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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第7章】八神家が再び転居した年のあれこれ。
   【第2節】ユーノ司書長まで参加した合同訓練。(前編)



 さて、なのはとフェイトはこの4月に復職して以来、『また機会があったら、カルナージで合同訓練もしてみたいねえ』などという話をしていたのですが……9月になって、ようやく参加希望者たちの日程を上手く調整することができました。
 今のところ、日程は9月26日から29日までの3泊4日の予定で、参加者はなのはとフェイト、スバルとティアナ、エリオとキャロ、現地在住のルーテシアとファビア、さらには、執務官補佐のアインハルトとウェンディやメルドゥナに、広域捜査官2年目のギンガとチンクまで含めて、総勢13名の予定です。

【五年前(80年9月)の合同訓練とほぼ同じメンバーで、今回はディエチが来ていない代わりに、アインハルトとメルドゥナが参加しています。】

 しかし、9月23日の晩には、思いがけず〈本局〉の方からキャロの(もと)に、『5年ぶりだが、またアルザスへ行くように』との連絡がありました。
 ただし、今回は『アルザスの竜使いの一族から「どうやら、黒竜が巫女に会いたがっているようなので、巫女をこちらに(つか)わしてほしい」と陳情があった』とのことなので、これは「許可」と言うよりも、むしろ「要請」です。
(もちろん、ここで言う「黒竜」とは、ヴォルテールのことで、その「巫女」とは、キャロのことです。)
 幸いにも、スプールス自然保護隊の総隊長からは『規定どおりに有給休暇を消化するように』と言われていたので、エリオとキャロは今回、早めにカルナージへ行って何かしら準備の手伝いなどをするつもりで、あらかじめ「24日から30日まで」七日間の休暇を取っていました。
 そこで、キャロはその要請を快諾(かいだく)し、〈本局〉には船の手配を頼みます。
 その上で、(時差を考えて)その夜のうちに、ルーテシアには次のような連絡を入れました。

『急な話なんだけど、何だかヴォルテールに呼ばれているみたいなので、私たちは明日から、また「ヴォルテールへの御機嫌うかがい」にアルザスへ行って来ます。
本当は、一日早くそちらに着いて何か手伝うつもりでいたんだけど、そんな訳で、時間的な余裕が無くなっちゃったの。準備とか手伝えなくて、ごめんね』

 すると、じきに次のようなメールが返って来ました。

『気にしないで。以前からあった話だから、実はもう準備はほとんど出来ているの。それよりも、もし人数に制限が無いのなら、私たちもまた御一緒させてもらえないかしら』

 実際のところ、人数は特に制限されていません。そこで、キャロもこう返しました。

『それなら、また一緒に行こうよ。待ち合わせ場所は、ミッドの首都中央次元港に付属の、管理局の転送施設。時間は、現地時間で明後日(あさって)25日の正午(おひる)前、ってことでいいかな?』

 そして、ルーテシアの方からは、またすぐに了承のメールが届き、キャロもまた明日からの休暇を楽しみに、眠りに就いたのでした。


 なお、惑星スプールスの南半球に拡がる第五大陸は、丸ごと「特別の」自然保護区となっているので、陸上に次元港や空港などの施設を作ることは全く許可されていません。
 そのため、この大陸における自然保護隊の拠点となる施設は、大陸の北岸部から少しばかり離れた「とある人工島」の上に築かれていました。
 そこで、エリオとキャロは翌朝、「本来の姿」に戻ったフリードに乗って、昼前にはその島へと上陸し、フリードを「小さな姿」に戻して昼食を取った後、そこからは転送で「本局からの指示でその島の上空にまで来ていた次元航行船」に乗り込みます。
 そして、その輸送船はすぐにドナリムへと出航しました。スプールスとドナリムを結ぶ次元航路の長さはおおよそ140ローデ。通常の巡航速度でもおよそ21時間はかかる道程(みちのり)です。
 こうして、二人と一頭は翌25日、ドナリムの首都次元港に到着すると、そこからは転送ポートを使って、ミッドの首都中央次元港に付属の転送施設まで一気に「即時移動」をしました。
(基本的には、〈マリアージュ事件〉などの際にミッドを訪れた時と、全く同じルートです。)

