100年後の管理局
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第三話 星軽、壊砲
集束砲。またの名をブレイカー。
それはおそらく砲撃を主体とする魔導師の中で最強の魔法。
周囲に散らばる魔力を自らの支配下に置き、それを集め一つの砲撃に変える。
その威力は、確かにまちまちになりやすい。
周囲に魔力のない場所であれば、集束砲を放つよりも、収束砲――ディバインバスターなどの自分の魔力を収束させる砲撃――の方がより効率がいい。
けれど、長期戦の中で自分や味方、敵が大量の魔力を散布した後にこの魔法を使うのなら、その威力は絶大なものになる。
そう、それはさながら太陽のごとく………。
桜色の太陽。それは誠也、高町誠也の家が曽祖母の代より確実に受け継いできた最強の集束砲撃の始まる合図である。
曽祖母が友人と分かりあうために作り出した高町の家に伝わる最強の一撃。
誠也はそれを今、放とうとしている。
「さぁ………、行くよ………?」
そこにはこらえきれぬ愉悦があった。
久しく放っていなかった自身最強の一撃。それを振るえる喜びが誠也の心の中で渦巻いていた。
集めた魔力は元々周囲にあった魔力、ディバインバスターとアクセルシューターでばらまいた魔力、そして男の使った防御魔法の残滓である。
今放とうとしている魔法は自身が今までに放った一撃の中ではそこまで強いものではない。
ひどいものでは次元世界の大半を一瞬で焦土に変えてしまったものがあったのだから。
けれど、手ごたえは十分。
この魔法は自分の全力と胸を張って言えるだけの威力には仕上がっていた。
「レイジングハート!」
『All right. Master.(わかりました。マスター)』
桜色の太陽が脈動を始める。
ドクンドクンと脈打ち、発射まで秒読みの段階に入ったことを告げていた。
男にはもう感情が浮かばなかった。
全てあきらめていたのだ。
目の前で脈打ち始めた太陽を前に、圧倒されて逃げることも防御しようと考えることもあきらめていた。
どう頑張っても無理。
逃げたところで余波でやられる。
全力防御も紙のごとく突破される。
そんな未来しか浮かばない。
そう思わせられるほどに圧倒的であったのだ。
そこに集束している魔力は感じられるだけで自身の数倍は優に超える。
もしも放たれれば、自身が逃げるどころか、周囲一帯を荒野に変えてしまうだろう。
それが簡単に予想できる程度には強大な魔力だった。
(これが、『最終兵器』………。)
噂には聞いていた。
昔の同級生が管理局で働いていて、その話を時々聞くことがあったからだ。
曰く、史上最強の砲撃魔導師。全力を以て放つ一撃は周囲を焦土に変え、うまくすれば次元世界を一撃で焦土に変えられる。と。
眉唾ものだと思っていた。
そんな人間がいるわけがないと。
けれど今、実際に居たことが確信できた。
次元世界を一撃で焦土に変えることは無理でも、一つの国を一撃で焦土に変えることは十分に可能な砲撃魔導師。
そして、それを今見せつけられている。
心にはもう何も浮かばない。
白い最終兵器が、桜色の太陽でもって、星を軽く壊すに足る一撃を放つのをただゆっくり見守るだけだった。
「これが俺の全力全開―――!」
誠也はレイジングハートを振り上げる。
男は動かない。
逃げるそぶりもなく、防御するそぶりもない。その表情にはただただあきらめだけがあった。
そんな男を見ても誠也は止まらない。
ここでこの魔法を解除すれば男は逃げると、自分自身に言い聞かせて。そんなことはないと心のどこかで理解していながら。
こみあげてくる愉悦をかみしめ、自分の全力を振るうことに集中する。
『ちょっと待て!ふざけんな!本当にやめろ!』
耳元でグレイルの声が聞こえる。
でも無視。全力で無視。
滅多に振るう機会のない、自分の全力。
逃してなるものかと、心に決意する。
「スターライト―――、」
『やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!』
どんな制止でも、誠也はもう止まれない。
「ブレイカ―――!!!!」
桜色の奔流が放たれる。
スターライトブレイカー。
かつてのエースオブエース、高町なのはが作り出した集束砲撃魔法。
本当の名前は『星の光』に集束砲を足したもので『星光集束砲』とでも言うべきなのだが、今の管理局においてその名前は意味が異なる。
誠也の放つスターライトブレイカーのあまりの威力の高さに、『星を軽く(ライト)壊せる(ブレイク)砲撃』と揶揄されこう称されるようになった。
『星軽壊砲』と………。
後書き
SLBについては良く言われるあれが元になっております。
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