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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第7章】八神家が再び転居した年のあれこれ。
   【第3節】ユーノ司書長まで参加した合同訓練。(後編)



 昼食後、組み合わせを変えて二回目の陸戦試合をした後、昼下がりには全員で露天風呂に入浴しました。
(現地在住の二人を除けば、みな体内時計はとっくに夜になっています。)
 女湯では、まず、ルーテシアが二体のガリューや白天王について皆に説明しました。
 ことの起こりは5年前。ルーテシアとファビアがキャロやエリオとともに、四人だけでヴォルテールに会った時に、ヴォルテールが『また白天王に会いたい。子作りをしたい』と言い出したことです。

 そこで、『それでは、白天王も真竜の一種で、ルーテシアもどこかの世界の「竜使いの一族」の出身なのか?』という話になり、彼女の「ルーツ探し」が始まったこと。
 その翌年には、彼女の母方祖母のことを知る人々がミッド地上でまだ存命中と知って直接に話を聞いた結果、祖母が〈号天〉の「竜使いの一族」の出身だと解ったこと。
その直後に、二人して例の「ヴィヴィオ襲撃事件」に出くわしたこと。
 それから、〈本局〉経由でここに帰ってきたら、いつの間にか、ガリューが二体に増えており、仕方なくマフラーの色で(赤と青で)区別することにしたこと。
 そうした事柄をひととおり説明してから、ルーテシアは『今回は、キャロのおかげで「真竜との意思疎通の仕方」についても少しだけコツが解ったので、自分もまた機会があったら、そのうちに〈号天〉に密航して、直接、白天王に会ってみたい』と語って、自分の側の話を締めくくりました。

 ティアナ「そう言えば、卵を産んでいたけど、もしかして、ヴォルテールって、女性なの?」
 キャロ「真竜は基本的に、みな両性具有体です。今回のヴォルテールの卵のような『自己交配』は本来、最後の手段で……もしかしたら、ヴォルテール自身のクローンなのかも知れません。
真竜に限らず、大半の竜族は、元々「単為生殖」が可能ですけど、そうした生殖能力が身につくのは、普通は「最終脱皮」を済ませてからになります。ヴォルテールはすでにそれを済ませていますが、どうやら白天王の方はまだだったようですね」

【もちろん、公式には『白天王が真竜である』などという記述はどこにも無いのですが、話の都合上、この作品では以下に述べるような設定にしておきます。
『実のところ、真竜は「一個の生物種」としては(イヌと同じように)種内の「遺伝子多様性」が極めて豊かで、それに応じて(イヌに大型犬から小型犬まで、とても多種多様な「品種」があるのと同じように)棲む世界や個体による「外見の差異」も非常に大きい種族なのです。
 一般論としては、まず「鰐型、鳥型、獣型、(むし)型」の四大類型があり、そのそれぞれに「大型種、中型種、小型種」の区別がありますが、「生物種」としては、すべて同じ種なので混血は可能です。なお、ヴォルテールは獣型、白天王は蟲型ですが、両方とも中型種に分類されます。
 ただし、純血の鰐型は「真竜の祖型」とも言うべき「古代種」であり、大昔から個体数は随分と少なくなっていたのですが、最終的には「次元世界大戦」の時代に〈ゆりかご〉によって完全に滅ぼされたのだと伝えられています』

 なお、ルーテシアは、母方の祖母リーファが、実は、〈号天〉の竜使いの一族の出身で、彼女の真竜召喚の資質は、『新暦32年に、素性を隠してセクターティ経由でミッドに逃げて来た、この祖母からの隔世遺伝である』という設定です。
 もちろん、潜在的な「資質」が現実の「能力」として開花するかどうかは、これまた別の話なのですが、ルーテシアの場合は、どうやらレリックの影響でその資質が一気に開花したようです。
(ちなみに、メガーヌの場合は、その資質は「潜在化」したまま、生涯、表に(あらわ)れることはありませんでした。)】


 その後は、各人が露天風呂で「裸の付き合い」をしながら、それぞれの悩みなどについて語っていきました。
 まず、なのはとフェイトの悩みは、もちろん、カナタとツバサの問題です。