 ところが、約束の時間に約束の場所へ行ってみると、そこには何とルーテシアとファビアだけではなく、「合同訓練の参加予定者全員、プラス2名」が勢ぞろいしていました。
 聞けば、ルーテシアから話を聞いた一同が、口を揃えて『そういうことならば、自分たちもこの機会にヴォルテールに挨拶(あいさつ)をしておきたい』などと言い出して、みな、仕事を一日早く片付けてしまったのだそうです。
【思い起こせば、5年前のアルザス行きは、『なのはたちがカルナージを(あと)にした直後に、キャロの許に〈本局〉からの「特別許可」が届く』という、相当に残念なタイミングでした。
 以来、特にスバルやウェンディは、『いいな~。私も真竜に会ってみたかった~』などとこぼしていたようです。(笑)】

 なお、アインハルトは、あれから何かと気分が沈みがちに(そして、無限書庫にこもりがちに)なっていたヴィヴィオを、気分転換と称して、自分が6年前に初めてカルナージに連れて来られた時と同じように「やや強引に」この旅行へと連れ出していました。
(高等科の方は、しばらく「病欠」という扱いです。そして、実際に、ヴィヴィオにとって、この旅行はなかなか良い気分転換になったようです。)

 さらに、どういう訳か、「()み上がりのユーノ司書長」までもが、ヴィヴィオと一緒に付いて来てしまったので、当初の予定より「プラス2名」となり、エリオとキャロまで含めると、総勢15名もの大所帯(おおじょたい)になっています。
 一行は全員で昼食を取った後、「即時移動」で、ヴァイゼンとフォルスを経由してパルドネアのアルザス地方へと飛びました。
(アルザス地方は、〈管6パルドネア〉の首都アロムディとは「ほとんど12時間」もの時差がある土地ですが、クラナガンとの時差はせいぜい1~2時間ほどです。)


 一同は「竜使いの一族」から感謝の言葉を受け取った後、皆で車に乗って「黒竜の山」へ行き、ヴォルテールと面会しました。
 正直に言えば、真竜が「巫女」以外の人間の言葉を、どれぐらい正確に理解できているのかは、よく解らないのですが……それでも、なのはたち一同はめいめいに丁重な挨拶をしました。
 ふと気がつくと、ヴォルテールの背後には、何やら「一個の巨大な卵」が台座のような岩の上に安置されています。卵の高さはほとんど人間の背丈ほどもあるでしょうか。
 キャロが皆を代表して問うと、真竜は低く(うな)り声を上げました。
 真竜の異質な思念を人間の言葉に変換するのは、キャロにとってもそれなりに困難な作業でしたが、それでも、キャロは慎重に言葉を選びながら、ヴォルテールからの思念を可能な限り正確に意訳して皆に伝えます。

『自分は「交配すべき相手」の最終脱皮を待っているのだが、まだまだ十年以上はかかりそうだ。自分も、それ以前に早死になどするつもりは無いが、念のため、ひとつ早めに産んでおいた。
この卵を早く(かえ)したいので、これから三年あまりの間は、巫女の召喚にも即座(すぐ)には応じられないだろう。今回は、それを伝えたくて巫女を呼んだ。
 この子は、いずれ自分に代わってこの惑星(ほし)守護者(まもりて)となるだろうから、巫女はまた十年ほどしたら会いに来てやってほしい』

「ええ……。真竜の力って、惑星全体を守れるほどのモノなの?」
 スバルは、あくまで(ひと)(ごと)のつもりだったのですが、キャロが翻訳して念話で伝えたのでしょうか。ヴォルテールは、また低く唸り声を上げました。
 キャロがまたそれを意訳して、皆にこう伝えます。

『真竜単独では難しいが、真竜と巫女が「融合」すれば、できるようになる。しかし、その手段は巫女への身体的な負担が大きすぎるので、自分は使うつもりは無い。
 実例は、750年ほど前のこと。ジェブロン帝国とやらがこの惑星(ほし)にまで攻めて来た時、自分の曽祖父に当たる真竜が巫女と融合し、軌道上でその艦隊を殲滅したのだが、地上に戻った次の日に、その巫女は死んでしまった。自分は幼体の時に、祖父たちからそう聞かされている』

