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宇宙戦艦ヤマト2199編
  第34話

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第34話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 シャンブロウからアルポ銀河サニー星系の第三惑星〈ブリリアンス星〉に帰還した白髪オッドアイの女性―――ギルド長スヴェートは、木々に囲まれたテラスでティータイムを楽しんでいた。

 木製の椅子に座っている彼女は、淹れたての紅茶を口にしようとカップを手に取った。口に近づかせ、香りを楽しむ。

 「うむ、良い香りだ」

 淹れたての紅茶が入ったコップを口に近づかせた彼女は、一口だけ紅茶を口に含んだ。

 「ふぅ…」

 コップを手前のテーブル上にある小皿に置いた彼女は、テーブル上の菓子を手に取る。手に取った菓子は四角い市松模様のクッキー―――アイスボックスクッキーだ。それを、一口ほど噛じる。

 「美味い」

 プレーン生地とほろ苦いココア生地の両方の味わいを楽しめる、この市松模様のアイスボックスクッキーは本当に美味い。この世に生み出してくれた者には、感謝しかしない。この菓子に合う飲み物は紅茶だが、それ以外にも緑茶やコーヒーにも良く合うのだ。次回は緑茶にしよう。

 「もう無くなってしまったか…」

 20個はあったというのに、気がつけば完食してしまっていたことに気づくスヴェート。食べ始めたら手が止まらなくなる程の美味しさだ。

 「はぁ、美味かった〜」

 やはりこの世に生み出してくれた者には感謝しかない。スヴェートは柔らかい笑みを浮かべながら、淹れたての紅茶を口にしようとカップを手に取った。口に近づかせ、今度は二口ほど紅茶を口に含む。

 「それにしても…」

 紅茶を口に含んだ彼女だったが、”ある事”を思い出していた。”ある事”は、そう深刻なものではない。”ある事”とは、帰還の途についていた最中に現れた―――アクラメータ級改を旗艦とした救援艦隊のことだ。

 救援を呼んでいなかったスヴェートだが、多種多様の艦種で構成された救援艦隊50隻はスーパータクティカルドロイド―――クラーケン将軍が派遣したのだ。

 救援艦隊の中には4隻のガーディアン級支援駆逐艦Ⅱ型がおり、そのガーディアン級Ⅱ型からスヴェートの艦隊は補修を受けた。損害があったからだ。

 彼女が率いた艦隊にも2隻のガーディアン級は存在していたのだが、ガトランティスからの攻撃で撃沈されてしまった。その為、救援艦隊のガーディアン級から補修を受けたのだ。

 そうして、帰還の途に戻ったのが、実はクラーケン将軍が派遣した艦隊は第一陣であり、第二陣もあった。第二陣はAC721重量級Ⅱ型シリーズとセレス級Ⅱ型シリーズで主に構成され、第二陣の艦艇数は150隻を超えた。

 ギルド長スヴェート座乗のアクラメータ級改〈スラクル〉は、合計200隻ちょっとの艦隊に護衛されながらブリリアンス星に帰還。そして、今に至るのだ。

 スヴェートは、目の前の正対する人物へ声を掛ける。

 「スノウ」

 その人物は、スノウ。元地球人で、スヴェートと同じ女性。連邦なる組織に属している彼女は、常に黒い装甲服と黒ヘルメットに身を包みんでおり、肌を一切晒していない。そんな彼女だが…、

 「…嫌われた、スヴェートに嫌われた……」

 「元気を出してくれよ。というかな、私は嫌ってないのだが」

 落ち込んでいた。凄い落ち込んでいた。
 無論、経緯はある。スヴェートは帰還した後、スノウがテラスに居ると連絡を受けて向かったのがキッカケだ。テラスに到着した直後……抱きつかれたのだ。それはもう、名前を何度も呼びながら抱きつかれた。

 「ほ、本当か…?」

 本当本当、とスヴェートは頷いた。二度目となるが、それだけで嫌いにならない。彼女からすれば「抱きつかれてるなぁ」程度で、そこに負の感情は一切無い。まぁ突然、抱きつかれたのは流石に驚いた。

 「よかった」

 スノウは、ホっと安堵の息を漏らした。
 残りの紅茶を飲み干しカップを小皿に置いたスヴェートは、遊戯でもしないかと提案する。元々、今日のティータイムでは1人でやろうとしていたのだが、スノウがいるとなれば、一緒にやったほうがもっと楽しめるというもの。

 「別に構わないが、何をするんだ?」

 「チェスだ」

 チェス。それは二人で行う西洋のボードゲームで、マインドスポーツの一種。白・黒それぞれ6種類16個の駒を使って、敵のキングを追いつめるゲーム。2人で遊ぶゲームだが、1人でもやれないことはないことはない。ボッチ歴とこの手のボードゲームを極めた者であれば、1人でも遊ぶことは出来る。