 なのは「もしも魔力がゼロだったら、このままずっと地球で生活させた方が、あの子たちは幸せになれるのかも」
 ルーテシア「確かに、お二人の子供がミッドで『普通の人間』として生きていくとなると、周囲の人々からは親と比較されてばかりで、少しばかり(つら)いことになるかも知れませんね」
 ファビア「身分制の時代には、名門貴族の家柄でも『魔力の全く無い子供が、臣下の家へ里子に出されてしまう』などというのは、よくある話だったと聞いています。逆に、魔力の強さを理由に臣下の子供を養子に取ることも」
 フェイト「私も、二人そろって空士になってくれれば良いなあ、とは思うけど、こればかりは(ふた)()けてみないと解らないわねえ」

 このメンバーの中だと、他に子供がいるのは、メルドゥナ(23歳)だけです。
「自分の娘は、まだ4歳で、集団検診は再来年のことです。……妹たちは19歳と15歳で、魔力はゼロですが、特にコンプレックスが強いという訳でもありません。
 親がどれほど有名なのかによっても随分と変わって来るんでしょうけど、私は自分がこの程度ですから、自分の娘についてもその種の心配はあまりしていません。……私は、むしろ、来月の自分の執務官試験の方が、まだ心配なぐらいで……」
 彼女はいささか自信の無さそうな口調でそう語りました。

 また、ヴィヴィオ(16歳)は、周囲から右膝のことを心配されて、『この膝も、思いの(ほか)、簡単には治せないみたいなんだけど……』と(こた)えました。
(その理由は、また「第一部」で述べます。)
 しかし、ヴィヴィオは自分のことよりも、むしろ潜入捜査中のリオや士官学校生のミウラのことの方が心配なようで、『あの二人の(なか)(たが)いは、どうにかならないものだろうか』などとこぼしたりもします。
 少しおいて、彼女はさらに、コロナの心配まで始めました。

 ヴィヴィオ「今回もアインハルトさんと一緒に誘ってはみたんですが……確かに急な話だったけど、それ以前の問題として……今は何か『家族で早急に話し合わなければいけない事柄』があるんだとかで」
 スバル「え? 何か家庭の事情?」
 ヴィヴィオ「コロナもあまりはっきりとは言ってくれないんですけど……どうやら、誰か男性に言い寄られているらしくて……正直、すごく心配です。
 ナカジマジム関連だと、アンナだけは何も心配は要らないんですけど、プラスニィとクラスティも、実家の居心地があまり良くは無いらしくて……これも、心配と言えば心配ですねえ……」

 ()いて悪く受け取るならば、ヴィヴィオの「友人たちに対する過剰な心配」は、自分で自分の心配をあまりせずに済ませるための方便でしかなかったのかも知れませんが……なのはも、その点に関しては、今はあえて何も言わないことにしました。
 世の中には「時間をかけなければ受け入れられない現実」も沢山(たくさん)あるのですから。

 一方、戦闘機人姉妹のギンガ、チンク、スバル、ウェンディにとっては、当然ながら、「5月にテロで死にかけた」ノーヴェのことが一番の心配事です。

 ギンガ「もうじきリハビリも終わって退院できるみたいだけど……ノーヴェはこれからどうするつもりなのかしら?」
 チンク「アイツのことだ。IMCSでの、ヴィヴィオとコロナの最終成績についても、必要以上に責任など感じておるやも知れぬ」
 ウェンディ「その話は、ノーヴェの件とは、あんまり関係ないと思うんスけどねえ」
 スバル「来月には、トーマもようやく就職するんだし、ノーヴェにも何とか気合いを入れ直してほしいところなんだけどなあ」
 ギンガ「実際に死にかけた人に向かって、あまりキツいコトを言うのもどうかとは思うけど……だからって、『甘やかしても良い』という話にはならないからねえ」
 チンク「しかし、思えば、今月で〈ゆりかご事件〉からちょうど10年になる。いろいろと自分の人生を見つめ直したくなる時期ではあるだろうなあ」

 なお、露天風呂の反対側では、ティアナが個人的に、フェイトにこんな謝罪をしていました。
「すみません。最初に頼まれてから、もうじき2年にもなるのに、ルキーテ執務官の件は何も解らないままで……」
「いや。こちらこそ、ごめんなさい。無茶なお願いをしてしまって……。あなたに解らないのも、無理は無いわ。私も復職後に〈本局〉で訊いたんだけど、現地の執務官の方でも、まだ何も解ってはいないみたいだから」
 今ここで心配してもどうにもならないことは、よく解っているのですが、それでも、フェイトは心配せずにはいられませんでした。

