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帝国兵となってしまった。

作者:連邦士官
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2


 訓練所で俺は硬いベッドで目を覚ます。こんな硬いベットではあるがそれでも魔導師は過去の遺物扱いを受けつつも、それなりに優遇されているようで一人一つの個室を与えられている。もしかしたらだが、そんなことはなく単純にここの施設の収容人数が規模に対して極めて少ないのかもしれない。

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 そのおかげで作業に専念できるというものだ。桶に昨日の夜汲んでおいた水を入れて、顔を洗い身なりを整え、カフスボタンもしっかりと決める。

 そして、今日は半日休暇なので貯めるために長々とした論文を書く。これは前世で文章を書く機会や書くことも多く、妹の卒業論文の手伝いやブログなどもやっていた経験が光るのだ。人生何があるかわからない。いや、普通は人生はなんかこんな理不尽な目に遭わないんだけどな。なんだよ、強制転生なのか憑依というべきなのかは知らんがなぜこんなことに‥‥。

 まあ、考えても仕方がないから手を動かし気を紛らわすしかない。こういう何気ない訓練の合間にも書き溜めをすることは必要なことだ。書けば書くほど除隊への道が早まる。それに今日は楽な座学の日だ。教官の一人が妹の結婚式に行くそうで、午後から座学だけの日になった。流石の真面目だらけの帝国軍人といえども血を分けた肉親の冠婚葬祭には参加するのだな。と思いながらもしっかりと筆を滑らせて文を進める。

 最初の話の題材は機械化と家畜、戦争における石油などの燃料資源のあり方。企業と国家の関係。石炭の石油化の是非、そして塩鉄酒タバコの専売論。

 まず、やり玉に上げるのは機械化を進める政府だが、この資料にあるようにトラクターやトラックに推奨金を出してはいるが、増えてきているこれらの機械は戦時にはもちろん徴用する。そうなると今までの働き手+機械がいなくなることで一気に産業がダメージを受ける。

 そのダメージは多岐にわたり、何より運転手なども増やさないといけない。しかし、悲しいことだが現状自家用車が現代よりも居ないことから運転手の数の問題もある。運転手とトラックが徴用されてこれらの分野が弱くなると輸送が滞り、輸送力の低下が国力の低下に直結する。また、農地における力の源であるトラクターの少なさは生産力に直結するのだ。

 そこで、合理化を叫ばれて廃れつつある家畜と蒸気機関の再利用だ。確かに家畜は穀物などを食う上に機械より面倒が掛かる。そして運用計画をしようとも繁殖という生産には時間がかかる。その上で内燃機関に比べて馬力などの生産力は低い。だが、これらをうまく扱えば戦争に必要な工業力を使わずに輸送ができる。その上、彼ら家畜は戦略物資の石油と鉄を使わない。蒸気機関も石炭という物資となり、棲み分けという形で大砲とバターはそこでは両立できうる。

 先程の燃料備蓄の問題を解決するためには、川辺などに馬車鉄道の線路を配備し、艀船などを牽引させることにより、無機物の輸送から有機物の輸送にある程度は転換することで、極力備蓄している石油を使わない様に、という言う話と長期目線における、木炭の推奨と植樹と泥炭の利用、並びに他国からの大量輸入により国内の資源を使わずに、金で他国の資源を合法的に目減りさせることができる。石油の使用量を下げて石炭を軍事に回す準備はするべきだとも書いておいた。

 平時からの戦時規格と部品の統一規格を定める統合整備計画についての思案と企業の有無について書いて置きもした。こうして、更には財閥批判も同時に展開してやばい国家思想をキメてる、予備役に送り込むべき稚拙な人材だと思わせる。

 戦時統制価格については隣の髭のおじさんの‥‥みんな髭をはやしていたからややこしいな欧州対抗毛深い髭達磨選手権か? 陸軍主体のルーシー連邦を荒廃主義と非難しつつも、戦時において軍が円滑に軍事行動ができるように、今現在できる最高峰の通信能力と演算機能を集めた、コンクリート建設の半地下の要塞である国家統計局を新たに郊外に作り、戦時統制の練習をさせるという無理な話を書く。