 フェイト「それって……多分、前664年の〈パルドネア攻略戦〉のことよね?」
 なのは「ジェブロン帝国が急速な衰退を始める原因になったっていう、あの事件のこと?」
 キャロ「はい。そのようです」
 ユーノ「当時、具体的に何があったのかは、これまでずっと歴史上の謎とされて来たんだが……そうか。やはり、真竜の仕業(しわざ)だったのか……」
 ヴィヴィオ「確か、帝国艦隊の三分の一が一挙に失われたんでしたっけ?」
 ティアナ「何、それ? 真竜、(こわ)すぎるんだけど!」
 ファビア「当時は、強襲揚陸艦で魔導師を現地に投入する戦い方ばかりで、次元航行艦同士による砲雷撃戦など、まだほとんど無かったそうですからねえ」
 スバル「いや、それにしたってさ!」
 メルドゥナ《うわあ……。もしかして、私、めっちゃ「場違い」なのでは?(呆然)》
 ギンガ《大丈夫よ。あなただけじゃないから。(呆然)》
 ルーテシア「ところで、キャロ。後々(のちのち)のために訊いておきたいんだけど、(だい)替わりしてその子が守護者になるのって、一体いつの頃のことなの?」

 キャロはまた、真竜の唸り声を意訳して皆に伝えましたが、それは「質問に対する返答」と言うよりも、何やら「予言」のような、やや曖昧(あいまい)な言葉でした。

『今は良い時代だ。もうずっと「(なぎ)」が続いている。だが、いずれまた「嵐」が来て、今とは比べ物にならないほどの厳しい時代になるだろう。
 だが、お前たちがそれを心配する必要は無い。それは、この子がだいぶ成長してからのこと。今を生きている「人間」たちが、あらかた死んだ(あと)のことだ』

 ウェンディ「ええ……(なん)スか、それ?」
 エリオ「取りあえず、百年ぐらいは先の話だと思って良いのかな?」
 キャロ「う~ん。『だいぶ成長』するのは、それぐらいだろうけど、『代替わり』はどうだろう? ヴォルテールの三世代前の真竜が750年前に活躍したってことは……真竜の一世代って250年ぐらい? だとしたら、代替わりもまだ軽く200年以上は先のことになるんじゃないのかなあ」
 ルーテシア「なるほど。いずれにせよ、私たちの世代にはあまり関係の無い話ってことね」

 そこで、ヴォルテールは人間たちに『これでもう話は終わったので早く帰るように』と伝えました。相当に一方的な態度ですが、これでもまだ、ヴォルテールは真竜たちの中では「人間に対して非常に好意的な部類」に属するのだそうです。
 一行は真竜の(もと)()した後、もう一度、竜使いの一族に会って『黒竜からそのように言われたので、また十年後に、今回と同じ要領で管理局に陳情してほしい』と伝えてから、また「即時移動」で一旦はミッドチルダに戻りました。
 すでに夕刻です。一行はそのまま首都中央次元港に付属のホテルで一泊してから、翌26日の朝、「本来の予定どおりに」10時のチャーター便に乗って、改めてカルナージへと向かいました。
 27ローデは通常の巡航速度で4時間あまりの道程(みちのり)ですが、現地はクラナガンとは7時間もの時差があるので、到着は「現地時間で」朝の7時すぎに巻き戻ります。
(一行は、次元航行船の中で無理矢理に仮眠を取って、時差ボケにも「ある程度までは」対処していました。)

 簡易次元港からホテル・アルピーノまでは、送迎用のマイクロバスでの移動となりました。運転は、ルーテシアがみずから担当します。
 窓から外の風景を見ると、5~6年前に比べて「道路の整備や土地の区画整理」などが随分と進んだ感じでした。建物もぽつぽつと増えて来ており、ルーテシアに()くと、ゆくゆくはこの一帯に一個の「(タウン)」を建設する予定なのだそうです。
 一行は、まずメガーヌが用意した軽い朝食(?)を取り、個別の訓練でそれぞれに体をよく(ほぐ)してから、現地時間の9時すぎには早くも第一回の「陸戦試合」を始めることになりました。
「残念だけど、私、今回はメガーヌさんと一緒に観戦する側ね」
 ヴィヴィオは右膝を痛めているので、今回、訓練や試合には一切参加しません。
 また、言葉では『今回は』と言っていますが、実のところ、この右膝を治せる見込みはまだ全く立っていませんでした。

