真剣恋にチート転生者あらわる!?
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第2話
悠斗side
俺が九鬼揚羽様に拾われ、九鬼家侍従隊に就職してから2週間が過ぎました。お茶会?の後にクラウディオさんから執事服の採寸を計ってもらい、次の日の朝には執事服が届いた。良く分からなかったが九鬼家凄すぎ!普通仕事着の執事服がオーダーメイドて、有り得ないだろう!!しかも、予備服も全部支給品て!
更にこの執事服は俺が暴れても、ある程度大丈夫な素材で作られているらしい。まあ、全力の1%以下の力で揚羽様と手合わせして勝ってるからな。マブラヴの世界で伊達に、毎日1時間で6000万年分の時間、修行してたからな。神様がくれた、チート改造された特殊訓練室のおかげだけどな。あと、自分の住む部屋を割り当ててもらいました。10畳の広さの部屋で押し入れがついている部屋だ。まあ、使用人に与えられる部屋では一番小さいらしい。小十郎は俺より畳2畳分広い部屋に住んでいる。
初めて部屋に入った時に気が付いたのだが、何故かダイオラマ魔法球が部屋に置いてあった。使ってみると、やはりマブラヴの世界と同じやつだった(中で時間を過ごしても一切老けないチート改造仕様)。しかも、俺以外には使用出来ない様になっている。今では、部屋のアンティークになっている。話がそれたな。九鬼家に就職?してから2週間が過ぎたんだが、クラウディオさんから教えることが無くなったと言われました。普通最低1ヶ月はかかる執事の仕事を2週間ですべて覚えました。礼儀作法は勿論、紅茶の美味しい淹れかた。お客様の出迎え等の作法等沢山有った。今では、クラウディオさんに「揚羽様の侍従者として申し分無い」と言われて太鼓判を押されました。
2週間の間には揚羽様と共にヒュームさんと修行したり、あずみさんや李さんステイシーさんと共にお仕事したりしてました。メイドの3人は話してみると話が分かる人達でした。
あずみさんは小太刀やナイフ等の名人だ。
李静初は無口だけど洒落にならようなジョークをときどき言う。
ステイシーは大雑把な所があるけど、キッチリするところはキッチリする人だった。
(う~ん。九鬼家で働く人達は何気に一癖二癖ある人が多いんだよな。まあ、基本的には皆武人みたいに強いからな。手合わせで戦ったら楽しかったしな)
現在手合わせ連勝記録を更新中だ。手合わせに関して言えば負けは1回もない。
それと、最近になって初めて知ったんだが今俺が住んでる場所は神奈川県七浜市にある九鬼家の別荘なんだ。春からはみなとみらい地区にある超高層ビルに戻るらしい。そっちのビルにも俺の部屋があるらしい。
(てか、神奈川県に七浜なんて地名あったかな?いまいち思い出せないけどな)
そんなことを考えていると、電車のアナウンスが聞こえてきた。
「次は松笠、松笠でごさいます。出口は右側でございます」
そう。俺は予定より早く執事としての訓練が終わってしまったのでクラウディオさんから、休みを2日程言い渡されたのだ。そこで俺は、この休みを利用して神様が捏造して作った実家がある松笠市に行ってみることにしたのだ。服装は黒いパーカーに中に白いロゴ要りのTシャツ、青いジーンズに黒と赤のスニーカーだ。俺は出入口のドアの窓から外を眺めている。あちこちに高層ビルが見えている。
電車の中を見れば、楽しそうに話すカップル。スーツを着て働くサラリーマン。暇そうな顔をしている学生など様々な人達がいる。
(此方の世界は平和だな。マブラヴの世界では考えなられないな。逆に言えばそれだけ戦争から遠い国になってるんだなこの日本は)
