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東方守勢録

作者:ユーミー
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第三話

「これで大丈夫ね」

「ありがと幽々子。さてと、次は合図ね……」

「武器庫の爆弾に火をつけるんだったよな……で、武器庫ってどこだ?」

「まずは場所の確認ね…このモニターで探しましょうか」


紫の提案で、一同は部屋のいたるところに置かれてあるモニターを確認してまわることにした。見落としのないように目を凝らしながら一つ一つモニターを見ていく。

そんな中、鈴仙はあるモニターをみて足をとめた。


「!?紫さん!このモニターに映ってるのって……」


鈴仙が指をさしながら見ていたモニターには、小さな部屋でひたすら武器を修理しているにとりの姿があった。



「……あの子ね幽々子、あの子はこんな小さい部屋に閉じ込められてたの……?」

「おかしいわね……にとりは開発チームにいるはずなのに、これじゃあまるで雑用係じゃない」

「なにかあったみたいですね……とにかくなんとかして助け出しましょう!」


三人は再度決意を固めると、またモニターを見ながら武器庫を探し始めた。







数分後、二階のモニターを見ていた妹紅が一気に階段を駆け下りてきた。


「あったぞ!こっちだ!」


妹紅は三人を連れて再度二階に上がると、部屋の隅にあった小さいモニターの前に連れて行った。そのモニターには確かに武器庫らしき部屋が写っていた。


「どうかしら……幽々子」

「たぶんこれね。あの奥にあるのが爆発物だったと思うわ」

「わかったわ。じゃあ始めましょうか」


そう言って紫は自身の目の前に小さなスキマを展開させる。


「投げ入れたらすぐに閉じてくれよ」

「わかってるわ」


妹紅は軽く深呼吸をすると、手のひらに小さなホノウを発生させる。そのまま軽く狙いを定めると、スキマの中に思いっきり投げ込んだ。紫はホノウが通過するのを確認し、すぐさまスキマを閉じる。


その数秒後、紫の後ろにあった窓に真っ赤にそまった花火が打ちあがっていた。






「うわ~汚い花火ですね~」

「花火って……何言ってるんですか文さん」

「あはは……さてと、それじゃあ行きますか!」


大きく撃ちあがる花火を見ながら少年はそう呟いた。




「なんの爆発音だ?」


ゲート付近で警備にあたっていた兵士は、不思議そうに真っ赤に燃えあがる建物を見ながらそう呟いた。


「また捕虜共がなにかしでかしたんだろうな……まあ俺には関係ないか」

「それが関係あるんですよ」

「……は?」



聞き覚えのない声が聞こえ、男は変に思いながらも後ろを振り向く。

そこには剣を構えた白髪の少女が殺気を出しながらこっちを睨んでいた。


「きっ貴様!」

「切り捨て御免!」

「うぐっ!?」


妖夢は目にもとまらぬ速さで男の横を通り抜けながら、剣を胴体にぶつけていく。無防備だった男はおなかを抑え込むとゆっくりと倒れていった。


「大丈夫です……みねうちですから……」

「さすが妖夢さん!これなら時代劇にも出れますよ!」


男が気を失ったのを確認すると、物陰に隠れていた俊司たちがゲートに近づいてきた。


「これくらい当然です」

「むー妖夢さんはほんとにジョークが伝わらないですねぇ……」

「まあまあ、今はそれどころじゃないだろ?」

「そうよ。さっさと中に入るわよ!」


そういった霊夢の目は闘志によって輝いていた。


ゲートを通過した俊司たちは攻撃してくる兵士たちを殺さないようにしながら対処し、どんどんと基地の内部へと進攻していった。幸い陽動作戦のこともあってか、警備にあったっていた兵士は少なく、大きな被害を出さずに進攻していた。


「なかなかスムーズね~」

「逆に気味が悪いが……まあ大丈夫だろうな」

「しかし、妙な建物ばっかりですね……紅魔館もなかなか妙でしたが……」

「外の世界はこれが普通だからな」

「そうなんですか、これはネタにつかえそうですね……」

「これもネタにするのか」

「はい。私達にとっては珍しいことなので」


と言いながら手帖にに何かを書き込んでいく文。しかし、その目は手帖ではなくどこか別の場所を向いていた。


「……ちょっといいですか?」

「ん?」

「……そこっ!」


文は葉団扇を構えると、俊司の後方にあった建物の壁に向けて空気の衝撃波をはなった。衝撃波を受けた壁は音を立てながら崩れ始める。


「文?」

「……誰かいますね?殺気が丸見えですよ?」


文は警戒心をむき出しにして建物の方をじーっと見つめる。

数秒後、建物の裏側から物音が聞こえたかと思うと、剣と楯をもった少女がゆっくりと俊司たちの前に現れた。


「さすがですね。かなり殺気をおさていたつもりだったんですが……」

「……どういう風の吹きまわしですか?私は上司に逆らえと言った覚えはありませんよ?」

「はい、教えてもらってません。文さんもたまに逆らってますしね」


少女はそう言いながら剣の先を俊司達に向けながら、殺気に満ちた目で睨みつけてきた。


「ほほ~上司に逆らううえに殺すつもりですか。えらく立派になったものですね~椛……天狗を裏切るつもりですか?」


声のトーンを一気に下げ相手を睨み返す文。しかし、いつもならビビるはずの白狼天狗は、よりいっそう殺気を沸き立たせていた。


「それが命令ですので。それに、今の私は革命軍の一員です。天狗組織の一員ではありません」

「そうですか……なら、本気で行かせてもらいますよ?」


そう言って文は葉団扇を椛に向けてかざすと、彼女に負けないくらいの殺気を出し始めた。


「文!椛さんはおそらく……」

「わかっています。椛はもとからプライドが高いうえにそう簡単に敵に屈することなんてありません。何かをかばうためにアレをつけてるんでしょう」

「……どうするんだ?」

「ここは私に任せてください。俊司さん達は先に行っててもらえますか?」

「……わかった。無理はするなよ」

「大丈夫です」


軽く笑みをこぼしながらそう言う文に向けて、俊司は軽く相槌を返すと妖夢と霊夢を連れて先に進み始めた。椛は奥に進もうとする三人を見ていたが、追いかけようとはしなかった。


「私たちを殺しに来たんですよね?」

「はい」

「なら、俊司さん達を追いかけようとはしないんですか?」

「全員とは言われていません。それに追いかけたところで文さんが止めにかかるでしょう」

「それはそうですが……まあいいでしょう。さてと……覚悟はよろしいですか?」

「それはこっちのセリフですよ文さん」


椛と文はそれぞれ武器を構えると、相手の方をじーっと見つめ警戒心を高め始める。

数秒間の間が一分にも二分にも感じ、辺りが緊張感でつつまれはじめていた。


「しばらく辛抱してくださいね……椛」


文はぼそっとした声でそうつぶやくと、一気に地面を蹴って駆け始めた。





「文……大丈夫だろうか……」

「心配しなくてもいいわよ。天狗は天狗なりにいろんなことを抱えてるんだから」

「それもそうだけどな……」

「そんなことより、何か見えてきたわよ」


そう言って霊夢が指さす方向に大きな建物が見え始めていた。 
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