リュカ伝の外伝
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威風堂々とイジられるネタ
(グランバニア王都:GEOビル)
ピパンSIDE
「それでぇ……私は君の彼女の事を知ってるけど、この場には知らない人も居るんだから、先ずはそこから教えてあげて」
……いや、知らない他人が居る時点で言う必要性はぁ……
俺は助けを求めようと奥様の催促に対して社長に視線を送る……
「………………」
だが無慈悲! 『こうなっては諦めろ』と無言で言われ、憤りを感じる。
唯一の救いは他の男性陣からは、同情して貰ってる事だ。
「デ、デイジーさんは……ルディーさんの……い、妹……?」
そ、そう言えば……この話題って、どの程度ザルツさん等に言っても良いの?
チラリとルディーさんに視線で伺う。
「あ、妹なんだけど……僕の伯母さんの娘さんなんだ。色々と事情があって、彼女も遺伝子学上の父親の事を知らない。でも僕には妹だから、その辺はよろしくね」
なる程……その方向性でならOKなんですね。
「そんな女性なんですが、ルディーさんの妹なので現在はサラボナに住んでます。ですが来年度からグランバニアの芸高校に入学する事が決まりまして、先日その準備等で王都にやって来ました。出会ったのはその時です」
「へ~……噂は聞いていたとか、そういうのは?」
「ルディーさん絡みになるので、その先の事までは……」
この人も居るし、ルディーさんの実家の事も上手く言い換えないと拙いね。
結構面倒だぞ。
「彼の実家は大規模な商店で……グローバルな展開を昔からしてるから、俺が軍務大臣をする前から、この国とも付き合いがあって、そう言う点で息子にも色々と情報が入っているんだ」
お、父さんナイス! 助かります。
「ですので、出会った時は『はじめまして』でした」
色んな意味で衝撃的だったけど。
「デボラも居たの?」
「あ、はい!」
「「デボラ……?」」
突然の固有名詞に戸惑われる。
「リr……アナタも商売上、サラボナの商人とは接点があるものね。気になっちゃうわよね」
「成る程……だからご存じなのですね。因みにデボラさんとは彼女のお母さんの事です」
確かにデイジーさんの事を話すのなら、避けられない人物だけど社長は気にせずに話題を広げるから焦るよ。
「そんな感じですけど……彼女がこちらに引っ越しするって事が決まったんですけど、色々な事情でソレが中々進展しなくて……そんなタイミングで彼女が街中で迷子になってしまって、その時は偶然ですが俺の友人が彼女とトラブルになってしまい、偶然居合わせた俺が助ける状況になりました。ただ……その友人は悪い事をしてなくてですね、彼女が極度の人見知りなのが問題を大きくしてしまいました」
「でもピパン君がその問題を解決に導いたんでしょ?」
流石に奥様は知ってるんだな。
その続きを知りたがっている。
「まぁ……そう……なるのかなぁ? なんか……そうなってますけど、色々あって俺が彼女に惚れてます」
「おぉ言い切るわね男らしい! ほぼ一目惚れみたいだけど大丈夫?」
ルディーさんが言うには……ね。でもメリーアンさんの言いたい事は解る。だって本人に告白もしてないもんなぁ……
「何か不満そうだな?」
「いや……不満はありませんけど、不安は凄くあります」
社長の質問に、正直に答えた……
「だって俺……まだ彼女に告白をしてませんもん!」
「「「ど、如何言う事!?」」」
奥様以外の女性陣が反応する。俺が聞きたいよ!
「実は……」
俺は『彼女と両思いである』と言うのはルディーさんからの言い分で、それは彼の手元に届いた彼女からの手紙に基づいているだけである事を言う。
「それって一歩間違えると、ただのやべぇヤツじゃない?」
その通りだと思いますメリーアンさん。
俺の気持ちは伝えてないし、彼女の気持ちも兄の推測だし。
「ふ~ん……まぁ僕もルディーと同じ考えでその点は大丈夫だと感じてるよ。あのトラブルがあった日……終始お前に引っ付いてたし、お前から離れようとした時のあの娘の不安そうな表情。告白すれば、100%OKだと思うよ」
「社長にそう言ってもらえると凄く自信が湧いてきますが……」
色恋事(だけでは無いけど)に関しては、社長の見識はズバ抜けているから、問題は無いと俺も確信を持ってる。
とは言えだ!
「じゃぁ、今から連れてきてやるから、満足するまで告白しろよ」
「はぁ!? い、今から連れてるぅ!?」
あ……そ、そうだった……こ、この人魔法を使えるんだった!
