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チートだと思ったら・・・・・・

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六話

「京都へ、行くぞおおおおお!!」

「「おおおおおおおおおお!!」」

「迷惑だから静かにしろ」

さすが麻帆良学園の生徒。中学の最大レベルのイベントの修学旅行だけあって、テンションが馬鹿みたいに高い。とりあえず、女子生徒の方にいる新田先生がこちらに雷を落としに来る前に、奴らを静めるとしよう。




「さぁ、行くぞ!」

「どこにだ?」

「それは勿論美砂の所へ!!」

この車両は学園の生徒で貸し切りになっているからまだいいものの、ハタ迷惑な奴だ。……とりあえず殴っておくか?

「じゃあ行くぞ!」

「…………」

だがその前に標的が去って行ってしまった。どうせ向こうの教師に叱られ、強制送還になるだろう、と放置しようと思っていたのだが……担任教師のすがるような目線に気付いてしまった。確か担任は学生時代に新田先生にお世話になったと言っていた。手を煩わせたくないと言うことか。

「やれやれ」

あんな視線をずっと向けられてはかなわない。ため息を一つつき、馬鹿を回収しに向かった。



「キャーーーーー!?」

「ん?」

ドアを開けたとたん、大きな悲鳴が聞こえた。何事かとドアの向こうへ入ってみれば、そこには辺り一面の……

――カエル。

「ああ……」

そういえば、こんなイベントがあったな。そう思いつつも、自分に向ってはねてきたカエルを弾き飛ばす。チャチャゼロとの修行のおかげでこれぐらいなら意識せずできるようになった。どうやらカエルもほぼ回収し終えたようだ。それなら、俺は当初の目的通り馬鹿を回収するとしよう。

「あーーっ!」

今度は一体何だというんだ。顔をやってみれば封筒を咥えたツバメを追ってやってくるネギの姿。なるほど、アレが親書か。

「あ! 健二さん、それを止めて下さい!」

どうやら、ネギがこちらに気付いたらしい。エヴァンジェリンとの件に関わったことで、俺は既に魔法の側だとは知られているし、何回か暇を共にしたこともある。断る理由もなかったため、俺はツバメを鷲掴みににした。

「ほら、アレだけ必死に追いかけてたんだ。大事なものなんだろう?」

「あ、ありがとうございます! でも健二さんはどうしてここに? 他の車両に行くのは禁止されてたはずですけど……」

「アレの迎えだ」

俺が顎で指した先には突然現れたカエルに対する談義を柿崎とを交わしている馬鹿がいる。

「あ、そうなんですか」

「ああ、迎えに来た俺が怒られては意味がなかったけどな」

「いえ、理由があったならいいんです。すみませんでした」

律義に謝るネギはやはり好感がもてる。実際話していて思うのは大人びた子ども、というもので嫌悪などする要素がない。……無用な罪悪感を感じていることを知らなければ、だが。もっと子供らしく生きても構わんだろうに。思ったことを口にせず、俺は馬鹿を回収し、自分たちの車両へと向かった。



「…………」

帰る途中、桜咲刹那が立っていた。僅かに眉間に皺を寄せるその表情から、此方に対する警戒心が伺える。初対面であるし、別段話すこともないので素通りしようとしたが、不意に声をかけられた。

「今回の件、どこまで知っている?」

「詳しくは知らない。精々ネギが関係があることぐらいだ。だが、何かあると言うなら力を貸すし、自分から首を突っ込むかもしれない。ネギは知り合いだからな」

「分かった」

俺の答えに満足したのか、向こうが歩を進めだす。既に馬鹿は先に行ってしまった。遅れすぎて何かを言われては何だと、俺も足早に歩き始めた。



最初の観光場所は清水寺。ある程度はまとまって行動しなければいけないが、比較的自由に行動することが許されているせいか、男どもはここぞとばかりに女生徒に声をかけ始める。……皆、そこまで餓えていたのか。

「一人で何してるのよ」

哀れなクラスメイト達を温かな目で見ていると、明日菜が声をかけてきた。友人たちとゆっくり見て回ればいいものを、と思わなくもないが、此方にに気をかけてくれるからこそ彼女は明日菜なのだろう。

