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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第140話 遂に勝負……と言う名のボコボコタイム!ディオドラの地獄めぐり!

 
前書き
 ディオドラは未熟なので第3形態までしか変身できませんのでお願いします。 

 
side:小猫


 イッセー先輩からのSOSを受け取った私は仙術と先輩の匂いを辿って彼を探しています。イッセー先輩の匂い限定で私は何処にいても嗅げるので間違いなくこちらにいます。


「先輩!」


 そして床に倒れている先輩を発見した私は直に駆けよって先輩を抱き起こしました、意識はなく酷く顔色が悪いです。


「ドライグ、一体何があったんですか?」
『実はな……』


 先輩は意識が無かったため私はドライグから事情を聴くことにしました。


 彼の話によると先輩はあのフリードと戦ったそうで以前のフリードからは想像もできないほどパワーアップしていたらしく、先輩はオートファジーを使うまでになってしまったそうです。


「なら直ぐにレベルの高い美味い食材を食べさせないと……」


 私は念のために持ってきていた未完成のセンチュリースープの入った保温性の高い水筒にメルクの星屑を入れてかき混ぜます。そしてそれをゆっくり先輩の口に注ぎました。


「イッセー先輩、元気になってください……」


 私は彼の頭を持ち上げてスープを飲み込ませました。すると弱っていた先輩の顔色が見る見るうちに良くなっていきます。


「こ、この味はメルクの星屑……いやほのかに小猫ちゃんのセンチュリースープの味もする。来てくれたんだな、小猫ちゃん」
「先輩!」


 目を覚ました先輩に私は思わず抱き着いてしまいました。


「先輩、もう動いて大丈夫なんですか?」
「ああ、小猫ちゃんのセンチュリースープのお蔭で完全復活だ。危うく死ぬところだったしマジでありがとうな」
「そんな……メルクの星屑を入れたのが良かったんですよ」
「いやそんなことはないよ。それにセンチュリースープの味、完全にメルクの星屑に支配されてなかったんだ。もしかしたらスープとの相性が良いのかもしれない」
「そうなんですか?ならメモしておきますね」


 貴重な意見を貰えたので私はメモを書きました。


「それにしても驚きました。まさかあのフリードがイッセー先輩をここまで追い詰めるなんて……」
「文字通り命を捨てた特攻だった、あいつの事は今でも嫌いだけどあの執念だけは凄い物だと思ったよ」


 イッセー先輩はフリードとの戦いを思い出して物思いにふけっていました。


「だがもう俺達の邪魔をする奴はいない、後はディオドラだけだ」
「先輩、私も一緒についていっていいですか?アーシアさんは私にとっても大切な親友で家族ですので」
「ああ、一緒に行こう」
「はい!」


 私はイッセー先輩と一緒にアーシアさんを助けに向かうことにしました。シャルバと戦ってるリアス部長達の事も気になりますがそっちの方は皆を信じて先に進むことにします。


「なるほど、リアスさん達はシャルバと戦ってるのか。祐斗達が心配だがリアスさんや皆なら何とかしてくれるはずだ」
「はい、私達は自分に出来る事をしましょう」


 私はディオドラの元に向かう道中でこっちで何があったのかを先輩に報告しています。


「そうだ、小猫ちゃん。フリードに教えてもらったんだがD×Dでグルメ細胞を禍の団などに渡した奴の名前が分かったんだ」
「本当ですか!?一体どんな名前なんですか?」
「ジョアっていう名前らしいんだけど……」
「ジョア?それってまさか……」


 先輩に教えてもらった名前に聞き覚えがあった私は思わず足を止めてしまいました。


「小猫ちゃん、知ってるのか?」
「前に節乃さんとクッキングフェステバルの優勝者について話を聞いていたんですがそこに名前が出た料理人の一人がジョアっていうものだったんです」
「クッキングフェステバル……」
「はい。でもそのジョアって人は不正が発覚したみたいで優勝を取り消されたようなんです、そしてその後は姿を消してしまい表舞台では見なくなったと言われています」
「果たして本人なのか名前だけ借りた別人なのか……とにかくこの件が終わったら直ぐに親父に報告だな」