 その統計局の仕事は、生産量管理や配給量管理もやらないといけないと言う、陸軍主導型社会主義を彷彿とさせつつ、結局実権は官僚なのか軍なのかわからない上に、やることはふわっとアバウトにまとめてどっちつかずの話で、俺に決断力がないと思わせる。

 更に無茶な要求を書いていく。現在は平時ではあるが大規模な戦争が起こるとしたならば、それに伴い将校不足が予想されると簡潔に書き、対策として全体の佐官に将官の教育をさせ、尉官に佐官の教育をさせ、下士官に尉官の教育をさせ、一等兵や上等兵に下士官教育をさせるという無理難題を書いた。

 これにより国家動員による破滅的な総動員が起きる戦争が始まっても、教育をしてあることで臨時動員で膨らんだ師団も円滑に、現場の指揮官不足にならないと書いておくが、同時にこれは軍内の派閥やエリート主義にまで波及するポスト争いが起きる、かなり刺激的な檄文になるはずだ。そこに秋津洲皇国のかつての編成に備という、総合的な戦闘団もあったとも混ぜ込む。

 更に無線の数を増やしつつ、現場の下士官や尉官が現場判断できるようになることで、円滑な進撃を行え、今は廃れているが、とにかく強く厚い右翼と薄く何回も引かれ幾重にも重なった防衛ラインを機能させれば防衛できる、とこれだけガバガバ内容を書けば大丈夫だろう。

 「これで俺は‥‥やっとこの国を‥‥。」
 出ていけるのかと言う前に、廊下に人気を感じて我に返った。授業が始まる前にやらなければならないことがある。これは日課になってしまったことだ。

 それは毎回、こういう怪文書が出来上がれば教官に渡している。同時にではあるが同じ訓練生たちにも見せたり、元々ではあるが勉強会が開かれているのを利用して、大した意味はないけど熱弁して、空回りを演出しそれにより不穏感を出して、軍から追い出されるように日々努力はしている。なぜか、毎回俺しか話さなくなるし、俺が質問攻めを食らうだけの勉強会って結局なんなんだよ。

 「なぜ、魔導師は発達するのでしょうか?今はもはや航空機の発達により偵察程度であり、魔力については個人の資質が激しく兵科に適してない旧来のものです。やがて航空機が発展していけば、爆撃用の機体のみとなり機銃すら必要なくなるはずです。爆撃機で固めれば敵を粉砕できます。」
 なんで爆撃機万能論になるんだよ。むしろあんなのはエンジン効率を考えたら、爆撃に4基エンジンを載せるのであれば、戦闘機が4機できる。
 
 「それには小官が答えよう。これは極めて基本的な、それもごく初歩で簡単な話であるが、どんなに人が科学が進もうとも、歩兵などによる陣地制圧がなくして物事の進行は難しい。しかしだ、我々が今持つこの演算宝珠による進行スピードがあれば、先行して爆撃機から爆撃と共に敵深くまで侵攻、敵集積地である後方の都市を制圧ないし包囲ができる。それができるまでに車両で要塞線を避けて進み、要塞に立て籠もる敵を無視して相手の通信速度より早く、敵の懐に入り込めばいい。」
 黒板にわかりやすく凸を書いて図解で説明をした。矢印の方向線を書き足していく、更に無線による連携のために魔導師を通信機代わりに使い、更に円を書いていく。

 「しかし、それでは敵は要塞にいる。そこから敵が補給線を破壊しに来たらどうするんですか?現実的に敵は見過ごさないでしょう。これらの動きには穴がある。そこから敵が出てくるだけで寸断される。」
 簡単だろ。そうならないようにすればいい。確か記憶のとおりならばこうすれば。

