IS ~インフィニット・ストラトス 漆黒と純白と紅の狼~
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IS学園
~真紅狼side~
一緒に住むこととなった日からすでに二週間が過ぎた。
最初は色々と手間が掛かった。
なにせ、女の園に男が一人突然入ってきたのだ、色んな場所でばったりと出くわすことが多かった。
定番から枠外まで色々とあったのだ。
………洗濯物とかも、ちょっとしたハプニングが起きたんだよ。
と、言っても更識家にも俺以外の男は居るにはいるらしいが、全員家に帰って来ることは滅多にないらしい。
誰もが、会社で寝泊まりしているらしい。このご時世故に、男は駆り出されることが多い。と、幽華さんは言っていた。
「………氷華~、朝だから起きろ~」
「うぅ~ん、あと5分待ってぇ~」
「朝ごはん冷めるぞ?」
「眠~~い」
そう言って、剥がした布団を再び引っ張って潜り込んでしまった。
こうなっては、自力で出てくることは難しい。
しょうがない、いつもの手でいくか。
「なら、仕方がない。折角、朝早く起きて俺の手料理を氷華に食べてもらおうと思ったのだがしょうがないか。だって、氷華は起きてこないんだし………全て幽華さんに食べてもらうとしよう」
と、俺はワザと呟くと刹那………
ガバッ!
「起きる!!」
「はい、お早う」
「お早う、真紅狼。今日の朝ごはんは何?」
「普通に白いご飯とみそ汁だよ。卵焼きを創ったな、ダシときだけど」
「真紅狼が創る料理は、私達“女”にとって優しい料理なのよ! お母さん、真紅狼の料理を食べ始めてから、プロポーションが最近よくなって来てるし………」
そう、俺の料理は何故かそういう傾向にあるらしく、更識家に大人気。特に女性が中心だが。
実際に、幽華さんのスリーサイズは、大きくなる所は大きくなり、締まる所は締まったらしい。
それから、週に四回は俺が朝御飯と晩御飯を創るようになった。
「早くいこ、真紅狼! お母さんが全部食べてしまわない内に」
氷華は起きて間もないのに、満面の笑みを俺に向けてくる。
………まったく、そんな笑みをされるとこっちは恥ずかしいんだがなぁ。
「ああ、行こうか」
俺達は、幽華さんが待っている和室に向かった。
~真紅狼side out~
~氷華side~
いつも通りに三人で朝ご飯を食べ終えた私達は、食器を片づける。
真紅狼は、食器を洗っている。
その間に、私はこの二週間で考えたことをお母さんと真紅狼に打ち明けることにした。
キュッ!
打ち明けようとした瞬間、真紅狼が水道を止めて、食器洗いを終えてこちらにやって来ていたので、話すことにした。
「お母さん、真紅狼。話したいことがあるの」
「あらあら、どうしたの?」
「ほら、お茶。幽華さんもどうぞ」
「ありがと。それで、話したいことって何かしら? 氷華ちゃん」
「真紅狼を学校に通わせようと思っているんだけど、どうかな?」
すると、真紅狼は一息ついてから、反応した。
「俺をか?」
「ええ、そうよ」
「いや、ここに住ませてもらってるだけでも有難いのに学校までってのは、ちょっとよ………」
真紅狼の表情は遠慮気味だった。
おそらくこれ以上、迷惑を掛けたくないのだろう。
すると、お母さんが喋った。
「あら、真紅狼。遠慮しなくてもいいのよ? 私達は“家族”なんだから」
「いや、それは予定ですよね? 俺が氷華と結婚すれば家族にはなりますけど………」
「あらいやだ、気が付いてたの?」
「そりゃ気が付きますよ、この二週間、さりげなく俺に将来の話とか少しでも聞き出して誘導するつもりでしたよね? 氷華と俺が結婚する方向へと」
「え、そんな話を真紅狼はお母さんとしてたの?」
初耳だわ、その話は。
「しかも、この二週間の間だけでも氷華とのハプニングが多いのも幽華さんの仕業ですよね?」
「………お母さん、本当なの?」
真紅狼とのドッキングはこの二週間だけで二桁は優に超えていた。
お互い、色々と見られている。
真紅狼はあまり恥ずかしくないらしいが、私はそれなりに恥ずかしかった。
私も恋する乙女なのだ。それなりに恥じらいはある。
「………だって、しょうがないじゃない。氷華の為を思ってやったのよ?」
「私の為?」
「氷華の元にはね………? 既に何通か『お見合いをしませんか?』っていう手紙が来てるのよ? でも、その相手はどれもこれもまともな男じゃない。それに比べて、真紅狼は色々と完璧だし、氷華ちゃんと結婚してくれたら嬉しいのよ」
「………お母さん」
お母さんがそこまで私の事を考えているなんて知らなかった。
私はお母さんに言おうとした時にその後の言葉で全てがふいになった
「……だからね、真紅狼と氷華ちゃんは今すぐ結婚すべきなのよ!!」
「「いやいや、その理論はおかしい」」
折角、良い雰囲気をお母さんはなんで壊すんだろうか。
というか、なんでこんな話まで脱線しているんだろうか?