 また一方、男湯の方では、エリオ(20歳)もユーノ(29歳)とこんな会話をしていました。
「普段、男湯はボク一人なので、話し相手がいてくれるだけでも嬉しいですよ」
「君も、若いうちから、苦労してるねえ。(苦笑)」
 エリオは、そこでふと「五年前の合同訓練の際に、ファビアがクローンについて幾つか質問していたこと」を思い起こしました。
「ところで……司書長さんは、普通に男女の両親から生まれた人なんですよね」
「うん。ただ、僕の両親は、名前も素性もよく解らないんだよ」
「……え?」
「育ての親から聞いた話では、父は僕が生まれる前にもう死んでいて、母も僕が2歳の夏には早々と亡くなったんだそうだ。
 しかも、彼女は妊娠中にスクライア一族に保護されて、その時に『アディ・モナス』と名乗ったんだが……どうも、コレが最初から偽名だったみたいなんだよ。『誰かに追われているか何かで、素性を隠していたらしい』という話なんだが……」
「すいません。そんな重い事情があるとは知らずに、軽々しく訊いてしまって……」
「いや、気にしないでくれ。僕も機動六課の頃にフェイトから聞いたけど、君の()い立ちに比べれば、こんなのは実際に『軽い話』だよ。(笑)」


 そして、風呂から上がった後、夕食の際にも、以下のような会話がありました。
(エリオもこの頃には、すでに体が出来上がったので、もう十代の頃ほどの大食いではなくなっています。)

 ルーテシア「今までは、食料も大半はミッドから運び込んで来てるような状況だったけど、このパンは、今年、この島で初めて『マトモに』収穫できた小麦で造ったモノなのよ。……お味はどうかしら?」
 ウェンディ「これなら、ゼンゼン大丈夫っスよ」
 ティアナ「言われなければ、解らないぐらいね」
 なのは「う~ん。確かに、ミッドの小麦とは、ちょっと種類が違うような……。これは、もしかして、ガウラーデの小麦かな?」
 ファビア「よく解りますね?(愕然)」
 なのは「まあ、実家がアレだから、自分でも舌は肥えている方だと思うよ。(笑)」

 ルーテシアは続けて、次のような内容を語りました。
『この島は「常春の国」だけれど、カルナージの気候は「季節の変化」に乏しいから、冬ならではの「寒さ」や「日照時間の短さ」が必要な作物は、かえって上手く育たないの。
 ガウラーデも、ここほどではないけれど「季節の変化」が小さな世界だから、あそこで品種改良された種子を試してみたら、予想以上に上手く行ったわ』

【ちなみに、自転軸の傾きは、ごく大雑把に言うと、カルナージが6度あまり、ガウラーデが12度ほど、ミッドチルダが18度あまり、地球が24度たらず、デヴォルザムが30度あまり、といったところです。】

 ウェンディ「でも、なんだって、また畑仕事なんてヤル気になったんスか?」
 ルーテシア「実は、私、来月には管理局から、この島の土地や施設や周辺海域に関して『一代限りの終身所有権』を正式に譲渡される予定なんだけど」
 キャロ「ちょっと待って、ルーちゃん! それって、かなりスゴいことなんじゃないの?」
 ルーテシア「うん。ただ、もうしばらくしたら、管理局からの資金投入も打ち切られるからね。それまでには、自給自足の体制を整えておかないといけないのよ」
 エリオ「ああ。それで、小麦の栽培を」
 ルーテシア「島の東側の『三分の一』を水源地として保護し、残りの『北半分』も自然保護区にして、なるべく島の南西側の『三分の一』だけでやっていきたいと思ってるんだけど……それだけでも、広さは6000平方キロメートルほどあるからね」
 スバル「三分の一でも、『夜長の島』と同じぐらいの広さがあるのか……」
 ルーテシア「土地も割と肥沃だし、海底地形と湧昇流(ゆうしょうりゅう)の関係で、周辺海域も割と良い漁場みたいなんだけど、人手が全く足りてないのよ。
『この島だけで孤立してもやっていける生活圏』を築こうと思うと……最終的には『夜長の島』と同様、数万人規模の人口が必要になるんだろうけど……なるべく早いうちに、老若男女を合わせて三千人ぐらいは欲しいわ」

