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ある白猫の生涯

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1-5

 身体中にお湯を掛けられ、セッケンだらけにされ くしゃくしゃにされて、最後に濡れたタオルで嫌というほど顔を擦られて、最後に、もう一度、もういいんじゃないかというほどシャワーを掛けられて

「ミナツ ミナツぅ タオル!」と、お母さんが叫んだと思うとこの家の女の子のミナツちゃんが、バスタオルを広げて俺を抱えたのだ。

 リビングに連れて行かれて、身体中を拭いてくれているんだけど、俺は、どっちかというとほっといてくれる方が良いのだ。自分で舐めて乾かすからー

『フガァーッ』と、軽くパンチをしながら たまらず抗議すると

「なによー 拭いてあげてるんだから そんなに汚いのダメでしょ 家ン中歩き廻るんだからね おとなしくしてなさいよー ほらっ きれいになったじゃぁない ふわふわよー 真っ白できれい」と、頭をコツンとされた。

「岩はお風呂でお母さん引っ掻いたでしょー 腕から血が滲んでいたわよ 今だって ほらっ 私の手から血が・・・ 謝っておきなさいよ でないと 今晩 ご飯ないかもよー」と、ミナツちゃんは俺に手を見せてきていた。

『そんなこと言われても あんなにびしょ濡れになるのは初めてだしー 危険を感じたんだよー』と、言い返したつもりで俺は、知らんぷりして自分の身体を舐めていたら、お母さんがリビングに戻ってきて、傷にオロナインを塗りながら

「ミナツちゃんもやられたの? 塗っておきなさいよ バイキン入るからネ 岩 初めてだから しょーがないけど 今度もそんなだったら ベランダから家には入れませんからネ!」

 俺は『今度? また そんなめに合わせるの?』 と お母さんを見直していたら

「なによー その顔はー 当たり前じゃぁないの お外を歩き回ってるんだからー ダニでもくっつけてきたらどうすんのよー 少しは 反省しなさい!」

 と、人んちの飼い猫になるってことは、こういう試練も乗り越えなきゃあなんないのかと、ミナツちゃんがさっきから俺を抱きかかえて、喉元を撫でてくれている。だから、ゴロゴロと甘えている素振りをしていたのだ。俺は、本当はこんな風に触られるのが苦手なのだけど・・・。

 その夜は、少し家族の一員としての責任を感じて、ベランダから庭を見張っていたのだ。お母さんが魚の肝なんかを夕方 菜園に埋めていたのを眺めていたから、きっと 何かが掘り返しに来るに違いないと感じていたのだ。

 辺りの家の電気も消えて暗くなった頃。案の定 獣の臭いがしてきた。近所の猫では無い きっと イタチなんだろう 俺はベランダから威嚇の『シャーァッ』と叫んだのだけど、無視するように菜園の周りの臭いを嗅ぎまわっている。だから 俺は屋根から駐車場の上に跳び移っていくと その物音で奴は逃げて行った。

 たから その夜は 明るくなるまで 駐車場の屋根の上で過ごしたのだ。これは 俺の 役目なのだと・・・。日中だって 油断は出来ない 縄張の見廻りは怠りなくやらなければならないのだ。 
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