 「まず、相手には固定観念がある。我々が馬鹿正直に要塞と戦うだろうという謎の自信が。ならばそれを逆手にとればいい。ここに新兵を揃えて、訓練された砲兵と歩兵でまやかしをする。相手は要塞や塹壕にこもっているから多くの場合、それらは本格的な部隊と誤認するだろう。そして、その誤認や固定観念は遅効性の毒となり、要塞から打って出ようにも眼の前に歩兵がいたらそれはできない。更にはこの土地を見てみたらいい。そして、更に歩兵展開を早める装備がある。」
 俺はゴソゴソと用意してきた中古屋で買った画材入れの古びた鞄からおもむろに模型をだした。


 「具体的にはここは全体的に舗装をされてることから、歩兵の速度を早める装備として推奨したいものがある。それは車より安くて使えるものだ。この三輪式の自転車だ。自転車により歩兵の速度は跳ね上がる。車両も視野に入れている。」
 とりあえずそんなことをいっておく。どうせ開戦後には俺はいないからな。しょうがないよな。俺は責任取れないが、多分様々な知ることからそれなりに役に立つだろう。それに適当なことばっかり言って、そんなことで振り回すのは、彼らに失礼だからな。まぁ、それなりのことを言っとけば、彼らも納得するだろう。

 「なるほど‥‥。今、車両と言っていましたがどんな車両を想定してるんですか?少なくとも今の車両では、舗装されている道はともかくとして、整地されてない場所をそんな速度の移動は無理でしょう?」
 なんでそんなに根掘り葉掘り聞こうとしてくるのか?レスバに自信があるのかな?でもまぁ、その疑問を解決させる方法はそんなの簡単だろう。

 「こういうバイクを作る。後ろは履帯だ。それと半分は履帯のトラックを作る。これらによる整地されてない大地を移動する。それが機動戦だ。確かにそこに強い右翼を実現させる秘策があるということだ。機動戦には装甲を施した車を利用する。これはタンクと言われるものだ。これらは菱形でサイズはこれぐらいで、エンジン室と操縦室を分けており、長期的に見れば人より早く動くはずだ。車両は塹壕を越える。予想ではこの戦いは塹壕と制空の戦いになるはずだ。」
 確か菱形戦車はこうだったよなと書く。更にエンジンは多分航空機の星型エンジンがいいよな。ともかくパーツと規格を統一させると書く。戦時統一規格と書き、横にはインチは撲滅と書く。

 何故かセンチによるインチの撲滅を見たことで集まっていた大多数から歓声が上がった。インチをみんな嫌いなのかな?

 「本気でイ、インチをそのとおりにメートル規格で撲滅させるのですか?」
 何を言ってるんだ?センチの中にインチ規格があったら邪魔だろう。みかんの中にブラッドオレンジやマンダリンを混ぜるぐらい迷惑だ。あのときの冬場のバックヤードで選別させられたのは忘れられない。食べれれば大した変わりないだろう柑橘類なんだけど微妙に違うから面倒なのだ。

 「そのとおりだ。メートル規格でヤード・ポンド法を撃滅させる。統一したほうが都合がいいだろう。なぁ!打倒せよインチ共を!あのインチ頭たちを!ヤード・ポンドにメートル・グラムの鐘を鳴り響かせてやろうじゃないか!」
 なんでそんなにインチの話にこだわるんだろうか?インチなんかインチに過ぎないだろう。インチに親でも殺され‥‥実際に居そうだな。センチの中にインチネジ規格発注書に発狂して…みたいな。この世界でも合州国インチと連合王国インチで違うらしい。クトゥルフ神話の邪神でも、こんなにインチほどしつこくないだろう。

 「そうかなるほど!これこそが‥‥帝国国歌を歌おうじゃないか!鳴り響くように農村部に資本家に聞こえるように!この歌をその歌を全国に染み渡るように!」
 えっ?なんだよ‥‥なんかいけないものをキメてるんじゃないのか?何だよお前ら。怖いな発作か?まぁ、紅茶を飲んで落ち着こう。騒ぐ彼らを無視して、紅茶を淹れ、香りを楽しむ。今日は教官から貰った茶葉だ。


