英雄伝説~西風の絶剣~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第96話 ヨシュアの過去
前書き
ヨシュアやレーヴェが復讐を誓ったという話はオリジナルなのでお願いします。原作ゲームのレーヴェの考えは正直自分の頭では理解しきれなかったので単純に世界に復讐したいという考えにしました。
side:リィン
夢に捕らえられていた俺はラウラのお蔭で現実に戻ることが出来た。そして仲間達と共に魔獣を退けたのだがその時遂に執行者が姿を現したんだ。
「姉さん……本当にルシオラ姉さんなの?」
「あら、暫く会わない内に私の顔を忘れてしまったのかしら?」
「……忘れるわけがないわ。姉さんの顔もその鈴の音も」
どうやらあの女性はシェラザードさんの知り合いのようだ、いや様子を見るにそれ以上の関係なのかもしれない。
「シェラザード、あの女お前の知り合いか?」
「私がまだ遊撃士になる前に世話になっていた旅芸人一座の一員だった人よ、私にとって姉のような存在だったわ」
アガットさんが彼女とシェラザードさんの関係を聞くと、自分が遊撃士になる前に世話になっていた人物だと彼女は答える。
つまり俺にとって団長や西風の皆と同じ存在という訳か。だがこの場に現れたという事は……
「姉さん、貴方は結社の一員なの?」
「そうよ、この場にいるのが何よりの証拠でしょ?」
その一言にシェラザードさんは拳を握って怒りの表情を見せる。
「どうして結社なんかに……団長が死んだ後に一体何があったのよ!」
「そう怒らないで頂戴。ちゃんと説明してあげるわ」
涼しい顔でそう言うルシオラ、彼女は自身の過去を話し始めた。
「貴方も知っていると思うけど団長が死んだあと私達の一座は解散したわ、そして長い旅の末に私はあの方に出会い忠誠を誓い結社に入ったの」
「あの方……一体誰なの、それは?」
「それは貴方にも言えないわ。唯一つ言えるのは結社に所属するほぼすべての人間があの方に忠誠を誓っているわ。レーヴェもヴァルターもブルブランも……考えや目的は違えどあの方の言葉があれば全員が従う程に」
俺はその言葉を聞いて驚いた、レオンハルトやアリアンロードもその人物に忠誠を誓っているということだ。実際にその二人に対峙している俺はあの二人すらも忠誠を誓わせたその人物に警戒心を最大にする。
「もっともあの方は強制はしない、私達の意思を尊重してくれる。だから今回の作戦にも私を参加させてくださったの。そのお蔭で貴女の元気そうな顔を見れたわ」
「その為にあたしやシェラ姉が住んでいるロレントを霧で覆ったり強盗団を雇ったりしたの!?町の皆を怖がらせて許せないわ!」
「強盗団の方は私がやった訳じゃないわ、今回の作戦の責任者が行った事よ。それに町の人だって眠らせただけ、私がその気になれば二度と目覚めない眠りにつかせることだってできた。そうしなかったのだから私が貴方達に危害を加える気が無かったのは明白でしょう?」
「それはそうだけど……」
エステルは怒りの声を上げるが強盗団の件は自分がやった訳ではないと話すルシオラ、それに彼女がその気なら二度と目覚めないようにできたと話す。
「仮にそれが事実でもロレントの町を恐怖に陥れたのは変わらない。ここで拘束させてもらうぞ」
「あら、貴方……なるほど、貴方がそうなのね」
俺がそう言うとルシオラは意外そうな顔を見せた。
「なんだ、その顔は?俺の事を知ってるのか?」
