偽マフティーとなってしまった。
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16話
随分と小綺麗になった営倉を用意されていたスーツを着てかぼちゃマスクを被った俺が、コツコツとコンクリートの廊下を歩く。後ろに久しぶりにあった気がするツヴァイとドライがいる。ドライはマフティー分が低いのでかなり助かる。マフティーが高めのインテリのツヴァイは、ちょっと最近、いやもうずっとずっと前から許してほしいが。
「この間、二人は一体どうしていたんだ?俺はそれなりに忙しかったが。」
どうしていたんだろうか、本当に。ツヴァイはマフティーなんちゃらをしていたんだろうが、ドライは何をしていたのか気になる。パイロットから整備士に通信士まで出来る男だからな。
「マフティーの、マフティーの仕組みの深さをチャットの友人GJと話していた。GJのマフティー論は深い。いちいち、俺のマフティー性の低さとマフティーとはかくあるべきかを教えてくれるんだ。マフティーサイトを増やしたりな。」
あっ‥‥幸せそうで良かったな。うん、良かった良かった。壁にでもマフティーを話しててくれ、ツヴァイ…って待て!?その筋のマフティーサイトってお前だったのか!?
「俺はジオンの連中と模擬戦をしたな。さすがジオンだ。斬りかかったマニピュレータを掴まれて、相手はその隙をついてクローでもないMSのマニピュレータでコックピット潰そうと貫手と言われるのをしてきてな、撃墜判定になった。マシンガンやバズーカを捨てるかと思ったらそのままそれで殴られたりとか、ヒートソードを投げてきたと思ったらマシンガンで撃ってヒートソードを回転させて叩きつけてきたりとか、ザクマシンガンのマガジンの丸いやつを投げてきて撃って誘爆させて散弾にしたりとかな。ジオンは凄いな。」
ジオン残党こっわ!?おかしいだろお前!なんでブランクがあるとか言うようなしんみりする話をしていたのに、嘘だろおい、キンバレー隊より練度が高いんじゃないのか!?ジオンだけ異様に強いんですけどバランス調整間違えてない?
「それは凄いな。特にそのコックピット潰しの技。」
じゃあエゥーゴやティターンズはどうなのかと思ったら、エゥーゴにもグラサン、アポリー、ロベルトとか居るからジオンの系譜だよな。ノースリーブ情けないおじさんより凄いことしてる。
「あぁ、話を聞いてみたら、とあるジオン兵が編み出したらしいが、ニホンの柔道と空手の動きを更に取り入れたり、アジアとアフリカに散らばったジオン残党が現地の格闘技を組み込んでその動きが出来るようになったジオンのパイロットが多いらしいぞ。ティターンズも暴徒鎮圧用の散弾の使い方も凄い。SFS経験だけなら群を抜いているから、大気圏内の高速移動は彼らだな。エゥーゴから来たのは試作兵器を持ってきてくれた。」
エゥーゴだけオチみたいに言うのをやめてやれよ。変に試作兵器ばっかり作ってまともな主力兵器を作れずに迷走してる集団みたいじゃないか。ジオン残党がおかしいだけだって。
「で、どんな奴らなんだ?まともなMSがあるようには見えなかったが。」
本当にそう。数だけ多いならグスタフ・カールの強襲でやられかねない。現実として向き合って、彼らの指揮官になると決めたんだ。それぐらいはやってみせるさ。
「あぁ、ホバートラックにファンファンにルッグンから量産型ガンタンクにザクキャノンにジム・キャノンなど基本は後方支援系ばかりだな。まぁ、後方支援系だからこそ生き残れてきたんだろうが。エゥーゴもティターンズもジオンもマフティーの元に集まるとはマフティー性の集まりだな。人々がマフティーという一筋の光を求めているんだよ。」
あっそう。ツヴァイの言う通りで支援兵器が多めなら、まぁエコーズのロトに対する警戒網を作れるだろう。アデレードの連中もこっちが水泳部やら航空隊が増えたのはわかるから、下手に攻めてアデレードに逆侵攻をくらいましただなんてバカはしないだろう。キンバレーは力の使い方がわかってない官僚気質のおっさんであって、そこまでバカではない。多分。そう信じている。
「マフティー、マフティーとマフティーに意味を求め過ぎだろうに。」
本当に、本当にそう思ってツヴァイを窘める。しょうがないんだ、マフティー会話やめてくれ。
「意味がないからこそ意味があるといったじゃないか。マフティーは意味がないからこそ、意味を持つマフティーだ。それがマフティー性でマフティーさ。GJも言っている。マフティーを求めるのなら、まずマフティーダンスを踊れってな。」
知らんわ。ゼロシステムならぬマフティーシステムが乗ったガンダムにでも乗ったのか!?マフティーシステムが乗ったガンダムってクスィーガンダムだった。もう訳がわからない。
