魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
EpilogueⅠアムル復興頑張りますっbyアムルの愉快な住民
†††Sideエリーゼ†††
イリュリア戦争が終結して今日で3日目。わたし達アムル組は、避難先にしていた隣町ヴレデンからアムルへと帰って来ていた。見上げる空は雲一つとしてない晴天。刻はお昼過ぎ。うん、今日もまた素晴らしい・・・
「復興日和ぃぃぃ~~~~~~~~~っ♪」
だね。空に向かって叫ぶ。今日も元気にアムルの復興に勤しむとしましょうか。アムルの街を歩いて、トンカンと金槌で釘を打つ音、ゴツゴツと煉瓦を積み上げる音などなど、壊れた家屋を建て直す音を聴く。壊れたのは悲しいし辛いけど、でも直っていく。元通りじゃなくて前よりもっと良いアムルに生まれ変わる・・・。
生まれ変わったアムルの姿を想像しながら街路を歩いていると、
「おはようエリーゼちゃん!」
「屋敷を立て直す時になったら、遠慮なく呼んでくれよ!」
「ああ! 俺らの英雄たちが住む家だからな!」
「シグナム姐さんの部屋は俺が作るぜッ!」
「じゃあ俺ぁシャマル先生の部屋だッ!」
「シュリエルリート様のお部屋は、絶対に誰も譲らねぇぞッ!」
「なにぃ!? てめ、この前まではヴィータちゃん贔屓だったろうが!」
「もちろんヴィータちゃんの事は愛してるぜ。でもな、シュリエルリート様は女神なんだ!」
「変態め。俺はな、アギトちゃんとアイリちゃんの寝台を作る!」
「「「「変態はお前だ!!」」」」
知り合いのおばさんやおじさん達、家を建て直している大工のお兄さん達から声を掛けられる。自分たちの家やお店の建て直しもあるのに、それでもそう言ってくれて本当に嬉しい。だから「はいっ、その時はお願いしますっ!」断らず、お言葉に甘えさせてもらうことにする。でも大工のお兄さん達は捕まればいいと思います。大切な家族の部屋に変な細工をしたら、オーディンさんに懲らしめてもらおうっと。
(でも屋敷の修復なんていつになるやら・・・・)
アンナとターニャとグレゴールの戦いでメチャクチャになった屋敷の修復は後回しにしてる。だって時間かかり過ぎるよ、直すどころか新しく一から建てないといけないからね。だから、しばらくはアムルの修復に力を注ぐことになると思う。
「あーでも早く住むところを造らないと、ターニャに迷惑掛かるよね」
屋敷の住人・・・わたしやアンナ、そしてオーディンさん達は今、ターニャの家にお世話になっている。モニカとルファの家にお世話になるって話もあったけど、こんなこと言っちゃうのは失礼だけど、2人の家はそんなに大きくない。
あとご家族も居るし。だから天幕を張って野宿でもしようかって話になった時、ターニャが誘ってくれた。ターニャは2人に比べて一人暮らしで、しかも家はそれなりの大きさ。空き家だったものを自己負担で改修して住んでいる。
ターニャってばまだ24歳なのに、
「最北部地方から最南部地方にまで1人で引っ越してきた変わり者なんだよね~」
わざわざイリュリアっていう危ない国の国境近くのラキシュ領はアムルにまで引っ越してきた。これを変わり者と言わずして何て言うんだろうね。変わり者じゃなかったらただの「馬鹿だね♪」あははっ。
「だ~れが変わり者で馬鹿だって~?」
「痛いっ?」
後ろから聞こえたそんな声と一緒にゴツンと頭に振り降ろされた拳骨。頭を押さえて振り返る前に、声とその言葉で誰だか判っているから「ターニャ、何するの!」プンプン怒る。
「なんでエリーゼが怒るの!?」
ガーンと後ずさったターニャはすぐに「あなたが怒るのは筋近いでしょ!」ってわたしの顔を両手で挟み込んで、頬をグニグニ捏ねてきた。顔を潰されて気分が良いわけじゃない。だから「ひゃめてぇ~~」抗議する。でもターニャはわたしの両頬を捏ね繰り回すのを止めない。それどころか「あなただけ追い出してもいいんだよぉ~」なんて言ってきた。
「今あなた達を住まわせている家の主は私。家主権限で、あなた独りだけ庭に追い出して、天幕暮らしさせてもいいんだよ♪」
「ひょめんなひゃい(ごめんなさい)」
うん、素直に謝ろう。一人寂しく庭先で天幕暮らし。家の窓から見えるのは、昼夜を問わずみんなの幸せそうな一般生活。想像しただけで泣く。と言うかもうわたしの右目から涙がポロッと零れた。どれだけ惨め?
