イベリス
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第百二十二話 知れば知る程その七
「有り難うございます」
「ああ、ただ生年月日と生まれや学校位でな」
「出身校ですね」
「別にな」
こういったことはというのだ。
「何でもないだろ」
「いえ、知ることが出来て」
そしてとだ、咲はマスターに確かな声で言った。
「本当にです」
「よかったんだな」
「教えてくれて嬉しいです」
こうまで言うのだった。
「私も」
「そうなんだな」
「それで交際は」
「誰もな、俺の知ってる限りな」
「今お話してくれた」
「その限りはな」
「おられないですね」
「ああ、それで好きなものともな」
「お話してくれますか」
「そうさせてもらうな、趣味もな」
近藤のそれもというのだ。
「知ってる限りな」
「有り難うございます」
「頑張れよ」
マスターは咲に微笑んでこうも話した。
「本当にな」
「頑張るんですか」
「こうしたことも頑張ってな」
そうしてこそというのだ。
「やるものなんだよ」
「そうですか」
「前を向いて進む」
「それがですか」
「この場合の頑張ることなんだよ」
こう言うのだった。
「そうなるんだよ」
「そうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「いいな」
「はい、前を向いてですね」
「やっていくんだよ。告白とか怖気付くけれどな」
「それあるみたいですね」
その経験はない咲は実感がないまま応えた、そうして言うのだった。
「恋愛って」
「ああ、告白って勇気がいるんだよ」
「実際に」
「自分の気持ちを打ち明けるってな」
こうした行為はというのだ。
「本当にな」
「勇気がいるんですね」
「断わられたら怖いとも思ってな」
「断わられたらどうしようですね」
「そう思ってな」
それでというのだ。
「どうしてもな」
「怖気付くんですね」
「ああ、けれどな」
「頑張ることですね」
「そうした時こそ勇気を出してな」
そしてというのだ。
「やっていくんだよ」
「それが恋愛ですか」
「ただ勇気はな」
このこと自体にもだ、マスターは話した。
「恐怖を知ることだっていうだろ」
「それ漫画でありましたね」
マスターの今の言葉を聞いてだ、咲もこう返した。
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