バカとテストと召喚獣~規格外の観察処分者〜
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プロローグ
前書き
大々的な修正を行いました
文月学園は世界初の特殊システムを導入した進学校だ。
その一つとして挙げられるのは『試験召喚戦争』と呼ばれる、クラスの設備を掛けたクラス間の戦争である。そしてもう一つは成績累進式の教室設備。1年の最後のテストによって豪華な設備のAクラスから劣悪環境のFクラスまで6段階のクラス分けが行われる。
そして、その運命を分けるテストが行われており、各々が少しでも上位クラスを目指そうと必死にペンを動かしていた……1人を除けば。
制限時間は着々と迫りつつあるにも関わらず、1人の男子生徒は机に突っ伏して寝ていた
「…東城、起きなさい。東城深羅、今すぐ起きなさい」
東城深羅と呼ばれたその男子生徒は教師の声すら聞こえていないのか微動だにせず、睡眠を続けていた。
それに対し教師は諦めたのか、頭を抱えながらため息をついた後、巡回を再開した。
するとガタンッ! と後ろ側の席から誰かが倒れたような音が聞こえた。
それに反応したかのように、先ほどの男子生徒も後ろを振り向く。まだ残る眠気を目で擦りながら、状況を確認する。
「姫路さんっ!」
……アイツ、明久に…姫路、か? なんだ、夫婦漫才か…?
とりあえず様子ぐらい見るか…どうせ1問も解いてねぇし今からじゃ挽回は無理だな…。
「…よう明久。どしたー」
「し、深羅! 姫路さんが倒れて!」
視線を姫路の方に向ける。顔は異様に赤く染まり、息切れをしたかのように呼吸が荒くなっていた。……こりゃ見るからに酷い熱だ、素人でも分かるぐらいに。とは言え、1年が決まるテストだ…独断で途中退席させようなもんなら恨まれるのは確実だ…。
「あー…姫路、保健室に連れていくが…覚悟は大丈夫か?」
「……っ、は、はい……」
「深羅、覚悟ってどういうことなの」
「試験中の途中退席は0点扱い、後は分かるな?」
「そ、それってあんまりじゃないか!」
……まぁお前の言い分も分からないでもないが、現代社会ってこんなもんだよね…きっと。
「明久はどうする? 一緒にサボるか?」
「…うん、行くよ。1人じゃ心許ないだろうし」
「年がら年中貧弱なお前に心配されるとは俺も落ちたもんだなぁ……んじゃ、行くか」
廊下を巡回してる教師ぐらいはいるだろうからな…任せて屋上にでも寝に行くか…。
「んじゃ先生、ちょいと行ってくるわ。行くぞ明久」
「ま、待ちなさい!」
教師の静止の声を尻目に肩を担ぎ、教室から退出する。
「歩けるか?」
「……な、なんとか…」
本人は歩けるらしいが…こりゃ早めに先生見つけて任せた方が良いな…。
足取りはふらふらでまともに歩けているとは言い難い。
「だ、大丈夫? 姫路さん」
「…だ、大丈夫…です、よ…?」
「…クソっ、先生はどこにいるんだ…!」
「焦るな明久、合わなかったら保健室行くだけだ」
「そうだけど…」
するとふと前から見覚えのある教師が歩いてきた。背は180cmはゆうに超えているであろう高身長、鍛え抜かれた強靭な肉体、これらが当てはまる教師は日本中探しても居ないだろう。
「鉄人!? 助かっ…痛てぇ!」
「大声を出すな、テスト中だ馬鹿者。そして西村先生と呼べ。で、性欲を持て余して姫路を誘拐か?」
「んな訳ないでしょうが。姫路がぶっ倒れたんで保健室に運んできたんですよ」
…と言うか俺らの事をどう思ってんのか問い詰めたいっすねぇ…。
「てつじ…西村先生、姫路さんの事お願い出来ますか」
「構わんが…お前ら、この後の結果、分かってるのか…?」
「分かってます。それを承知で来ました」
「だ、そうだ」
「……明久はともかく、東城、お前は観察処分者にリーチかかってるんだぞ?」
「あー、そうっすね…まぁ、しゃあないっすよ。コレが俺っすから」
授業中は爆睡又はサボタージュが当たり前で、学年会議の議題にも上がっているレベルだとか何とか…まぁ観察処分者は面白そうだから別に構わないんだけどな……。
「先生、僕はともかくってなんですか!?」
「そのままの意味だ。では処分は後に伝えられるから覚悟しておくように」
そう言って鉄人は姫路を引き取り、保健室へと向かった事だろう。
「…さて、俺らは戻るか」
「……はぁ、Fクラス確定、かぁ…」
「なんだ、不満でもあるのか?」
「そりゃあるよ! もしかしたらFクラスじゃない教室だったかもしれないじゃないか!
…ってそんな変な目で見ないで! そんなにおかしい事でも言ったかな僕!?」
「今のお前にピッタリな言葉がある。寝言は寝て言え」
「そこまで酷いの!? …まぁいいや、深羅は屋上に行くんでしょ?」
「まぁそうなるな、受けたって0点になるからな」
「だったら僕も行こうかな。どうせ帰るまで暇だしさ」
俺と明久は時間を潰す為に屋上へと向かうことにした。
◆
あの後、明久と他愛もない話をした後、俺は寝てしまったようだ…。目を開けると空はオレンジ色に染まっていた。
「……完全に寝過ごしたな、コレ」
まだ眠気が抜けきっていない身体を起こし、周りを見る。そこには明久は無く、どうやら途中で帰ったようだ…逆に居たら驚くし若干引くけど。
「…こんな時間までここに居たの? 深羅」
屋上のドアが開く音と共に名前を呼ばれ、後ろを振り向くと見知った女子生徒がそこに立っていた。
「…飛鳥か…お前こそ、こんな夕方まで何してたんだ?」
深羅が飛鳥と呼んだ人物は司馬 飛鳥。ショートカットに赤い縁のメガネが特徴の幼馴染みその1である。成績優秀、品行方正に美少女とモテる三拍子が揃っているだけではない。入学試験では満点をたたき出し、試召戦争では類まれな戦術でほぼ無傷で自クラスを勝利へ導くなど、驚異的な能力の持ち主でもある。
「私は図書館で自習、翔子も一緒だったけど途中で帰っちゃった」
「そーかい…腹減ったし、帰るか…」
「あ、そう言えばテスト、どうだった?」
「……同じ教室にいた癖に聞くかお前」
「はいはいゴメンね。まぁFクラスで精々頑張ってね」
「…試召戦争でぶっ倒してやる……」
「あははっ、とりあえず帰ろっか」
「荷物取りに行くから先行って……って、それ俺やつ」
取りに行く為に立ち上がろうとした時、ふと飛鳥の手にもう一つの手提げバッグを持っていた。……いつの間に俺のを覚えてんだよお前。
「出来るオンナはこういう事も出来るってね」
「気が利くってのは確かにな…よし、行くぞ」
「はいはい、仰せのままに」
「部下でも従者でもねぇんだから止めとけ、その言い方」
その後、飛鳥を家まで送った後、自分の家に向かうことにした。
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