IS ~インフィニット・ストラトス 漆黒と純白と紅の狼~
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喧嘩、高額買取中
前書き
申し訳ありません。
こちらの投稿ミスで、一話ほどすっ飛ばしていました。
この一話を入れてから、改めて投稿し直します。
~???side~
………き、キツイ。
いきなりだが、これはジョーク抜きにキツイ。
それは何故か?
簡単だ、教室内に俺一人が男だからだ。
他は担任ですら女子という、精神的拷問レベルだ。
マジでどうにかならないだろうか?
そこに、不意に俺の名前が呼ばれる。
「……織斑くん!」
「は、はいっ!?」
「え、えっとね、自己紹介をして欲しいんだけどね。な、名前が“あ”から始まって今、“お”だから、織斑くんなんだけど…………」
おどおどしながら、状況を説明してくれる副担任。
彼女の名は、『山田真耶』。
俺よりも身長が低いが、これでもこのクラスの副担任だ。
取り敢えず、自己紹介をすることにした。
「織斑一夏です。よろしくお願いします」
咄嗟に浮かんで来たのがこの一文だったので、他にいう事がない。………が! 俺の周り(約一名を除いた全員)の視線が『え、それだけ?』や『もっと、喋ってよ』という鋭い視線が俺の体に突き刺さる。
結構無茶を言ってくれるモノだと俺は思う。
俺の簡素な自己紹介のせいか、周りは沈黙を保っていた。
というか、肝心の担任はどうしたんだ?
という事を思った瞬間、強烈な衝撃が頭の後頭部を襲った。
バシンッ!
「………っ!?」
この叩き方に、打撃力………まさか………!?
そう思って、後ろを振り向くと………
「まともに自己紹介も出来んのか、バカ者」
我が姉が居た。
実家に帰って来ることが、一カ月に一、二回しかなく、職業不明の姉が何故、ココに居る!?
いや、それよりも………!!
「いや、千冬姉………」
「織斑先生と呼べ」
バシンッッ!
俺の後頭部を叩いた出席簿が火を噴いた。
どうして、出席簿でこんな威力を引き出せるのであろうか?
物理法則を絶対に超えてる気がする。
「今、織斑先生の事を姉って………」
「じゃあ、名字が同じのも………!」
「いいなぁ、代わって欲しいなぁ!」
この瞬間、姉弟であることがクラス全員にバレ、騒ぎが起きた。
というか、最後に発言した奴、よろこんで代わってやるから、名乗り上げろ。
「山田先生、押し付けて済まなかったな」
「いえいえ、これも副担任の仕事ですから………」
「さて、諸君。私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。この一年でキミたちを使えるレベルまで鍛え上げる。反論は聞かん! 私の言う事はよく聞き、よく覚えろ。逆らってもいいが、よく聞け」
なんという暴君宣言。
でも、女子達はそんな発言でさえ、黄色い声を上げていた。
その反応に千冬姉は非常にうっとしそうにポーズを取る。
ポーズではなく、これが本当にやっているのだ。
そこに手を叩いて、女子を黙らせた。
「静かに! 今日は編入生を連れてきている! 入って来い!!」
全員が扉の方に注目し、その姿に俺も含めてクラス全員が驚いた。
「どうも、編入して来た蒼騎真紅狼です」
その編入生は、なんと男だったのだ。
~一夏side out~
~真紅狼side~
俺は織斑先生のあとを黙ってついていき、教室の前で待ってる様に言われた。
そして、教室の中では織斑先生の弟が居たらしく、それに驚いたクラスの女子共は聞かされる新事実の度に、黄色い声を上げている。
女、三人揃えば姦しいというが、これはそういうレベルじゃないぞ。
織斑先生の自己紹介が終わると案の定、騒ぎ始める女子一同。
中に、こんな事をいう女子生徒がいた。
『お姉様の為なら死ねます!!』
………本当に死ねんのかよ?
