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第73話「シスの暗黒卿」前半

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第73話「シスの暗黒卿」前半となります。
前半・後半と分けてお送りします。どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――ガトランティス艦隊旗艦〈ゴーランド〉。

 「通路を固めろ!もっとだ、急げ!」

 〈ゴーランド〉内部では艦橋へ通じる通路を、ガトランティス兵によって守りを固めている最中だった。

 それもその筈。

 此処は、艦橋へ通じる唯一の通路。ブリッジはこの船の制御を担うと同時に、艦隊を率いる男―――ゴーランドとその後継者がいる。

 守りを固めるのは、当然であった。

 絶対に、ゴーランドと後継者であるノルを守ってみせる。誰もが覚悟を決めたその時だった。
 〈ゴーランド〉内部を照らす照明が、一斉に落ちたのだ。

 「な、なんだ…?」

 暗闇が降りて、静寂が支配する。宇宙空間のような静寂が、乗組員たちがいるこの場を満たしていた。

 「総員、構えろ」

 この場にいるガトランティス兵は、無意識ながらも感じ取っていた。そして、悟った。こちらに向かってきているのは、バトルドロイドではない何者かであるのを。

 武装した彼らはブラスターライフルを、暗闇に覆われた通路の彼方へと銃口を向ける。剣で武装していた者も、その切っ先を向ける。

 誰かの息遣いが聞こえてきそうな静寂。
 その静けさが頂点を迎えた瞬間、暗闇の中に光の刃が立ち昇った。
 現界するは、深紅の光。血のように紅い、原初の光。

 それと共に、黄金の双眸が彼らに向けられた。

 「初めまして、私の名は4号。またの名を、ダークネス・ブリリアンスという。シス―――暗黒卿と呼んでくれ」

 漆黒の装甲服とマントを身に纏う、若い女だ。人間の価値観に則れば、美女であろう。

 しかし、彼女に見惚れることは無かった。
 警戒心と敵意がより湧いてきたと共に、嫌な汗が背中から吹き出し額を伝う。

 氷のように冷たい笑みを浮かべた暗黒卿はそう言って、右手で深紅の光刃を握り、その光刃をこちらに向けてきた。
 光り輝くその刃―――ライトセーバーが伝えて来るは、人を殺すのに長けているということ。殺意を纏ったその凶器は、まるで呪われているかのように目を奪われる魅力があった。

 指揮官はヒュっと息を呑んだ後、目を見開いた。肌に焼き付く緊張感に圧倒され、呼吸さえ忘れそうになる。既に貫かれたのではないかと、思わず胸元を手で触れてしまった。光刃を向けられているだけなのに、だ。

 彼女は靴を響かせながら、一步一步ゆっくりとこちらに近寄ってくる。

 ハッとした指揮官は、直ぐさま口を開いた。

 「撃て!」

 悲鳴のような叫び声が響いた瞬間、その場にいる誰もが光の銃弾を撃ち放つ。
 しかしそれは、誰もが跳ね返されてしまう。

 最前列付近でブラスターを構えていた3人の射撃手が、ブラスターを一発放っただけで絶命し、床に倒れた。
 合計で三発のブラスターを同時に反射し、一撃で仕留めてみせた。

 次に彼女は瞳には見えないエネルギー―――フォースを操り、突撃してきたガトランティス兵を天井に貼り付けた。うめき声を出す天井兵士に、一瞥することなく真っ二つに切り落す。

 それと共に、ガッツポーズする彼女。歩みを止めることは無い。

 ブラスターを放とうとする兵士の武器を取り上げ、惨殺する。
 剣を持って突撃する兵士に彼女はフォースで持ち上げ、首をへし折った。ゴキリっと音を立てたと共に、死んだその兵士を壁へ叩きつける。

 これを片手で数える回数でやり、30人いた兵士達の内の20人を仕留めた。

 「怯むな、撃て!」
 
 指揮官にとって、信じられない光景だった。
 今もそうだ。暗黒卿と自称する女は赤い光の刃を一閃させただけで、飛んできた全てのブラスターを”同時”に反射してみせた。8人の射撃を、だ。