この世界の歴史は調べてみると、昔俺が普通の一般人として生きていた時代の歴史と同じだった。 電車が駅のホームに入った。少しずつ減速して止まった。扉が開く。俺は電車から降りて駅のホームに出る。改札を抜けて駅前に出た。外は晴れていて温かく過ごしやすい陽気だ。駅前では、沢山の人が行き来していた。 廻りを見渡してみるとストリートライブをしている人々もいた。
(人だかりが出来ているから、結構人気がある人がストリートライブをしているんだろうな)
駅前に広場に人だかりが出来ている。そちらの方からギターの音が聞こえて来るから、集まっている人々はファンなのだろう。俺は彼等の後ろを通り松笠商店街に向かう。暫く道を歩いていると松笠商店街に入った。左腕に付けた腕時計を見る。時刻はお昼の時間を過ぎていた。
(丁度腹も空いてきたし、何処か食事が出来る所を探すか)
少し商店街を歩いていると、松笠名物海軍カレーと書かれた幟を見つけた。幟の立っている店を見るとオアシスと書かれていた。
(丁度腹も空いてきていたから、此処にするか)
俺はドアを開けて中に入る。カランカランと鐘の音がなる。店内を見てみると綺麗に掃除されている店だった。
「ヘイ!いらっしゃいマセイー!コチラの席にどうぞ!」
厨房からターバンを巻いたインド人の様な格好をした人?が出てきた。
てか、人なのか?明らかに1次元足りない気がするように見えるのだが? 俺は不思議に思いながら案内された席に座る。
「いらっしゃいマセイー!ワタシはカレー屋オアシスの店長のアレックスとイイマース。ご注文はどうシマスカー?」
「え~と、海軍カレーの大盛をお願いします」
「ワカリマシタ!少々お待ちクダサーイ」
俺から注文を聞いた店長さんが厨房の中に入っていった。
(世の中不思議だな。2次元の姿にしか見えない人がカレー屋をやってるなんて。神様。本気で送る世界間違えてんじゃねえのか?)
そんなことを考えていると、店長さんが厨房からトレーにカレーを乗せて持ってきた。
「オマタセしました!コレが当店自慢の海軍カレーデース!」
「あ、はい。いただきます」
目の前に出された熱々のカレー。大きめの器に溢れん秤の量だ。スプーンを手に取りカレーをいただく。
「う、美味い!」
一見何処にでもある様なカレーに見えたが、実は全然違った。計算されたスパイスの調合により程よい辛さで何杯でも食べられる感じがするほどだ。
「ハッハハハ。アナタは食いっぷりがイイデスネー。おかわりもデキマスカラ、沢山食べてクダサーイ」
店長さんがおかわりも出来ると言ってくれる。俺が夢中になってカレーを食べていると、カランカランと入り口のドアが開く音がする。
「よ!店長。飯食いに来たぜ!」
「オオー!カニさん。久しぶりデス。今でも元気そうデスネ」
「どうも店長。相変わらずですね」
「オオー!カニさんの保護者の対馬さん~。お馬鹿なカニさんを育てるノは、大変でショウニ」
「なんだと店長!!こんな昼時に暇そうにしてるくせに!」
入り口の辺りが騒がしい。俺はスプーンを置いて振り替えって入り口の辺りを見ると、小柄の女の子と普通そうな男が店長と話をしていた。そして、男と目があった。
「あれ?もしかして悠斗か?」
「(あ!思い出した!つよきすの主人公の対馬レオナルドだ!)レオナルドか?」
「ぎゃははは!レオの奴、古いアダ名で呼ばれてやんの!てか、レオの知り合いなのかあの男?」
小柄の女の子が腹を抱えて笑っている。俺達は互いに固まってしまった。 対馬レオが俺の元にやって来た。俺も椅子から立ち上がる。
「やっぱり悠斗じゃないか!元気そうだな!転校してからどうしてたんだ?最初誰だか分からなかったぞ」
「レオも元気そうで何よりだ。久しぶりに帰って来たばっかりでな。丁度昼時だったからカレーを食ってたんだ。レオは何だかんだで変わらないな」
