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久遠の神話

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第一話 水の少年その十


「そうしてるんだよ」
「刀ですか」
「許可も得てるさ」
 これは嘘だが。やはり上城は気付かない。
「ちゃんとな」
「だったらいいんですけれど」
「ついでに言えばミネ打ちだからな」
「死ぬとかもないんですね」
「斬ったら流石にやばいだろ」
 笑ってそれはないというのだ。
「殺したらな」
「それはそうですけれどね」
「だからそれはしないさ」
「再起不能にしただけなんですね」
「そういうことだ。まあ手を出してきたのは向こうだ」
「ですね。それは」
 誰がどう見てもだた。それは。
「この人が先に」
「それならいいさ。一件落着だ」
「ええ。ただ」
「ただ?」
「中田さんでしたよね」
 上城は彼のその名を確めたのだ。
「そうですよね」
「ああ、そうだけれどな」
「お話は聞いてましたけれど」
「何だ?俺がもてるってか?」
「いえ、そうした話は聞いたことないです」
 上城は素直だ。だからこう答えたのだった。
「強いってことです」
「ああ、そのことか」
「本当に。こんなでかい人を倒すなんて」
「こいつの強さは薄っぺらいからな」
「薄っぺらい?」
「ああ、弱い者いじめの為の力だからな」
 それでだ。薄っぺらいというのである。
「そんな奴の強さはな」
「薄っぺらいんですか」
「力ってのはそういうのに使うんじゃないんだよ」
「じゃあ何の為に」
「目的の為だよ」
 その為だとだ。中田は上城に話す。
「目的の為にあって使うものなんだよ」
「目的?」
「ああ、目的だよ」
 また上城に言う彼だった。
「それぞれの目的の為にな」
「あの、それって」
「ああ、わからないならいいさ」
 中田は上城の疑問の言葉には笑って返した。
「それならな。あんたは関係ないしな」
「関係ないって」
「そうさ。関係ないからな」
 屈託のない笑顔でだ。中田は上城に言うのである。
「俺の話さ」
「中田さんの」
「さて、じゃあ俺はこれでな」
「帰られるんですね」
「俺の家にな。帰って飲むつもりさ」
「お酒ですね」
「酒好きなんだよ」
 笑顔でだ。彼は酒の話もした。
「酒なら何でもいけるぜ」
「お酒なら僕も」
 上城も飲んだりする。好きな方だ。
「飲みますけれど」
「じゃあ今度一緒に飲むか?」
 中田は気さくな調子で上城を誘いもした。
「いい店知ってるぜ」
「あそこですか?スタープラチナ」
「あのカラオケ店だな」
「それか白鯨か」
 上城はこの店の名前も出した。彼等が今いる八条町にある居酒屋だ。スタープラチナと同じビルにあり同じ家が経営している店なのだ。 
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