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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第139話 シャルバの恐ろしい野望!勝利の鍵はサイラオーグ!?

 
前書き
 シャルバの体内に出た虫のイメージはジョジョのラバーズです。ただスタンドではなくシャルバを守る白血球みたいなものだと思ってください。 

 
side:リアス


 シャルバと交戦を始めた私達オカルト研究部は、いきなり祐斗とゼノヴィアをシャルバに食べられてしまい酷く動揺していた。


 しかも二人の能力を吸収したのか自由に使いこなすシャルバに苦戦を強いられているの。


「魔剣創造!!」


 地面に大量の魔剣を作り私達を串刺しにしようとするシャルバ、私達はそれを飛んで回避する。


「月牙天衝!!」


 でもそこに左腕をデュランダルに変化させたシャルバが大きな斬撃を放ってきた。私はそれを滅びの魔力で相殺する。


「このっ!祐斗君とゼノヴィアを返しなさい!」


 そこに死角に回り込んでいたイリナがシャルバの後頭部に蹴りを打ち込んだ。でもシャルバの髪が鋭い針に変化してイリナの足を貫いた。


「あぐぁっ……!?」
「無駄だ」


 シャルバの背中がまるでミサイルランチャーのように変化して一斉に発射される、イリナは無理やり足を針から抜いてミサイルから逃げようと縦横無人に動き回って回避しようとしていた。


「すばしっこいハエだ。ならここは私のペットに相手をしてもらうとしよう」


 シャルバはそう言うと私達に向かってレーザーの雨を降らせてきたわ、私達がそれを対処しようとしている間にシャルバは異空間から何かを取り出した。


「あれは黒豹ですか……?」
「もう一つはジェット機のプラモデル……なにをするつもりですの?」


 ギャスパーと朱乃はそれぞれシャルバが取り出したものを怪訝そうにみていた。何かするのは確かだから対処したいんだけどレーザーの雨が邪魔で近づけないわ。


 滅びの魔力で攻撃しようとしたけどそれよりも早くシャルバは行動に移していた。なんと黒豹とジェット機のプラモデルを食べてしまったの。


「現れるがいい、我が僕よ」


 口をモゴモゴとしていたシャルバは口から勢いよくなにかを吐き出した。


「な、なにあれ……!?


 それは黒豹にジェット機の翼が生えたような奇妙な生き物だった。その生き物はイリナに向かって飛んでいく。


「ぐっ、振り切れない……!?」


 イリナも高速で動くがまるでレーダーを装備しているかのように正確にイリナの後を追いかけていく謎の生物、このままでは追いつかれてしまうわ!