互いに握手する。対馬は細い体の割りに筋肉がキチンと付いていた。恐らく自分で鍛えていたのだろう。
「う~ん。レオ?誰だっけこいつ?」
「オイオイ。幼なじみの悠斗だよ。高校1年まで一緒だっただろうが!」
「(そうだそうだ。この子は蟹沢きぬだ!頭が弱い子だったな)ようカニ。久しぶりだな。昔と比べて大人になったじゃねえか」
「おお!思い出した!何時もアメかガムをくれる悠斗だ!久しぶりじゃねえか。お前は背が伸びたな。見ろレオ。悠斗はボクか大人になってるて気付いているじゃないか!レオも大人になっているボクを崇めるんだね」
ナイ胸を張るカニ。残念ながらそこは育ってはいない様だ。俺とレオは温かい視線で見てやる。
「な、なんだよ!二人とも温かい視線で見やがって!良いもんね!必ずボインボインになってやるからね!」
「カニさん。対馬さん。注文を決めてクダサイ~」
「ああ、すいません店長。俺は海軍カレーで」
「ボクはココナッツミルクカレーで」
「ワカリマシタ。暫くオマチクダサイ」
注文を受けた店長が厨房の中に入っていった。
レオとカニは俺席の隣に座った。全員がカウンターに座っている。
「しかし早いもんだな。悠斗が居なくなってから5年も経ったのか。今は何をしてるんだ?」
「俺か?俺は今は九鬼財閥で執事の仕事をしてる。レオとカニはどうしてるんだ?」
「は、はぁ!?悠斗は九鬼財閥に就職したのかよ!?凄いな!ボクは今はゲーム会社に就職したんだよ!まあ、今日は久しぶりに休みが取れたからレオと遊んでるんだけどね」
「俺は今は大学に通って、経済学の勉強をしてる。卒業したらキリヤ・コーポレーションに就職するつもりだ」
カニは高校を卒業してからゲーム会社に就職したらしい。まあ、原作でも確かそんなことを言ってた気がするしな。
カニは高校を卒業してからゲーム会社に就職したらしい。まあ、原作でも確かそんなことを言ってた気がするしな。
レオはキリヤ・コーポレーションに就職するのか。そうすると、霧夜エリカと付き合っているのだろうか?
(てか、俺ってこの世界だと元対馬ファミリーだったんだ。神様、今頃になって記憶をくれるのは勘弁してほしいな)
俺が内心で愚痴を言っていると、店長が厨房からカレーを持って出てきた。
「オマタせしました。海軍カレーとココナッツミルクカレーデエス。ゆっくり食べてクダサイー」
「お!来た来た。いただきます」
「ハムハム。ハムハム」
レオとカニはカレーを食べ始める。レオは行儀良くいただきますと言ってからカレーを食べる。カニ至っては既に食べていた。
「そう言えば、スバルと新一はどうしてるんだ?」
「うん?ああスバルは、高校2年の時に転校したんだ。知らなかったのか?」
「スバルが転校!?なにか問題でも起こしたのか!?」
伊達スバル。対馬ファミリーの兄貴的存在の男だ。陸上選手としての能力が高い男だ。また、喧嘩も強く料理も出来るイケメンだ。レオ達にとっては大事な存在の男だ。
また、一本義の通った男で責任感も強いから、レオ達の元から簡単に居なくなる様な男ではない。 となれば、なにか重大な事をしてしまったのか?。俺は、嫌な予感がした。レオはカレーを食いながら話を続ける。
「いや。スバルは陸上のスカウトで由比浜学園に転校したんだ。俺がスバルから聞いた話じゃ、悠斗に背中を押してもらったから、由比浜に行く決心がついたって言ってたんだが違うのか?」
「(いや、知らないな。まあ、話を合わせといていいな)いや、転校するしないは聞いてなかったからな。そうだったのか。なら、新一はどうしてるんだ?」