 スバル「移住者の募集を局に頼むことは、できないの?」
 ルーテシア「来年には大陸の方に『首都』が完成するから、局はもっぱら、そちらへの移住者を募集するつもりで、こちらの件に関しては割と非協力的なのよ。
 南大川(みなみだいせん)の河口の南側、ここから真西へ50キロちかく行ったところに普通の港湾施設も作ってもらったから、まずは、あの辺りに漁村をひとつ。それから、もう少し川上に農村もひとつ作りたいと思ってるんだけど……その二つの村だけでも、経験者を中心に、最低でも600人ぐらいは必要だろうと思うわ」
 ファビア「正直な話、南大川(みなみだいせん)より北側の開拓は、まだまだ先の話になりますね」
 ウェンディ「領地経営ってのも、大変なんスねえ」
 ルーテシア「みんなも、もし近くに『本格的な田舎(いなか)暮らし』を本気で望んでいる人がいたら、誘ってみてちょうだい。特徴は、良くも悪しくも『季節による気候の変化』に乏しいこと。当分の間、地代とかは格安にしておくつもりよ」

 キャロ「ところでさ、ルーちゃん。私、この島ではあまり大きな動物の姿を見たことが無いような気がするんだけど?」
 ルーテシア「ああ。言い忘れていたけど、この島に限らず、カルナージには元々、大型の陸上動物は全く生息していないのよ」
 キャロ「え? それって、どうして……?」
 ルーテシア「多分だけど、例の病原体のせいなんだろうと思うわ。あの疫病も、どうやら、当初は人間だけではなく、大半の大型動物にとって致命的なモノだったらしいの」
 ファビア「今も大陸の方で進められている発掘調査によれば、この世界にも、ほんの三千年ほど前までは、さまざまな大型動物が普通に生息していたらしいのですが……病原体の『突然変異』と言うか、『強毒化』の結果、陸上の大型動物はあらかた絶滅してしまったのだそうです。
 この世界は、季節の変化に乏しいので、その当時から、鳥も『渡り』をせず、獣もあまり遠距離の季節移動をしていなかったのでしょう。季節に関係なく、(えさ)はおおむね同じような場所にある訳ですから。
 そうした状況下で(こま)かな『()み分け』を続けていけば、当然に個々の生物種の分布する範囲は、相対的に狭いものとなります。だからこそ、一度その生物種に感染してしまえば、種内の感染拡大は速く、それだけ絶滅もしやすかったのでしょう。
 まあ、以上の話は、あくまでも推測でしかないのですが……実際のところ、現在のカルナージでは、人間を除くと、山猫が『最大の陸上動物』なのだそうです」

 キャロ「そっか~。『常春(とこはる)の国』って言うと、聞こえは良いけど、決して良いことばかりじゃないんだね」
 ルーテシア「そうね。実は、はっきりとした季節変化がある世界の方が、大半の生き物にとって()みやすい世界なんだろうと思うわ」
 フェイト「三千年ほど前って言うと、ちょうど〈大断絶〉の頃かしら?」
 なのは「もしかして、それ以前は、カルナージも有人の世界だった、とか?」
 ルーテシア「病原体の強毒化も、正確な年代の特定はまだできていないようなのですが、いずれにせよ、今のところ、それ以前の大昔の地層からも、人骨や人間が暮らしていた痕跡(こんせき)などはまだ全く発見されていません」
 ファビア「もちろん、『証拠の不在』は必ずしも『不在の証明』にはなりませんが、やはり、カルナージは過去においても、ずっと無人の世界だったのではないでしょうか。以前は、『ミッドにおける〈最初の人々〉が(もと)いた世界は、カルナージだったのではないか?』などと主張する人も一部にいたそうですが、実際には、その可能性はかなりゼロに近いのだろうと思います」