「皆、イリナを援護するわよ!」
「はい、時を止めて……えっ?」


 私の指示にギャスパーが神器で黒豹を止めようとする、でもその目の前に緑色の玉のような物体が漂っていた。


「なにこれ、マリモ?」
「私達の周りにも飛んでますね……」


 いつの間にか私達の周りにも飛んでいた緑の玉、私はそれをマリモだと見抜きルフェイも辺りを飛んでいたマリモに目を丸くしていた。


「唯のマリモではない、それは機雷レーダーと合体させた「マリモッティ」だ」
「機雷……ッ!?皆、逃げ……」
「遅い!『マリモッティ・ハイパーボム』!!」


 機雷レーダーと聞いた私達は直に逃げようとしたがそれよりも早くマリモが爆発して私達を巻き込んだ。


「きゃあああっ!?」
「リアスさん!皆!?……この!しつこいのよ!!」


 イリナは追いかけてきていた黒豹を蹴り飛ばそうとするがしなやかな動きで回避されてしまう。


「終わりだ。『黒牙(ブラックファング)』!!」
「がはっ!?」


 イリナを抑えつけた黒豹はその牙をイリナの両肩に食い込ませて地面に叩きつけた。


「ぐっ……」


 そして負傷したイリナの胴体に噛みつくとそのままシャルバの方に連れて行った。


「ご苦労」


 そしてシャルバはその黒豹ごとイリナを飲み込んでしまったの。


「イ、イリナ……!?」


 私達はまた目の前で仲間が食べられてしまったことにショックを隠せずに動揺する。


「ふん、くだらん能力だな」


 するとシャルバの足に黒い靴が出てきて装着された。


「イリナの能力まで……」
「やはり私に一番ふさわしいのは貴様の滅びの魔力だな」
「なんですって?」


 私に視線を向けるシャルバ、私は滅びの魔力という言葉にシャルバの狙いを察した。


「貴方、滅びの魔力が狙いなの?」
「そうとも、私の一番の目的は貴様の持つ滅びの魔力だ。サーゼクス、奴は強い。悔しいがそう認めざるをえん……だから私は考えた、サーゼクスと同じ能力を得れば私の方が強いはずだとな」
「そんな理由で私を狙うの?呆れたわ……例え貴方が滅びの魔力を得たとしても絶対にお兄様には勝てないわ」
「そんなことはない!滅びの魔力があるからサーゼクスは強いのだ!私がそれを得ればサーゼクスを超えられるのは一目瞭然だ!」
「無駄に高い自信ね、哀れにしか思えないわ」


 なるほど、滅びの魔力に拘るのはお兄様に対する対抗心って事ね。呆れたわ。


 だってお兄様が強いのは滅びの魔力を持っているからだけでなく、それを極限まで極めて使いこなす技量よ。滅びの魔力だけで最強になれるのなら今頃私は覇権を取ってるわよ。


 それを理解していない時点でシャルバが強くなれるわけがないわ、きっと最初の頃の私みたいな使い方しかできないわよ。


「いいから私に食われてその滅びの魔力を寄越すがいい!貴様など魔王の妹としてしか価値がないうえに貴族ですらなくなったのだろう?聞いてるぞ、自らグレモリーの名を捨てたとな。なんと愚かしい女だ、あまりにも滑稽で正直大笑いしたぞ。勝ち組であったのに自分でそれを捨ててしまうなど……頭がおかしくなった狂人はここまで哀れだとな!」
「リアス部長を侮辱しないでください!」
「貴方に一体何が分かると言いますの?悪魔だけでなくあらゆる種族に迷惑をかけているくせに偉そうに……!」
「そうです……!貴方には部長を侮辱する権利すらありません!」


 シャルバの私に対する侮辱に小猫と朱乃が顔を歪ませて奴を睨んだ。ギャスパーも怒気を露わにして声を荒げる。


「小猫、朱乃、ギャスパー、私は大丈夫よ。あんな言葉に私は負けないわ」


 私は眷属達に笑みを浮かべるとそう話した。


「そもそも貴方なんかに褒めてもらいたいなんて思ってないし私は自分がした行動を後悔なんてしていないわ、馬鹿にしたければ好きに言えばいい。そもそも冥界を追い出されてテロリスト集団に成り下がった貴方の言葉なんて蚊ほどにも効かないわ」
「な、なんだと!?」


 私の挑発にシャルバは分かりやすく怒りを露わにした。


「もういい、痛みを感じないように食ってやろうと思ったが全身の骨を砕いてから捕食してやる!」


 シャルバは高速で動き回ると砲撃やレーザーで攻撃を仕掛けてきた。


「イオラ!」
「雷神の裁き!」


 ルフェイが爆発の魔法で装甲を剥がして朱乃の雷が奴の全身を打ち抜いた。


「ぐうっ!?」
「そこです!」
「喰らうがいい!」


 痛覚はあるみたいで痛みで動きを止めるシャルバ、その隙に小猫とサイラオーグがシャルバの頭に打撃を打ち込んだ。


「がはっ!?」


 シャルバは地面にめり込むほどの勢いで落ちて砂煙を巻き上げた。


「……」


 私はシャルバの動きを警戒しながらどうするか考える、このまま滅びの魔力で消し去ってしまうのが一番良いのだけど祐斗達も消してしまう恐れがあるのでそれは出来ない。


 まずは何とかしてして皆を救出しないと……


「クソッ……新たな魔王に対してなんてことをするのだ。貴様らは許されないことをしたぞ」
「貴方が魔王になんてなれる訳ないじゃない」
「黙れ!サーゼクスやセラフォルー、他の魔王やあらゆる強者を吸収して私は歴史に名を遺す最強の悪魔になる私に対して無礼にもほどがある!私をコケにした事を後悔するような地獄の苦痛を味合わせて食ってやる!」


