戦国異伝
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第九十八話 満足の裏でその九
「あの者に。それに倭寇もです」
「明を暴れ回っておるあの者達もか」
「水を使えば攻めることもかなり幅が増えます」
「陸からでは摂津で止まるがのう」
「しかし淀川を下ればです」
「行けるな、都に」
「そうなります」
平手は確かな声で信長に話す。
「では早速。都を固めますか」
「既に勘十郎達がおるが。しかしじゃ」
「しかしとは」
「都を固めるよりもじゃ。こちらも水を使うとしようぞ」
「水となると」
すぐにだ。平手は彼の名前を出した。
「二郎ですか」
「その為に堺にも船を置かせたしのう」
「そしてですな」
「伊勢、志摩から兵を乗せる」
信長はこうも言った。
「無論都にも兵は向けるがのう」
「伊勢、志摩からも兵を乗せてですか」
「都を攻める三好を今度こそじゃ」
どうするかというのだ。
「降す。よいな」
「そうされるべきかと。ではその為にも」
「手を打つ」
そうするというのだ。
「全ての手をな。そのうえでじゃ」
「今度こそですか」
「三好を降ししかもじゃ」
「讃岐や阿波もまた」
「手に入れる。よいな」
「はい、さすれば」
「敵は叩ける時に叩く」
信長の考えである。彼は戦の時にも何の躊躇もしない。その果断さと動きの早さは他の大名達と比べても全く引けを取らない。
その彼がだ。こう言ったのである。
「必ずな」
「では」
「うむ、手を打つぞ」
また平手に言う。
「そして讃岐と阿波じゃ」
「淡路もですな」
「四国も手に入れる。しかしじゃ」
「しかしとは」
「伊予までは出るつもりはない」
今の時点ではそうだというのだ。
「あそこまではのう」
「伊予といえば確か」
「あの国も国人達の力が強いしのう。それにじゃ」
「伊予を手に入れるとなると」
「毛利や大友の争いがある。今はあの者達にはじゃ」
「何もされませぬか」
「今は精々やり合ってもらう」
互いにだ。潰し合いをすればいいというのだ。
「それに巻き込まれる訳にはいかぬ」
「さすれば」
「伊予は今は手を出さぬ」
あらためてだ。信長は平手に対してこう述べたのだった。
「ただしじゃ。土佐となると」
「あの国ですか」
「さて。あの紫の者達次第じゃな」
「長宗我部ですか」
「あの者達は土佐を統一したばかりじゃが」
「その兵はかなりの強さです」
「一万程じゃったな」
信長は既に長兵我部の力もある程度だが知っていた。
「さて。その一万の兵じゃが」
「今の我等ではです」
「何ともない相手じゃな」
「そう思いまするが」
「わしも同じじゃ。三好も飲み込めばじゃ」
それでだ。どういったものになるかというのだ。
「織田家にこの国で対することができる者は」
「さらに限られますな」
「そうした意味でも四国は手に入れておきたいが」
「問題は土佐ですか」
「さて、どう来るかのう」
長宗我部のことをだ。信長はまた言うのだった。
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