「まともに正面からジェガン相手に戦えそうなのは、正直なところハイザック・カスタム、シュツルムディアス、ディジェ、シュツルム・ガルス、ガ・ゾウム、ズサ・ブースターぐらいだな。後日、ザクIIIやヘイズル、ケンプファー、イフリートと呼ばれる機体が到着するらしい。」
まだ、増えるのかよ!?ケンプファーとかどこから持ってきたんだよ!ヘイズルも‥‥いや、ジム・クゥエルとパーツがあればできるなら、ニューギニア工廠とかから持ってきたら作れるのか?ヘイズルパーツとかそうそう落ちてるとは思わないが、ギャプランが落ちてる世紀末だしな。
ティターンズの保管ガバガバすぎる。もう宇宙でGP03に乗ったマフティーとか出てきても驚かないぞ。GP02が背中にミサイルポッドつけてビームバズーカで突破してきてもエクバかとか思わないからな。
「ヘイズルか‥‥。ジムだな。」
ジムだしな、あれ。性能が高いカリカリチューンジム。だけれどもガンダムのデチューンがジムだからガンダムのような気もするが、ガンダリウム合金が使われてないからガンダムじゃないのか?何がガンダムか何がガンダムじゃないかはクルーゼ対フル・フロンタルのレスバトルみたくなるので辞めておこう。
「ジム?ヘイズルはジムなのか?」
まぁ、ジムと言えばジムだろ。よくわからない。原作者か発給元にお問い合わせしないとわからん。
「あぁ、よくわからないがな。陸戦型ジムはガンダムらしい。時間だ。」
そんなことを言ってるうちに時間になった。護送の準備だ。
「あぁこれ以上はフィーアに悪いからな。まさかマンハンター長官をマンハンターの装甲トレイラーで送るとはな。皮肉なモノだな。これもお前が言う敬意を払わなかったことへの報いか?」
ドライがニヤッとする。
「知らんさ。因果応報ならこっちだって死ぬしかない。滅び行く身だよ。」
本当にな。困ったものだ。
「確かにな。地獄に落とされたって文句は言えんな。」
ドライは良いやつだな。インテリみたいにマフティーとか言わないし。
「地獄ならもう成ってるさ。」
宇宙世紀は地獄だ。と言うかネオ・マフティーとは何なんだろうか?ネオってついて大丈夫だったものをあんまりガンダムで見ないぞ。
「地獄なら良いがな。もしかしたら今は天国かも知れん。」
久しぶりにマフティーを言わないツヴァイを見れたところで、彼等が居る営倉に仮設されたリビングとなっている部屋に入る。
ガチャリと音がするが、すぐさま俺はこう伝える。
「鍵が開いたからといって椅子で殴りつけるのが地球連邦軍の挨拶なのかね?ケネス大佐。連邦は捕虜虐待が歓迎されてるようだな。」
ケネスを制止する。隠しカメラでわかっていた事だ。ケネスは椅子を下げる。そういう事をするとツヴァイがテロリストらしいテロリストらしさを出してくるからやめてくれ。
「お見通しか?それもマフティーがニュータイプである証かな?」
ニュータイプだったらこんなに苦労してないわ。いや、ニュータイプだったらより苦労するだろうな。感受性豊かなのにマフティーダンスで精神攻撃されたら、彗星かなにかになりそうだな。
「ケネス大佐、私はニュータイプでは無いし、ニュータイプになる気もない。古い地球生まれの地球人だよ。新しいからと言って良いこともないさ。マフティーはマフティーだからな。」
マフティーはわからないが、確実に俺はニュータイプ的な人を察する力はない。ニュータイプだったら、俺はこんなに面倒なことになってない筈だ。
「ニュータイプじゃ無いなら、なぜマフティーという概念でニュータイプのようにそうやって人々を導こうとする?無責任じゃないのか?」
ケネス、本当にマフティーダンスは関係ないんです。踊っただけで後はジャックが悪いから。
「何も導こうとしてない。これも人々が考えた結果だ。ならば地球連邦政府への不満もわかろうものさ。私はニュータイプにはなれない。ニュータイプになれたとしても、ニュータイプ的な感性を持つオールドタイプさ。わかり合えようもない。だったら少しずつ皆が誰かに優しくなれれば良いじゃないか?違うか?ケネス・スレッグ大佐。」
皆が少しずつ優しくなってネットミーム化を許してくれ、さっき営倉に来るまでに端末で調べたら、ジャックめ。あのギャプランみたいな白い奴が踊りながら、デストロイモードから緑の光になって、その光がラー・カイラムを包み込んでいたぞ!嫌がらせか。
「だがその優しさこそがこうして現れていて、俺たちはこうして捕虜にされてる訳だが。あり得るか?その優しさ。」
いや、レスバトルしに来たわけじゃないからケネスは黙ってくれよ。
「では優しさと甘さは違うということだ。若さ故の過ちは認めたくないが、認めてこれからの糧にすればいい。甘やかしたが故に連邦政府はマンハンターを作り出した。適度に反省を促さなければ反省は出来ない。過ちを認めるには誰かの指摘がいるさ。殴られずに一人前になった奴も少ない。今はその時間だ。」
ケネスはまだなにか言いそうなので追撃しようとしていたのだが、ギギが何かを言い出す。なんだ?