 シャルバは怒り狂い起き上がった。


「だったらこっちは煉獄の苦しみを味合わせてやるわ」


 そういって戦闘を再開しようとする私達だったんだけど小猫の形態からメールが届いた際に流れるメロディが鳴った。


「イッセー先輩から?一体何でしょう……!?」


 小猫は目を見開いて驚いていた。


「小猫、一体どうしたの?」
「それが先輩から助けてってメールが……」
「イッセーから?」


 私は小猫からイッセーがSOSを送ってきたと聞いて驚いた。あのイッセーがピンチに陥るなんて……


 でもイッセーは私達を信頼してくれている、そんな彼が助けを呼んだというのならきっと凄いピンチなのだろう。


「小猫、行きなさい」
「で、でも……」
「私達なら大丈夫。貴方はイッセーの正妻なんだから気にしないで彼の元に向かいなさい」


 小猫は一瞬戸惑うが私の言葉と朱乃達のアイコンタクトに決意したようにその場をかけ去っていった。


「皆さん、お願いします!」
「逃がすか!」


 シャルバは小猫に砲撃を打ち込むが私は滅びの魔力で砲弾を打ち消した。


「貴方の相手は私達よ!」
「いいだろう!先に貴様らから食ってやる!」


 大暴れするシャルバに私達は攻撃を放った。


 小猫、イッセーをお願い……!



―――――――――

――――――

―――


side:ジャンヌ


 私はジャンヌダルク、英雄派の一人よ。私達英雄派は殆どが人間たちに迫害されてきた過去を持っているの。


 私もその一人だった、村の連中から壮絶ないじめを受けていたの。その村はジャンヌダルクを魔女だと今でも思っていてそんな村に生まれた私は地獄を見たわ。


 危うく殺されるところを曹操に助けられた私は彼が作った山奥の村で平和に暮らしていた。


 でもそんなある日その村にジョアという人物が訪ねてきた、最初は怪しんでいた曹操だったけどそのジョアと2人だけで話し合いをした結果手を組む事にしたみたいなの。


 ゲオルクは反対したけど彼もジョアと二人で話し合ったら考えを変えて協力することに賛成したみたいだった。まあ私は曹操の言う事なら何でもオッケーなんだけど。


 そしてグルメ細胞という凄い細胞を貰った曹操はもっと強くなってカッコよくなっていた。私もグルメ細胞が欲しいと言ったけど食材を集めたら考えてやるって言われて最初は断られたの。


 曹操の事が好きだった私は彼に追いつくために出されたお題をこなしていった。そしてようやく認められてグルメ細胞を貰うことが出来た。


 そして私は戦いたがっていたジークとヘラクレスを誘って冥界にこっそり乗り込んだ。曹操からは待機していろって言われたんだけど私も曹操の役に立つんだから。


 そして曹操にとって邪魔になりそうな四天王って奴を狙うことにした。丁度一人で大暴れしているゼブラって奴がいたからソイツから殺してやろうとしたの。


 でも今ではその選択を後悔してる。何故なら……


「ボイスバズーカ!!」
「きゃあああっ!?」


 私の神器『聖剣創造』の亜種『断罪の聖龍』で生み出したドラゴンが木っ端みじんに粉砕される。もう何度も破壊されて精神的に消耗してしまった。


「このバケモンが!!」


 ヘラクレスが自身の神器『巨人の悪戯』を禁手させた『超人による悪意の波動』で生み出したミサイルを放つ。でもあの化け物は音速の速度でヘラクレスに接近して顔面を殴りぬいた。