わたしが謝ったことで「よろしい」って満足そうに頷いたターニャは、ようやく手を離してくれた。さすさすと自分の頬を擦りながら「酷いこと考えるよね、ターニャ」って睨む。
「先に酷いことを言ったのはあなたでしょうが。で? 私の何が変わり者で馬鹿で美人だって?」
「美人って言った覚えなんて――」
「ん?」
妙な威圧感を感じ取ったから「うん、ターニャは美人だよね」首肯しておく。また満足そうに頬を緩ませるターニャに、「でもさ――」さっき考えていたことを話す。ターニャがどうしてアムルに引っ越して来たのか。返ってきた答えは単純至極。
「クイックヴォルンの環境がどれだけ過酷か知ってる? 年中寒いの、雪降るし。しかもイリュリアと同じように敵対国との国境だったし。それなら比較的暖かくて、王都に近い南部にしようって思ったわけ」
北部と南部両方に敵国に挟まれてるシュトゥラ。でも、その状況もつい先日で大きく変わった。イリュリア戦争。大国イリュリアを相手に、シュトゥラ、三連国バルト、ガレア、シュヴァーベン、ヘルウェティア、ヴィンランドの同盟8国(アウストラシアの一部戦力が加わったけど)が始めた戦争。
その結果イリュリアは敗れた。敗戦宣言も、新しく王になったバルデュリス王によって出されたし。北部国境線の敵国トロイアも、今回の同盟8国のイリュリア勝利の影響か判らないけど、シュトゥラとの無期限不戦協定を結んだし。
「これからもずっとアムルに残る・・・んだよね?」
「当たり前っ♪ 私はずっとここで生きていくよ」
「そっか」
それが聴けて嬉しいかなぁなんて。それからわたしとターニャは、他愛ない話をしながらアムルの街を見回った。立て直しに必要な資材が足りなくなったとか、お手伝いが必要なところはないかとか、それを目で見て耳で聞いて確認するのが、アムルの主たるわたしの務めだ。各所で聴いた注文をメモ帳に記して、午後に訪れるシュトゥラの南方復興支援隊の人たちに進言すれば、資材や人員を寄越してもらえる。
「ディレクトアが活躍してくれたおかげで、優遇されてるよねラキシュ」
「それはないんじゃないかなぁ・・・」
贔屓目に見ても、イリュリアを倒せたのはオーディンさんの“力”が在ったからこそだと思う。各国各都市に撃たれ続けたエテメンアンキの砲撃を、開戦から終戦までの間ずっと防御していたんだから。オーディンさんが居なかったら、きっとイリュリア戦争に勝てなかったかもしれない。ううん、たとえ勝てたとしても、勝ち負けなんて関係ないくらいにベルカは壊されていたはずだ。
「でもだからってシュトゥラのどこもかしこも大変なんだし、いくらなんでもラキシュを優遇しないと思う」
「ふ~ん、ちょっとは優遇してくれてもいいのにね?」
それには苦笑で返しておく。オーディンさんの名前で優遇してもらえたらいいなぁってちょこっと思っていたり。けどそれは叶わぬ希望だって納得して、とにかく今は最後の場所へと向かおう。これから向かう先は、わたしの想い人が居る場所。知らず歩く速さを上げてしまう。
「ディレクトアのところに行くなら私、一緒に居ない方が良い?」
「なんで? アギトにアイリにシャマルさん、それにモニカとルファも居るし。まぁ2人きりでゆっくりお話ししたいなぁ~って思うけど、現状じゃ仕方ないと思う」
まったく話せない程にすれ違っていない事だけでも嬉しいことだよ。ターニャの家で今朝も、おはよう、の挨拶もしたし、一緒に朝ごはんも食べた。離れてからまだ4時間ちょっと過ぎくらいしか経っていないけど、でもやっぱりそのちょっとの時間だけでも離れると寂しいのです、です、です。
「あはは、逸る気持ちは解るけど、そんな速度出さなくても・・・!」
「うん?・・・っとと」