 「チェスか。よいだろう」

 スノウは直ぐ頷いた。
 好きなのだろう、とスヴェートはそう思う。チェスは姉も好きなボードゲームだ。亡き姉も、あの世でチェスをやっていることだろう。相手がいればだけど……失礼なのは承知だが、ちょっとだけ笑ってしまった。

 「我が娘よ」

 「だから名前で呼んで…ん、既にチェスの準備は出来ております。ドロイド、準備を」

 我が娘と呼ばれた黒髪赤眼の女性は、アクラメータ級改〈スラクル〉の艦長代理だ。スヴェートが声を掛けると、直ぐ返事が帰ってきた。前半の言葉が聞こえなかったが、気にすることはないだろう。

 2体のドロイドがテーブル上にある皿を片付けた後、チェス盤が置かれた。

 「やろうか」

 「あぁ、始めよう」

 駒を配置した後、チェスが始まった。

 いくつも策を練り、それを実行に移す。罠や誘いにも中々乗らない。時間制限のない無限にも思える試合。

 次はどう来るのか。
 どの駒を動かすのか。
 自分に残っている駒は、どれか。

 「「ふふっ…」」

 考えれば考えるだけ楽しい。集中力が最大限に引き出されているのが分かる。頭が指先が、この試合を楽しいと叫んでいる。

 しかし、始まりもあれば終わりもある。

 「チェックメイト」

 遂に、決着がついた。

 「負けたかぁ。我が娘スラクルよ、私は負けてしまった」

 「私の勝ちだ!」

 スヴェートは負けた。勝者はスノウだ。
 チェスが終わり、会話をし始めたスヴェートとスノウ。我が娘と呼ばれた黒髪赤眼の女性―――スラクルは微笑みながら見つめていた。

 十数分が経過し、会話が止んだ。こうして、ティータイムは終わりを迎えたのだった。


 〈スラクルSIDE(一人称視点)〉

 私―――スラクル・ブリリアンスは、普通の人間ではありません。それは才能という訳ではなく、この身が作られたという過程が普通の人間とは異なっているという意味です。

 遺伝子情報を人為的に書き換えたことにより、私は作られました。いわば、人造的に生み出された存在なのです。

 ギルド長閣下は私を「我が娘」と呼んでいるのは、彼女の遺伝子を受け継いでいるからでしょう。母と呼ぶべきでしょうが、自然と「ギルド長閣下」で定着しています。特に問題はありません。

 ギルド長閣下は、母と呼んで欲しいのしょうか。ディスコミュニケーションな彼女には、ギルド長閣下で充分かと思います。番号で名付けようようとしたあの人に、呼びかたを変える必要はないのす。ど、どうしてもというなら、母と呼んでも構いませんがね。

 ディスコミュニケーション。これはいただけないですね。リアルでもそうだったかは分かりませんが、リアルでもそうなのでしょう。私には分かります。

 だって、ですよ。
 本人は探査と星図作成を任せたつもりでも、ドロイドにお任せしたらアルポ銀河を征服してしまっているのです。もう、ギルド長閣下ったら♪…ではありません彼女はもう!…はぁ。

 クロイン人以下の異星勢力はブリリアンスの属国となりましたが、それは約70年前よりです。彼らの生活状況は良好。そもそも属国といっても、支配している訳ではないのです。ブリリアンスは属国を放任しているのですから。

 とはいえ、干渉しない訳ではありません。私は属国の管理を担当しています。属国の管理に関しては、ギルド長閣下から任されています。

 属国を管理する指針は、ただ一つ。
 ―――彼らの精神と生活状況を良好に維持する。

 それ以外にも、仕事はあります。その内の一つは、最重要な仕事であり義務でもあります。
 ディスコミュニケーションなギルド長閣下を、サポートせねばなりません。

 宰相の地位に就く私には、その義務があるのですから。まぁ、単に私がしたいだけなんですけどね。 
 

 
後書き
現状公開可能な情報:スラクル

名前:スラクル・ブリリアンス
性別:女性
年齢:20代前半?
役職:宰相兼代理ギルド長
住居:アルポ銀河のサニー星系第三惑星「ブリリアンス星(旧名:地球瓜二つ惑星)」
性質:中立〜善
種族:ホムンクルス

概要
 ギルド長スヴェートが、遺伝子情報を人為的に書き換えたことによりスラクルは作られた。黒髪赤眼をするスラクルの容姿は、ギルド長スヴェートに似ている。それこそ、姉妹と呼ばれる程に。役職は宰相だが、代理ギルド長を兼任している。自分の艦を保有しており、その艦はアクラメータ級改〈スラクル〉。シャンブロウの際は艦長代理だった。

 容姿端麗な彼女は、ディスコミュニケーションなギルド長スヴェートをサポートしている。好きな飲み物は、スヴェートと同じくコーヒー。最近は、胃薬を服用しているよう。

ーーー
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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