「グガッ……舐めるなぁ!!」


 それに耐えたヘラクレスは化け物を殴って爆発させた。


「どうだ、バケモン退治はヘラクレスの十八番……ッ!?」


 でも化け物には一切効いていなかった。


「なんだ、今のへなちょこパンチは?パンチっていうのはこうやって打ち込むんだよ」


 化け物はそのままヘラクレスを殴り飛ばした。何度も地面をバウンドして地面に叩きつけられたヘラクレスは完全に白目を向いていた。


「はぁっ!」


 ジークが神器『龍の手』の亜種『阿修羅と魔龍の宴』によって新たに生やした腕に魔剣を持たせて化け物に凄まじい連撃を放つ。


 ジークが持つ魔剣は『魔剣帝グラム』を始めとして『バルムンク』、『ノートゥング』、『ディルヴィング』、『ダインスレイブ』という有名な物ばかりだ。


 それを6本の腕で持ち一度に無数の攻撃を放つジークは『魔帝ジーク』という異名を持ち私達の中でも曹操に次いでの実力者だ。


「なまっちょろい速度だな」
「ははっ、恐ろしいな……!」


 だがゼブラとかいう化け物はそれを音速の速度で動きてすべて回避していく。見た目は鈍重で二武双にしか見えないのにまるで風を受けた鳥の羽のように軽やかに回避していく。


「80%……ビートパンチ」


 化け物の放った拳がジークに向かう、ジークはそれを魔剣で受けようとしたがあまりの威力に4本の腕が粉々に砕けてしまい吹き飛ばされてしまった。


 辛うじて自身の本当の腕は二つ共無事のようだがボロボロになっていた。


「これが四天王の力……想像以上だ。これなら僕もあの力を存分に使えそうだな!」


 ジークはボロボロになりながらも嬉しそうに笑みを浮かべる、そして懐から箱のようなアイテムを取り出して開けようとしたが……


「それは駄目だ、ジーク」
「なっ、曹操!?」


 なんとそこに曹操が現れてジークの手を掴んだの。曹操は任務でここにはいないはずなのにどうしているの!?


「案の定力を試したいがために四天王に喧嘩を吹っ掛けたみたいだね。多少のやんちゃは目をつぶるけどそれは駄目だ。まだ馴染んでいないだろう?確実に暴走する」
「す、済まない。つい興奮して……」


 ジークも曹操には逆らえないので冷や汗を流しながら箱をしまった。


「ボイスバースト!!」


 化け物の口から凄まじい音の砲弾が曹操達に放たれた。


「これが四天王ゼブラか、直接対峙すると身震いが止まらないね」


 曹操は黄昏の聖槍を出すと槍を振るい音の弾丸をかき消した、そして一瞬で化け物の懐に入り込んだ。


「覇極流・千峰塵!!」


 そして目にもたまらぬ速さですさまじい突きの嵐を化け物に放ったわ、これは決まったわね!


「音壁!」


 でも化け物は音の壁で千峰塵を凌いでしまった。ああん、惜しいわ。


(コイツ、唯の雑魚じゃねえな……)


 化け物は一旦足を止めて曹操を見ていた。ふふん、私の曹操に恐れをなしたのね!流石私のダーリンだわ!


「ジャンヌ、ジーク。気絶したヘラクレスを連れて離脱しろ、説教はその後だ」
「済まないが頼む」
「曹操、頑張ってね!帰ってきたらキスしてあげるわ!」
「それは遠慮しておこう」
「ああん、いけずなんだから♡」


 私は曹操にこの場を任せてこの場を逃げ出した。ジークは再び腕を6本にしてヘラクレスを抱えてくれる。


「俺の前でチョーシに乗っておいて逃げられると思ってんのか?」
「おっと、君の相手は僕だよ」


 私達を追撃しようとした化け物の前に曹操が立ちふさがった。


「僕の仲間が無礼を働いてすまなかったね。本来君の襲撃なんてする予定は無かったんだ」
「どうでもいい、てめぇもチョーシに乗ってやがるからぶっ殺す」
「凄い圧だね、でもあの方の方が恐ろしいよ」


 そして曹操と化け物が戦闘を開始したわ。頑張って、曹操!


―――――――――

――――――

―――

side:サイラオーグ

 
 リアス達と共にシャルバ・ベルゼブブと交戦を続ける俺、だがこの戦闘が恐ろしくハイレベルなものだった。


「焼き焦がしてやる!」


 胸から熱戦を放ち俺達を攻撃するシャルバ、俺は地面を砕き瓦礫を盾にしてそれを防ぐがリアス達は回避せずに突っ込んでいった。


 無謀とも思える行動だったがリアス達はまるで攻撃が何処から来るのか先読みしている動きでシャルバの攻撃を的確に回避していく。


「はっ!」


 リアスの放った滅びの魔力がシャルバの右腕を消し去った。だが直にそこから新しい腕が生えてそれが剣に変化する。


「魔剣創造!」


 そして地面に剣を突き立てると様々な属性の魔剣がリアス達を襲った。


「霹靂一閃!」


 姫島朱乃が稲妻のごとく速さでそれを回避してシャルバの右の脇腹を大きく槍で切り裂いた。だがそれも直ぐに再生してしまう。


「なんて再生速度なの!?これじゃあ決定打にならないわ!」
「恐らく全身を一気に消し去らなければ効果は無いのでしょうが……」
「そんな事をしたら取り込まれた祐斗先輩達が死んじゃいますぅ!」


