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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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初で~と

(グランバニア王都:GEO(グランバニア・エンターテインメント・オフィス)ビル)
ピパンSIDE

何だかよく解らないが、何だか良い方向で物事(今回の件)は解決した様だ。
俺は人生初彼女になってくれた隣のデイジーさんを見詰めて、“ふぅ!”と溜息を一つ。
そんな俺を見てデイジーさんが“くすっ”と笑う。

……可愛すぎませんか!? 俺……もう、死にませんか!? 幸せが怒濤の如く俺をあの世に導いてませんか??
「じゃぁさ……デイジーがデボラと離れた“今”と言うチャンスを活用しようぜ!」
な、何だろうか? 社長がまた何かを言い出してきたぞ?

「具体的には……はっ! 二人にベッドインを促すってなら、流石に僕も容認出来ませんよ!」
「そこまで僕も他人の色恋に介入しないよ! 今日はまだ昼前だし、デートでもしてこいって事だよ!」
な、成る程……普段の言動が突飛だから、こういう時に疑われるんだな。

「そう言う事ですか。社長の事だから何を言い出すのか……って思いましたよ」
「一方的だな!」
ご自身に問題があります。

「じゃ今日は二人でショッピングに行ってくれば?」
「ショッピングですか?」
奥様からの一般的な提案にオウム返しで返答……流石に自分の意見を言おう(何を言いたかったのかは俺にも不明)としたら、それを遮る様にルディーさんが1000(ゴールド)を俺に渡してきた。

何でこんな大金なんですか!?
気を遣うにしても、もう少し学生に寄り添った金額にして下さいよ!
幾らかを返そうとしたら……

「今日を含めてデイジーが一人暮らしをしデボラ(母親)から離れるチャンスを利用して、もう少しその(デイジー)の性格に適した服を買って来いよ。人見知りが激しいくせに、デボラ(母親)の趣味に任せっきりで、初対面のヤツが勘違いするんだよ。『パッと見、軽い女だから、少し押せばヤれる!』って!」

「そうなんですよ。以前から“男特有の第二の思考回路”だけで生きてる様な素敵な殿方(大馬鹿野郎共)が群がってきてました……一応、僕も伯母さんに注意喚起はしたんですけど『つまり……今の恰好をしてる時に口説いてきた(馬鹿男)は避ければ良いって事でしょ! 寧ろ好都合よ!』って怒られました。まぁ確かに一理はあるなぁと思ってしまいましたけど」

「あの質問なんですが……今回の場合俺の息子(ピパン)は、その“男特有の第二の思考回路”だけで生きてる様な素敵な殿方(大馬鹿野郎)として彼女(デイジーさん)のお母さんに認識されてる……いや、される恐れがあるんですか?」

え、嫌だなぁ……確かに“一目惚れ”ではあるけれど、俺はデイジーさんの外見だけに惚れたワケじゃ無いからなぁ……
でも彼女(デイジーさん)の見た目は遊んでる女(巷に多数存在する尻軽女)だし……完全に何も知らない状態の母さんに紹介したら、この見た目だけで拒否反応を示すだろうな。

「ってワケだから、今日はここ(グランバニア)で買い物デート……可能な限り二人の邪魔をしない様にするけど、移動には僕の新魔道車(しんしゃ)で移動しよう。如何(どう)だい?」

「俺的には大助かりで反対する理由も何も無いですけど、いきなり1000(ゴールド)も渡されると平凡な学生の俺は困ってしまいます。俺もそれなりに親から小遣いを貰ってますから、この1000(ゴールド)はお返ししたいと……」

「それは困る! 今回の買い物は僕の妹の洋服なんだよ!? しがない学生の小遣い程度でコーディネートされては……お兄ちゃん怒るよ!」
言ってる事はそうだけど、俺にも男としてプライドがあるからなぁ……

