戦国異伝
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第三十七話 二つの砦その一
第三十七話 二つの砦
鷲津にだ。敵が尾張に入ったとの報が入った。
報を入れたのは蜂須賀の手の者達だった。黒装束の彼等が佐久間盛重達に述べるのだった。
「そうか、遂にか」
「はい、来ました」
こうだ。その忍の者達が佐久間盛重の言葉に答える。
「総勢二万五千です」
「話通りの数だな」
「そして先陣はです」
忍の者の言葉がさらに続く。
「松平元康、そしてです」
「太源雪斎じゃな」
「左様です」
まさにだ。その二人だというのだ。
「その二人が今この鷲津に迫っております」
「わかった」
佐久間盛重はそこまで聞いてだった。
強い顔でだ。こう頷いてから言うのだった。
「それでは全ての者でじゃ」
「この砦を守る」
「そうされますね」
「無論だ」
木下兄弟にだ。佐久間盛重は強い声で答えた。
「よいな、すぐにだ」
「はっ、それではです」
「我等も」
「さて、いよいよはじまるな」
佐久間盛重は既に具足でその身を包んでいる。青いその具足を着てだ。
そのうえで彼はだ。また言うのだった。
「最後の最後まで戦い抜くか」
「今殿に報は出しておきました」
木下が佐久間盛重に述べる。
「一週間も経たないでしょう」
「殿が動かれるのにはだな」
「はい、我等はその間思う存分戦いましょう」
木下は微笑んで述べた。
「武勲を挙げればそれだけ褒美が貰えますし」
「ははは、言うのう」
佐久間盛重は木下の今の言葉にだ。顔を崩して大笑いした。
そしてそのうえでだ。彼は言うのであった。
「そうじゃな。敵が多ければ多いだけだ」
「功を挙げることができます」
「そうじゃ。その通りじゃ」
佐久間盛重も頷くことだった。まさにだ。
「ではわしもじゃ」
「戦われますか」
「そうしよう。ではじゃ」
今の木下の言葉でだ。佐久間盛重は一層奮い立った。そしてだ。
砦にいる他の者達もだ。それぞれこう言うのだった。
「よし、それではじゃ」
「わし等もじゃ」
「敵の首をどんどん取るか」
「そして褒美を貰うのじゃ」
こう言いだ。士気をあげるのだった。鷲津の砦の者達の士気はだ。これ以上はないまでにあがるのだった。そうしてである。
木下秀長がだ。ここでこんなことを言うのだった。
「では。今から」
「飯じゃな」
「そうです。飯です」
蜂須賀の問いにだ。笑顔で答えたのである。
「それにしましょう」
「そうじゃな。腹が減っては戦ができぬ」
蜂須賀は口を大きく開けたうえで笑って話してみせた。
「まずは食うことじゃ」
「はい、ですから」
「さて、では飯をたらふく食ってそれでじゃ」
蜂須賀はさらに話すのだった。
「大暴れしてやるか」
「小六、食うのはよいがじゃ」
しかしここでだ。佐久間盛重はだ。その蜂須賀に顔を向けてこう告げるのだった。
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