 また、夕食後の休憩時間に、なのはとフェイトとユーノは星空の見えるテラスに出て、久しぶりに三人で「昔の話」をしていましたが、その話が一段落したところへ、ファビアがふらりとやって来ました。
 彼女は午後の(二回目の)陸戦試合で、ユーノとともに赤組の後衛を務めたのですが、少しばかりその「反省会」がしたかったようです。
 そして、その話も一段落すると、今度はアインハルトがやって来ました。彼女も、一回目の陸戦試合について、ちょっとユーノに訊きたいことがあるようです。

 アインハルト「念のためにお(うかが)いしますが、あの種のバインドって、よくある魔法なんでしょうか? 自分が思い出せた範囲内では、クラウスの記憶にも全く出て来ない魔法なのですが」
 ユーノ「う~ん。インクリースバインドは、取りあえず『特別なレアスキル』というほどのモノではないはずなんだけどなあ」
 なのは「でも、私はユーノ(くん)以外の誰かがアレを使ってるところなんて、一度も見たことが無いよ」
 ファビア「確かに、古代ベルカの文献にも記載がある魔法ですが、私も実際に見たのは今日が初めてです」
 フェイト「はのはも『多重継続バインド』なら時々使うけど、アレともまた少し違う感じよね」
(多重継続バインドについては、Vividのコミックス第19巻を御参照ください。)

 ユーノ「基本的には、単なるアレの発展形なんだけどね。ただ少しばかり、増殖する速度が速くなり、継続する時間も長くなっているだけで」
 なのは「う~ん。アレって、『少しばかり』かなあ?(笑)」
 フェイト「いずれにせよ、滅多に無い魔法だと思って良いんじゃないかしら?」
 アインハルト(ただ単に、『上には上がいる』ということか……。)
 なのは「アインハルトちゃんも、あんまり落ち込まなくて良いよ。ユーノ君は元々、私の魔法の先生で、下手をすれば、私よりも強いぐらいなんだから。(笑)」
 アインハルト(ええ……。そんなに……。)
 ユーノ「いや。20年前だったらまだしも、今となっては、さすがにそれはもう言い過ぎなんじゃないかな。(苦笑)」

 なのはは「対ナハトヴァール戦の時のこと」を思い出しましたが、内容が特秘事項なので、まだアインハルトたちには語ることができません。

 アインハルト「基本的には、通常のバインドの完全上位互換だと考えて良いんでしょうか?」
 ユーノ「うん。中には、通常の魔法の上位互換となる魔法のことを『上位魔法』とか『第二段階の何々』などと言う人もいるみたいだけど、本来は、ただ単に『上級魔法』とでも呼ぶべきだろうね」
 アインハルト「それは……何故(なぜ)ですか?」
 ユーノ「少なくとも古代ベルカでは、『上位魔法』という言葉は、通常の魔法とは全く機構(メカニズム)の異なる『アルハザードの(たみ)が使う魔法』を意味する特別な用語だったからだよ。『第二段階』という用語も本来はそれと同じ意味の用語だ」
 ファビア「そう言えば、古代ベルカでは……少なくとも南部州では……『アルハザードの上位魔法に対抗できるのは、ただアルハザードの上位魔法のみ』という言葉が、ほとんど格言のように語り継がれていました」
 なのは「じゃあ、本当に、普通の魔法とは全くレベルが違うってこと?」
 ユーノ「うん。残念ながら、僕たち人類には使えないみたいなんだけどね」

【このまま書き続けると、あまりにも長くなりすぎるので、二日目と三日目の描写は、例によって割愛させていただきます。】


 四日目(9月29日)は、全員で少し早起きをして軽く朝食を取ると、一行は早速ホテルを離れて簡易次元港へ行き、現地在住のアルピーノ姉妹を除く13名は、そのまま朝7時のチャーター便に乗り込みました。
 四時間あまりの後、予定どおりにミッドの首都中央次元港に到着した時には、現地時間はもう夕方の6時を過ぎています。全員で、次元港に付属のレストランで夕食(?)を取ってから、現地解散となりました。

 なお、今回の3泊4日の合同訓練で、メルドゥナは、なのはやフェイトと面識を得たばかりではなく、ユーノやルーテシアなど、他の面々とも親しい間柄になりました。特に、同じ「補佐官」という立場のアインハルトとは、相当に親しくなれたようです。
(そして、メルドゥナとアインハルトは、ともに執務官になった後も、末永(すえなが)く「友人づき合い」を続けて行くことになります。)


 
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