簡単に命投げ出すこと出来る発言してるけど、本当にそういう状況下になった時、コイツ等は絶対に自分の命を優先するに決まっている。
“人間”とは、命の危機に陥った時、最優先にやることは自分の命の確保だ。
誰だって、命は惜しい。
………まぁ、マジ答えしてもしょうがないか。
命の危機を体験して来たことの無い平和な人生を歩んできたガキ共には………。
自分の中で、一つ決着を付けた後、織斑先生から呼ばれたので教室内に入る。
「どうも、編入して来た蒼騎真紅狼です」
「蒼騎、簡単に自己紹介しろ」
「はい。先程も名乗ったが、俺の名は蒼騎 真紅狼だ。くれぐれも睡眠の邪魔をするな。一度だけ警告してやるが、それ以降はそれなりの対処をするからそのつもりで」
俺が容赦なく言うと、騒いでいた女子達は一気に静かになった。
「蒼騎、授業中でもか?」
「いえ、休み時間のみですが?」
「それならいいが、騒ぎを大きくするなよ」
「出来る限り善処します」
「“出来る限り”じゃない。“やれ”」
「………努力します」
織斑先生はこちらを睨む。
すると、女子生徒達は一気に声を上げる。
「きゃー、二人目の男の子!!」
「しかも、ワイルド系!!」
「虐げて、そして調教して!!」
ここに居る女子全員は頭がおかしいらしい。
医者を呼ぼう。
騒いでいる女子達を眺めていると、眠そうな本音を見つけた。
しかし、織斑先生が再び黙らせた後、俺は窓際の一番後ろに座ることとなった。
授業中………
うーん、よくわかんねぇ。
いや、一応言っていることは分かるのだが、言葉で説明されると理解しにくい。
ISが動かせるようになってから、氷華にはみっちりと叩き込まれた。
もちろん、言葉ではなく肉体的に。要は肉体言語だ。
さらには、自分の性格の相性だった。
普通の人はまず予習してから実践だが、俺の場合はその建前がない。
取り敢えず、動かしてそこから得られた経験を積み重ねるというカンジなのだ。
一夏の方を見てみると、一夏の場合全く分かっていないという状況だった。
すると、山田先生が一夏の視線に気が付いたのか、「何か分からないことはないか?」と訊ねていた。
「先生、全部分かりません!」
その言葉を聞いて、山田先生は困っていた。
そこに織斑先生が呆れたように質問する。
「織斑、事前の参考書は読んだか?」
「古い電話帳だと思って捨てました」
バシンッ!
出席簿が火を噴いた。本日三度目である。
「必読と書いてあっただろう。再発行してやるから、一週間以内に読みあげろ」
「一週間で全部は……………」
「………やれ」
圧倒的な威圧感で、一夏を黙らせた。
どこの世界も姉は強いんだな。………俺は兄妹がいないけどよ。
そんな話をしているせいか、俺の方まで飛び火した。
「蒼騎! お前は全部読んだか?」
「一応は読みました」
「“一応”だと?」
「はい、一応です。基本的に読むより実際に動かしてから経験を積むやり方をしてるものなので」
「………独断でISを動かしたら罰すると書かれていたことを知って動かしたのか?」
「読む前に動かしたので………」
俺は平然と答える。
「お前は最初に読むということが出来んのか………?」
「すいませんね。ガキの頃から実践第一で生きていたので、読む暇があったら身体動かしてます」
「待て、“ガキの頃から”だと?」
「ええ。五歳の時から、父に“修業”という大義名分で朝だろうが夜だろうが襲われていたので………」
ぶっちゃけると就寝しようかなーと思った瞬間、襲われたこともある。逆もあるんだな、これが。
とまぁ、壮絶な幼少期を送っていた為か、“実践第一”が心の中で優先されている。
「まあいい、次から気を付けることだ」
そうして、再び授業に戻った。
休み時間が終わり、もう一コマ終えた次の休憩時間に面倒が引き起こされた。
俺は貴重な休み時間は全部睡眠に回している。
日向が気持ちよくて、眠いからだ。
しかも、雑音が入らない様に耳栓までして寝ている。
耳栓をはめる瞬間、横から金髪で縦ロールでいかにもお嬢様ですよって感じの女子が声を掛けてきたが、俺は既に耳栓を嵌めてしまったので声が聞こえない。
前の休み時間で俺と一夏は仲良くはなった。
この休み時間も一夏は俺の机の近くに来ていた、ちょうどよかったので一夏に対応してもらい、俺は反対側を向いて寝た。
『…………………………!!』
声を張り叫んで喋っているようだが、耳栓のお陰で快適だ。
『…………!? ……………ッ!!』
全く聞こえないのだが、そろそろうざくなってきた。
俺が警告を出す為に起きようとしたら、勝手に耳栓が抜けて、怒号が飛んで来た。
「ちょっと聞いていますの!? この学年主席の言葉を!!」
キーーーーン!!
「うるせぇ、黙れ、消え失せろ。警告は一回言った。次は強制的に黙らせる」
「な、なんて言葉w……………ッ!?」
全てを言い切る前に俺は耳栓をし直して、目を閉じようとした瞬間、再び耳栓が抜き取られて、ヒステリックな声が耳の中を響き渡る。
「この私に対して、なんて言う……………キャッ!!」
俺は宣言通りに、黙らせることにした。
一気に立ち上がり、そいつの首元を掴んで一気に反対側のドアに叩きつける。
ガシャンッ!!
