「はい。揚羽様」
「はい!揚羽様!」
我は食堂を後にするのだった。
揚羽sideout
悠斗side
俺は今、七浜市の道路を自転車も真っ青な速度で走っている。七浜市のみなとみらい地区にある九鬼ビルから揚羽様の通う七浜学園に向かっているのだ。先頭は揚羽様で、中盤が小十郎。殿が俺だ。
「ふははははは!小十郎。悠斗。遅れるでないぞ!」
「はあ。はあ!はい!揚羽様ああ!」
「了解です揚羽様」
余裕の表情で走る揚羽様と俺。小十郎の表情は険しくなっている。
長い住宅地を駆け抜けると、大きな建物が見えてきた。周囲を見ると、あちこちに女子学生が歩いている。どうやらあれが七浜学園の校舎のようだ。揚羽様の先にピンク色のロングヘアーの女子学生と執事服を着た青いショートカットの人が歩いている。
すると揚羽様が、ピンク色のロングヘアーの女子学生の隣で止まる。俺と小十郎は、速度を落として揚羽様の後ろで止まる。小十郎は肩で息をしている。急いで、呼吸を整えている。
「我が友夢よ!おはよう!今日も学舎でしかと頑張ろうでわないか!」
「おはよう。揚羽ちゃん。今日も元気だね!」
「我はいつでも元気だかな!南斗星(ナトセ)殿もおはよう!」
「あははは。おはよう揚羽ちゃん。元気いっぱいだね」
「おはようございます!夢さん。南斗星さん!」
「小十郎君もおはよう。ところで揚羽ちゃん。小十郎君の隣にいるのは誰かな?」
ピンク色のロングヘアーの女子学生が俺を指差す。先程から俺に視線が集中していたが、更に視線が増えた。
「おお!我が友夢には紹介していなかったな。こやつは不動悠斗。我の新しい侍従にして伴侶になる男だ!」
「おはようございます。不動悠斗と申します。夢お嬢様、以後お見知りおきください」
「あ、おはよう。へぇ~新しい侍従さんか。それで、伴侶になるんだ・・・ って!えぇぇぇぇぇ!!」
「ゆ、夢!落ち着いて!」
夢お嬢様の表情が激しく変化する。周囲を歩いていた女子学生も驚いている。
「だ、だ、だって!揚羽ちゃんに伴侶がいるんだよ!?夢と同い年なのに!」
「あ、1つ訂正させていただきますが、俺はあくまで伴侶候補であって伴侶ではごさいませんので。そこだけは間違いのないように」
キチンと訂正しておかないといけない場所は訂正しておく。揚羽様をチラリと見ると、軍配で口元を覆って隠しているがおそらく不機嫌になっているだろう。
「あ、そうなの?よかったよ~いきなり伴侶とか言われたら、お祝いの祝辞を考えなきゃいけないから焦ったよ」
「いや。夢殿。悠斗が恥ずかしがっているだけだ。いずれは、我と結ばれる運命にあるのだからな!」
皆が見ている前で堂々と宣言する揚羽様。俺は否定するのも面倒なので、黙って立っている。
(うん?なにか、変な視線を感じるぞ)
顔を動かして周囲を確認すると、此方に向かって二人の女子学生が歩いてきた。一人は茶髪で活発なイメージの少女だ。
もう一人は、緑色のロングヘアーので眼鏡をかけた少女だ。
「おはよう夢!南斗星!」
「おはよう夢。南斗星さん」
「あ。ケイにミィ!おはよう!」
「二人ともおはよう」
夢お嬢様と南斗星さんが二人と挨拶を交わす。
ケイと呼ばれた少女と、ミィと呼ばれた少女が二人の側にやって来た。
「よう揚羽、小十郎。おはよう」
「おはよう揚羽ちゃん。小十郎君もおはよう」
「ふははは!おはよう諸君。我と今日も学舎で頑張ろうでわないか!」
「おはようございます!ケイさん。ミィさん」
揚羽様と小十郎が挨拶を交わす。すると、ケイと呼ばれた少女が俺の前に来た。
「へぇ~。あんたが揚羽の伴侶になる男か。大変だな。俺は種村圭子だよろしくな!ケイて呼んでくれ!」
「よろしくお願いします。ケイ様。俺は不動悠斗と申します」
俺は種村さんに頭を下げる。彼女は顔を指でかいている。
「いや、様付けは勘弁してくれよ。なんかなれないからさ」
「わかりました。ではケイと呼ばせていただきますが、よろしいですか?」
「ああ。呼び捨てで構わないぜ」
「相変わらずケイは姉御肌だね」
眼鏡をかけた少女がいつの間にか種村さんの側にやって来た。なぜか、俺を見つめている。
「嬲って。もしくは蔑んで」
「は?」
いきなり意味不明な事を言い出す少女。流石に俺もすぐには対応出来なかった。てか、真っ昼間から普通の女の子が言うことじゃないよな?
すると彼女はいきなり、クネクネと動き出した。
「ああ!放置プレイ!感じちゃう!」
「だあぁぁ!ミィはちったあ、落ち着いてられないのか!」
何処から出したか分からないロープを使い、眼鏡をかけた少女を縛る種村さん。あまりの手早さに俺は感心してしまった。
「ほう。ケイは慣れている様だな」
「ああ。こいつのせいでな。こいつは、アナスタシア・ミスティーナ。あだ名はミィだ。ミィて呼んでやってくれ。見ての通り、ネジがゴッソリ足りてない奴だから」
「ああ。拘束プレイ。私はこれから、乱暴されちゃうのね。ドキドキが止まらない!」
何故か喜び出すアナスタシアさん。正直、今まで生きてきた中で一番驚いたね。まさか、生きてるうちにドMと会うことになるなんてな。
(世の中広いな。いろんな意味で彼女は達人だよ)
そんなことを考えていると、チャイムの鐘の音が聞こえてきた。
「む?予鈴か。我は一足先に教室に行かねばな。では、悠斗。小十郎。行ってまいる」
「行ってらっしゃいませ。揚羽様」
「揚羽様!行ってらっしゃいませ!」
揚羽様を見送る。周囲にいた他の女子学生達も次々と学園に入って行く。
「じゃあ、ナトセさん。また、放課後ね」
「行ってらっしゃい。夢!」
「ほら行くぞ!ミィ!」
「ああ。拘束プレイで引きずられるのも癖になっちゃう」
夢お嬢様が学園に入って行かれる。種村さんは縛ったアナスタシアさんを引きずって中に入って行った。校門前には俺と小十郎と夢お嬢様の侍従者が残るだけになっていた。
「あはは。自己紹介がまだだったね。僕は南斗星(ナトセ)。夢専属の執事だよ」
「これはどうもご丁寧に。俺は不動悠斗と申します。以後お見知りおきを」
互いに自己紹介する。正面から見て初めて気がついたのだが、ナトセさんは女性だった。後ろから見たときは分からなかったが。そして、なにより強いと即座に分かった。
(なるほど。彼女もまた、強者であったか。いずれ機会があれば手合わせを頼みたいな)
そんなことを考えながら、暫くの間雑談に花を咲かせ次のチャイムが鳴った時に解散するのだった。
悠斗sideout
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