リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
前科があるから厄介だ!
前書き
久しぶりにビアンカ視点で書きました。
皆様のビアンカとは違うイメージかもしれませんが、
その点についてはご容赦をお願い致します。
(グランバニア王都:GEOビル)
ビアンカSIDE
青春ねぇ~……
良いわよねぇ~……
あぁ……若さが羨ましい!
知り合いではあるが、今回の色恋事には一切関係の無い者等の前で愛の告白をする青年。
勇気の要る事だったでしょうね(笑)
そんな若者を眺めながら市販のクッキーを、自分で入れた紅茶で流し込む。
「さぁて、大分落ち着いてきた様子なので、二人(ピパンとデイジー)の幸せな未来について話し合っていこうか」
若い新生カップルを冷やかす事が目的と思っていたのに、その筆頭であるリュカ……おっと、違った……夫が口を挟んできた。
「な、何ですか……俺達は幸せになりますよ。 誰の手も借りずに」
折角若人が幸せライフを謳歌しようとしてるのに、やっぱり何か引っかき回すのね?
何で何かしようとするのかしら?
「アナタ……もうこの件は誰もが認めるハッピーエンドよ。下手に口も手も出さない方が……」
「あぁ、悲しいなぁ……僕は君そういう風に思われてんだね」
これ以上引っかき回したくない……そんな思いだけだったのに、夫から悲しそうに溜息を吐かれる。
……なんか私が悪いみたいじゃない!
「君は僕と同じ被害者だと思ってたから、凄く残念だよ(泣)」
「ひ、被害者ぁ? い、一体何の事……って言うか、どれの事だか多すぎて」
アナタが巻き起こしたトラブルの数々、そして私が巻き込まれた数々を考えると……
「忘れないでくれよぉ……僕も君も結婚出来たのは、あのハゲのお陰(所為)だったって事を!」
「あっ! そ、そうだったわ」
わ、忘れてたワケじゃ無いのだけど……思い出すのは億劫に感じる出来事よね。
「な、何か問題があるんですね……まだ?」
「ある……けど大丈夫。事前に分かってれば対処は出来る。二人の邪魔はさせないよ」
不安げに聞き返すピパン君に、もう何度目か憶えてないくらい惚れ直してしまう笑顔で優しく諭す夫。
「おいルディー……ジジイには事前に言っておかないと、ハゲ頭が暴走して碌な事を考えないぞ……いや、考えるだけなら問題ないが、実行するから厄介なんだ!」
「お、お祖父様が……ですか?」
「あのジジイ、お前の母親の結婚相手を勝手に決めようと、そこら中の馬の骨に試練とか言って何だかよく分からない競争をさせたからね!」
「何ですか、それは!?」
「だから何だかよく分からないんだよ!」
「はぁ……? でもその結果、僕の父が試練とやらに受かり、僕はこの世に生まれたんですよね。結果オーライでは?」
「お前の母さんを娶る為に催された試練は、僕の一人勝ちだよ……結果オーライだな別の世界線では息子よ」
「えぇ~……困りますよぉ別の世界線パパぁ~!」
この子はノリが良いのよね。
「で、でも……社長は、その……ル、ルディー君のお母さんとの結婚が出来る事態になったんですよね? 何で現状ではルービスさんが奥様なんですか?」
「逆に聞くけど、何で僕が他人の言い分に従って、好きな女性との結婚を諦めなきゃならないの?」
「あ、あぁ……そ、それも……そうですけど……」
何時もと変わらぬ優しい口調での返答に、キョトンとした感じで納得するメリーちゃん。
「ですが……その商人も大掛かりな事をして娘さんの為に試練(?)とやらを開催したワケじゃないですか! よく『結婚しない』で事態が収束しましたね?」
ザルツ君も“他人の指示には従う”ってのが通常思考回路なんだと思うけど、その男には無意味な概念よ。
「悪いけども僕の知った事じゃ無いよね!」
「凄げー……お祖父様が大金と権力(当時の発言力)を掛けた事案をぶち壊しておいて、一切悪びれる意思を感じない(笑)」
「そんな事を言うけどさぁ……娘の結婚相手を親が勝手に決める。しかも決め方が冒険に出てお宝を持ち帰る事って……それ自体が間違ってるんだから、どうなろうと僕に責任は無いよね!」
「まぁその通りだとは思いますけど……」
ここまで静かに話を聞いていたアーノちゃんが、社長の言動に何かを感じ取っている。
そうなのよ……リュカのこの時の説教は格好よかったわ。
「で、ですが……じゃぁ何で社長はお祖父様の試練に参加したんですか!?」
「え~……? 何でだったけなぁ?」
社長が『娘の結婚相手を親が決めるな!』って説教は、お祖父様の企画をぶち壊してしまった孫の憤りに掻き消されてしまう。
「あれぇ? 言われてみれば僕が参加する必要性って無かったなぁ……」
え、嘘でしょ!?
この男……本当に忘れてるの!?