「人数が奇数なら、ガリューを連れて来るけど?」
 ルーテシアが誰に言うともなくそう()くと、ユーノは少し不思議そうな表情で周囲を見回してから、あたかも当然のことのような口調でこう(こた)えました。
「いや。14人だから、普通に分けられるだろう?」
 一瞬の沈黙の後、ファビアが何やら(おそ)る恐るといった口調で問いかけます。
「あの……司書長さんも、参加されるんですか?」
 どうやら、みな、『ユーノはヴィヴィオのことを心配して、付き添いで来ただけだ』とでも思い込んでいたようです。
「え? ダメなのかい?」
「あ~。みんな、知らないだろうけど、実は、ユーノ君、『かなり』強いからね」
 ユーノの少し困ったような顔を見て、なのははそう助け(ぶね)を出しました。
(ええ……。そうなの?)
 しかし、それは、大半のメンバーにとっては初めて聞く話でした。

「と言っても、まともに務まりそうな役割は後衛だけなんだけどね。……ところで、僕の(ほか)に後衛のできる人は何人いるのかな?」
 ユーノがそう言って右手を上げて見せると、キャロとルーテシアとファビアがそれに(なら)って手を上げます。
「じゃあ、まず、この四人を二組のペアに分けようか」
「それでしたら、今回、私たちは姉妹で組んで試してみたいコトがあるんですが」
「それなら、キャロ君は僕と組もう」
「は~い」
 そのようにして、最初のチーム分けはほとんど即興で決まっていきました。

 赤組は、なのはを中心に、後衛はルーテシアとファビア、中衛はフェイトとチンク、前衛はギンガとアインハルト。
 一方、青組は、ティアナを中心に、後衛はキャロとユーノ、中衛はメルドゥナとエリオ、前衛はスバルとウェンディです。
(ギンガは、エクリプス事件で両の義手を新調して以来、リボルバーナックルの「簡易型量産機」を使用しています。また、前にも述べたとおり、あからさまな空戦スキルや、ファビアの精神攻撃魔法などは「禁じ手」となっています。)

 メガーヌとヴィヴィオが観戦する中、レイヤーで組んだ「廃墟のような街並み」を舞台に、赤組は初手から大技を()り出しました。
 ファビア「ライト・オブストラクション!」( Light Obstruction :光の遮断)
 一体どういう原理なのでしょうか。昼間なのに周囲がいきなり夜のように真っ暗になります。

 ティアナ(また、あの子は訳の分からない魔法を!)
《何が来るか、解らないわ。中衛、広域防御!》
 メルドゥナ「ソーニィ・ウォール!」( Thorny Wall :(いばら)の壁)
 大通りが交わる大きな交差点に(じん)取ったメルドゥナが、デバイスの〈ヘヴィロッド〉を地面に垂直に突き立てると、彼女の背後に「金網のような構造をしたスケスケの長大な壁」が出現しました。高さは5メートル余、幅はその20倍ほどあるでしょうか。
 ティアナ(この子の魔法も得体が知れないなあ……。)

「ウイングロード!」
 正面から突っ込んで来たギンガが「詠唱(えいしょう)代わりのキーワード」を唱えると同時に、何本もの道が宙に伸びて、次々にその「(いばら)の壁」を乗り越えて行きました。
 すると、壁の上辺からは(いばら)(あみ)(ほど)けて(むち)のように伸び、次々とウイングロードに(から)みついて、()め上げていきます。
 それでも、ギンガの背後から飛び出したアインハルトは、目ざとく「鞭がやや出遅れた道」を見つけて、その道に乗り、間一髪で茨の鞭を(かわ)して「ダメージゼロのまま」巧みに敵陣への突入を果たしました。
 ただぼんやりと見ているだけでは、うっかり見過ごしてしまいそうな、一瞬の攻防です。

《すいません。アインハルトさんに突破されました。ギンガさんの方は足止めできそうです。》
《解ったわ。……キャロ。アインハルトがそちらに向かってるけど、大丈夫?》
 メルドゥナからの連絡を受けて、ティアナは後衛のいる方向に向けて念話を飛ばしたのですが、それに答えたのはユーノでした。
《大丈夫だよ。この僕がついてるからね。》
 余裕の口調です。
(と言われても、司書長さんに何ができるのか、私には全く把握できてないんですけど……。)
 ティアナは、内心では頭を(かか)えながらも、即座にもう一人の中衛へと念話を送りました。
《エリオ。予定より早いけど、前衛への増援、行ってくれる?》
《了解です!》