「何、皆楽しそうだと思ってな」

「そういうアンタはあんまり楽しそうじゃないわね」

「…………」

それはそうだろう。この修学旅行ではラスボス級の敵が登場するのだ。旅行先が違うなら違うで心配事が尽きないが、一緒なら一緒で、別の心配事が後を絶たないのだ。

「何考えてるのか知らないけど。せっかく一緒になったんだし、楽しみましょ!」

向けられる笑顔に、一瞬だったが俺の考えていることなど吹き飛んだ。今はまた頭の中をめぐっているが、さっきよりはずっと楽になっている。明日菜の笑顔には、俺の心配事はかなわないようだ。

「ああ、そうだな」

誘われるがままに、明日菜と並び歩きだす。その足取りも、先ほどのよりもずっと軽かった。
……俺たちが音羽の滝についたころ、既に俺のクラスも含めた数十人の生徒が酔いつぶれて寝てしまっていた。



「ふう……」

あの後、3-Aと同じくウチのクラスもすぐに旅館へと向かった。尤も、こっちは向こうと違って音羽の滝に酒が悪戯でしかけられていたと正直に話してあるが。自分たちから飲んだわけではないので、当然修学旅行が中止になるなんてことはない。原作では何を焦っていたのだろうか。

「確か初日の夜は……」

風呂でネギと桜咲刹那が一悶着。その後、このかがさらわれる……だったか。風呂での一件は関われないので放置だ。なぜなら旅館が違うから。俺達男子が泊っている旅館は女子が泊っている旅館の正面だ。俺は隠密行動なんかできないし、向こうの旅館に侵入するなど……いや、侵入はできるか。問題はその後だな。バレずに行動出来る自信がない。よって、旅館内の出来事は基本放置するしかないのだ。

「さて、準備はしておくか」

折角風呂に入ったんだがな……そう思いながらも、俺はストレッチで身体をほぐし始めた。


一方、その頃の女子生徒側のメンバーはというと。

「3-A防衛隊結成ですよ!! 関西呪術協会からクラスのみんなを守りましょう!!」

そんな感じに、ネギと桜咲刹那の和解が成っていた。最も、明日菜はネギのネーミングセンスに不満を。あまり人と親しく接してこなかった桜咲刹那はそんな二人に戸惑いを隠せていなかったが。

「そういえば桜咲さん、クラスの皆を守るって言うのはいいんだけど……私たち三人だけで大丈夫なの?」

「そうですね……敵も今日の様な悪戯程度ならともかく、一般人を巻き込む様なことはしないはずです。護衛対象を絞れば不可能ではありませんが……」

それに、いざとなれば頼りになる奴もいますし。そう、桜咲刹那はこぼしたが、それが明日菜とネギの耳に入ることは無かった。

「ん……でも、多い方がいいのよね?」

「ええ、それはそうですが……」

何か心当たりが? そう聞いてくる桜咲刹那に明日菜は自信なさげに口を開いた。

「健二に協力してもらうのは……どうかな?」

「健二さんですか?」

明日菜の言葉に返事をしたのは質問をした桜崎刹那ではなく、横で聞いていたネギだった。桜咲刹那に関しては眉間に皺を寄せている。

「あ、桜咲さんは健二のこと知らないか。健二は「知ってます」……へ?」

「宮内健二。最近魔法使いであることが発覚した麻帆良学園男子中等部の生徒で、今はフリーの魔法使いという扱いになっていますが、今まで学園に正体を隠し続けていたことからどこかの勢力から送り込まれてきた……所謂スパイではないかと一部の者から疑われている人物です」

「「…………」」

明日菜とネギは唖然とした。桜咲刹那と口から健二に関することがスラスラと出てきたことに対してもだが、それ以上に健二がスパイと疑われていることに対して、だ。

「ちょ、ちょっと。健二がスパイって……」

頭の理解が追いついていないのか、明日菜の口調がいつものハキハキしたものとは違い、重い。

「調べから、宮内健二が何らかの魔法組織と接触していた事実は無いと判断されました」

「そ、それじゃあ!」

「しかし、両親が魔法使いでもないのに魔法を使える。これが宮内健二を疑う要因となっています」

桜咲刹那によって突き付けられた真実。魔法が使える、それだけで疑われてしまうなどと言うことは、周りが皆魔法使いで、魔法を使うのが当たり前であったネギや、最近魔法に関わったばかりの明日菜には想像できないことだった。

「一応、そんな理由がありますので、宮内健二に助力を請うのは控えて下さい」

結局、最後は重苦しい空気のままに三人は散っていった。外の見回りにいったネギが、知らぬ内に致命的な失敗を起こしたことを知らずに…… 
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