「ではケネス大佐や私に強く言ったあの言葉も?」
はっ?何をいきなり言い出すんだ?
「あれは私の若さ故の過ちだ。君に苛立っていただけさ。意味はない。不愉快だったなら謝ろう。」
なんだ?ジッとこっちを見てきて。かぼちゃの材質なら良くわからない樹脂とカーボンを混ぜた複合材らしいぞ。だからなんだと言うんだ?
「嘘を言っているね。」
ギギを受け止めようと思ったが、俺は反省したんで何を言うか待ってみよう。というか、フィーアが外の車でイライラしてるのでは?
「嘘?一体何がかね?」
若干、キレそうだが抑えた。
「それは言わないよ。マフティー、貴方がマフティーである限り秘密は秘密だもの。それに貴方の発言で反省したから。」
はっ?また思わせぶりなこと言ってるだろ、お前。それっぽいことをそれっぽく言うんじゃないよ!俺と違ってお前はパトロン持ちなんだから関係ないだろ。マフティーを演じないといけないわけじゃないだろ。
「気に食わんな。思わせぶりなことを言わないほうがいい。私みたいにマフティーになるしかなくなるぞ。」
本当にな。マフティー、やっぱりやめたいわ。ギギの相手はきつい。もっとかわいらしい子を‥‥可愛らしい子って誰だ?ぱっと浮かぶのはラクス、ハマーン、リリーナ、エクシアなんだが、俺のラインナップはおかしくなったのか。エクシアってなんだよ。ヒロインがエクシアか?
「それはお互い様じゃないかな?」
それはそうかもしれないが、止めてくれ。マフティー文法で疲れているんだ。
「お話のところ、悪いんだがねぇ‥‥。どうして来たのかね?」
保健衛生大臣などの大臣の多くは平気そうだが、内宇宙監視大臣とハンドリー・ヨクサン長官が汗を流している。確かに教育や保険ならばジオンには関係ないが、内宇宙監視大臣やマンハンター長官は当事者だからだろう。
「諸君らを相応しい場所に連れて行くと決めた。付いてきたまえ。ツヴァイ、ケネス大佐を監視しろ。私は彼を高く買っていてね。地球連邦政府にも、まだ彼のような清廉さがある人物だっている。」
褒めれば褒めるほどケネスの立場が悪くなる。
「我々は解放されないのか!?ふさわしい場所とは!?私は役職に真っ当に生きていただけなんだ。」
よく喋る。ヨクサン長官が叫ぶが命乞いをされてもな。殺す気ないし。
「何かを勘違いしているようだが、ヨクサン長官。他の閣僚の様に地球連邦政府閣僚としての自覚を持ち、ちゃんとしたまえ。」
促すが、まだヨクサン長官は暴れようとしている。何でだよ。
「よさないか!我々は地球連邦政府閣僚だよ?ここで死ぬのなら名前が地球連邦政府議会に刻まれる、胸を張れ。」
エインスタイン大臣が叱咤をする。いや、だから殺さないって。
「殺すつもりはないさ。君たちは客人だ。数日中には解放される。キンバレーの手腕に感謝するのだな。」
落ち着いたようで表の車まで向かった。
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