「フカヒレの馬鹿か?あいつなら、今頃駅前でギターを引いてるんじゃないかな?フカヒレのクセにプロのミュージシャンを本気で目指してるみたいだしな」
どうやら、この世界の対馬ファミリーの面子はそれぞれ頑張ってるらしい。俺は財布から1万円札を取り出し席を立つ。カレーはとっくに食い終わっているからだ。
「店長。お代まとめて置いていくから、レオとカニの分も一緒にしていいよ。お釣りがでたらレオに渡してやって」
「ハイ!ありがとうゴザイマス。また、キテクダサイ」
「良いのか?悠斗?」
「ああ。働いてるしな。それに、昔からの幼なじみだから気にするな。今度、休みがあったら飲みに行こうぜ」
「ああ。そのときはゆっくり酒を酌み交わそうぜ!」
「へへ。悠斗サンキューな。また、今度遊ぼうぜ!」
「おう!カニも笑顔で元気にやれよ!じゃあな!」
レオ達と別れて俺はカレー屋オアシスを後にして商店街に向かうのだった。
悠斗sideout
レオside
カニと二人でオアシスでカレーを食べている。
さっきまでいた幼なじみの不動悠斗は俺達の分まで代金を払って店を出ていってしまった。
「相変わらず兄貴分なのは変わらないね。悠斗はスバルとおんなじような性格だったしね」
「そうだな。まあ、悠斗は俺達ファミリーの中で一番強かったしな。喧嘩じゃ負け無しで頭は天才。しかもイケメンだったからな」
「それでいて、ボク達には優しかったからね。まあ、中学三年になると此処等で悠斗に喧嘩を売るような奴等はいなかったからね」
俺達ファミリーの中でスバルと同様に頼れる存在だった。高校一年の夏休み前までは竜鳴館に共に通っていた。残念な事に悠斗は親の都合でドイツに留学してしまったが、それでもメールのやり取りは海外に行ってからも続けた程だ。最近は皆が忙しくて連絡が疎かになっていたが、久しぶりに元気な姿を見ることができた。
「でも、まさか悠斗が九鬼財閥に就職したなんてな。まあ、悠斗な可笑しな話じゃないよね」
「まあ、ああ見えても8歳で大学卒業してるからな。てか、カニ。お前は何杯カレーを食う気だ?」
何時のまにか、カニの隣にはカレーの器の山が出来ていた。こいつ何杯食ったんだ?
(はあ。悠斗が奢ってくれて助かったかも。俺の財布も厳しい状況だったし)
家で何時ものように筋トレをしていたら、カニからメールが来て強制的に遊ぶ事になり、財布に大ダメージを受ける所にまさかの救世主が現れてくれたからな。今回ばかりは神様に感謝したいと思ったな。
「そういやレオ。レオが乙女さんと付き合ってる事を悠斗に言ってなくないか?」
「あ!忘れてた!?そう言えば、悠斗にメールでも伝えてなかった!」
「え?まさか、四年前から1度も伝えてなかったのかよ!?」
「ああ。その頃は忙しかったし、三年生になったら進学の勉強で忙しかったから、彼女が出来た事なんか話してなかったからな」
「まあ、悠斗なら今度会ったときで良いんじゃね?レオもケータイのアドレス知ってるんだろ?」
「ああ知ってる。まあ、今度会ったときにちゃんと話さないとな。そろそろ行くかカニ?」
「そうしようぜ。店長。ごちそうさん」
「ごちそう様でした。カレー旨かったです」
「ハアーイ。カニさんも対馬さんもありがとうゴザイマス。お釣りの1200円にナリマス」
俺は店長からお釣りを受け取り財布に入れる。それからオアシスを出て、カニと一緒にどぶ坂の方に遊びに行くのだった。
レオsideout
悠斗side
オアシスを出た俺は再び松笠商店街に来ていた。 現在俺は実家を目指して歩いている。
(う~ん。この辺りのはずなんだがな。なかなか見つからないな)
周囲を確認しながら商店街を歩く。すると足に何かがぶつかった。足元を見るとバケツが有った。
(なんでバケツが転がって来てるんだ?)
