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IS  ~インフィニット・ストラトス 漆黒と純白と紅の狼~

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更識家にて・・・

~真紅狼side~
目が覚めると、何か知らんが和室に寝かされていた。
えっと、俺は確か………銃で撃たれて、出血し過ぎて気を失ったのは覚えている。
巨木に寄りかかっていたのに、なんで家の中に居るんだ?
あ、でも、逃げてる際、塀みたいなモノを飛び越えたから………もしかして、どこかの民家の庭に逃げ込んだのか?
それなら、納得出来る。
そこから、自分の姿を見てみると俺が来ていた服装は無く、代わりに白い着物を来ていた。


「短刀も銃もないか………」


“七ツ夜”があれば、襲われても問題はないが………“七ツ夜”も“真紅の執行者”もないとなると、現状は厳しい。
撃たれた左肩と左横腹には、包帯が巻かれていたが傷は塞がっているし取ってもいいんだがそれじゃあこの家の人達に不審に思われるので止めておく。
………と言っても、勝手に治癒している所を見られていたら、その意味もなくなるんだけどな。


「誰もいないのか?」


取り敢えず、俺はこの家を見て回ることにした。
和室を出て、廊下を渡り、中庭に出た。
すると、そこには俺が寄りかかった巨木だった。


「それなりに名門のお屋敷の所に侵入したっぽいな」


中庭に、池や離れ小島がある時点でそれなりの御家柄の持ち主のところだろう。
すると、俺は奥の建物が気になった。


「………道場か。見事なものだ」


戸を開けて、中に入る。
すると、後ろから微かにタン!という音を聞き取り、俺は本能的に頭を右に避けた。
すると、細い腕が飛びだしてきた。
俺はすかさずその腕を掴み、そこから一本背負いの要領で組み伏せさせようとしたが、その襲撃者は腕を掴まれてると否や俺の背中を蹴り飛ばしてきた。


「ぐおっ!?」


蹴り飛ばされた反動で俺は掴んでいた腕を離してしまい、さらには床にたたきつけられた。
襲撃者はその隙を見逃すことは無く、いっきに制圧しようと飛びかかってきたので無理にでも身体に力を入れて、『七夜』の体術を使った。


――閃走・水月――


ビュンッ!!


一気に加速した後、道場の壁を足場にしてそのままその襲撃者の元に向かった。


ダンッッ!!


壁を蹴った際に、骨がミシミシと軋んだ音が聞こえたが、そのまま俺は襲撃者に襲い掛かり、なんとか組み伏せることに成功した。


「きゃっ!」


「きゃっ!」ってことは………まさか…………、俺は恐る恐る組み伏せた襲撃者の身体を見た。
男とは思えないほどの細い足に細い腕、それに二つほど膨らんだモノ………どう見ても女だ。


「何故襲ってきた?」
「貴方の素性が分からないから」
「傷を治し、休ませてもらったことに対しては感謝しているが怪我人に対してその仕打ちはどうかと思うが?」
「怪我人なら、私の制圧力に勝てないハズなのに、アナタは抗い、そして勝った。それだけでも貴方を“怪我人”とは思えないわ。取り敢えず、拘束を解いてもらえないかしら? 襲わないから」


俺は、ゆっくりと拘束を解いていった。
もちろん、すぐに拘束できるように用心をしながら………


「あいたたた……、なかなかの拘束力ね」


おどけているが、この女はまだやれるな。
実力を隠している。


「貴方、名前は?」
「………蒼騎 真紅狼。アンタは?」
「私の名前は更識 楯無よ」
「女にしてはいかつい名だな」
「ああ、私の名前って、世襲名だから。代々、更識家の当主は“楯無”の名を世襲するのよ」


なるほど、世襲名か。
それなら、女性でイカツイ名を付けられたのも理解できる。
ちなみに蒼騎家も世襲名がある。
蒼騎家の場合、当主もしくは次期当主に“狼”の文字を付け加える。
その為、必然的に蒼騎家の当主は男のみとなった。


「じゃあ、真紅狼くん。ちょっと貴方のことを二、三伺いたいから、付いて来てくれる?」
「分かった」


俺は、彼女の後をついていった。
~真紅狼side out~


~楯無side~
私は助けた男の子の様子を見に行く為に、和室に向かおうとしたが道場のドアが半開きになっているのが気になって向かうと、そこには彼が居た。
私はちょっと彼を試したくなってしまい、気配を殺して後ろから襲った。
怪我人と言う事を頭に入れながら、組み伏せることが簡単にできるだろうと思っていたが、結果逆に組み伏せられてしまった。