 ジョアの事も気になりますがまずはアーシアさんを助け出さないといけませんからね。私達は再びディオドラとアーシアさんのいる場所に向かって走り始めます。


 数分走っていくと私達の目の前にまるでゲームに出てくる魔王が潜む部屋に繋がる大きくて禍々しい扉が現れました。


「如何にもって感じの扉だな。さしずめディオドラはお姫様を攫った魔王って所か?」
「いえ物語序盤に出てくる盗賊団などのボス位置ですよ、あんな奴は」


 イッセー先輩は腕をグルグルと回して私は拳を握ります。


 次の瞬間私とイッセー先輩が扉にパンチを打ち込んで吹っ飛ばしました。


「おやおや、なんとも下品な入り方だ。流石は粗暴で薄汚い最低最悪の生き物であるドラゴンを宿したカスな下等人間の事はある」


 私達が部屋の中に入ると、大きな玉座に座っていたディオドラが先輩を馬鹿にするようにそう吐き捨てます。


「ディオドラ、俺にボコされる前に二つ聞かせろ。まず一つ、どうしてアーシアから毒物の匂いがするんだ?」
「何を言っているんだい?おかしなことを言って僕を混乱させるつもりかい?」
「とぼけるな!ここに来る前からずっとアーシアから毒性のある物質の匂いがしていたんだ、お前が何かしたんだろう!」


 イッセー先輩はそういって怒りの表情を見せます。確かに私の鼻にも毒物の放つ匂いを感じ取りました。


 仙術で見て見ましたがアーシアさんの体内を流れる氣が凄く不安定です。気を失ってるのか私達がいても反応しません。


「まったく何もしていないと言っているのに……ドラゴンは妄言を吐く生き物だったのか、勉強になったよ」


 それに対してディオドラは本当に何を言っているのか分からないと言った様子で首を傾げました。


「そもそも薬漬けなんていうのは最後のお楽しみに取っておくものさ。まずは聖女達の尊厳を徹底的に破壊して僕無しではいられないように依存させる、君を半殺しにしたら君の目の前でアーシアを調教してあげるよ」
「ふざけたこと言いやがって……お前のために戦った眷属達もそうやって言いなりにしたのかよ?」
「ああ、あの役立たず共か。もう飽きてきていたし処分してくれて助かったよ」
「てめぇ……」


 ディオドラの言葉にイッセー先輩は怒りを強めます、命を弄んで玩具にするような奴は私も許せません!


「……もう一つの質問だ、お前ジョアって名前を知ってるか?」
「ジョア?知らないなぁ、そんな奴は」


 イッセー先輩はジョアについて聞きますがディオドラはとぼけた様子でそう言います。本当に知らないのか嘘をついてるのかは分かりません、ですので……


「まあいいさ、お前をボコして情報を吐かせてやる」


 先輩は拳を合わせてポキポキと鳴らしながら前に出ました。


「イッセー先輩、私もやらせてください!」
「小猫ちゃん、悪いが最初は俺だけにやらせて欲しい。君もあいつをぶん殴ってやりたいだろうが頼む」
「……分かりました」


 私もディオドラをぶん殴ってやりたかったですがまずはイッセー先輩に譲りました。


「さあ、始めようぜ。ディオドラ」
「そっちの貧相な体の猫女も一緒じゃなくていいのかい?僕に無残に敗北した後みじめな言い訳なんて聞きたくないし助っ人を呼んでもいいんだよ?」
「お前、とうとう俺を本気でキレさせたな。アーシアの件だけでも怒りが零れる寸前だったのに小猫ちゃんまで侮辱しやがって……殺す」


 遂に額に青筋を浮かべるイッセー先輩、私も貧相と言われてキレそうになりましたが先輩の怒りを感じて落ち着いてしまいました。


 いざとなったら私が止めないといけないかもしれませんね……!