「ええ、知ってるわ。だって貴方、彼のお気に入りなんですもの」
「彼?ブルブランの事か?」
「いえ彼じゃないわ、まあブルブランやヴァルターも貴方を気に入っているみたいだけど……正直可哀想に思うわ、あんな人物に執着されることになるなんて」
「何が言いたいんだ、何を知っている?」
「これ以上話すことは無いわ。実験のデータは取れたしシェラザードにも会えた、私はここで失礼させてもらうわね」
俺の問いには答えず鈴を鳴らすルシオラ、すると大木に埋め込まれていたゴスペルが消えてしまった。
「待ちなさい!」
「シェラザード、いずれまた会えるわ。今日はもう一人のゲストの方を相手してあげて頂戴」
シェラザードさんがルシオラを捕まえようとする、だがそこに投げナイフが飛んできたので彼女は後ろに飛んで回避した。
「殺気を感じなかった、一体どこから……」
「シェラ姉、大丈夫!?」
シェラザードさんに駆け寄るエステル、だがそこに何者かが降り立った。
「えっ……」
だがエステルはおろか俺達もその人物を見て動きを止めてしまう。何故なら……
「ヨシュア……?」
「久しぶりだね、エステル」
その場に現れたのはエステルが探し続けていたヨシュアだったからだ。
「ヨ、ヨシュアなの……本当にヨシュア?」
「うん、僕だよ。エステル」
「ヨシュア……ヨシュア!」
エステルは駆け寄ってヨシュアに抱き着いた。
「ヨシュア……バカ!バカバカ!どれだけ心配したと思ってるのよ!!」
「ごめん、エステル……」
ヨシュアもエステルを抱き返した。唖然としていた俺達だったがハッと思考を変えた俺はエステルの元に駆け寄った。
「エステル、一旦離れるんだ!」
「遅いよ」
だがヨシュアはエステルと共に霧に隠れてしまった、そして一瞬でその姿を消してしまった。
「エステル!?」
「クソッ、なにやってんだ、俺は!」
シェラザードさんが叫びアガットさんが悔しそうに歯ぎしりする。あまりの速さにジンさんですら反応できなかった。アレがヨシュアの本気か……
「エマ!エステルの居場所は分かるか!?」
「はい、魔法でサーチしました。少し遠いですがこの森にいます!」
「なら直ぐにそこに……ッ!?」
エマにエステルの居場所を聞く俺、エマは既に魔法でエステルの居場所を探してくれていたらしく底に向かおうとした。
だがそこに機械人形のような魔獣が複数現れた。
「こいつら、グランセル城の地下にいた奴らと似ているぞ!」
「構えろ!」
ジンさんはその魔獣がグランセル城の地下で見た魔獣に似ていると話す、そして襲い掛かってきた魔獣たちをアガットさんの号令で迎え撃った。
「エステル、待っていてくれ!」
そして俺達はエステルを追うべく魔獣との交戦を開始するのだった。
―――――――――
――――――
―――
side:エステル
「えっ?」
「ここなら誰にも邪魔されない」
あたしは急に別の場所に移動していたことに驚いた。するとあたしを抱きしめていたヨシュアがそっと離れてしまう。
「ヨシュア、駄目ッ!?」
あたしはヨシュアが逃げないようにまた抱き着いた。
「エステル、安心して。僕は逃げないよ」
「嫌!そんなの信じないわ!絶対に離してあげないから!」
「離れてくれないと君の胸が腕に当たってて気になっちゃうんだ……」
「えっ?」
よく見るとあたしはヨシュアの腕を体全体で覆うように捕まえていた、そしてあたしの胸がヨシュアの腕を挟んでて……ッ!