「おいピパン……もし、くだらなく『俺にもプライドが……』とか考えてるんなら、お前はウルフ以下の小者止まりだぞ!」
「そ、それは看過出来ませんね!」

「金は持ってるヤツから利用しろ! 持ってないヤツは出し渋るから、経済が鈍化するんだ。散財するのは問題だが、バランス良く金持ちを利用しろ!」
「流石プーサン社長だ。良い事を言いますねぇ! 僕の新魔道車(しんしゃ)も経済を鈍化させない重要なファクターなんですよ」

そ、そうなのか?
俺には付いていけない思考だが?
「お前の新魔道車(しんしゃ)は散財の部類だ! グランバニアが潤うから良いけどね」

「あらイヤン! 僕の新魔道車(しんしゃ)は散財だったか!?」
自分のおデコを“ペチンッ”と叩きながら戯けて自身の言動を後悔するフリをするルディーさん。
室内に笑いが巻き起こった。

「じゃぁ早速だけど行こうよ。丁度良いし、今日買った物は春から一人暮らしするデイジーの部屋に置いていけば、伯母さんにも気付かれないし新生活にも支障が出なくなるしね」
「えっ!? もうデイジーさんの部屋(一人暮らし用住居)って用意してあるんですか?」

「用意も何も……デイジーが芸高校(芸術高等学校)の入学試験を受けるって言いだした段階から、既に建設を始めやがったよ、あのジジイ!」
「それっていつ頃なんですか?」

「前の春先……いや、もう少し前かな?」
「気が早すぎでしょ!」
俺の呆れた口調のツッコみにデイジーさんが恥ずかしそうに呻く。それがまた可愛いんだ!

しかしだ……既に一人暮らしの方向で事態は動き出しているのに、ここに来てお義母さん(デボラさん)は何か我が儘を言ったんだ。
俺達のデートが決定し、社長を初め皆さんが各々動き出す……一応はリュカ様の血筋な俺だけど、思考回路は一般人な為プリ・ピー(プリンセス・ピープル)のお二人(今日来てるエミヘンさんとアーノさん)同様、疲れを隠せない。

買い物をして気分を変えよう。



(グランバニア王都:中央地区・東商業特化エリア)

俺はデイジーさん(プラス)ルディーさんと共に、ここ(グランバニア王都)でも特に買い物をする事に特化した地域なアーケード街へと到着する。
勿論だが俺だってここ(グランバニア王都)に住んでいるし、このショッピング街に来た事はあるのだけど、お洒落すぎる店に気圧されて買い物をした事は皆無だ。

「このお店はね友達(ジョルトン君)に教えてもらった凄くお洒落なショップなんだ」
ジョルトンさんとは俺も親しくさせてもらってる。
リュカ様やティミーさん……あの辺の特別イケメン階級を除けば、俺の周囲でトップクラスのイケメンな人物だ。

しかもジョルトンさんは見た目が中性的で、初対面時は女性(しかも絶世の美女)だと勘違いしていた。
それを自覚しているのだろうと思うが、(ジョルトンさん)自身が女性的なコーディネートで俺等に接してくる時もある。

本当に似合うから問題ないはずなんだけど、たまに胸元からチラリがお目見えして俺をドキドキさせて来る。
ドキドキしてしまうのが間違いなんだけど、(ジョルトンさん)くらいになると……
でも今後は大丈夫……なはず。だって俺にはデイジーさんって言う最強美女が彼女になったからね!

他の女(ジョルトンさんは男性だけどね!)の胸チラ如きには動じないぞ!
でもお洒落は全然解らないから、今も俺はデイジーさんの服を物色しているルディーさんを離れて観察している。
時折、俺にどちらが良いか聞いてくる。

こういう時に『どっちでも良い』とか『どっちも似合う』とかって言うのは拙いって事は知っているので、俺は正直に「解りません! どちら(どれ)も似合うけど、俺にはセンスが無さ過ぎて選ぶ余裕もありません!」と告げる。

「ちょっと……気持ちは解るけど、これ(今選んでる服)は君の為に選んでるって言っても過言じゃ無いんだよ」
「は、はぁ……」
いや、それは『過言』であってほしい。

(ピパン君)の意見を最優先しての購入にしたいんだし、もう少し意見を出してよ」
「そ、それは解りましたけど……本当にどれも素敵で、デイジーさんが更に可愛くなってしまうので俺には……」
「は、恥ずかs……」