「やっとこの日が来た!薄汚い蜥蜴からアーシアを取り戻せる日が……!ずっとずっと待っていたんだよ、この日をねぇ!」


 ディオドラはテンションが上がったのか勢いよく玉座から立ち上がると目をカッと開きました。


「さあ見せてあげるよ、赤龍帝!本当の恐怖って奴を!!」


 するとディオドラの体に異変が起こりました。筋肉が盛り上がっていき角や尻尾も生えて大きく……


「ふんっ」
「がはっ!?」


 ですがその最中にイッセー先輩が一瞬でディオドラに接近すると腹部に強烈な一撃を叩き込みました。


 それをまともに喰らったディオドラはなさけない声と共に玉座を壊して後方に吹っ飛んでいきます。


「ごほっ!がはっ……ひ、卑怯だ!あがっ!?」
「なにが卑怯だ、戦いはもう始まってるんだぜ?」


 卑怯と言って立ち上がろうとするディオドラ、そこに間髪入れずイッセー先輩がその顎に膝蹴りを打ち込みます。


 そしてエルボーで肩を攻撃して両手のチョップで首を打ちます、そのまま挟み込んで後ろに投げ飛ばすと落ちてきた顔を三日月蹴りで蹴りぬきました。


 ディオドラは地面を滑るように転がっていきピクピクと痙攣していました。


「なんだ、これじゃ歯ごたえが無さすぎるな。弱い者いじめみたいでスッキリしないし変身していいぞ」


 イッセー先輩は冷たい眼差しでそう言いました。いつもの先輩ならもうカタを付けようとしますが今日はしませんね。


 間違いなくディオドラの心をへし折る気なんでしょうね、ディオドラも想像以上に頑丈ですしもう少しボコっても大丈夫でしょうし。


「舐めやがって……後悔させてやるぞ!」


 確かに先輩はあいつを舐めてますね、ディオドラが弱すぎるから当然ですけど。


 そういえばシャチは賢いから獲物をいたぶって遊んだりすることがあるって聞いたことがありますけどこれもある意味そういう物なのかもしれません。


 でも同情はしませんよ、ドラゴンの逆鱗を踏みぬいたのはディオドラですから。


「うおおおっ!!」


 先輩のお情けで変身したディオドラはまるで前に先輩の家で読んだ漫画に出てきた宇宙の帝王の第2形態のような姿になりました。恐ろしさは微塵も感じませんが。


「ど、どうだ!これがグルメ細胞を得た僕の姿だ!」
「へぇ、大きくなったな」
「見ていろ、この姿になったからにはもうお前なんかに負けないぞ!」


 ディオドラはそう言ってイッセー先輩に飛び掛かっていきました。


「喰らえ!」


 そして凄まじい速度で拳のラッシュを放ちます……といってもあくまで一般基準で凄まじいだけで私でも止まって見えますが。


「腕の振り方が雑だ、完全にパワーに任せて放つ技術もクソもない喧嘩以下の拳だな」


 イッセー先輩はそれを指を一本立てたアイスピックフォ―クで全ていなしていきます。


「バ、バカな!?パワーは段違いのはずだ!どうして当たらない!?」
「あれで当たる方がおかしいぞ」
「卑怯な手を使っているんだな、小癪な!」


 単純に力量で負けていると思いたくないのかそう喚くディオドラ、もしイッセー先輩に出会わなかったら私達もああなっていたのでしょうか?


 だとしたらゾッとしますね、悪魔って調子に乗りやすい種族なのかもしれません。


「このぉっ!」


 力任せに振るったディオドラのストレート、でもそれは先輩が指で押さえて止めてしまいました。


「動かない……っ!?」


 ディオドラは必死で押しますが力の流れを完全にコントロールされていて先輩は1ミリも動きませんでした。


「ほらよ」
「わわっ!?」


 それどころか先輩に押されて体勢を崩して転んでしまいました。


「おいおい、大丈夫か?」


 先輩はそう言ってディオドラに手を差し伸べます、しかしそれを見たディオドラは顔を真っ赤にして怒りました。


「僕を舐めるなぁぁぁっ!!」


 そして自分の頭に生えた2本の鋭い角の1本をイッセー先輩の胸に突き刺しました。もっとも一瞬で折れて後方に角が飛んでいきましたが。


「はははっ!どうだ!心臓を串刺しにしてやったぞ!」


 でもそれに気が付いていないディオドラは高笑いをします。


「どうした、何がそんなに面白いんだ?」
「な、なんで心臓を貫かれて平気な顔をしているんだ!?」
「お前こそ何を言ってるんだ?自分の角がどうなったのかも理解できないのか?」