それを実感したあたしは直にヨシュアから離れた。
「ヨシュアのヘンタイ!」
「えぇ……」
あたしが顔を真っ赤にしてそう叫ぶとヨシュアは不服そうな顔でそう呟いた。
「いや君が勢い良く抱き着いてきたんじゃないか」
「だ、だからって胸が当たってるなんて言わなくてもいいじゃない!」
「言わないと気まずいだろう、今から大事な話をしようと思っていたのに……」
微妙な空気が流れる中、ヨシュアが咳払いをして話を続けた。
「とにかくエステル、僕は君と話がしたかったから姿を見せたんだ」
「そ、そうよ!なんであたしの側からいなくなったのよ!」
「それに関しては本当にごめん」
「何がごめんよ!あたしがどんな気持ちでヨシュアを探していたと思ってるの!?」
「あの時は結社に戻れば君に危害は加えないと言われていたんだ。だから僕は姿を消した」
「えっ?」
あたしがヨシュアを攻め立てているとヨシュアがボソリとそう呟いた。
「結社の恐ろしさを思い出した僕は直に行動に移した。じゃなければ君に何をされるか分からなかったんだ」
「じゃあヨシュアはあたしを守るために姿を消したの?」
「うん、そうだよ。僕にとって君は何よりも大切な存在なんだ」
あたしはヨシュアがあたしの為に行動してくれたと知って嬉しくて泣いてしまった。よかった、あたしを嫌いになった訳じゃなかったのね……
「……ならヨシュア、あたしの元に戻ってきて!」
「それは出来ない」
「どうして!?結社が怖いならあたし達が戦うわ!父さんだっているのよ、だから……」
「君は分かっていないんだ、結社という組織の強大さを。たとえ父さんがいても結社には勝てないんだ」
ヨシュアは先程までの優しい雰囲気を消して私の肩を掴んだ。
「エステル、単刀直入に言うよ。僕と一緒に結社に来てほしい」
「なっ!?」
そしてヨシュアの口から出た言葉はあまりにも衝撃的な内容だった。
「アイツに君を迎え入れさせる約束をさせた、君が結社の一員になれば危害を加えないって」
「そ、そんなことできるわけがないじゃない!?」
「どうして?」
「結社は悪い奴らなのよ!そんな奴らの仲間になんてなれないわ!」
「確かに結社は人々に迷惑をかけた、でもリベール王国だって僕達に酷いことをしたんだよ」
「えっ……」
あたしは結社の仲間にならないと言う、でもヨシュアは悲しそうな目でリベール王国を非難した。
「それってどういうことなの?リベール王国がヨシュアに酷いことをした?」
「君はルシオラの幻術の中である村を見たはずだ」
「えっと、確かハーメルって村よね?まさかそこって……」
「そう、僕の生まれ故郷だ。僕が彼女に頼んで幻術で再現してもらったんだ」
あたしはハーメルという村がヨシュアの生まれ故郷だと知って驚いた。
「でもジンさんの話ではハーメルは大規模な土砂崩れで壊滅したって……」
「表向きはそういうシナリオにされているね。でも実際は違う、ハーメルは人間の薄汚い欲望と身勝手な考えによって滅ぼされたんだ……!」
ヨシュアは憎悪の炎を目に宿して声を荒げた。
「一体何があったっていうの?」
「ハーメルはとても平和な村だった。幼い頃の僕は両親こそいなかったけど唯一の肉親であるカリン姉さんと幼馴染のレーヴェと毎日を楽しく生きていた」
「レーヴェってロランス少尉の本名じゃない……!?しかもヨシュアにお姉さんがいたの!?」
「うん、とても優しくて暖かい人だった。君とはまた違ったタイプの人を集める人だったよ」
昔を語るヨシュアの顔はとても優しくて先程までの憎悪など微塵も感じなかったわ。
「でもそんな幸せは唐突に奪われた。ある日村に一人の旅人がやってきたんだ、その旅人は村を周ると一泊して帰っていった。そして次の日に謎の集団に襲撃を受けたんだ」
「襲撃!?」
「皆瞬く間に殺されていった。知り合いのおばさんも食堂を経営していたお兄さんも僕達を気にかけてくれていた村長も幼い子供達も皆……」
「そんな……」
ヨシュアは手から爪が食い込んで血が流れるほど強く拳を握ってそう話す。
