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バカとテストと召喚獣~規格外の観察処分者〜

作者:風薙
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第1問

通学路に桜が咲き誇り、吹く風によって舞い散る季節。
徹夜で新作ゲームをプレイしていた身体には辛く、更に眠気を誘われるような暖かい陽射しが降り注ぐ中、文月学園へと足をすすめる。

「遅いぞ東城!」

暫く歩いていると最近耳にした声が聞こえた。

「あぁ…おはようございます、西村先生」

「なんだその体たらくは、また徹夜か! 少しは学生らしい生活をだな…。まぁ今更お前に言ったって無駄なんだろうな…。受け取れ、お前が1年間過ごす教室だ」

「……あー、Fっすよね?」

そう聞くと鉄人は頭を抱えた…いや、そこまで露骨に落ち込まれると反応に困るんですけど…。一応確認するが…うん、Fって書かれてるな。無駄に達筆で。

「分かってるとは思うが、ついでに言っておこう。昨日の会議でお前の処分が決まった…観察処分者だ。貴様をガンガンこき使ってやるから覚悟しておけ!」

「へーい」

根は良い人だから勉強に差し支えのない程度とは思うが……実際やってみなきゃそこら辺は分かんねぇか。
ひとまずAクラスを覗いてからFクラスに向かうことにした。



二学年の廊下を歩いていると、とある教室を覗き見してる馬鹿を見つけた…不審者扱いされても文句言えねぇぞアレは。

「…オイ、明久なに覗いてんだ。女子の着替えでも見つけたか?」

「し、深羅! ち、違うよ!? 覗きじゃなくて、ちゃんと敵地を偵察しているんだ」

「ほう、ではその偵察で得られた物はあったのか?」

「システムデスクに1人一台ノートパソコンの支給、お菓子食べ放題のドリンクバー付きだったよ!!」

「…まぁ、お前の着眼点はそこだろうなぁ」

Aクラスの設備は下手な漫画喫茶より豪華になっている。これだけ与えられて全く勉強の支障にならない所がAクラスの色んな意味で恐ろしい所でもあるんだが…。
そして相手クラスの戦闘員となる生徒に目を向けるとそこには学年次席の霧島翔子、それと並ぶ実力の持ち主の久保利光、木下秀吉と瓜二つの姉の木下優子などの優等生の面々が居た。
しかし俺はやや疑問を感じた。飛鳥が居ないと言う事に。
司馬飛鳥は帰国子女であり学年主席とも呼ばれる程の頭脳を持っている。その主席がトップクラスのAクラスに居ないなんて事はまず有り得ない事だ。
ひとまずまだ来ていないのだろうと言う結論を頭の中で出し、Fクラスへと足を向けた。
廊下を進んでいくにつれ、設備ランクがどんどんと下がっていっているのが手に取るように分かる。Eクラスでもボロボロの木製の机なのに、Fクラスはどれだけ酷いんだ……。
そして2-Fと書かれた札が落ちかけている部屋の前に来た。壁は剥がれ落ちて壁の内部が丸見えな部分が多々あった。

「…これ、教室か…?」

「…覚悟はしてたけど、まさか外見でここまでとはね…」

意を決してドアと言うボロ襖を開けると卓袱台と座布団があった。しかもかなり老朽化が進んでいる。

「待ってたぞ、我がクラス最終兵器その1と2」

「…雄二、そんなとこでなにやってんの?」

坂本雄二、元神童であり悪鬼羅刹と呼ばれてたり、色々経歴が凄いが頭は切れる。恐らくこのクラスを引っ張っていく存在となるだろう。

「担任の教師が遅れてくるらしいからな、その代わりに教壇に立ってみたところだ」

「その代わりって、雄二が? 何で? 総合得点じゃ深羅の方が断然に」

「途中退席は0点扱いとなる、忘れたか? 俺とお前は途中退席した挙句サボったからな」

「そういうこった、明久。まぁクラス代表はソイツから譲り受けたようなもんだがな。なぁ、司馬」

「いやいや、実質私も0点だから私より適任じゃない? この男女比率も考えてさ」

待て、今コイツ司馬って言ったよな? それにその声……。視線を声の方向に向けると、そこには見慣れた人物が居た。

「やぁ、また会ったね」

司馬飛鳥、とんでも頭脳の持ち主だ。そして頭の中に沢山の疑問が浮かんできたが、一旦それを押さえつけて一つの質問を投げかける。

「…何でお前がここにいる」

「名前を無記入で提出したから、とでも言おうか? それにいつ私がAクラスって言ったっけ?」

「いやいやいや、普通に考えてお前はAクラス以外ありえねぇだろ!? それにんな事するとか頭おかしいんじゃねぇの!?」

「まだまだ頭の回転が足りないね、深羅。それに例外は私だけじゃないよ」

してやったと言わんばかりの表情を浮かべる飛鳥。コレは完全に嵌められた…。
で、その例外は俺か? まぁ元Aクラスの野郎がFクラスの観察処分者とか今までに無かった筈だからある意味初の快挙か。その快挙の商品が観察処分者ってのが泣けるが。

「元ギリギリAクラスランクにAクラス以上が揃ってるんだ、負ける要素が見当たらねぇ…!」

おい、ギリギリAとか言うな。確かにギリギリだったけど、1年の半ばには優子を超えたからな? だからギリギリじゃないんだよ多分きっと。

「そういや雄二、席は決まってるのか?」

「いや、特に決まってないんじゃないか? 好きな場所に座ってるだけだからな」

席の指定すら無いとは最早無法地帯さながらじゃねぇかFクラス。
席と思わしきところを見渡すと保健体育では右に出る者はいないとも言われるムッツリ商会の土屋康太(つちやこうた)、優子と双子の姉弟の木下秀吉(きのしたひでよし)、ドイツからの帰国子女の島田美波(しまだみなみ)などある意味濃い面子が揃っている。いや俺らも十二分に濃いか…。
ふと後ろから気の抜けた睡眠を誘うような声が聞こえた。

「すいません、少し通してもらえますか?」

「おっと、すいません。よし、お前ら席に付け」

どうやら我らがFクラスの担任教師が来たようだった。さて、座る場所は全くもって決まってないんだがな…どうしたものか。
席を探す為に彷徨う事にしたが、突然誰か袖を引っ張られた気がした。はて、誰か俺に睡眠が出来る一番の席を譲ってくれるとかそういうのかな? そんな期待を抱き確認すると飛鳥だった。
なんだ、飯でも集り(たか)に来たかお前。

「隣、空いてるから座らない?」



「…そうするわ。この状況じゃどこに座っても寝るのはバレる」

座布団に卓袱台じゃ身長差云々は関係なくなってくるからな…と言うか綿ほぼ入ってねぇぞこの座布団。

「えー、おはようございます。私がこのFクラス担任の福原慎です。1年間よろしくお願いします」

挨拶した後、黒板に名前を書こうとしたようだがどうやらチョークが無かったらしい。チョークすらねぇのかよ…もう驚きを超えて頭痛がしてくるレベルだぞオイ…。

「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」

これが文月学園、これがFクラスか…。下手をすれば現代社会より厳しい高校生活の2年目が幕を開けた。 

 
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