 ディオドラは後ずさりしながらイッセー先輩の胸にぶつかった角を触ります、そして折れた事を自覚すると……


「うぎゃあああっ!?い、痛いぃぃぃぃっ!?」


 痛覚があったようで角が折れた事を認識したディオドラは痛みで辺りを転がり始めました。


「大丈夫か?しっかし片方だけ折れて見栄えが悪くなっちまったな」
「ぐっ、うぅ……痛いよぉ……」
「よし、もう片方も折ってバランスを整えるか」
「へっ?」


 イッセー先輩はディオドラのもう片方の角もナイフで切り落とします。


「あぎゃあああっ!?」
「ははっ、見栄えが良くなったな♪」


 痛みで再び転げまわるディオドラ、そんなディオドラに先輩は良い笑顔でサムズアップします。Sっけ全開のイッセー先輩も素敵です……♡


「そんなに転げまわるのが好きならもっと回転させてやるよ」


 イッセー先輩は奴の尻尾を掴むとそのままジャイアントスイングを始めます。そして大きく横回転してディオドラを投げ飛ばしました。


「フライングナイフ!!」


 そして空中に投げたディオドラ目掛けてフライングナイフを連発しました。でもいつもより手加減しているのかその速度はとても遅いです。


「ぐっ!こんなもの!」


 ディオドラは先輩の放ったフライングナイフをなんとか避けていきます。あれだけ手加減されているのですからディオドラでもよけれますよね。


「はははっ!僕にこんなへなちょこな技が当たるか!」
「そうか、ならちょっと速度を上げるぞ」
「へっ……?」


 得意げに避けていたディオドラでしたが、ちょっと速度を上げたフライングナイフが飛んできたら簡単に尻尾を切り落とされました。


「ぎゃあああっ!?し、尻尾が斬られたぁぁぁっ!?」
「悪い悪い、大丈夫かと思ってちょっと速度を上げてしまったよ」


 切り落とされた尻尾にも痛覚があったようでまた泣き叫ぶディオドラ、なんというか分かってはいたとはいえなさけなさすぎます。


 最初の頃のギャー君でももうちょっと泣きませんでしたよ。


「こ、こうなったらもう一つの変身を見せてやる!醜い姿だから使いたくなかったがアーシアは気絶してるし丁度いいからね!」


 ディオドラは回復魔法で傷を癒すと再び変身の構えに入ります。そして体から突起物が生えてきて奴の頭がエクレアの様に縦長に伸びていきました。


 まるで映画に出てくるエイリアンみたいですね。


「この姿はさっきまでよりもパワーもスピードも桁違いに跳ね上がる!もう好きにはさせないぞ!」


 ディオドラはそう言って先輩に向かって魔力弾の連射しました。確かに威力も速度も上がりましたね、でもディオドラでは折角のパワーアップもいかせていません。


 先輩の周りを高速で移動しながらディオドラは魔力弾の嵐を浴びせます。でもそれらは全て先輩が身を寄せて筋肉を固めるだけで全て弾かれていきます。


「はぁはぁ……どうだ、死んだか?」


 息を切らしながら止まってそう言うディオドラですが……ああ、この世って残酷ですよね。


「もう終わりか?」
「そ、そんな……!?」


 無傷で肩を鳴らす先輩を見て流石にショックを受けるディオドラ、世の中そんなにうまくいくなら皆苦労しないんですよ。


「お陰様で体のコリが少し取れたよ、最近は忙しくて小猫ちゃんの仙術マッサージも受けれていなかったからな」
「あはは、これが終わったらゆっくりマッサージをしてあげますよ」
「おう、頼むな」