「僕も姉さんと一緒に逃げだしたけど直に追手に追いつかれた、そして僕を狙ってそいつは銃を撃った。死を覚悟した僕は目をつぶった、でも痛みは来なかった。目を開けたらそこには胸から血を流す姉さんが横たわっていたんだ」
「まさかヨシュアを庇って……」
「そして再び僕に銃を向けた男は駆け付けたレーヴェに斬られて死んだ。そして僕とレーヴェ以外の人は皆死んだんだ」
あたしも百日戦役の際にお母さんを失った、だからヨシュアの悲痛は痛いほどに分かるの……
「その後僕達は結社に拾われた、そして執行者になった僕とレーヴェは事件の真相を明かすべく調査した。そして悍ましい真実を知ったんだ」
「真実?」
「ハーメルを襲撃したのはエレボニア帝国のある将軍に雇われた猟兵だったんだ。そしてこのハーメルの壊滅があの百日戦役に繋がっていくんだ」
「あんですって……!?」
あたしは次から次へと頭の中に入ってくる情報にパンク寸前だった。
「ど、どういうことなの!?」
「その将軍は自らの地位を上げる為に戦争を起こしたかったんだ、そして目を付けたのがリベール王国だった。将軍はリベール王国の国境に最も近かったハーメルに猟兵を雇って住民を皆殺しにさせたんだ、リベールで使用されている銃弾や軍の旗などを偽装して如何にもリベールがやったと見せかけてね」
「そ、そんな……!」
「そしてエレボニアはこの件でリベールを攻め立てて開戦した、それが百日戦役の始まりだったんだ」
あたしは頭が真っ白になりそうだった。つまりお母さんが死ぬきっかけになったあの百日戦役はその将軍とかいう身勝手な奴のやった自作自演で起こったって事!?
「ゆ、許せない!そいつのせいで戦争が起こってお母さんは死んだって言うの!?こんなのあんまりだわ!人の命を何だと思ってるのよ!」
「僕もエステルと同じ思いだよ」
「で、でも!悪いのはその将軍って奴でしょう?リベール王国はヨシュアに酷いことなんてしていないじゃない!」
「話はここからだ。戦争が始まって3ヵ月後、リベールはエレボニアから休戦の提案を持ち掛けられた。その内容はハーメルの件を表に出さず闇に葬る……つまり無かった事にしろと言ってきたんだ」
「ッ!?」
あたしはそれを聞いて背筋が凍った。馬鹿なあたしでも分かる、それってつまり……
「リベールは……アリシア女王はその案を飲んだって事?」
「その通りだよ、エステル。アリシア女王は僕達を切り捨てたんだ」
あたしは信じられなかった、あんな立派で国を想う人がそんな非情な判断をしただなんて……
「エレボニアからすればこの件が明るみになれば国際非難は免れないし国民からの信頼も失う事になる、そしてリベールも父さんの作戦で帝国に大打撃を与えたとはいえ戦争が続けば強国である帝国には勝てないと分かっていた……その結果ハーメルは事故で壊滅したとされて歴史から抹消された」
「……」
「国を守るトップとしては正しいんだろう、でも僕からすれば決して許せないことだ。僕達の苦しみを、姉さんの死を、ハーメルの悲劇を無かったことにした世界を僕は許せない」
あたしはヨシュアの過去を知って絶句してしまった。今まではヨシュアを説得して連れ戻せばいいと思っていた、でもあたしが思っていた以上にヨシュアの闇は深かったんだ。
「分かっただろう、エステル。僕はもう戻るつもりはない、記憶を思い出した今前のような生活はもう出来ないんだ」
「ヨシュア……」
「でも君だけは別だ、エステル。君だけは危険な目に合わせたくない、だから一緒に来てほしい」
ヨシュアはそう言ってあたしに手を差し出した。
「結社に来ても君が悪いことをしなくてもいいんだ、僕が君を守るから。それにレンだって君を気に入っている、だから君を歓迎してくれるよ。最悪アリアンロードさんに頼んで君を保護してもらえばいい、あの人なら信用できる」
「あたしは……」
あたしはその手を取るべきか悩んでいた。でもその時だった、向こうからこっちに誰かが走ってくる足音が聞こえたの。
「……もう特定されたか、第2柱の言っていた通り優秀な魔女がいるみたいだね」
ヨシュアはあたしから離れると木の上に一瞬で飛び上がった。
「ヨシュア!」
