イベリス
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第百二十二話 知れば知る程その八
「有名な」
「ああ、スタンドとか出るな」
「最初のお話でしたね」
「これは事実だよ、告白は勇気がいるのはな」
「その怖さを知って」
「断わられたりしたらって思ってな」
「そのうえで、ですね」
「思い切ってな」
そうしてというのだ、マスターはカウンターの自分の前の席で学生割引のコーヒーを前にしている咲に言った。
「やるんだよ、その恐怖を自覚して」
「知って」
「それを振り切る、勝ってな」
「やるものですね」
「時には振られてな」
そしてというのだ。
「笑われたり泣かれたりな」
「そうなることもですか」
「あるさ」
「それ私の学校の神戸の本校で」
「八条学園のか」
「あったんですが」
「そうだろ、告白した相手が実は酷い奴でな」
「とんでもない仕打ち受けることもですね」
「あるんだよ」
そうだというのだ。
「時にはな」
「そうですね」
「けれどそうなってもな」
「いいっていう位の」
「当たって砕けろってなってな」
マスターは今度はこう言った。
「そう思ってな」
「告白することもですね」
「必要だよ」
「そして告白しないと」
「相手から言う場合でないとな」
「自分から言うしかないと」
「もうな」
そうした場合はというのだ。
「そうするしかないだろ」
「ならですね」
「本当にな」
「当たって砕けろですね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「それでな」
「やっていくことですね」
「ああ、嬢ちゃんにしてもな」
「そうですか」
「だからな」
「頑張ることですね」
「頑張って勇気出してな」
そしてというのだ。
「やるんだぞ」
「そうします」
咲も決意した顔で答えた。
「絶対に」
「それじゃあな、それと今日のコーヒーだけれどな」
マスターは話が一段落したところで見計らった様に言ってきた。
「どうだい?」
「美味しいですが」
「実は今日はブルマンにしたんだよ」
「ブルーマウンテンですか」
「学生さん用のコーヒーはな」
「そうだったんですか」
「安く手に入ってな」
ブルーマウンテンの豆がというのだ。
「使ったんだ」
「そうだったんですか」
「普段使ってる豆もいいさ」
こちらもというのだ。
「けれどな」
「それでもですか」
「ブルーマウンテンはやっぱり違うな」
「味が、ですね」
「やっぱり評判になるだけあってな」
それだけにというのだ。
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