 むう、ディオドラなんかに先輩をマッサージされてしまうとは妬けてしまいます。


「さて、お前にもお礼をしないといけないな」
「な、何を……」
「お前にもマッサージをしてやるよ、俺のフォークでな!」
「あぎゃっ!?」


 先輩はそう言うと一瞬でフライングフォークを5回出してディオドラの胸、右肩、頭、左足、腰を攻撃しました。


「サイクロン・フォークショット!」
「あがっ!?ぐげっ!?うごっ!?」


 イッセー先輩は竜巻のようにディオドラの周りを走りだしフォークを連射していきます、もはや残像で何人にも見える速度で動く先輩の攻撃を奴は全身で受けていきます。


「ふ~っ、いっちょ上がり」
「あがが……っ!!」


 そして全身をくまなくマッサージされたディオドラは地面に倒れました。あれだけやっても鼻や口から吐く血以外は血を流していないので先輩の力量を改めて凄いと思います。


「お、おかしい……シャルバの話ではグルメ細胞があれば最強になれるはずなのに!どうしてこんな奴に僕が追い詰められているんだ!?」
「そりゃグルメ細胞はちゃんと適合する美味い食材を食わなければ強くなれねえからさ」
「食事なら沢山したさ!奴隷にした人間や下級悪魔に取ってこさせた!」
「自分で苦労して捕獲したことは?」
「あるわけ無いだろう!僕は貴族だぞ!?なんでそんなことをしないといけないんだ!?」
「あっ、そう。まあそう言うと思ってたけど……もういいや、お前らと話すのもうんざりだ」


 ディオドラの言葉に心底不快そうに顔を歪める先輩と私、きっと旧魔王派と一緒で実際に現地に行って苦労して食べる食事の美味しさなんて微塵も知らないんでしょうね。


 まあそれを教えてあげたいって思いもしませんがね、どうせ頭ごなしに否定するだけですし。


「も、もういい……」
「あん?」
「こうなったら奥の手を使ってやる!」


 ディオドラはそう言うと地面に魔力弾をぶつけて砂煙を起こします、そして一瞬でアーシアさんの元に移動しました。


「遅い」


 でもイッセー先輩は一瞬でディオドラの背後に移動していました。そしてナイフを振り下ろそうと……


「待て!アーシアが死ぬぞ!」


 その言葉に先輩は手を止めました。


「このアーシアを縛り付けている装置は『絶霧』の所有者によって作られた結界の一つだ、僕がやられたら自動で装置が発動するように仕込まれている!」
「何が仕込まれているんだ?」
「アーシアの回復の力を反転してこのフィールド全体にまき散らす!そうすれば皆お終いさ!」


 私はそれを聞いてマスイと思いました。アーシアさんの回復の力は今までの過酷な旅でパワーアップされています。


 それがダメージとなって向かってきたらゾッとしますね。


 一龍さん達なら平気でしょうが悪魔や天使などの主要人物が死ぬ可能性があります。


「なら装置を破壊すればいいだけだ」
「無駄だ、そんな事をしたら装置は大爆発を起こしてアーシアは死ぬ!お前達はもう詰んでいるんだ!」
「チッ……」


 楽しそうに笑うディオドラにイッセー先輩は舌打ちをします。厄介な事をしてくれましたね!


「赤龍帝、お前は強い。それは認めてやる」
「急になんだ、気持ち悪い」
「お前には勝てない事が良く分かったよ、下劣なドラゴンは力だけは凄いと学ばせてもらった。だから最後にお前が嫌がる事をして鬱憤晴らしをしてやる!」


 ディオドラはそう言って悪魔の駒を取り出しました。ま、まさか……!


「止めろ!アーシアから離れろ!」
「あははっ!いいぞ、その顔だ!絶望しろ!アーシアは僕のものだぁぁぁっ!」
「アーシアさん!」


 私と先輩はそれを止めようとしましたがディオドラの悪魔の駒はアーシアさんの体内に入っていってしまいました。


「あ、あれは……!?」
「そうか、そういうことだったのか!まんまと騙されたぜ……!」


 そして私達はある事に気が付きました。


「はははっ!これでアーシアは僕のものだ!ざまあみろっ!」


 ただ一人だけ気が付いていないディオドラは実に楽しそうに笑っていました。


「貴方、自分の手がどうなったのかも見えないんですか?」
「なんだい、またそういう話かい?やれやれ、芸がないというかなんというか」
「騙されたと思って見てみろよ」
「いいだろう、騙されてやるよ。僕の手が一体なんだって……っ!?」