「さて、ここでいいかしらね」
「………何が聞きたい?」
「まずは、改めて。私は更識家第十七代目当主の“更識 楯無”です。貴方にお伺いしたいことが二、三ありますので質問させていただきます。まず、一つ目、貴方は何故、怪我を?」
「軍事施設に間違って入ってしまい、慌てて脱出したが、銃弾が左腹と左肩を貫通したから」


なるほど、それで数分前、私の家に自衛隊の方々が訪問しに来たのね。


「では、二つ目、貴方が所持していた武器ですがあれは?」
「護身用だ」


“護身用”ね。
それにしては、あの短刀から血の匂いが強かったわね。


「………わかりました。最後の質問です。………貴方は何者ですか?」
「どうしてそんな質問をする?」
「治療する時、貴方の背中の傷を見ました。さらには、短刀や銃まで所持している。一人旅には、少し過激すぎる装備です。極めつけがあの手合いです」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方が途中から出してきた体術は………“護身術”ではなく、“暗殺術”そのものでしたが?」
「………ああ、あの体術は“暗殺術”だよ。だが、一昔前の業だ。背中の傷はそうだな………“名誉の負傷”だ」
「では、貴方は暗殺者なのですか?」


私は訊ねて、気取られない様に構える。
すると、彼は………


「そう構えるなよ。俺は暗殺者であるが、暗殺者じゃない。俺はな、壊れた人間(バケモノ)だよ」


彼は私の構えた事を教えてきた。
彼の目は、真紅で美しかったが実際は何もかもを燃やし尽くす業火そのものだった。


「俺からも一つ質問していいか?」
「なんでしょう?」
「現在の世間ってのはどうなってんだ? 生憎、人が住んでいる様な地帯には降りたことが無くてな、世情に疎いんだ」


彼に現在の社会情勢を軽く教えると、「随分と歪んだ世界になったもんだ」と苦笑していた。


「これから、貴方はどうするんですか?」
「どうしようかねぇ~~」
『なら、私達と一緒に住みませんか?』


突然、部屋の外からある声が部屋の中に響き渡り、その後、部屋に入ってきた者がいた。


「お母さん!?」
「アンタの母親か?」
「ええ、私のお母さんで、前当主だった人」
「初めまして、蒼騎さん。私、更識氷華の母、更識幽華です」
「あ、ご丁寧にどうも。………氷華って誰ですか?」
「ああ、御免なさいね。貴方の前に居る女の子の本名よ」


彼は私を見てくる。


「確かに、アンタの本名は訊ねてなかったな。氷華って言うのか、良い名だな。………ところで、幽華さん。本気ですか? 得体も知れない男と共に暮らすなんて?」
「ええ、本気ですよ。それに貴方はおそらく“優しい人”でしょう?」
「俺は“優しく”ないですよ。なんせ、“悪党”ですから」
「そうですか。でも、私達と暮らすのは嫌じゃないんでしょう?」
「別にそちらが良ければ、こちらも有難いですが………(帰る家もありませんし」
「なら、これからよろしくお願いしますね、真紅狼くん」
「どうも、よろしくお願いします」


私をそっちのけで話は進んでしまい、結局彼は私達と共に住むこととなった。
私は先に出ていったお母さんを追い掛けた。
~楯無side out~


~幽華side~
先に部屋を退出した私を氷華は追い掛けてきた。


「お母さん!」
「廊下を走るなんて、はしたないわよ、氷華」
「あ、ごめんなさい。………じゃなくて、なんで勝手に話を決めちゃったのよ?!」
「氷華ちゃんは、さっき彼がなんて呟いたか聞こえたかしら?」


娘は、全く聞こえていなかったらしかった。


「彼はさっきね………『帰る家もありませんから』って呟いたのよ? それがどういう意味を表すか、分かるわね?」
「彼の両親が亡くなっているってこと………?」
「それに、今、彼を一人にするのは危ないわ。彼は私達にもっと重要な事を隠してる。………何かを。だから、彼と共に暮らせば、打ち明けてくれるかもしれないじゃない」


彼の眼は、語っていた。
『自分と貴女達は違う世界で暮らしている』と。
真紅の目で語っていたのだ。何を見てきたら、あんな目をするのか分からないが、娘と同じぐらいの子があんな目をすることが信じられなかった。
だから、一緒に暮らせば彼から打ち明けてくれるのかもしれないので、共に暮らすことを提案したのだ。


「それに、彼だったら氷華ちゃんのお婿にもなれるし!」
「お、お母さん!? まだ、その話は早くない!?」


ただでさえ、女尊男卑の時代なのだから、婿選びも大変なのだし。
彼が大物だったら、色々と有難いのだ。そう色々と。
~幽華side out~


女はいち早く物件を押さえておくものなのよ!



―――あとがき―――
楯無おねーさんとそのお母さんの名前は完全にオリジナルです。
ご注意をしてください。 
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