事実だから仕方がないのだけど俺の真顔の答えに、俺の背中に顔を埋めて恥ずかしがるデイジーさん……相変わらず台詞は最後までは聞こえない。
「う~ん……そうだよね……」

お義兄さん(ルディーさん)(デイジーさん)の可愛さを理解してるから、俺の生意気な口答えに素直に悩んでる。
しかし……ここからが常人と違うんだよ!

「じゃぁ……何時でもどの服でも着れる様に、お店ごと買っちゃおうか!」
「み、店ごとって!! 何でそうなるんですか!? 流石に無駄が過ぎますよ! 経済を回すって範疇の事じゃないですよ」
普通に考えたのなら『どっちが良い? ……う~ん、決められないから両方買っちゃおう』的なノリで店ごと買おうとするルディーさん。勘弁してくれよ……疲れちゃう。

側で買い物を手伝ってくれてる店員さんは本気だとは微塵も感じず、この客(ルディーさん)冗談のセンスが無いと呆れ顔だ。
ホント……これがセンスの無い冗談であればどんなに良いか。

しかしこうなると俺がしっかりと選ばないと大変な事になるぞ!
俺は人生で初めてお洒落の事で真剣になる。
多数の服をハンガーが付いたままデイジーさんの体に重ねて見比べたり、大変だけどデイジーさんに試着してもらって他の服と比較したり……お洒落って本当に大変だよ!

この店での洋服選びが終わり購入。
先程貰った1000(ゴールド)から支払おうとしたら、早々にルディーさんがお会計を済ませていた。
思わず「貰った1000(ゴールド)の意味は!?」と問いましたよ。

「ん? あぁ、そうか……ごめんごめん。じゃぁ次の店では支払ってよ」
って言うんですよ!
何ですか『次の店』って?

終わりでしょ!?
この店で今日の買い物は終わりでしょう!?
そう言ったんですけど……

「何を言ってるんだい! 人間の衣類だよ。下着を履かない訳いかないだろう!」
「下着!? そ、それこそ俺の出る幕はありませんよ!」
女性の下着なんて選べるワケ無いよ!

「何を言ってるんだよ(笑) 下着こそ男性(彼氏)の意見が必要な物は無い」
如何してこうも俺とは常識的価値観が違うんだ!?
何がどうなればその思考回路に到達出来る?

「下着なんて肌に触れる部分さえ問題なければ何でも良いんだから、ただの布だって問題ないんだ。でもこれ(今回購入する物)は意味が違う!」
「な、何が如何(どう)違うんですか!?」

「今回の下着は(デイジーの彼氏)の為の下着なんだ! (ピパン君)の意見しか必要としてない! 色々な意味で楽しんで良いのは彼氏であるピパン君だけなんだ!」
「色々楽しむって……そんな……俺……」

「うん。まぁエロい意味も含んでるし、真面目な話でもある」
そんな事を言われデイジーさんと共に顔を赤くしてルディーさんの後に続いて店舗間を移動する。
数分もしないうちに目的の店へと辿り着いた。

すると入店前にルディーさんが教えてくれる。
「因みに僕等の知り合いのアロー君は、彼女のリューラさんにこの店(今から入ろうとしてる店)で誕生日プレゼントを買って渡したらしいよ……どんな商品を選んだのかは知らないけど」

「えっ~!? あのアローさんが? 失礼な言い様だけどあの人(アローさん)に、そう言う発想が出来るとは思えませんでした!」
「勿論リュカ様からの入れ知恵だよ。色恋事の大教祖様からのね(笑)」

重要な追加情報に納得しつつ、俺は未知なる聖域(ランジェリーショップ)へと入店を果たす。
今度こそ……この店でこそ、俺が支払わねば!

ピパンSIDE END



 
 

 
後書き
2024年6月21日投稿 
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