「エステル、どうかしっかり考えて欲しい。そして覚えていて、僕とレーヴェは世界に復讐を成すと誓った事を。カリン姉さんを奪った世界を僕は決して許さない」
ヨシュアはそう言って姿を消してしまった。
「ヨシュア……」
あたしは追いかけることが出来なかった。
「エステル!」
するとそこにリィン君達が駆けつけてくれた。
「エステル、大丈夫?」
「うん、平気よ。シェラ姉」
シェラ姉が心配して声をかけてくれた、あたしは問題無いと答える。
「おいエステル、ヨシュアの奴はどうしたんだ?」
「ヨシュアは行っちゃったわ、あたしと話がしたかったみたいなの」
「話?彼に何か言われたのかい?」
「とりあえず一度ギルドに戻りましょう、何を聞いたのかそこで話すわ」
アガットがヨシュアはいないのかと聞くとあたしはもういないと答える、そしてオリビエがヨシュアとの話について尋ねてきたけどギルドで話すと言ってあたしたちはロレントに戻ることにした。
そしてギルドに着いたあたし達はまず結社について話をする、そしてその後にヨシュアに聞かされた話を皆にも話した。
ただ結社に誘われたっていう話は言わなかった。言えないよ、こんなこと……
「……というわけよ」
あたしの話を聞いた皆は固まってしまっていた。無理もないわよね、あたしだっていまだに信じられないもの。
「そんな……そんな酷いことをして更になかったことにされたんですか!?」
「信じられないわね……」
ティータはショックを受けた様子を見せシェラ姉も動揺を隠せていないようだ。
「とんでもない話を知ってしまったね、これは間違いなく国家機密レベルの内容だ」
「ああ、もしこれを誰かに話したとバレたら一生を牢屋で過ごす事になるだろうな」
オリビエはハーメルの件は国家機密だと話しジンさんも頷いた。あたしでもこれを誰かに話したら拙いっていうのは分かるわ。
「だがあくまでヨシュアの話で得た情報なんでしょ?信憑性はあるの?」
「あたしも分からないわ、でもヨシュアのあんな恐ろしい顔は初めて見た……」
フィーがヨシュアの話は本当の情報かと尋ねてきた。あたしもそれは分からなかったけどヨシュアの憎悪に染まった目を思い出して思わず震えてしまった。
「オリビエさん、貴方はエレボニア帝国の歴史などに精通していると見えます。なにか心当たりは無いですか?」
「……百日戦役が休戦で終わった後、一人の将軍が軍法会議によって処罰を受けたという記録があったね。もしそれがヨシュア君の話に合った人物なら話の信憑性は高いと思う」
リィン君がオリビエに心当たりは無いかと話を聞くと、オリビエは百日戦役後に将軍が一人処罰されたと話した。
「……」
「クローゼさん、大丈夫ですか?」
「あ……はい、すみません」
ずっと黙っていたクローゼに気が付いたエマが心配そうに声をかける、するとクローゼはハッとしたように顔を上げて頭を下げた。
「ごめんなさい、どうしても頭の中が整理できなくて……」
「無理もない、なにせ君の祖母であるアリシア女王陛下も無関係ではないからな」
「あっ……」
クローゼは苦しそうにそう呟くとジンさんは内心を察したのかそう話した。それを聞いたあたしはアリシア女王は帝国との戦争を休戦にするためにハーメルを切り捨てたという話を思い出した。
「リベール王国を守る女王としてお婆様は正しい判断をしたというのは理解してます。でも心の何処かでそのせいでヨシュアさん達のように苦しむ人も出てしまったと思ってしまうんです」
「クローゼ……」
あたしは涙を流すクローゼを見て何も言えなかった。
「……とにかくこの話はここでとどめておきましょう。正直私達が知ってはいけない内容よ、絶対に口外しないように」
「そうね、今は結社の動向について話しを進めましょう」
アイナさんの言葉にシェラ姉が同意する。確かにこれ以上この話をしても何かを得られる訳じゃないし漏洩したら不味いわね。
でもその後の話し合いはとても重い空気にしかならなかったわ。
(あたしはどうしたらいいんだろう……)
頭の中で必死に考えたが答えは出なかった。
ページ上へ戻る