「ぐぅ!?」
「俺は言ったよな? “次は強制的に黙らせる”ってよ。聞こえなかったのか? あ?」
首の根を掴みあげる。
そいつの身体は浮き上がり、足はバタバタと暴れている。
空いている右手で真紅の執行者を持ち、心臓辺りに持っていく。
すると、必死に足掻く。
「真紅狼、止めろ!」
「やめて欲しけりゃ、止めて見せろ」
一夏が俺を押さえこもうとしようと走りだした時、廊下側から織斑千冬が襲いかかってきた。
「チッ!」
織斑千冬は、手始めに俺の両腕の自由を奪おうとしてきた。
手慣れた腕前で、女を掴んでいた腕を折りに来たので俺は手を離して、その攻撃を躱す。
すると、それを呼んでいたのかそのまま俺の懐に入って押し倒そうとしてきたので、引っ込めた左を織斑千冬の肩に置いて、飛び越える。
着地場所に織斑一夏が居たので、未だに持っている真紅の執行者を唸らせる。
ダンッ!
狙いは織斑一夏の足元。
生まれて初めて聞く銃撃音にクラスメート全員は身を竦ませる。
もちろん、一夏も初めて聞き狙われたことにようやく気が付き、尻持ちをついてしまう。
「織斑………! くっ、蒼騎、貴様!」
織斑千冬は声を上げて、無事を確かめた後、発砲した俺に怒りを燃やす。
俺は無事に着地し、すぐさま振り向き織斑千冬の顔の前に銃口を突き付けた。
「俺を止めたきゃ実力を隠すなよ、織斑千冬。そんな腕前じゃ俺は止まらないぞ?」
「これはどういうことだ?」
「どうもこうも、そこの喧しいクソガキが俺の睡眠時間を妨害しましてね。宣言通り、黙らせたんですよ」
「だからと言って、銃まで使う気だったのか?!」
「口で分からないなら力で黙らせるしかないでしょう? それにコイツは自分がこのクラスの中で一番偉いと勘違いまでしてやがる。候補生? 学年主席? 専用機持ち? それがてめぇの偉さとなんの関係がありやがる? あんまり調子に乗ってると噛み殺すぞ」
「………蒼騎、お前を一週間の謹慎を命じる! 明日からだ。分かったな」
「ま、妥当な判断ですね。謹んで受けさせてもらいます」
「オルコット! お前も厳重注意と始末書を書いてもらう!」
「な、何故、私まで………!!」
あたかも自分は悪くないという声を上げていたが、織斑千冬………いや、織斑先生の一睨みで黙った。
その後、クラス代表を決めなければならないという事になり、オルコットを除くクラスの女子達は一夏を推薦したが、俺もいつのまにか推薦されていた。
さっきの現状を見なかったのか? そうなのか?
すると、再び世間知らずのお嬢様の怒りが炸裂した。
「そんなの納得いきませんわ!! 何故、学年主席の私ではなく、珍しいだけの男と野蛮な男が選ばれるのですか!?」
「織斑先生、やりたい方があちらに居るようですし、俺はそちらに譲りたいのですが………」
「ダメだ。自他推薦は聞くが、辞退は聞かん!」
一蹴された。
その間も熱烈にヒートアップする傲慢少女。
「聞いてるんですの!? 特にそこの貴方!!」
「いや、全然。やりたきゃ勝手にやってくれ。俺は辞退するから」
「そうはいきませんわ! 先程の侮辱、晴らせてもらいます!! 勝負をしましょう!!」
「はぁ?」
なんでそうなるかね?
その流れを待っていたのかのように、織斑先生は口を出した。
「よし! では、来週の午後、クラス代表を決める戦いをする。時間は午後二時から第一アリーナで行う。三人ともいいな!」
「ええ」
「おう」
傲慢少女と一夏が頷いてしまったので俺も仕方がなく頷いた。
…………かったる。
すると、一夏が…………
「ハンデはどうする?」と聞くと、クラス全員が爆笑した。
「織斑くん、そんなことは前時代なことだよ?」
「蒼騎くんも付けてもらった方がいいんじゃない? セシリアはキミには容赦しないと思うよ?」
「ハッ! 笑わせるな! 戦場に立ったことも無く、シュミレーションでしか戦ったことの無い奴が俺に勝てるとでも? 稼働時間が多かろうがなんだろうが、死線を一度も潜ったことの無い奴に俺は負けねーよ。むしろ、俺がハンデを付けた方が良いかと思うんだが? ………殺さない為にも………よ」
それなりの雰囲気を醸し出すが、傲慢少女はそれに気が付かないのか鼻で笑った。
「いいでしょう! 貴方には、容赦もハンデもいらないようですわね! 叩き潰してあげますわ!!」
「上等だ、その顔を醜く歪ませてやるよ」
そうして、クラス代表を決めること試合が来週に行われることとなった。
~真紅狼side out~
氷華の耳に入ったら、怒りそうだな。
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