戦国異伝
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第七十七話 播磨入りその六
その鎧の懐からだった。それをだして来た、それは。
笛だった。穴が幾つも連なって空いている空の笛を出してだ。
そしてそれをだ。信行に見せて話したのである。
「これを吹かないと駄目なんだ」
「ではそれは幻術の様なものか」
「そう、そしてね」
さらにだと言う獣だった。
「大蛇君は蛇を自在に操れるからね」
「ああ、それか」
蜂須賀もだ。獣のその言葉に頷いて応える。
そのうえでだ。己の傍にいる大蛇を見てだった。
そして。こう言ったのだった。
「大蛇だけにじゃな」
「うん、僕はそれだけ他の生き物を操られるんだ」
全ての力に、そうなるという言葉だった。
「そうじゃないとすぐにだったかのう」
「そうじゃな。戦の場で争うことも本意ではない」
このことは信行も同じだだった。
「操りそれでことを避けられるならじゃ」
「そういうことでね」
「そのことは任せておいてくれよ」
二人は自分の胸を叩き自信に満ちた顔で述べた。
そしてその顔を見てだ。信行も言った。
「ではじゃ」
「はい、この道中はお任せ下さい」
「全員何もなく播磨に行けますよ」
飛騨者達が明るく彼等に言う。それを受けてだ。
信行も笑みになり頷きだ。足を進めようとする。しかしだ。
進みながらだ。彼はこうも言うのだった。
「しかしじゃ。播磨に着いてもじゃ」
「播磨に着いても?」
「といいますと?」
「うむ、具体的には播磨の何処に拠点を置くかじゃな」
彼がここで言うのはこのことだった。
「何処で兵を集めて摂津に入るかじゃが」
「あっ、それでしたら」
考える顔になった信行にだ。すぐにだ。
羽柴がだ。いつもの明るい顔で言ってきたのだった。
「それがしに考えがあります」
「ふむ。では何処じゃ」
「姫路は如何でしょうか」
羽柴がここで出したのはそこだった。
「姫路の城に入りそうしてです」
「そこで兵を集めてか」
「はい、そのうえでそこから摂津に進まれてはどうでしょうか」
「何故姫路なのじゃ?」
信行も姫路の場所はおおよそだが把握している。そのうえでだ。
何故そこにしたのかとだ。彼に問うたのである。
「少し西に寄っておらんか」
「確かに姫路は播磨の西にありますな」
「より摂津に近い方がいいのではないのか?」
そこからすぐに攻められるからだ。信行はこう言ったのだ。そして具体的にはだった。
「須磨、いや屋島の辺りじゃな」
「あの辺りですか」
「源氏物語や平家物語になるがな」
これは信行はわかるが羽柴にはわからなかった。羽柴はそうした物語にはさして興味がないからだ。だから信行もこのことはそれで終わらせた。
そしてそのうえでだ。あらためて羽柴に言ったのである。
「しかし姫路になると。どうもな」
「いえ、それが違います」
「すぐに摂津に入られるのか?」
「はい、実は姫路から摂津までは道もよく一直線です」
「一直線ならばか」
「はい、すぐに入られます」
そのだ。目的地である摂津にだというのだ。
「ですから距離はこの場合はさして問題ではないのです」
「そうなのか」
「それにです」
さらにだとだ。羽柴は言っていく。
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