 議題は流れ、国歌がとまると具体的な戦術立案が展開された。サイコロと地図が展開され地形についても書き込まれていく。

 開戦までに、飛行機や兵器の進化速度を加味して出来たのが、後方地点、共和国のガレーを潜水艦に詰め込んだ魔導師部隊による強襲揚陸奇襲作戦と、同時に国境線から機械化部隊を主力として突破、その後に歩兵を雪崩込ませて敵の通信能力や反撃能力を飽和させる。そのためにどうすればいいか聞かれて、渋々自走砲や迫撃砲に無誘導弾ロケットを書かされた。コングリーヴ・ロケットの話をして説明すると納得したようだ。

 その後に塹壕にどうしたらいいのかまた書けとか言われて、散弾銃や短機関銃に対戦車ライフルも書く羽目になった。

 その後に吊るし上げるようにこの国の航空機はどうするべきかと散々問い詰められて、水上機空母なども追加で書く羽目になって空母が入るべき軍の帰属の是非。

 ほかにも船団防衛の重要性とか、果てはなぜ人は争うのか、戦時簡易モデルの武器を平時に設計するべきかの議論や毎日書いてる怪文書の話もさせられ、国家百年の計永続国家継続のためとか、何度も何度も色んな話をさせられた。

 そして、彼らの話の中でよくなにかをする際に経済の話がでてきている。更には延々と戦争開始と同時に、政府エリアを制圧して政治の常道を皇帝に戻すと言われて、反乱軍に参加させられたくはないので、仕方がなく、エコノミーとは東の国々では経世済民というらしくその意味は世の中を治め、民衆を苦しみから救済することだと言って、まず、政治家に協力してくれる人物を探してからやるべきなどを答えて、やっと終わった。

 終わりには与えれば与えられんとか国家百年の計やら継続社会の設立。先制的専守防衛論がどうのとか言ってたがほっとけば収まるだろう。

 疲れたが単に俺が話してみんなが聞いて質問してきて答えるだけだし、あんまり反発してこないけどこの国の訓練生は大丈夫だろうか?それにあの反政府運動の話といいコイツら割と余裕があるから、そうやってやってるのかな?そろそろ、サヨナラできるよな。まぁ、こうしてみると割と楽しい人たちだったよ。

 次に書く怪文書はニーチェやハイデガーなどを色々と混ぜ込んだ、とても痛々しい思想本みたいなのにしよう。歩きながら、軍内でそんな思想本を勝手に言ってるやつがいたら除隊されるだろうと、漠然と考えていた。こんなにも色々と色んなことをしているのに、割と何も起きないから暇なんだよなと思いながら、その後の授業を受けた。

 そして、最後に教官室に呼び出された。やっとお役御免かと歩く。古い軋む廊下は色あせてはいるが、その色には日々の時間が刻まれてる砂時計の砂のような味わいがあった。

 教官室の前で胸を張り、持ってきた資料などを纏めた。やっと終わるのかと思ったら、名残惜しくも感じた。

 「伍長、よく来たな。」
 教官のアーガトン・ヴュンシュマンが声をかけてきた。俺の体はなんやかんや一度普通の徴兵を優秀な成績で済ませているので、訓練兵ながらもすでに1ヶ月の段階でその時の階級である伍長らしい。よくわからないがそれで先任扱いされていて、聞かれていたのもあるのだろうか?

 「はっ!参りました!」
 取り敢えず最後であるから完璧に従う振りはしておく、あまりにも反抗的すぎだと銃殺刑もあるかもしれないからな。平和な除隊は論文や銃を振り回してればそれがよいわけではない。上手いこと悪くない条件での除隊方向に走らせなければならない。

 「そのなんだ。貴官は遅咲きだが、しかし、不幸な手違いの中の極めて幸いなことに最初の徴兵期間で、しっかりと砲兵と機関砲を修めている。またそして、今回の訓練での極めて優秀な魔導師としての成績もある。まるで背中に目がついているかのような空戦と、明らかに異質な空戦機動での戦法及び、それの運用法の進言。晴れてこの幼年学校から士官学校へ貴官を推薦すると決まった。光栄なことだから受け給え。」

