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第35話「地球へ行こう」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第35話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 外は黒色、内側が赤色の肩掛けマントを背負い、純白の軍服を着用している白髪オッドアイの女性―――ギルド長スヴェートは、私室へと続く廊下を歩いていく。

 スヴェートは、肩と腕、胴体の一部を赤く塗装したOOMセキュリティバトルドロイド2体を引き連れている。

 そんな最中、巡回中のB2スーパー・バトルドロイドと遭遇するスヴェート。

 B2スーパー・バトルドロイドは、だ。

 全高1.91mの灰色のボディを持つバトルドロイドは上半身が大きい胴体、首の無い頭部、各2本の手足を備え、標準的なB1バトルドロイドよりも大型で、より強く、より先進的なバージョンだ。

 パーツはB1バトルドロイドと同じく安価な物が多く使用されているが、装甲はB1バトルドロイドよりも強化されている。B2スーパー・バトルドロイドの装甲は正確な直撃弾にもビクともしない強度を誇り、腹部は柔軟性がある構造となっている。

 スーパーバトルドロイドとも呼称される、B2スーパー・バトルドロイドの「瞳」の役割を果たす赤いセンサーは左肩の装甲に埋め込まれている。

 スーパーバトルドロイドは、左前腕に内蔵式の二連リスト・ブラスターを装備。攻撃時は片腕もしくは両腕を突き出し、目標へ射撃を行う。
 
 そんなスーパーバトルドロイドが、スヴェートに声を掛ける。

 「オ疲レ様デス、ギルド長閣下」

 スーパーバトルドロイド特有の低い声で声を掛けられたスヴェート。

 「うむ、ご苦労」

 スヴェートは歩くスピードを緩めず、道を譲ってくれたスーパーバトルドロイドを一瞥し、その場を後にした。

 少しして、私室の前に辿り着いたギルド長。私室の前には、BXコマンドーバトルドロイドがドアの左脇で警備している。

 彼女は声を掛ける。
 
 「部屋に入りたい、開けてくれ」

 「ラジャー、ラジャー」

 衛兵であるBXコマンドーバトルドロイドは頷き、ドアのロックを解除した。解除されたドアは、スライドするように開かれた。

 入室するスヴェート。彼女に続く、OOMセキュリティバトルドロイド2体。

 スヴェートの瞳に映っているのは、3つのドアだ。中央の左右に一つずつのドアがあり、残り一つのドアは彼女から見て突き当りにあった。

 スヴェートが入室した場所は、私室に続く小さな玄関のような所だ。小さいとはいえ、それなりの広さを誇っている。人間換算の横三列、5mほど先がある廊下。彼女はそのまま真っ直ぐと、突き当たりのドアへと向かう。

 数秒もしない内に突き当りのドアに到着した彼女は、脇にある開くボタンを人差し指で押す。開くボタンを押した直後、ドアは開かれた。

 「お前達は此処で警備、よろしく頼むぞ」

 「「ラジャー、ラジャー」」 

 スヴェートは部屋に入室した。入室したと同時に、ドアは自動で閉じられる。少し足を止めたが、直ぐに前へと進んでいく。

 デスクの向かい側に行き、彼女は漆黒の背もたれ付き椅子に座る。

 「……」

 彼女は眼前にあるドーム状のプロジェクターを起動させ、口を開くことなく操作していく。無数の光点がホログラムとなって展開されている。星図だ。やがて、”見知った銀河”をズームした。

 「……ははっ」

 ”見知った銀河”を注視しつつ、口元を緩めるスヴェート。時間が経つごとに、クールな表情も華が咲くような笑みへと変わった。

 「天の川銀河」

 遂に、遂に天の川銀河の星図を獲得した。スノウから提供されたとはいえ、この上なく嬉しい。天の川銀河から目を離し、彼女は引き出しから写真を取り出した。

 その写真には、青い地球の姿があった。

 「地球か」

 故郷を注視していたギルド長は、華が咲くような笑みでそう呟いた。アルポ銀河から天の川銀河へのルート確立は、完了済みだ。行けるのだ。母なる地球に。

 「そうと決まれば、と」

 ドーム状のプロジェクターの左隣にある通信機器を操作したスヴェートは、宰相兼代理ギルド長の名前を表示させる。そして、意気揚々と発信ボタンを押した。発信ボタン―――通話ボタンを押した瞬間、その端末特有の光が生まれた。数度ほど瞬くように輝いた後、その光はホログラムとなり空中で像を結び、黒髪赤眼の女性を形作った。