バケツを拾い上げて周囲を見渡すと、少し先に花屋が有った。恐らくあそこから転がって来たのだろう。俺はバケツを持ったまま花屋に向かう。
「あら~?バケツは何処にいったのかしら~?」
「のどかさん。何か無くなったのかい?」
「はい~。あなたバケツがないんです~」
「はて?さっきまで有ったんだけどな?何処かにしまったのかな?」
店近くに来ると、のんびりとした会話が聞こえてきた。中の人達が探しているのは恐らく俺が手に持っているバケツなのだろう。俺は店の中に入る。
「あの。探しているのはこのバケツですか?」
「はい~?あ、いらっしゃいませ~。あら、貴方が持っているのは探していましたバケツです~。わざわざありがとうございます」
「いや、申し訳ない。何処に行ったのか探していた所だったんだよ」
中に入ると、ロングヘアーでリボンで結んだ女性、てか、なごみの母親ののどかさんとやや歳をとったナイスガイの男の人がいた
「(あ!此処がフラワーショップ椰子か!のどかさんがいるってことは、男性は再婚相手の天王寺さんか)いえ。たまたま道を歩いていたら足にぶつかったので、此方の物ではないかと思って持って来たんで」
「わざわざありがとうございます。って、悠斗君じゃない~。久しぶりね~。元気にしてたの?」
「おお!悠斗君じゃないか!あの時は君に世話になったからね!元気そうでなりよだ!」
俺からバケツを受け取ったのどかさんが、俺を見てすぐに気が付いた。店の奥から天王寺さんも出てきて、入口付近で3人で談笑が始まる。
「(相変わらずのどかさんは若いな。なごみとツーショットで並んだら親子ってより、姉妹に見えても不思議じゃないな)いや、お二人も幸せそうでなりよりです」
「ええ~。私達は幸せ一杯ですよ。悠斗君がなごみちゃんとの間を掛け持ってくれたからこそ、今こうして二人でいられるのよ~。本当にありがとうね」
「本当にあの時は悠斗君に世話になったからね。僕からも感謝させてくれ。本当にありがとう。それより、立ち話も何だし中でお茶でも飲んでいかないかい?」
「あ!はい。お邪魔します」
天王寺さんに進められ、店の奥の茶の間に通される。のどかさんがお茶を淹れてくれる。
「はい。粗茶ですが」
「ありがとうございます。いただきます」
「貴方もどうぞ~」
「ありがとうのどかさん!愛してるよ!」
「私もです~」
俺の目の前で抱き合う二人。うん。ラブラブ展開はごちそうさまだ。
俺は出されたお茶を飲もうと湯飲みに手を伸ばすと、後ろのドアが開いた。
「母さん。棚卸し済んだよ。て、なに抱き合ってるんだい?」
「なごみちゃんありがとうね。今、お茶を淹れるわね。それと、悠斗君が来てるわよ」
ロングヘアーで長袖の服を来て花屋のロゴが入ったエプロンを付けた椰子なごみが茶の間に来た。俺は彼女に手をあげる。
「よ!元気そうで何よりだ」
「悠斗君!?いままで、何処に行ってたんですか!?」
「まあ、座りな。順を追って話すからさ」
なごみは驚いた表情をするが、すぐに元に戻る。そして、俺の直ぐ隣に座った。俺はなごみ達にいままで、あったことを説明するのだった。
悠斗sideout
なごみside
私が店の奥で棚卸しを終えて店に戻ると、茶の間に懐かしい人物がいた。 そう、幼なじみの不動悠斗君だ。私は悠斗の隣に座っている。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた私の数少ない線の内側の人だ。何年か海外に留学してたが、2年前に日本に帰って来ていた。悠斗のお義父さん(誤字にあらず)は外交官で、お義母さん(誤字にあらず)は専業主婦だ。悠斗のお義母さんは花が好きで、よくお店に来ていた。悠斗とは家が隣同士の縁もあって、父さんが生きていた頃から花に興味があったようで、店を手伝ってくれた。父さんが亡くなってから私が店を本格的に手伝う様になってからも、力仕事は悠斗が積極的に手伝ってくれた。