 体そのものを動かすことなく、手だけで完結しているのは余裕さを見せつけている。最短動作で、距離を縮めて来ている。

 その兵士達の内の1人が生き残るも、漆黒の女によって首を切り落とされた。

 残り、2人。
 
 指揮官は呆然とする中、指揮官の隣にいた兵士がブラスターを撃ちまくる。
 しかし、放たれたブラスターはフォースによって彼女の眼前で静止した。手の平を向けて、だ。押し返すと、多数のブラスターが兵士のあらゆる箇所に命中、そして絶命した。

 残り、1人。
 最後は、指揮官だ。

 「…あ、あぁ」

 指揮官は、手に持っていた武器を落とした。

 避けられない死が、目前に迫っている。部下は全て死に絶えた。
 逃げようにも、足がすくんで動くことすらできない。そう、逃げたかったが出来ない。指揮官は、戦うという選択肢を放棄したのだ。ガトランティスとして、それはあり得ないことだった。

 暗黒卿と自称する彼女は、指揮官の目の前で溜息を吐き出した。

 「なぜ怯える、なぜ怖がる、なぜ戦わない。逃げようともするとは、滑稽だな」

 直後、指揮官の胸をライトセーバーを突き刺す。

 「ガハッ!」

 「痛いだろう。苦しいだろう。だが、それも終わる。この時を以って、貴様は此処で死ぬ」

 歪んだ笑みを浮かべる暗黒卿は、より一層に深める。

 「自分の死を嘆くな。死は、知恵の実を食した生命体に与えられる。そう、平等なのだ。貴様がこの時を以って死ぬのは、ただ時間が速まっただけに過ぎない」

 最期の抵抗として、指揮官は手を伸ばす。
 しかし、出来なかった。もう体は、自分の指示を受けつかないからだ。

 「さようなら」

 指揮官の視界が暗闇に包まれると、彼の意識は闇へと飲まれていった。




 《ある日の4号》

 今日は、ギルド長とアフタヌーンティーだ。

 何分と久しぶりだ。
 待ち遠しいものだ。楽しみで仕方ない。

 「姉さんの仇!」

 そんな時にだ。
 メイドが私の、ライトセーバーを奪い、深紅の光刃を現界させるとその切っ先を向けてきた。

 しまった。私としたことが。

 {IMG201257}

 全く、生意気な娘だ。
 なぜ歯向かってくるのだ。メイドにまでしてやった、恩を忘れたのか。この私が、貴様を有効活用してやっているというのに…。

 「奴は殺人鬼だった。強盗の際に罪なき人間を一方的に殺した、唾棄すべき犯罪者。君はそんな愚かな女を、まだ姉だと慕うのか?」

 「姉さんは確かに罪を犯したけど、私にはたった1人の肉親だった!」

 そうだったな。
 両親が他界した後、幼かった貴様はよく姉と過ごしていたな。姉は貴様の為に、いつも仕事を頑張っていた。
 
 しかしその姉は、殺人鬼となった。妹である貴様には内緒にし、家に侵入しては金品を奪った。目撃者は殺害し、一切の証拠を残さなかった。

 妹に秘密としているのは、スリルを味わう為。
 隠し事と金品の強奪、そして殺害。

 「社会のゴミじゃないか。死んで当然。刑務所で死ぬしかない姉を、メイドにしてやったんだ。感謝くらいして貰いたいものだ」

 その姉は無礼を働いた為、私の手で死刑執行した。死にたくないと懇願する顔、見物(みもの)だったな。

 「…ッ!」

 そろそろ頃合いか、この娘は。
 何、殺しはしない。ただ、少しの間だけ眠ってもらうだけだ。

 「…ッ!?」

 フォースでライトセーバーを取り返すと共に、収納する。

 「眠れ」

 隠していたホルスターからブラスター・ピストルを取り出し、スタンモードにし銃口を向ける。娘は隠し持っていたナイフを両手で構え突進してくるが、私が怪我することは無い。

 放たれた青色の光弾は命中すると、娘は倒れ込んだ。
 BXコマンドーが膝をつき、確認する。眠りに入っていると、報告してきた。

 「記憶を改ざんしろ」

 娘をお姫様抱っこし、その場を後にするBXコマンドー。
 その後ろ姿を見つめながら、私は口を開く。

 「今回の無礼は忘れてやる。気分が良いからな」

 だから安心しろ、殺しはしない。
 全てを忘れ、私に忠誠を誓うメイドとなるだけだ。

 私は踵を返し、軽い足取りでギルド長―――母上のもとへと向かった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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