 リアスはシャルバの再生能力に舌打ちをして姫島がシャルバを倒すのは全身を一気に消し去る必要があると推測する。


 だがウラディの言う通り奴の体内に取り込まれた者達も死んでしまう可能性があるのでリアスはそれが出来ないのだろう。


「はははっ、そんなに眷属が大事か?いやお前はもう王ですらなかったな。下劣な転生悪魔などさっさと見捨てれば良かろうに……それに私の体内には敵対するエクソシストも取り込んでいるのだぞ?デュランダル使いなど邪魔でしかないだろう」
「勝手な事を言わないで頂戴!祐斗もゼノヴィアもイリナも皆私の大切な仲間なのよ!貴方の価値観で物事を言わないで!」
「哀れな……悪魔に友情や愛情など不要だ。絶対的な力こそが悪魔に必要なのだ」
「なら貴方にはそれすらないわね、悪魔として情けない」
「なんだと!?」


 リアスを侮辱するシャルバは逆にリアスに挑発されて激怒する。そしてリアスに向かって攻撃を激しくした。


(今なら俺を見ていない、チャンスだ!)


 俺はシャルバの意識が完全にリアスに向いているのに気が付いて奴に悟られないように接近する。


「はあっ!」


 そしてがら空きになっていた背中に正拳を叩き込んだ、奴の武装や鋼の羽にヒビが入っていく。


「ぐうっ!?いつの間に……失せろ!」


 シャルバは巨大なハンマーを作り出すと俺に叩きつけてきた。俺は腕を×の字に組んで防御するがあまりの衝撃に吹き飛ばされてしまった。


「サイラオーグ!」
「ふん、バアル家の失敗作が私に触れるでない。汚らわしい劣等悪魔の指紋がついてしまうではないか」
「よくもサイラオーグを!許さないわ!」


 俺は地面を転がりながら何とか受け身を取る。だが分かってはいたが俺はこの戦いについていくだけで精一杯だ、空中を高速で駆け巡りながら攻防を続けるリアスとシャルバを見てそう思ってしまった。


(……いや弱気になるな。俺にもできる事はあるはずだ)


 俺は弱気になる心に喝を入れて気合を入れる。昔から劣等感を感じていたのは事実、だからこそ俺は努力した。


 その努力を疑うことなど言語道断、そんなことで諦めたりしたら母上に申し訳が立たないからな。


「サイラオーグさん、大丈夫ですか?」
「君は……」
「私はルフェイ・ペンドラゴンといいます。イッセー師匠の弟子です」
「兵藤一誠の?」


 すると俺の側に魔女の少女が駆け寄ってきた、どうやらあの赤龍帝の弟子らしい。


「どうしたんだ、もしかして俺を心配してくれたのか?なら平気だ、母から頑丈な体を貰っているからな」
「えっとそれもあるんですが実はサイラオーグさんにお願いがあって……」
「俺に頼み事?一体なんだ?」
「実は祐斗さん達を助ける方法を思いついたのですがそれをサイラオーグさんにやっていただきたいんです。シャルバは今リアスさん達が抑えています、その間に作戦を説明しますね」


 ペンドラゴンから言われたのは取り込まれた木場達を助け出すという内容だった。


「木場祐斗達は生きているのか?」
「はい、魔法でシャルバの体内を探っていたんですが確かに生命反応を感じたんです。皆はまだ生きています」
「そうか、それは良かった。なら早く助け出さないといけないな、どうすればいい?」
「まずは魔法でサイラオーグさんを小さくしますがいいですか?」


 俺が作戦の内容を聞くとペンドラゴンは俺を小さくしたいと言う。


「小さく……もしやシャルバの体内に入り込んで木場達を助け出すのか?」
「はい、それしか方法は無いんです」
「だがなぜ俺なんだ?リアスの方が上手くいきそうに思うが……」
「えっと……失礼ですがこのメンバーの中でシャルバが一番警戒していないのは恐らく貴方なんです」
「なるほど、そういう事か」


 ペンドラゴンは言いにくそうにしていたが俺は彼女が何を言いたいのか察した。バアル家の欠陥品と思ている俺など眼中にないのだろうな。


「すみません、失礼な事を言ってしまって……」
「構わない、実際この戦いについていくだけで精一杯だったからな。それに俺が弱いからできる事もあるなら寧ろ役に立てて嬉しい」
「貴方は強い人なんですね、やはり貴方しか適任者はいません」


 俺の目を見たペンドラゴンはコクッと頷いた。


 そして俺はペンドラゴンに魔法をかけてもらい体を小さくした。


「生命を維持する魔法もかけていますのでシャルバの体内に入っても暫くは大丈夫のはずです。もし祐斗さん達を見つけられたらこのフロルの風で脱出してください」
「タイミングはどうすればいい?」
「私達がシャルバの動きを止めます。合図をしたら突っ込んでください」
「分かった」