言われて初めて気付く。腕をこれでもかって言うくらいに大きく振って、全力早歩きをしてた。うん、お淑やかに、でも出来るだけ早く逢いに行きたいから、軽く早歩きをしよう。
追いついてきたターニャと並んで、再び目指すは・・・て「あれ? オーディンさん?」前方の十時路を横切って行くのは、今から逢いに行こうとしていたご本人様のオーディンさんだった。と言うかその状況がどうにもこうにもおかしすぎて、わたしとターニャはポカーンと見送ってしまう。
「「「「「えっほ、えっほ、えっほ・・・・!」」」」」
「英雄殿のお通りだぁ~! 道を開けろ~~~い!」
「なぁ皆。自分の足で歩くから降ろしてくれないか?」
「何を言う英雄殿! 降ろしたら降ろしたで逃げるだろう!」
「はぁ。勘弁してくれ・・・」
なんとオーディンさんが男の人数人に担がれていたのだ。先頭を行く恰幅の良い男の人、父の友人だったトニおじさんが道を開けさせていく。家の陰へと消えて行ったオーディンさん達を見送った後、「何やってんの? トニおじさん達・・・」ターニャが呆れ口調で漏らした。わたしもそんな感想しかないよ。オーディンさんを担いでどこに行こうって言うのかなぁ。どうしよう、すっごく気になってしょうがないんだけど。
「どうする? 男爵としての仕事なら、ディレクトアの仕事場の医院(仮)に行かないといけないけど・・・」
うん、ここはバッチリ男爵としての務めを果たすべきなのは判ってる。でもそれ以上にオーディンさんが何で担がれてまで連れ行かれたのかが激しく気になる。だから「ターニャぁ・・・」ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから見に行きたい、オーディンさん達が何をやろうとしているのか。
「ちょっ、エリーゼ。そんなうるうるした瞳での小動物のような縋る眼差しはキツイって」
別に狙ったわけじゃないんだけど。でも「私も気になるんだけど、仕方ない」ってわたしの持っていたメモ帳を取った。ヒラヒラとわたしの顔の前でメモ帳を振って、オーディンさん達が進んで行った道とは逆方向の医院(仮)へと歩き出したターニャは最後に振り返って言った。
「後で聴かせてよ。ディレクトア達が何をやろうとしていたのかさ♪」
「うんっ。・・・・まぁ止める必要が無い限りは・・・」
アムル復興に不適切な馬鹿騒ぎをする場合は即刻中止だ。わたしの代わりに医院(仮)に向かってくれるターニャと別れて、オーディンさん達を追うことにする。あとでアンナに怒られそうだなぁ。興味や好奇心より仕事でしょって。よし、土下座で謝ろう。
「・・・って、もうどこにも姿が見えないし・・・!」
どうにか追いつくか見つけようかと思って駆け足になる。オーディンさん達が進んで行った通りは、屋敷と中央広場と教会を繋ぐ大通りだ。医院(仮)を建てた屋敷跡地の方から中央広場へと向かって行ったから、脇道やどこかの家や店(壊されずに残ったやつね)に入らなければ中央広場かなぁ~。僅かながらの坂を上ってそして下り、中央広場を眼下に収める。遠目にでも判る、オーディンさんの綺麗な長い銀髪。
「オーディンさん発見♪」
300mほどの距離を走る。それにしても「足速いなぁトニおじさん達」すぐに追い駆けたのにもう中央広場に着いてるって。そんなに元気が有り余ってるなら復興作業に向けてほしいものだよ、まったくもう。徐々に近づいて来る中央広場。そしてオーディンさんが困っているような顔が見えた。オーディンさんを囲っているのは、さっきまでオーディンさんを担いでいた人たちに、石材店のおじさんだ。とりあえず「みんな何をやっているんですか?」おじさん達の背中に訊く。