 アインハルトを敵陣に送り出すと、ギンガはウイングロードを手前に引き戻しながら、(こぶし)を構えました。このままメルドゥナと()(こう)勝負をしようと言うのです。
「さて、デュマウザの自慢の妹がどれほどの腕前か見せてもらおうかしら!」
「姉の名誉にかけて、及ばずながら、お相手つかまつりましょう!」
 夜のような暗さの中で、交差点を舞台に、息も詰まるような「タイマン勝負」が始まりました。
 とは言え、メルドゥナは「パワーでは」すでにギンガを圧倒しています。

〈ヘヴィロッド〉の外見は、基本的には「長さ2メートルあまりの(こん)」でした。中央部は普通に握れる太さですが、端へ行くほど太くなり、両端部は人間の脹脛(ふくらはぎ)ほどもの太さになっています。
 このヘヴィロッドは、彼女の父方祖父で(もと)執務官でもあるガドレウスが「可愛い孫娘」のために相当な金額を()ぎ込んで造らせた特注品なので、実に多彩な機能を持っている「はず」なのですが、メルドゥナは普段、これをほぼ「鈍器」として利用していました。
 彼女はすでに、以前はあれほど苦手だった「慣性コントロール」をも巧みに使いこなしており、相当な重量の金棒(かなぼう)を、並みの魔導師には全く真似(まね)ができないほどの速さで振り回して来ます。
 一方、ギンガは、クイント譲りの『パワーはそれほど関係ない。刹那の隙に相手の急所へ必殺の一撃を叩き込めれば、それで良い』という考え方の持ち主でした。
(この件に関しては、StrikerSのコミックス第2巻を御参照ください。)
 ギンガはウイングロードも駆使して、当たれば一発で致命傷になりそうな鈍器を巧みに(かわ)しながら、必殺の一撃を狙い続けます。

 一方、アインハルトは当初の作戦どおり、メルドゥナの防衛線を突破すると、そのまま有無を言わせぬ速攻で、敵の後衛二人を強襲していました。
 確かに、『敵が準備を整える前に叩く』という考え方それ自体は、決して悪くはないのですが、それでも、いくら周囲を暗くしてあるとは言え、速さを重視して姿も隠さずに突っ込んで行くというのは、やはり、『この強敵を相手にしては、無謀だった』と言わざるを得ません。
 ユーノは当然のごとく、アインハルトにバインドをかけました。もちろん、アインハルトも得意の「アンチェインナックル」で、それらのバインドを次々に引き千切(ちぎ)っていきます。

【ちなみに、英語の「アンチェイン(unchain)」は他動詞なので、文法的には分詞形にする必要があるような気もするのですが、ここでは原作に従っておきます。
 また、この語法に合わせて、以下の場面で「ユーノが使う魔法」の名称も、分詞形などは使わずに「インクリースバインド(increase bind)」と呼ぶことにします。
(なお、increase は、「増殖する」という意味の自動詞です。)】

 しかし、千切ったら千切った(ぶん)だけ、また新たなバインドが際限も無く、かかり続けて行きました。
(ちょっ! ……これは!)
 アインハルトの狼狽を他所(よそ)に、ユーノは思わず感嘆の声を上げます。
「話には聞いていたけど、凄いね。……じゃあ、もう少し速度を上げてみようか」
(ええっ!?)
 アインハルトも懸命にバインドを千切り続けましたが、今度はそれ以上の速さで新たなバインドが次々に彼女の体にかかり続けていきました。やがて、果てしなく増殖を続ける鎖が、(まゆ)のように彼女の全身を包み込んでいきます。
《アインハルト。ちょっと動かないで。》
 ほとんど身動きが取れなくなってから、ルーテシアの念話(こえ)が届きました。指示どおり動かずにいると、すぐにアインハルトの体は(鎖をその場に置き去りにして)ルーテシアの召喚術で彼女の(もと)へと転移させられます。

 一方、エリオは増援として前衛のスバルやウェンディに加勢しましたが、赤組もなのはが中衛のフェイトとチンクに加勢して、三対三でこれを完全に足止めしました。
 やがて、ライト・オブストラクションの効果も切れて、状況は混戦模様になっていくのですが、その(かん)にも、ルーテシアとファビアの「わるだくみ(笑)」は着々と進行していたのでした。

【例によって、これ以降の具体的な戦闘描写は割愛させていただきます。(苦笑)】


 
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