 俺はそういってフロルの風というアイテムを貰い待機する。ペンドラゴンがリアス達と合流してシャルバと戦いを再開する。


「チッ、うっとうしい奴らめ。ならばこちらも数を揃えるとしよう」


 シャルバはそう言うと異空間から複数の生き物や武器の模型を食べると咀嚼していく、そして勢いよく吐き出す。


 奴の口から出てきたそれらは動物と兵器が融合したような生き物だった。


「お呼びですか、シャルバ様」
「早々にカタを付けよう」
「ウホッ」
「……」
「スー、ライ、チリ、マー、よくぞ来た。奴らを抑えろ」
『ハッ!』


 ライオンに車輪と蛇が生えた生き物、ペリカンに戦艦などを組み合わせた生き物、武装したゴリラのような生き物、そしてカワウソがイスになったような生き物が現れてリアス達に襲い掛かった。


 ……いや待て!上の3体は分かるがカワウソのような生き物は一体なんだ!?なんというか戦えるようには見えないのだが!?


「女!お前の相手は俺だ!」
「望むところですわ!」


 スーと呼ばれたライオンのような生き物が姫島に襲い掛かった。姫島は奴の爪を金の棍で受けとめる。


「蠅のように飛び回る奴め、撃ち落としてやる!」
「女の子に蠅って失礼ですよ!」


 ペンドラゴンを狙ってライと呼ばれたペリカンのような生き物が砲撃を放つ、ペンドラゴンは箒に乗ってそれを回避する。


「ウホッ!」
「ヒイィィッ!一番大きいのが僕の所に来ましたぁ!!」


 チリと呼ばれたゴリラのような生物がウラディに拳を振るう、だがウラディの背中から出てきた黄色い人のような存在がそれをガードした。


「……」
「……」


 そして俺の側にはマーと呼ばれたカワウソのような生き物がカタカタと腕のような物を鳴らして鎮座していた。


 まったく敵意を感じないしシャルバはこんな生き物を生み出したんだ?流石に俺を舐め過ぎではないだろうか。


 まあいい、俺は今体が小さくなっているし襲ってこないなら放っておこう。俺はそう思いリアスの方に目を向ける。


「さあ、お前の子分たちはもう動けないぞ!大人しく私に食われるがいい!」
「朱乃達は子分じゃないって言ってるでしょうが!」


 大口を開けてリアスを食おうとするシャルバ、リアスは両手で大口を抑えて食われるのを防ぐ。


「これで口は閉じれないでしょう!」
「馬鹿め、目の前ががら空きだ!」


 するとシャルバの舌が大砲のような形に変化したのだ。


「なんですって!?」
「舌キャノン!!」


 そしてリアス目掛けて砲撃を放つシャルバ、リアスはそれをマトモに受けてしまった。


「はははっ!どうだ、思い知ったか!」


 勝ち誇ったように笑うシャルバ、だが煙が晴れると傷だらけのリアスが不敵な笑みを浮かべていた。


「あら、もう終わりなの?全然大したことないわね」
「貴様……ッ!!」

 
 リアスの挑発に簡単にのってしまうシャルバ、眉間に青筋を浮かべて更に砲撃するがリアスはまったく答えなかった。


「はぁ……はぁ……!何故だ!何故倒れない!決して効いてないわけではないはずだ!」
「そうね、痛いし苦しいわ。でも貴方の攻撃は私の魂には決して届かない。好きなだけ攻撃すればいいわ、私は絶対に倒れない……!」
「うっ……!?」


 リアスの鋭い目つきにシャルバは怯えて後ずさった。リアス、あそこまでの覇気を出すとは……


「今よ!小猫、貴方の技を借りるわ!」


 リアスはシャルバの口を両手で掴みそのまま担ぎ上げた、そして勢いよく落下して地面に着地した。


「口裂けリアスバスター!」
「がはっ!?」


 リアスの放った技がシャルバの口を大きく引き裂いた。シャルバが再生能力を持っていなかったら悲惨な死体になっていたな……


「サイラオーグ、今よ!」
「ッ!」


 リアスの言葉に俺はハッとなりすぐさま行動を移した。高速で動きシャルバの口に侵入して奴の体内を進んでいく。


「ここは胃か?」


 体内を奥に進むと広い空間に出た、そして辺りを見渡していると木場祐斗が肉の繭のようなものに閉じ込められているのを見つけた。


「木場!それにエスソシスト達も一緒か!」


 すぐ近くにエクソシストの二人も同じように肉の繭に閉じ込められているのを見つけた。早く助け出さなければ!