 「我が娘スラクルよ」
 
 『だから何度も…はい、お呼びでしょうか、ギルド長閣下』

 黒髪赤眼の女性、スラクル。
 ホムンクルスである彼女は、ギルド長スヴェートにより作られた。容姿はスヴェートとよく似ているが、それはスヴェートの遺伝子を継いでいるからだ。

 スラクルはスヴェートへ、微笑みを向けている。

 「地球へ行きたい」

 『……』

 あれ、無言だ。ホログラム通信機の不調か?そんな訳はないだろう、ドロイドによるメンテナンスは怠っていない筈なのだが。スラクルは、体調でも悪いのだろうか。

 『…国交を、結ぶのですね。承知しました、これより準備に取り掛かります。準備が出来次第、連絡を入れますので』

 「よろしく頼む」

 体調は、どうやら悪くないようだ。それなら何故、無言だったのだろう。まぁ、後で聞けばいいか。それにしてもよく分かったな、国交を結ぶ事を。やはり、我が娘だからか。スヴェートがそう思っていると、スラクルの表情は微笑みから一変させた。

 『はい。準備が完了するまでの間ギルド長閣下は何もせず、ただ寝ててください。準備は私が!しますので!』

 そこまで「準備は私が!しますので!」を強く言わなくとも、何でだろうとスヴェートは首を傾げた。スラクルは青筋を立てそうになるのを堪え、言葉を紡ぐ。

 『ギルド長閣下は本当に、何もしないでください。二度目ですが、貴女は何もせず、ただ寝ててください』

 そこまで言う?
 スヴェートは内心でそう思ったが、口には出さなかった。何故かは分からないが、口に出しては駄目だと悟ったからだ。

 『通信を終了します』

 「うむ」

 ホログラムが揺らぐや、スラクルの姿が消えた。それを見届けたスヴェート。

 「…寝るとしよう」

 ドーム状プロジェクターの電源をオフしたスヴェートは、席から立ち上がり寝室へと向かった。寝室に入った彼女は軍服からパジャマに着替えるや、一直線にベッドへ向かう。

 「ふぅ…」

 目を閉じ、何回か擦るスヴェート。
 頭を枕に預け、ふかふかのベッドに身を沈め、部屋を照らす元気を消し、布団を肩まで被せた。

 「………zzz」

 スヴェートは、夢の世界へと旅立ったのだった。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「全艦、発進せよ」

 外交団艦隊を編成したスラクルは、キャプテン・シートに座るスヴェートを一瞥した。外交団艦隊は飛翔し、やがて宇宙空間へと飛び出した。

 本星防衛艦隊と人工天体―――旧本部移動要塞の間を通過した外交団艦隊は、艦隊ワープの陣形を執った。

 「艦隊ワープマデ、残り20秒」

 ワープのカウントが続く中、旗艦は下部にある風防状の艦橋構造物をそのままに、その内側の艦橋が上昇し格納される。ワープの際、スヴェートは周囲を見回しながら自らを固定する席を握りしめる。スラクルもフックを握りしめる。

 「3、2、1…艦隊ワープ開始」

 青色の粒子が虚空を飛び散り艦隊が青の靄に包まれたかと思うと、その粒子の束は周辺の重力を捻じ曲げながら膨大な光を発した。

 瞬時に膨張した光は広がる時と同じ勢いで収縮し、周辺の空間情報を上塗りしながら、外交団艦隊は瞬く間に宙域から姿を消していった。 
 

 
後書き
スラクル「胃薬を飲んでおきましょうかね。はぁ…」

ーーー

さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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