 言われたことを反芻しながら、帰り道の中で頭の中で思考をぐるぐると魔女の鍋のように回していた。

 いや、なんでこんな自ら演じているが危険人物を士官学校に推薦を‥‥?いやいや待てよ、もうここでは扱いきれないから士官学校に推薦するとしてるならば納得だな。それにここよりも士官学校のほうがきっと厳しいに違いない。ならすぐに予備役に編入されるように頑張ればいい。奇抜な戦術とかを提唱してすぐに「あぁそういう人ね」という扱いを受けて予備役に入って、すぐに合州国に亡命すればいい。偽名なんていくらだって使える。簡単な話だ。

 それにあの国ならば国籍だって金で買えるわけだが、手持ちが少ない。手持ちを増やさないといけないが、こんな薄給の兵士候補にそんな儲け話があるわけが‥‥あったな。

 為替レートや嗜好品がある。この帝国はこの時代の軍事力によって決まるレートがかなり高い。なら、そのレートでくず鉄や嗜好品を買えばいい。戦争では鉄と穀物は買いだと様々な話で聞いた。

 つまり、今の安いうちに穀物や鉄や嗜好品を少しずつ買う。それに木材も高くなる。この体の持ち主の実家の木材も使えるはずだ。山林を持つ領主だからな。領主ってなんだよ。結局よくわからない体制だなこの国。

 だがそうだからこそ、木材や鉄や穀物をなんとか出来て逃亡資金にできるかも知れない。取引所と連絡を取ってみるが資本が足りないと言われてしまった。しょうがないよな。

 先立つ物が足りないために、準備としてまずはこの訓練所に来て出来た友人に出資を募る。配当さえ渡しておけば問題はないだろう。一人、また一人と出資をしてくれた。一番、計算が得意な友人のユンガーなども集まって投資計画を話すのは楽しかった。

 数カ月後、外出許可を取ってビアホールにいた。

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 「ユンガーは資金があったらこの通りに軍用の鉄道を引くというのだな。しかし、鉄道は大動脈で道路で血管を繋がないと不全を起こすのではないか?」
 ほとんど自習のようなものの机上演習の時間に区画割の話をした。日本では街を作るゲームなどをよくやっていたからな。こういう話も楽しいもので、友人とはよく理想の地下鉄などの話をしていた。

 「ここにいたのか。」
 今、声をかけてきた小柄な男であるオーデンハウデンは口だけは上手く、呼び込みも売り込みも一級品だ。そんな彼は軍人ではなく購買の配達員である。他にも、工場員のエアハルトや、鉄道無線員のライハルトに教師のハイリッヒ、薬剤師のグレゴールなどが主なメンバーである。建築家のギスラ兄弟やフリッツもたまに来る。趣味人が集まったお遊びクラブなのだが、理想の国家についてたまに話すこともある。俺は理想の国家を知り得ないから現代日本の話をする。それに食いついてくる彼らは面白いがな。

 「オーデンハウデン。急いで何を伝えに来たんだ?そんなに焦る必要もないだろう。」
 全くもってオーデンハウデンは暇人で、昼間はパンの配達員、夜はパブでほら話をするのが趣味だそうだ。なんで暇なんだろうな。羨ましい奴だ。

 「あの穀物鉄保護計画(買い占めの話だと外聞が悪いためにそういうことにした。)大口の出資者を見つけた。名前は建築家のアルベルト氏と商人のローゼンベルク氏で、彼らが工面してくれると約束した。書面もある。」
 そうか。ついに逃亡資金に目処がついた。今は1916年。確か6年は余裕があるはずだ。勝ったな。ここから買い付け続けて1923年までに完成させ、合衆国に脱出し物資を売ればいい。

 「書面か。」
 何故か格式張った羊皮紙の書面には金字で救国会議と書かれていたが、まぁ暇人の集まりだからそんな仰々しい書き方もするだろう。ある程度の資金が貯まってしまえば高飛びできる。そもそも根無し草であるから、早く出ていきたいなと思ってるうちに、会議という名の雑談は終わり、皆帰路についた。

 もうひどく疲れたんだ眠らせてくれ。なぁいいだろ。だって俺は‥‥。
 
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