 俺はそう思い彼らに駆け寄ろうとする、だが肉の地面が盛り上がり虫のような生き物の形に変化した。


「むっ!?」
「キシャァァァッ!」
「マッハパンチ!」
「ゴビャッ!?」


 襲い掛かってきた虫を拳で打ち砕いた。


「なんだ、大したことは……!?」


 あっさりと倒せたことに拍子抜けする俺、だが再び肉の地面から虫が現れて襲い掛かってきた。


「はあっ!!」


 回し蹴りで虫を粉々に砕くが、すぐにまた新たな虫が現れた。しかもその速度が尋常ではなく次々と虫が現れて俺は取り囲まれていった。


「くそっ、強さは大したことは無いが数が多すぎる!」


 パンチや蹴りで虫を倒していくが、俺が倒す速度よりも現れる速度の方が早いので追い込まれてしまう。


「離せ!この!」


 虫がまとわりついてきて俺を動けなくする、そのまま数で押しつぶそうと集まってきた。


「ぐう……このままでは押しつぶされてしまう!」


 逃げようにも数が多すぎて体が動かせない、このまま死んでしまうのか……?


「……いや、俺はまだ死ねない!まだ母上との約束を叶えていないのだ!それなのに死んでたまるか!」


 眠り続ける母上に誓った約束、それは魔王になるという夢だ。


 俺は必ず魔王になると誓ったのだ、その誓いを果たしていないのに死ぬわけにはいかない!


『……サイラオーグ様』
「そ、その声はまさかレグルスか!?」


 その時だった、俺の脳内に眷属の一人であるレグルスの声が聞こえてきたんだ。


 レグルスは『獅子王の戦斧』という意思を持った神滅具であり以前の主を失い彷徨っていた所を偶然出会った俺が眷属に引き入れたのだ。


 俺の眷属たちは万が一を考えて別室に待機させていたがどうしてレグルスの声が聞こえるんだ?


「レグルス……なのか?何処にいるんだ」
『サイラオーグ様、何故か分からないのですが貴方の危機を感じ取り何とかできないかと思っていると貴方の力を側に感じた私は声をかけていたら繋がったのです』
「そ、そうか!不思議な事もある物だな……!」
『サイラオーグ様、どうか私の名を叫んでください!確証は無いのですがそうすれば貴方の力になれる気がするのです!』
「お前の名をか……」


 意識が朦朧としてきた俺はレグルスの名を叫んだ。


「来い、レグルス……いや『獅子王の戦斧』!!」


 俺がそう叫ぶとまばゆい光が集まってそこにレグルスが現れた。レグルスは唸り声を上げると虫たちを蹴散らしていく。


「ご無事ですか、サイラオーグ様!」
「レグルス、済まない、助かったぞ。だがお前こんな事が出来たのか?」
「私にも分からないのです。ただサイラオーグ様の諦めない強い思いが私を呼んだのかもしれません」
「神器の可能性という奴か……」


 俺は奇跡に助けられたのだと思い母上や魔王様に感謝した。悪魔は神には祈らないからな。


「レグルスよ、アレをやるぞ!」
「承知いたしました」
「禁手!『獅子王の剛皮』!!」


 俺がそう叫ぶとレグルスの体が光になり俺を包んでいく、そして光が晴れるとそこには黄金の鎧を纏った俺の姿があった。


「キシャアアアッ!」


 虫たちが凄まじい数で襲い掛かってきたが俺はそれら全てを拳で打ち砕いていった。


「今ならあの技が出来るかもしれん!行くぞ!」


 俺は一気に勝負を決める為に修行中の技を使う事を決意した。まだ未完成だったが今ならそれを完成させることが出来るかもしれんのだ!


