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戦国異伝

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第六十二話 名軍師その八


「そうした世にする」
「それが天下を目指される。収める、そして治めることですか」
「わかってくれたか」
「わかり申した」
 竹中は物静かに信長の問いに頷く。そのうえでだ。
 こうだ。信長に対して言うのだった。
「ではそれがし。これより」
「どうするのじゃ」
「織田家の末席に加えて頂きたく存じます」
 こうだ。深々と頭を垂れ一礼して言ったのであった。
「そうさせて頂きたいと思います」
「言うたな。二言はないな」
「はい」
 それもないと。竹中は頭を垂れたまま言う。
「決めました故」
「わかった。ではこの山から出るな」
「そして天下に」
「そうせよ。では皆の者」
 周りに控えているだ。平手達に告げる。
「これで帰るぞ」
「はい、それでは」
「これより稲葉山の城に」
 平手や安藤達もだ。信長の言葉に応えて。
 彼等は行きに来た道を辿り稲葉山に戻った。そうしてだ。
 信長はすぐに信行にだ。満面の笑顔でこう言ったのだった。
「わしの子房を手に入れたぞ」
「確かその言葉は」
「わかるか」
「明の三国時代の曹操の言葉ですな」
「うむ、そうじゃ」
 まさにその曹操の言葉だとだ。信長は満面の笑みで話す。
「知っておったか」
「兄上から書をお借りして読んでいますので」
「御主には学問が会う」
 生真面目で折り目正しい信行にはだ。学問は相応しいというのだ。
「誰でも学ぶべきじゃが御主には特にじゃ」
「はい。それがし自身も思います」
「学問が合っておろう」
「馴染みます。自然と読んでいけます」
「御主はそうなのじゃ。文の者じゃ」
 このことはかなりはっきりしていた。信行には武勇はない。戦においてはあまりにも杓子定規な采配で信長と比ぶべくもない。
 だが、だ。文においてはなのだ。彼は。
「見事や。政もな」
「だからなのですか」
「学べ。わしの書をどんどん読め」
「はい、さすれば」
 こうした話も交えてだった。とにかくだ。
 信長はだ。満足している顔で弟に話すのである。
「半兵衛が家臣になったぞ」
「あの稀代の名軍師がですか」
「これは大きいな」
「まさに一国を得たに等しいですか」
「そうじゃ。それだけの価値がある」
「軍師も何人いてもです」
 信行は明の歴史、信長の蔵書から学んだそれから話した。
「多過ぎることはないですから」
「うむ。子房を得たことはじゃ」
「やはり大きいですな」
「後は上洛じゃ」
 必要な国と人材が手に入った。ならばだというのだ。
「何時でも出られる様にしておく」
「さすれば出陣の用意ができ次第都に」
「いや、すぐには向かわぬ」
 信長はこのことはすぐに否定した。 
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