「リュ……ゲフン! アナタ……盾よ。あの時アナタには盾が必要だったでしょ」
「“盾”? あ、あぁ!! そう言えば僕はあの時盾を欲しがってたな! そうだよ、あのハゲが『ワシの娘と結婚した者に、家宝の盾をやろう!』って言いやがったから、その時は凄げー盾が欲しかった僕は、取り敢えず試練に参加したんだった!」
「え~っ……娘さんを好きになったとかなないんですか?」
「嫌いじゃ無いけど、僕はビア……ルービスが好きだから」
ザルツ君からの問い詰めに、私としては嬉しい返答をしてくれる。
「最初から結婚はしないで盾だけ貰って逃げ出す予定だったし……」
「うわぁ……最悪だよ、この男! 初めから僕の母とは本気じゃ無かったんですね!?」
もう事態(当時として)が解ってきたから、ルディー君も言葉選びを楽しんでるわ。
「で、ですが……それ程の盾です。さぞかし価値があるんですよね?」
「知らね」
「し、知らない!? えっ……今現在はどちらにあるんですか、その盾は!?」
「あ? 何処だっけなぁ……息子にあげちゃったから、今どこにあるのかは解らないよ(笑)」
「はぁ!? わ、解らないって……そこまでして手に入れた盾なのに、息子さんに渡して、もうどうなったのか解らないって……娘さんに申し訳が立たないのではですか!?」
この部分だけ見ると身勝手極まりないからザルツ君も我が身の事の様に怒りを社長にぶつけてる。真面目な青年ではあるわね。
「そうだけどさぁ……ちゃんと事態の収拾もしたんだよ」
「何をされたんですか?」
女を弄んだ様な説明に、ティミー級の……いえ、若かりしティミー級の真面目さを発揮するザルツ君。その性格だと、その社長と一緒に居るのは辛くなるわよ。
「えっと……丁度タイミング良くその場に居たルービスの存在に娘が気付いて、『本当に好きなのはそちらの女性では?』って言ってくれて、もしそうなら『娘の事を好きでも無い男と結婚させてしまうかも』と事態の危険性に気付いたハゲが、本当は誰と結婚したいのか一晩かけて考えて、明日に結論を出せ! ってなったから、一晩中考えてルービスと結婚した」
「…………? そ、それ……貴方は何もして無いじゃないですか!」
「え!? そうかなぁ? ちゃんとルービスと結婚するって言ったんだよ」
「まぁ……僕的には良い結果ですけどね」
「だとすると、その欲しがってた家宝の盾はどうやって手に入れたのですか?」
「貰えた……ジジイから!」
「お祖父様は懐が深いからなぁ(ドヤァ)」
「ますます貴方は何もしてない!」
「でも、あの時に説教をしてやったぜ! 『娘の結婚相手を親が決めるとは何事か!』って! そのお陰で試練は再開されず娘はどこぞの馬の骨と結婚出来たんだよ」
「…………で、ご厚意で家宝の盾を貰えたんですか」
「そうなるねぇ……」
あの説教は重要だったし、彼の格好良さの象徴でもあるのよ。
「ですが社長は、盾を貰えなかったとしても我が家から強奪してましたよね、きっと?」
「まぁそうだね……あの時は凄くあの盾の事を欲しがってたからね。あのハゲ頭をかち割ってでも貰って帰るつもりだったよ(笑)」
「もう最悪だよこの男!」
「結構な活躍だと思うんだけどなぁ?」
ザルツ君の叫びに、笑いながら何処に問題点があるのかを考えるフリをしてるわ。
「……で、結局は俺等は如何すれば良いのですか!?」
私達の結婚エピソードを愛しい彼女と仲良く手を繋ぎながら聞いてたピパン君が自分達はの今後の行動として尋ねてきた。
そう言えばそうよねぇ……
当初はルドマンさんへの対応の方法として始まった話題だし、それを教えてもらえず当時の話題のオチとして語られても困ってしまうわね(笑)
「事前に知らせておけば、あのジジイだって勝手に恋人(結婚相手)を選んだりはしない。根本的に娘や孫に激甘なだけで、悪いジジイじゃないんだよ。ただ問題は、二人の関係を伝えるタイミングとかなんだ」
「そうですね……ピパン君の事を知ればお祖父様も拒絶はしませんでしょうし、寧ろ我が家へ取り込もうと必死になるでしょうね」
「……そ、そうだな。まぁピパンはグランバニア人である事を止めないけどな!」
「だとすると何も問題は無いって事ではないのですか?」
「問題はあるよ!」
痺れを切らしたピパン君の言葉に、夫が疲れた声で否定する。
「その娘の母親が問題なんだ!」
夫に言われ視線がデイジーに集まる。
そんな視線に気付いた当人も、溜息と共に視線を床へと落とす。
この娘なりにデボラの事は意識(厄介事として)していたのだろう。
「ご、ごめんなさい……や、優しいお母さんではあるn……」
彼女なりに謝罪をする……だが私等には最後まで声が聞こえない。
「多分、間違いなく我が儘を言ってくるだけなので、伝えるタイミングさえ間違わなければ大丈夫だと思うよ」
「う~ん、僕もルディーの意見に賛成だけど、そのタイミングってのが難しい。それって何時だよ? アイツが我が儘言わない時ってあんの?」
「確かにそんなタイミングは希有ですけど、伯母さんはデイジーの事を溺愛してますからね……」
「……成る程ね」
あら、やだ。リュカの顔が悪い事を考えてる時の顔……そしてルディー君は、そんなリュカと一緒に悪い事を考えている時のウルフ君の顔と同じ。
この子……本当にウルフ君寄りの人物なのね!
“性格が柔和で、人当たりが良いウルフ君”……
そんな人間気持ち悪る! ……かと思いきや、実際に存在すると、まぁまぁ良い感じかも?
リュカ的には欲しい人材かも?
“味方にしたい”と言うよりも“敵にしておきたくない”って感情だと思うけど……
ビアンカSIDE END
ページ上へ戻る