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第66話

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第66話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――惑星《シュトラバーゼ》。

 惑星シュトラバーゼに到着した〈ヤマト〉がランデブーポイントに向け降下したところで、ガミラス艦3隻が姿を現した。ランデブーに応じた、ガミラス艦隊の定期便である。

 改メルトリア級巡洋戦艦を旗艦とし、改デストリア級重巡洋艦1隻と改ケルカピア級航宙高速巡洋艦1隻で構成される定期便は、地表へと降りていく。

 〈ヤマト〉とガミラス定期便が目指すランデブーポイントは、結晶橋と表現してもよい自然構造物である。
 やがて〈ヤマト〉とガミラス定期便は、それを挟む形で停泊した。




 ―――ガミラス定期便旗艦。

 第十一番惑星の生存者―――避難民の移乗に先立って、副長の真田とアドバイザーのキーマンが定期便旗艦へ足を運ぶと、定期便を率いる男―――ルッツ・カーゼットと3人の士官が、真田達を貴賓室に迎えた。

 真田は貴賓室を、興味深げに見渡していた。これまでガミラス艦に足を運んだことはあれど、こうした部屋に通されたことは初めてだったからだ。
 
 だが、と真田は直ぐさま視線をルッツ・カーゼットに戻した。今は、避難民移乗の直接対応に集中しなくては。

 「初めまして、この定期便を率いる司令官―――ルッツ・カーゼットと申します」

 「〈ヤマト〉副長の真田です。ランデブーに応じていただき、ありがとうございます」

 司令官を務めて久しいルッツ・カーゼットは地球式の挨拶にも手慣れたもので、当たり前のように手を差し出すことが出来る。
 驚くほどの、自然な仕草だった。握手を交わすと、真田は礼を述べる。

 「自国の民間人をお預けするのは、心苦しいのですが」

 それに対し、カーゼットは柔らかい笑顔を浮かべる。

 「お任せください。ふふっ、《テレザート》はガミラス史においても最大の謎の一つ。〈ヤマト〉調査結果を、心待ちにしておりますよ」

 真田は頷く。

 「同感です。私も、一科学者として興味があります。調査結果が楽しみで仕方ない」

 真田とカーゼットの会話が終わるのを見計らい、キーマンは手にしている黒色のアタッシュケースを士官の1人に渡した。
 その士官はアタッシュケースの蓋を開け、中身を確認する。そこには、タブレット端末が収められていた。端末を取り出すと、アタッシュケースをキーマンへ返した。

 それを受け取ったキーマンは姿勢を正し、カーゼットへ報告する。

 「避難民の名簿となります」

 ありがとう、とカーゼットが礼を述べた時だ。ふと、真田は思う。タブレット端末を渡すだけなら、アタッシュケースに収める必要はないのではと。
 率直に疑問だったが、ハッと気がついた。もしや、タブレット端末には重要な情報が記録されているのではないのか。だから、〈ヤマト〉の通信機器で大使館へと送信しなかった。

 そうか、そういうことだったのか。真田は理解し、そして納得した。

 「それでは、私はこれで」

 真田は辞去の言葉を口すると共に、ヤマト式の敬礼をする。それに対し、カーゼットもガミラス式の敬礼を返した。

 真田が扉へ向かい、キーマンが続こうとした時だった。

 「そうそう、キーマン中尉」

 カーゼットが思い出したかのように、声を掛けて来たのだ。声を掛けられたキーマンは振り返り、その声が聞こえた真田はキーマンと同じく足を止めた。

 「君に代わる駐在武官の件について、話がしたい」

 「……」

 無言で視線を向けてくるキーマンに、真田は察した。どうやら、先に帰っていたほうがよい内容のようだ。

 「では、先に」

 それに対し、キーマンは謝った。

 「すまない、副長」

 真田は頷くと、貴賓室を後にした。


 ……
 …

 「……」

 キーマンはしばしの間、既に閉じられ、そして内側からロックされている扉を無言で見つめていた。今頃は、待機していた警衛が真田を外へ案内しているだろう。

 キーマンは、カーゼットに向き直った。彼の視線に気づいていないのだろう。何か薄汚いものにでも触れたかのように、彼が右手を払っていた時だった。

 「…っ!?」

 キーマンの視線に気づいたカーゼットは、威儀を正した。士官達も同様だった。彼らは一斉に膝をつき、頭を垂れる。
 傅く姿勢のそれは、まるで臣下の礼であるようだ。一介の中尉に、何故そのような事をするのか。

 「……」

 しかし、キーマンは驚かない。いつもの無表情だが、今の彼は”〈ヤマト〉の面々に見せていない別の顔”であった。

 「も、申し訳ございません!本来ならば、貴方様にこのような御役目を負わせるなど―――」

 王家の人間と対面しているような、恭しい口調で言うカーゼット。彼の顔には、言葉通り本当に申し訳ない色があった。

 「余計な話は必要ない」

 そんなカーゼットを、キーマンは断ち切った。畏怖しているかのように震えているカーゼットを一瞥すると、彼は短く告げる。

 「”アレ”は手に入ったのだろうな?」

 「は、はっ!勿論でございます」

 カーゼットは女性士官に目配せすると、彼女はサッと立ち上がると同時に絵画のほうへ寄っていく。両手が立体映像として擬態していた絵画へと差し伸ばされると、スルリと潜り込んでいく。
 やがて、”アレ”が入っている漆黒のアタッシュケースを取り出した女性士官は、キーマンの前に進み出る。そして彼女は掲げ持つ仕種で、それを差し出した。

 カーゼットが告げる。

 「”我々”と〈ヤマト〉を引き合わせる貴方様の当初からの計画が、まさかこんな形で実現するとは。これもひとえに、強運に恵まれた御一族の血筋でありましょう」

 それに対し、キーマンは煩いの色を隠さなかった。何度も言われると、鬱陶しくて仕方がないからだ。計画も、”本当の血筋”も…。

 「関係ないよ。事が動くというのは、そういうものだ」

 漆黒のアタッシュケースを見下ろしたキーマンは、女性士官へ「開けろ」と促す。彼女はコクリっと頷き、ケースの蓋に手を掛けた。
 隙間から光が溢れ出ると、”アレ”が姿を現した。

 カーゼットが説明する。

 「お望み通りの物です。〈ヤマト〉の波動エンジンを制御下に置き、また破壊することも出来る」

 開けられたケース内には、円錐形の透明なカプセルとそれを制御する制御装置があった。カーゼットの説明を引き継ぐかのように、その名を口にする。

 「―――反波動格子」

 カプセルの中心に浮かぶ光球は、薄桃色となって輝いていた。


 

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現状公開可能な情報:スタースイーパー級Ⅱ型 TEイオン砲巡洋艦

艦種:巡洋艦
全長:850m
最高速度(大気中)450km
ハイパードライブクラス:1.3
装甲:重量級適応型装甲、対ビームコーティング
防御:偏向シールド発生装置
武装
・二連装艦首イオン砲x1
・三連装280mm重粒子キャノン砲x5(船体中央上面の艦橋前方x2、船体中央の両舷x2、後方x1)
・三連装63mm大型対空砲x3(艦橋前方x1、艦尾両舷x2)
・三連装20mm対空砲x4(艦橋周囲)

概要
 本艦は改修により三連装280mm重粒子キャノン砲をx5装備した他、対空砲を増設した。これにより優れた対艦能力を手に入れ、敵艦と交戦することが可能となったが、前級と同様、僚艦と共に行動する。

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後書き
クラウス・キーマン、いったい何者なんだ!?

さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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