 そんな気迫と共に腕に力を込めて一気に振りぬいた。


「フラッシュ・ピストン・マッハパンチ!!」


 0.7秒間の間に10発のパンチを放ち虫たちを一気に粉々に打ち砕いた。


「よし、やったぞ!」


 俺は今の内に木場祐斗達を閉じ込めていた肉の繭をシャルバの体内から引きはがそうとする。


「ぐううぅ……はあぁぁぁっ!!」


 中々に固かったが全力を込めて引っこ抜いてやった。3人を救出すると奴の体内が震え始める。


「嫌な予感がするな、直ぐに脱出しよう」


 俺はペンドラゴンに貰ったフロルの風を使いシャルバの体内から脱出した。


「なんだ、腹が膨らんで……ごはぁぁぁぁっ!?」
「きゃあっ!?何が起こったの!?」


 俺は木場祐斗達と共にシャルバの口から勢いよく飛び出した。すると俺にかかっていた魔法が解けて体の大きさが元に戻った。


「リアス、お前の仲間達は無事に助け出したぞ!」
「サイラオーグ、ありがとう!」


 リアスが目から涙を浮かべて俺に礼を言ってくれた、力になれたのなら良かったよ。


「ぐうう……なんだ、体が熱い!?」


 シャルバは体を抑え込んで苦しそうに顔を歪めていた。


「シャルバ様!?今お側に……」
「よそ見なんて迂闊ですね!『フィンガーフレアボムズ』!!」
「しまっ……!?」


 気を取られていたライがペンドラゴンの放った3発の巨大な火球を指から放ち焼き尽くした。


「うーん、3発までしか撃てませんでしたか。まだまだですね」


 ペンドラゴンは不服そうにそう呟いた。


「ライ!?クソッ、こうなったら一気に勝負を決める!」


 仲間がやられたことに焦ったスーは姫島に向けて両手を合わせた。


「女!この俺の『獅子先尋砲』を喰らって地獄に落ちろ!」
「遅いですわ」


 スーは手の平にエネルギーを集めていくがそれよりも早く姫島が動いた。


「2億V『雷神(アマル)』!!」
「なっ!?」


 姫島の全身から凄まじい電撃が放出されてそれが神の如き大男に変化した。


「終わりですわ」
「ま、待て!原作では不発だったんだからせめて技くらい出させてくれても……!!」
「何を言ってるのか分かりませんわね」


 姫島の作り上げた雷神の拳がスーを叩き潰した。


「ウホッ!」
「グッ!?」


 チリの放った拳がウラディの顔面に直撃した。ウラディの体格では致命傷になりうる一撃だがなんとウラディはそれを耐えた。


「こ、こんなへなちょこパンチなんかよりイッセー先輩のパンチの方がよっぽど痛いですぅ!」


 ウラディが操る黄色の男がチリの片腕を蹴りで粉砕した。


「ウホッ!?」
「これで終わりです!」


 そしてウラディは相手のもう片腕を引きちぎり頭を引っこ抜いて最後に胴体を手刀で真っ二つにしてしまった。


「流石はリアスの仲間達だ」


 あっという間に勝利を掴んだ彼らに拍手を送った。


「さあ、これで遠慮なく撃てるわね!」


 リアスは全身から滅びの魔力を流しながらそれを両手に集めていく。


「あ、ありえない!私は真の魔王になる存在だぞ!?それをこんな小娘達に……!?」
「消えなさい!紅き滅殺の魔閃光!!」
「こんな小娘なんぞにぃぃぃぃぃぃっ!!?」


 シャルバはリアスの放った極太の滅びの魔力に飲み込まれて消えていった。


「……ふふっ、世界は広いな」


 俺も強くなったつもりでいたがまだまだ世界の広さを見て自然を笑みを浮かべていた。諦めなど浮かばない、むしろ必ずあそこまで行ってやると心に誓うのだった。


「サイラオーグ、祐斗達は無事なの?」
「ああ、息はしている」
「でも一応与作さんに見てもらった方が良いわね。私達も消耗したし万全の状態にしてイッセーを追いましょう」
「分かった」


 俺達は一度安全な場所に戻ることにした。


「そういえば貴方のその黄金の鎧ってなんなの?」
「それはまた後で話すよ」


 俺達はそう言ってその場を離れた。


「……」


 だが俺達はこの時気が付いていなかった。シャルバが死ぬ瞬間に胸に手を刺して何かを取り出した事、そしてそれを残っていたマーに投げつけていたことを……


 
 

 
後書き
 小猫です。先輩の元に必死でかける私、直ぐに向かうので待っていてくださいね!でもいよいよディオドラとの直接対決が近づいていますね、この私も先輩が勝つ瞬間を見せてもらいます。


 次回第140話『遂に勝負……と言う名のボコボコタイム!ディオドラの地獄めぐり!』で会いましょうね。


 次回も美味しくいただきます……にゃん♪ 
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