「おお、エリーゼちゃん、良いところに!」
「オーディン先生の未来のお嫁さんからも言ってやってくれ!」
「ふえっ!?」
いきなりのお嫁さんって言う単語に、顔が一気に熱くなった。わたしがテレて俯いたのをいいことにおじさん達が、結婚式には呼んでくれだのお似合いだの赤ん坊が楽しみだの好き勝手言ってくれた。どれもがわたしの望むことだけど、さすがにこんな人の居るところで大声で言われるのは恥ずかしすぎる。
「ぅきゅぅ~~~」
顔を両手で覆い隠す。そんなところに「はいはい、これ以上エリーゼを苛めないでください」オーディンさんが手をパンパン叩きながらそう言った。俯いていた顔をちょっとだけ上げて、指の隙間からオーディンさんを見上げる。トニおじさん達をジロッと窘めてから、「そうだエリーゼ。君からも言ってやってくれ」ってまた頼まれた。
(またも流された・・・orz)
一切テレ無しのオーディンさん。そのおかげもあって冷静になれたと言うのが悲しい。オーディンさんが差し伸べてくれた手を取って立ち上り、すべてを仕切り直すためにコホンと咳払いをしてから、もう一度ここで何をするのか訊いてみた。
「・・・なるほど。中央広場に、オーディンさん達グラオベン・オルデンの石像を立てる・・・」
と言うわけだった。石材店の店主にして彫刻家としても名の有るおじさん、グラオベン・オルデンの人数分の石柱。で、朝早くから医院(仮)で働いていたオーディンさんがここに連行されて来た理由は、
「石像を彫るために、私にポーズを取ってくれと頼まれたんだよ」
「ほらさ、やっぱり格好いい体勢の兄ちゃんを残しておきたいからよ」
「アギトちゃんやアイリちゃん、シグナム姐さんやシュリエルリートの姐さん、シャマル先生やヴィータちゃん、そんでもってザフィーラの旦那にも当然、ポーズを取ってもらおうって話だ」
「でも先生は、石像なんて彫らなくていいなんて言いやがるからよぉ」
「だから無理やり連れて来たと」
呆れてものも言えない。けど、「よし。アムルの長にして男爵位を持つこのわたしエリーゼが許可しましょう!」オーディンさん達の石像を彫ることを承認。おじさん達は「うおおおおお!」歓喜の雄たけびを。オーディンさんは「まさかの裏切り!?」悲嘆に暮れた。だってだって、オーディンさん達みんなの石像を、グラオベン・オルデン発祥の地であるアムル、その中央広場に造るとか良い提案だよ。
「石造彫刻は認めますけど、まずは復興作業を最優先にしてくださいね」
「ちょっ、エリーゼ!? 助けてくれっ」
「石像くらいいいじゃないですか。と言うか銅像でもいいくらいですよ」
オーディンさん達を後世にも残していく方法としては悪くない。あと手記。これはわたしの仕事かな。
「う~んと、なんて書こうかなぁ~♪」
手記帳を新調しようと考えながら踵を返して、ターニャの居る医院(仮)へ歩を進める。後ろから、
「エリーゼさぁぁぁぁ~~~~~~ん!」
オーディンさんの悲鳴が聞こえて来るけど、ちょっと悪戯心が生まれたことで無視。ちょっとはテレてくれてもいいのに、完全に素面なんだもん。だ、か、ら、
「頑張ってくださいね~~~~~~~❤」
最後に、振り返って大手を振る。トニおじさん達にポーズをいろいろ指示されてるオーディンさんと目が合ったような気がしたからニコッと笑みを向ける。そしてまた歩き出す。それにしても何であんなに嫌がるのかなぁオーディンさん。
歴史に名を残せるほど活躍して、それを後世に残すことが出来るんだから。やっぱりベルカを去るつもりだから、自分が存在していた証拠を残したくないとか思ってるのかな・・・? だとしたら本当に寂しいことを考えてるんだ、オーディンさん。