 私と先輩の言葉にディオドラは馬鹿にした様子で自分の手を見ます。


「な、なんだこれは!?」


 そしてその目に映ったのは赤く爛れた自身の右手でした。悪魔の駒もドロドロに溶けてしまっていて原形をとどめていません。


 装置に捕らえられていたアーシアさんは紫色の液体になってしまい溶けていきました。


「うわあぁぁぁぁぁっ!?焼けるように痛いぃぃぃぃぃっ!?」


 ディオドラは先程角が折れた時のように地面を転がりながら絶叫します。


「……最初から俺達はあんたの掌で踊っていたって事か、ココ兄?」
「ふふっ、そんなところだね」


 先輩の呟きに反応するように何処からか声が聞こえてきました。そして天井から誰かが下りてきます。


「ココさん!?」
「やあ小猫君」


 そう、それはココさんだったんです。


「いつからアーシアを毒人形と入れ替えていたんだ?」
「リアス君達が行動を始めた直後にはもう接触していたよ、本物はここさ。キッス!」


 ココさんがキッスを呼ぶと彼も天井から羽ばたきながら降りてきました、そして柔らかそうな黒い羽毛の一部から綺麗な金髪が出てきたんです。


「ぷはぁ……イッセーさん!小猫ちゃん!」
「アーシア!」
「アーシアさん!」


 それは私達が救おうとしていたアーシアさんだったんです。私と先輩は直ぐに駆け寄って彼女を抱きしめました。


「アーシア!無事で良かった!」
「ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした……」
「アーシアさんは何も悪くないですよ、悪いのはディオドラや旧魔王派なんですから!」


 再会を喜び合う私達、でもまさか捕まっていたのがココさんの作った毒人形だとは思いませんでしたよ。


「僕の作った毒人形にリンの作ったアーシア君の体臭のする香水をたっぷりふりかけて黒歌君に仙術で氣を流し込んでもらった特注品さ。後はアーシア君が魔法で遠隔操作して声も本人のものだから君達でも気が付かなかったみたいだね」
「ああ、もっと冷静だったら違和感を感じたかもしれねえけど見事に騙されたぜ……」


 どうやらリンさんや姉さまも協力していたみたいだったようです。


「アーシア君が狙われているというのは占いで分かっていたからね、あらかじめ先手を打たせてもらったよ」
「それなら私達にも教えてくれても良かったんじゃ……」
「ごめんね、僕達を監視していた存在にこのことを知られると厄介だと思ったから言えなかったんだ」


 私が少し非難を込めた目で見ながらそう言うとココさんは申し訳なさそうにそう言いました。


「監視?誰かがこのフィールドを見ていたのか?」
「うん、間違いないよ。何重にも気配などを分けて僕達の行動を見ていたんだ。会長達も気が付いたけど逃げられてしまったみたいだ」
「親父たちから逃げられるなんてソイツは一体何者だ?」
「まさか……」


 イッセー先輩の質問にココさんは間違いなく監視されていたと言いました。しかも逃げてしまったみたいなんです。


 一龍さん達からも逃げられるような存在をイッセー先輩はいるのかと首を傾げました。でも私はジョアと言う名前が頭に浮かんだんです。


「いろいろ気になることは多いが、取り合えず何か知っていそうなソイツに話を聞いてみるか」
「ヒイィィィィッ!!?」
「あっ逃げました!」


 イッセー先輩がディオドラに視線を向けると奴は走って逃げだしていました。


「クソクソクソッ!腕が焼けるように痛い!でも捕まったら僕は本当に終わりだ!とにかく今は逃げ……ッ!?」


 しかし直に足を止めてしまいました。まるで見えない糸で縛り付け上げられたかのようにピクリとも動きません。


「マジ?逃げ方もまったく美しくねぇんだけど。こんな奴がイッセーや猫を侮辱したとかマジありえねぇし」
「サニーさん!」


 そこにサニーさんが姿を見せました。


「サニーさんが触手でディオドラを捕まえてくれたんですね!」
「まぁな……っていうかココ!折角俺がカッコよく猫の前に現れて活躍する予定だったっつーのに活躍の場を根こそぎ奪ってんじゃねーよ!」
「そんな事で怒られても……」