中学時代には悠斗はヤンキーだったけど、花屋の手伝いは必ずしてくれた。私と母さんしか居なかったから、力仕事をしてくれる悠斗の存在は頼もしかった。中学生の私には料理人になる夢があった。父さんがまだ生きていた頃、父さんから教わった料理が楽しかったのだ。けど、父さんが亡くなってから母さん一人ではお店をやっていくには、大変だった。だから、私は夢を諦めて父さんとの大事な思い出の詰まったこの花屋を守っていこうと決意したんだ。
悠斗が高校一年生の夏にドイツに転校して行った。まあ、私も女子にしては力があった方だから、悠斗が居なくなった穴は何とか埋める事が出来た。私としては、また悠斗が帰ってきたら3人で花屋を守っていこうと考えていた。けど、母さんは違った。私は母さんの隣に寄り添っている天王寺を見る。 今ではこうして割りと仲良く3人で暮らしているが、私が高校一年生の時に初めて母さんが天王寺を連れてきた時は本気で母さんと喧嘩をした。今まで、私達3人で守ってきた父さんとの大事な店に、線の外側の人間なんか入れたくなかった。
あの頃の私は子供だった。母さんの気持ちを考えずに、自分の殻に籠もっていたのだ。
母さんの話も聞かずに家に帰るのも遅くしたりして、心配ばかりかけてしまった。
しかも、私が原因で母さんは心労がたたって倒れてしまった。
そのせいで悠斗がわざわざ、ドイツから戦闘機に乗って帰って来たのだ。
(まあ、あの時は私も驚いたな。まさか、悠斗がわざわざドイツから帰ってくるなんて思わなかったから)
帰ってきた悠斗に私は凄く怒られた。私を見つけた時、悠斗は初めて私をビンタしたのだ。
(ビンタされた時は驚いて、声が出なかった位だったからね)
そのあと、悠斗は私を優しく抱き締めてくれた。あの時の悠斗の温もりは今も忘れていない。
まあ、その後は悠斗が私と母さんと天王寺の仲を取り持ってくれたおかげで、今の様な状態に落ち着いた。
(あの頃から悠斗を一人の男性として見るようになったんだ。私は悠斗が好きなんだ。大好きで側に居て欲しいんだて気付いたんだよね)
まだ、悠斗に伝えていないけど、必ず伝えるつもりだ。
「な・・・み?」
「なごみちゃん?どうかしたの?」
「え?いや、なんでもないよ」
3人が心配そうに私を見る。考え事に集中しすぎたらしく、話しかけられたのに気が付かなかった。
「なごみ。疲れているなら休んでてもいいんだぞ?」
「大丈夫だよ悠斗。それより、此方にはどれくらい居られるの?」
「そうね~。悠斗君はどのくらい此方に居られるのかしら~?」
「うん?明日の午前中には戻るつもりだよ。今日は家に荷物を取りにきただけだからね」
悠斗がお茶を飲みながら言い放つ。私には意味が分からなかった。
(どう言う事?悠斗は今、社会人で働いているって事なの??)
私が内心で動揺していると、母さんと天王寺が話を始めた。
「のどかさん!やっぱり、悠斗君は凄い子だね。九鬼財閥で働いているなんて、超一流企業のサラリーマンだよ!」
「そうですね~。悠斗君なら不思議に感じないんだけど。そうだ!悠斗君。今晩は家に泊まっていかないかしら?つもる話もあるでしょうからね」
「ええ。良いですよ。どうせ実家の布団は干してないですからね」
よし!チャンス到来!今日は腕によりをかけて最高の料理を作ってみせれ。伊達に、調理学校に通ってる訳じゃない!
「じゃあ。夕食は奮発しよう!悠斗君となごみちゃんに悪いんだけど、買い物をお願いして良いかな?」
「ええ。構いませんよ。任せてください」
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
「なごみちゃん。悠斗君。お願いね~」
私と悠斗は商店街に買い物に行くのだった。
その日は夜遅くまで、私達はお酒を飲むのだった。
なごみsideout
ページ上へ戻る