「おいルディー行くぞ!」
「了解、社長!」
「な、何でルディーさんまで!?」
「僕だけが行くとデボラがうるせーし、ハゲに誘拐だと騒がれる。其奴に二人の牽制をさせるんだ」
「で、ですが……」
そんな無茶な事が罷り通るとは……思えないのが一般なんだけど、この人(リュカ様)には関係ないんだよね。
「待ってる君たちは彼女が来ても騒がない事。一応もう一度言っておくけど、彼女は凄く人見知りが激しいから、来て早々周囲で騒がれるとパニックで何も出来なくなっちゃうからね」
そんな注意喚起よりも連れてくる事を遠慮しようとは誰も言わないんだな。
奥様がこれから来るデイジーの飲み物を用意しようとキッチンへ向かうのを合図に、社長とルディーさんが事務所から出る。
ザルツさんとメリーアンさんは社長の魔法を知らないから不安(疑問)で包まれている。
俺に出来る事は、その二人に魔法の事を説明するだけ。
非常にレアな魔法だけど、その利便性とリュカ様のお陰で特にこの国では知られている魔法だ。国王という立場の人が使用する魔法である事に加え、魔法を使用したリュカ様のご活躍は義務教育の教科書に掲載されるくらい有名なので、お二人への説明も苦労はしない。
15分程経過……
ビルの外から声が聞こえてきた。
最初に社長が事務所へと入ってくる。
俺は慌てて立ち上がり、事務所のドアまで迎えに。
ゆっくりとドアが開き、ルディーさんの背中に隠れたデイジーさんが入ってきた。
……や、やっぱり凄い美人だ!
俺と目が合うと、慌ててルディーさんから離れて俺の胸に飛び込んでくる。
ほ、本当に……りょ、両思い……だな!
お二人(リュカ様とルディーさん)が彼女に何と説明してるのか解らなかったけど……
「あ、あのデイジーさん。な、何で連れてこられたのか聞いてる?」
「う、うん。ピパン君から何k…………」
耳元で聞いてる俺には聞き取れたけど、相変わらず最後の方は何を言ってるのか聞き取れなくなる(笑)
そう言えば何で居るのか解らないギャラリーには聞こえなかっただろう。
まぁそんな事は関係ない!
俺はこの場での告白が恥ずかしいって感情はあるモノの、完全に全てをはっきりさせたい気持ちがあるから興味本位のギャラリーを喜ばせる事を我慢して、大好きな女性に俺の思いを伝える!
「きゅ、急で申し訳ない……でも俺……デイジーさんに言いたい事があって……」
「…………っ」
彼女の瞳を真っ直ぐに見て、俺は俺の気持ちを伝える事を伝える……あぁ、我ながらややこしい!!
「す、好きですデイジーさん! お、俺と付き合って下さい!」
言い切った……父親が居て、彼女の兄が居て、何故だか無関係な人々が沢山居て、何の罰ゲームなのか解らない告白。
……こ、これって成功するのか!?
「そ、そんな……きゅ、急に……で、でも……あ、あの……わ、私m…………」
当然と言えば当然だが、突然の告白にパニックになる彼女。
彼女じゃなくったってこの状況で告白されれば真面な返答は出来ない。
取り敢えず返答は後日だな……
そう考えて腕の中のデイジーさんを見詰めると、「わ、私も」と涙声で聞こえてきた。
驚きながらデイジーさんを見詰め続ける。
折角の美人が台無しなくらい表情を崩して俺の胸に顔を埋め連呼する。
「私も好きぃ! ピパン君の事が私も好きぃぃぃ!!」
本当に両思いになれた……と言うか確認出来た!
俺は嬉しさと安堵の気持ちで舞い上がっている。
でも……この後どうすれば良いのかな?
何も考えず、社長等に流される感じで告白しちゃったけど、俺は如何すれば良いのですか?
「一先ずはおめでとう。よくこの状況で告白したな。それが凄い!」
こ、この状況を作っておいて、そう言う事を言うんだよな……この人は!
思わず複雑な表情で社長を睨む。
「まぁ何時までもそんな所で抱き付いてるなよ(笑)」
部屋の入り口付近で、抱き合っている俺等に冷やかしの声で着席を指示する。
俺はさっきまで座ってた椅子へ……デイジーさんは奥様が用意してくれた俺の隣の椅子へ。
皆この状況を楽しんでいる。
騒ぎ出さないのは大人だからってだけじゃ無くて、騒いで囃し立てるって事に幼さを感じているからだろう。これがクラスメイトとかだったら、今頃変な騒ぎに陥っているだろう。
だから社長は言う。
「茶番だな! 結末は解っている事なのに(笑)」
そうかもしれませんでしたけども、告白する前にも後にもそう言えるのは当人じゃ無いからですからね!
「後で……出来れば今日が良いけど、母さんにも紹介しないとな」
父さんから言われて思い出す。
別に故意にでは無かったのだけど、母さんを蚊帳の外に出したままの告白だった。
いや、そりゃぁ母親にアレコレお伺いを立てて女性に告白するなんて変な話だけど、父親の方だけをここまで巻き込んでいては、何も知らされてないこの状況に拗ねてしまうかもしれない。あの母の事だから問題は無いと思うけどね。
ピパンSIDE END
後書き
皆の前で告白させられるって
ある意味で拷問だよね。
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