 サニーさんがココさんに理不尽に怒っていたので私は止めようとしました。しかしその時でした、神殿の壁が壊されて何かがこちらに向かってきます。


「聞こえるなぁ……凄まじくチョーシに乗った下等生物の息を吐く音がよぉ」
「ゼブラさん!?」


 壁を壊して入ってきたのは凄くイライラした様子のゼブラさんでした。


「ゼブラ兄、もうあいつらやっつけてきたのか?」
「あんなカス共前菜にもならなかったぜ、その後にチョーシこいたガキどもが乱入してきたからぶっ殺してやろうとした。だがまたチョーシこいたガキが出て来てな、そいつらにはまんまと逃げられちまった上にソイツも逃げやがった。だからイライラが収まらねぇんだよ……!」


 ゼブラさんはそう言うと縛られていたディオドラに視線を向けます。


「そいつだな、もっともチョーシこいたカスは……ぶっ殺してやるよ」
「おいおい待てって、殺すなら情報を吐かせてからにしてくれよな」
「うるせぇ、俺に指図すんな。イッセー」


 イッセー先輩がゼブラさんを止めようとしますがゼブラさんは先輩を睨みつけます。


「つーかゼブラ、今ソイツ縛ってんの俺の髪なんだぜ?お前のダミ声ぶつけられたら繊細な髪が痛んじまうだろーが」
「黙れ、殺すぞサニー」
「はぁ、相変わらずだね……」
「あっ……ああっ……!?」


 いつもの調子でじゃれ合う4人でしたが、その背中にグルメ細胞の悪魔がオーラとして浮かび上がりディオドラを見下ろしていました。


(ば、化け物だ!化け物どもがウジャウジャと……!?どうして僕はこんな奴らに喧嘩を売ってしまったんだ!?僕は一体どこで間違えた!?聖女を汚して毎日を楽しく生きていたのになんでこんな事に!?)


 涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら恐怖するディオドラ、今更自分がどんな存在に刃向かったのか自覚したようですが時すでに遅しですね。


「皆さん、とりあえずディオドラは……」


 私がゼブラさんを落ち着かせようと声をかけようとしたその時でした、空間にヒビが入ってそこから凄まじく大きな赤いドラゴンが現れたんです。


「な、なんだ!?」
『あ、あいつはグレートレッド!?どうしてこんなところに!』
「グレートレッド?確かD×Dでも最上位の強さを持つドラゴンだったよな?普段は次元の狭間を泳ぐだけで他の存在に干渉したりしないと聞いていたが……」


 ドライグが声を荒げてグレートレッドとあの大きな赤いドラゴンの名前を呼びました。そんな凄い存在がどうしてここに?


「……ッ!見つけた」
「えっ……?」


 グレートレッドの背中から少女の声が聞こえたかと思えば一瞬で私の前に降り立ってきたんです。


「……」


 それはゴスロリを着た小さな黒髪の女の子でした。


「え、えっと……貴方は一体……」
『小猫!離れろ!そいつはオーフィスだ!』
「えっ?」


 私が困惑しているとドライグがそう叫び先輩達の方に視線を向けると全員が戦闘態勢になっていました。


 そしてオーフィスが私に向かって手を伸ばします。マズイ、やられる……!?


 ポスッ!


 しかし痛みは全くありませんでした。目を開けて見てみるとオーフィスは嬉しそうに私に抱き着いていたんです。


「会いたかった、フローゼ……」
「えっ……?」


 突然のオーフィスからの抱擁、そしてフローゼという名前……何が起こっているのか分からずに私もイッセー先輩達も皆固まってしまいました。


「~♪」


 唯一人、オーフィスと呼ばれた女の子だけが嬉しそうに私の胸に頬すりをしていました……
 
 

 
後書き
 イッセーだ。急にオーフィスだのグレートレッドだの訳が分からない奴らが現れた上に小猫ちゃんがフローゼだって!?一体どうなっているんだ?


 とりあえず敵意は感じないから事情を聴いてみようと思ったんだけどそこに空気の読めない乱入者が現れて……


 次回第141話『衝撃の事実!オーフィスはアカシアとフローゼの家族!?』で会おうな。


 次回も美味しくいただきます! 
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