元はと言えば、真紅狼を学校に入れることだ。
「で、真紅狼。どう、一緒に行かない?」
「だいたい、氷華が通ってる学校って“IS”を扱う場所なんだろ? “男”の俺じゃ無理じゃね?」
そうだった。
真紅狼は男なので、基本的に“IS”を動かせない。
その事を言われてから、気が付いた。
私は残念と思っていたその時、真紅狼の腕が突然変化した。
そして、その姿を見て口が塞がらなかった。
「ん? どうした? ………って、うおっ?! なんだこりゃ!!?」
真紅狼の右腕は、鋭利な爪みたいになっていた。
「真紅狼、貴方、ISが使えるの?」
私がその呟きから、お母さんは何かを頭の中で計算し終わったのか真紅狼に迫る。
「真紅狼、ISを動かせてしまった以上、氷華と同じ学校に行くしかないわ。大丈夫! 費用は出してあげるから、行ってきなさい!!」
「いや、あの、ちょっ………」
「え? ちょっと不安? しょうがないわね、あちらの学園長さんにお願いして氷華ちゃんと同じ部屋にしてもらうから大丈夫よ!!」
「俺はそんn………………」
お母さんの怒涛のマシンガンで、真紅狼は呑み込まれて反論を一つも聞いてもらえずに真紅狼はIS学園に入学することとなった。
~氷華side out~
一週間後………………
~真紅狼side~
あのあと、俺は再度抗議にしに行ったが、完全に幽華さんは聞く耳持たず状態で話しすら切りだせなかった。
そして、次の日から氷華によるISの稼働練習が始まり、みっちり叩き込まれた。
………と言っても、基礎動作の中の基礎しか教えてもらっていないので、応用とかはまだやっていない。
そして、今日は俺のIS学園登校日である。
一応、制服に着替えているが…………どうも落ち着かない。
まず、色からダメだ。
白一色は嫌いだ。多少なりとも黒や赤の色はあるが、それでも落ち着かない。
ということで、今は俺がいつも着ている黒いコートを上から羽織ってる。
「………ここがIS学園よ、真紅狼」
「なんというか、監獄みたいだな」
校舎を囲むバカでかい壁、どこをどう見ても監獄にしか俺は見えない。
「さて、そろそろかしら………?」
『お嬢様!』
「あ、来た来た! 虚! 本音! こっちこっち!!」
「お嬢様、お久しぶりです。………して、こちらが?」
「ええ。今日から編入する蒼騎 真紅狼よ。一応、彼も私達、“更識家”の名を授かる予定だから」
「予定なのですか………?」
「うん、お母さんがね。ココ一週間、『学校に行く前に結婚しちゃいなさい!!』って言ってくるのがしつこくてね。………大変だったわ」
「あー、それはまた………」
二人はここ一週間の近況を語っていたが、俺は三人の関係を知りたかったので訊ねてみた。
「ところでよ、氷華とキミたちの関係って?」
「あ、申し遅れました。私、布仏 虚っていいます。こちらが、妹の本音です。どうぞ、お見知り置きを」
「あ、どうも。わざわざ」
「彼女達はね、代々更識家に仕えてくれた人達なのよ」
ということは、幼馴染ということか。
「よろしくね、あおむー」
「“あおむー”って俺の事か? 本音?」
「そうだよ~」
本音は余った袖を振りながら、のほほんと喋る。
マイペースってレベルじゃねぇ………超マイペースだ。
「さて、最初に学園長に挨拶しに行かなくちゃ、行くわよ真紅狼」
「おーう」
移動中………
「失礼します」
『………どうぞ』
がちゃ………
「学園長、蒼騎真紅狼くんを連れて来ました」