「これはやっぱり愛の力でどうにかするしかないっ、ないっ、ないっ!」
決意を新たに、医院(仮)へ向かって走る。で、着いたら着いたで、
「やっぱあたしらしいポーズっつったらこれだろ♪」
「アイリはねぇ・・・こうかな♪」
「んーじゃあ、あたしは、こう?」
「ヴィータちゃんもアイリちゃんもアギトちゃんも可愛い~❤」
ヴィータ、アイリ、アギトの3人がポーズの練習をしていた。子供組はどうやら石像製作にノリ気のようだった。モニカは作業そっちのけで目をハートにしているし。そして「モニカ! ちゃんと仕事して!」ルファに怒鳴られてる。でも気にもせずにハァハァ息を荒くするモニカ。
うわぁ。離れたわたしでも引いたんだ。近くに居たルファは思いっきり後ずさった。ルファは結局諦めたようで、医院(仮)に戻って行った。医院(仮)は、丸太で造り上げた簡易な木造小屋だ。
「もうヴィータちゃん。ヴィータちゃんも仕事に戻りなさい。瓦礫の破砕作業、まだ残ってるんでしょ?」
「判ってんよ。今はちょっと休憩中」
ルファの代わりにシャマルさんが出て来て、ヴィータを窘めた。ヴィータは復興に邪魔な瓦礫を、その攻撃力を以って破砕するのを仕事としてる。アギトとアイリは連絡係兼雑用。シグナムさんとザフィーラさんとシュリエルさんは建築のお手伝い。シャマルさんはもちろんオーディンさんと同じ医者としての仕事だ。
「シャマルも今のうちにポーズを考えておいた方が良いぜ。あとでメッチャ恥ずかしいポーズを指示されても困らないようにな」
ヴィータが“グラーフアイゼン”っていう名前の武装を首飾りに戻してこっちに歩いてきた。
「お疲れ様、ヴィータ」
「おう! エリーゼもお疲れ! もしかしてオーディンと逢ったか?」
「うん、逢ったよ。町のおじさん達に担がれていったのを見て・・・」
「あはは。おっさん達も面白いよなぁ。オーディンが断り続けていたら、いきなり担いで強制連行だぜ?」
思い出し笑いをするヴィータ。よほど面白かったみたいだね。ヴィータと別れて、アギトとアイリにも「お疲れ様~♪」って労いの挨拶、モニカには「仕事しろ」と注意をしてから医院(仮)に入る。中は、瓦礫と化していた(屋敷の火事に巻き込まれなかったのは幸いだ)元医院から掘り起こされたカルテや書類を収めた書棚が2つ。薬品が収められた大き目な棚が1つ。
机と椅子がオーディンさんとシャマルさん用にそれぞれ1つずつ。患者さん用の椅子と寝台も1つずつ。その中で、シャマルさんとルファがカルテに目を通していた。そういえばターニャはもう行っちゃったのかなぁ・・・?
「お疲れ様ですシャマルさん。ルファも」
「あらエリーゼちゃん。お疲れ様」
「お疲れ、エリーゼ。ターニャに仕事任せて大丈夫だったの? アンナにバレたら雷だよ」
「その時は誠心誠意土下座するから、それで許してもらうつもり」
ルファとシャマルさんが苦笑する。それからターニャがちゃんと仕事をしてくれたことを聴いた。あとで何かお礼をしないと。わたしの外回りの仕事も終わり、アギトやアイリと同じ雑用の仕事始めることになる。こうして今日もまた陽が沈むまでアムルの復興を進める。一日でも早くのんびりと家族たちと過ごしたいから。
「うっしゃぁーーーっ! 頑張ろうっ、オーッ!」
拳を空に向かって強く突き上げる。ちなみにターニャに、オーディンさん達の石像を造るって話を聞かせたら、
――案外つまらないことだったね――
って笑うだけだった。そう言う割にはすごく楽しそうな顔をしていたよ、ターニャ。
後書き
ミンガラ・ネレーキンパ。
今話からショート(一万文字未満)ストーリーをやっていきます。おそらく10話も行かないでしょう。基本的にのんびりなお気楽話です。
ページ上へ戻る