「ごくろうさまです、楯無くん。さて、ようこそ我がIS学園に、蒼騎真紅狼くん。私はこの学園の学園長を務める轡木十蔵といいます」
初老の老人だった。
「驚いたな、IS学園っていうから学園長も女性だと思っていたのだが………、まさか男性だったとは」
「………意外ですか?」
「ああ。イメージってのは怖いな、先入観に囚われていたよ」
「まぁ、雑談は置いときましょう。蒼騎くん、キミは楯無くんと同じ学年………と言いたいんですが、まだ知識をかじった程度しか稼働時間がなさそうですし、特例として一年生に編入してもらいますが、よろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「あと我が学園は寮に住んでもらいますが、楯無くんのお母さんからの要望により、楯無くんと同じ部屋に手配しておきましたので」
「ああ、有難うございます」
すると、一息付いてから学園長が訊ねてきた。
「ところで、蒼騎くんは楯無くんに勝ったと言うのは本当ですか?」
「えーっと、ISでですか? 生身でですか?」
「後者の方ですよ」
「あー、はい」
「あの楯無くんに勝ってしまうとは、キミも凄いんですねぇ」
「あの謳い文句が、今にでも霞そうですけどね」
氷華は、苦笑していた。
「謳い文句ってなんだ? hy………楯無?」
「“この学園の長は、常に最強であるべし”。それがこの学園の生徒会長の条件なのよ」
この流れから察するに、氷華は生徒会長ってことか?
「でも、アレは公式じゃないし、ノーカンでいいんじゃないか?」
「ま、そうなんだけどねぇ。……………そうだわ、真紅狼」
「なんだ?」
「貴方、生徒会役員になりなさい」
「それはいいですねぇ」
「………何故に?」
「クラブ勧誘が凄いのよ。ただでさえ、男というのが珍しいからなおさら………ね。慣れてない学園生活にその上、クラブなんかやったら大変でしょ? でも、生徒会なら見知った人達しか居ないし、少しは楽になるわ」
見知った人達ってことは、本音とかかな?
まぁ、それはそれで嬉しいけど。
キーンコーンカーンコーン………
何かの合図の予鈴がなった。
学園長は、『授業が始まる合図ですね。そろそろ終わりにしましょう』と言って話を区切り、俺は氷華と共に職員室に向かった。
職員室に辿り着いた時、職員室側から扉が開いた。
もちろんその人も女性であり、キャリアウーマンと思わせるほどの出で立ちだが、目つきは鋭い。
さらには、着ている服をスーツではなく、軍服に変えたら間違いなく教官と言ってもなんらおかしくないような女性だった。
「更識、コイツがか?」
「はい、織斑先生」
「蒼騎真紅狼だな?」
「はい、そうですが………貴女は?」
「今日からお前の担任となる織斑千冬だ、よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
この人、かなり出来るな。
冷静だけど、中身はよく斬れる刀だな。
この人にはあまり本性を見せない方がいいな、面倒になりそうだ。
「それじゃ、真紅狼。お昼に」
そう言って氷華は自分のクラスに去っていった。
「私達も行くぞ、蒼騎」
「はい、織斑先生」
俺達も自分たちのクラスに向かった。
~真紅狼side out~
この人は色んな意味で容赦がなさそうだ。
後書き
幽華さんは一度スイッチが入ったら、止まりません。
暴走列車です。
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