ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第116話 遂に合流、イッセーと小猫!メロウコーラの鍵はサラマンダースフィンクスに在り!
side:イッセー
「ぐお……かってーな、コイツの肉……!」
俺達はさっき倒した猛獣『ダンゴール』を食っている所だ。コイツの情報は戦闘後にリン姉の腕に付けられた捕獲レベルを図る新たな道具、その試作品の装置で調べた。捕獲レベルは40だったぜ。
ギャスパーがいなかったらもうちょっと苦戦していたかもな、時を止める力……やはり強力だ。まあ視界に入っていないと意味が無いという弱点があるがそれでも乱戦などでは心強い。
しかしコイツの肉はまるでゴムみたいに硬くて食べにくい、味もそこまで美味しくないしグルメピラミッドに生息している猛獣は美味しくねえ奴ばかりなのか?
「あれ、ゼブラ兄。その個体なんか光ってないか?」
「……」
ゼブラ兄が食おうとしていたダンゴールは何故か光っているように見えた、それを一口で食べ切ったゼブラ兄は笑みを浮かべる。
「あっ!その顔は『美味かった』って顔だな!一体何をしたんだよ!」
ゼブラ兄の顔を見て俺はそれが滅茶苦茶美味かったんだなと理解した。あの表情はゼブラ兄が美味い食材を食った時にしかしない顔だ、つまりあのダンゴールはそのくらい美味かったって事だ。
俺は何かしたのかとゼブラ兄に聞くがゼブラ兄は鬱陶しそうに『知るか』とジェスチャーで答えた。
「どういう事だ?一部だけが美味い奴がいるタイプなのか?」
他の皆も硬い肉でしかなかったと言うのでゼブラ兄だけが美味かったということになる、稀に一体だけが美味いと言うギャンブル要素のある食材もあるがそういうタイプなのか?分からないな……
「とにかく食い終えたし先に進むか……」
疑問は残ったが今は小猫ちゃん達と合流するのが先だと思い地下を進んでいく。
「また広い通路に出たな」
俺達は狭い通路がいくつも張り巡らされた広い空間に出た、すると下の方から猛獣の匂いがしたので見てみると虎のような猛獣が俺達を見ていた。
リン姉が腕の装置で猛獣に光を当てた。
「……タイガーファング、捕獲レベル35だね。全身の筋肉はバネみたいに凶刃で爪の攻撃は恐ろしいほどの切れ味らしいよ、後尻尾を鞭みたいに使って攻撃もしてくるみたいだね」
「イッセー、ここは私と朱乃でやらせて頂戴」
「わたくしもお願い致しますわ」
「分かった、気を付けてな」
リン姉の説明を聞いたリアスさんが朱乃と一緒にやらせてほしいと言ってきた、俺も今の二人なら問題は無いだろうと思い良いよと許可を出す。
「行くわよ、朱乃!」
「ええ、行きましょう」
二人はタイガーファングのいる通路に降り立つと武器を構える、獲物を発見したタイガーファングは雄たけびを上げるとすさまじい瞬発力で一気に二人に襲い掛かった。
そしてその爪を勢いよく振るい下ろす、二人は左右に飛んで回避するが振るった爪から斬撃が放たれて通路の一部を斬り裂いてしまった。
「なるほど、俺のナイフに負けないほどの威力だな」
俺がそう呟くとタイガーファングは朱乃の方に襲い掛かった、爪を振るい朱乃を切り裂こうとするが朱乃は器用にかわしていく。
「うふふ、イッセーのナイフの方がキレが良いですわよ」
怒ったタイガーファングは更に追撃しようとするがガクンと引っ張られるように動きを止めた、いつの間にか背後に回り込んでいたリアスさんが尻尾を掴んでいたんだ。
「はぁっ!」
金髪になったリアスさんはそのままタイガーファングを投げ飛ばした、そして髪を赤に戻して魔力弾を放った。
「一瞬だけあの姿になれるようコントロールをしたのか、結構慣れてきたんだな」
俺はリアスさんの成長に驚いた。タイガーファングは空中で体勢を変えて別の通路を足場にして軌道を変えて移動しテ魔力弾を回避する。
「ガァァァッ!!」
そしてその強靭な足でリアスさんを押しつぶそうとしたが彼女はそれをジャンプで回避した、足が叩きつけられた通路はあっという間にヒビが走って崩れてしまう。
タイガーファングはバネのような強靭な全身の筋肉を使いあり得ない速度で空中の瓦礫を渡りリアスさんの背後に回り込んだ。
そして背後からリアスさんを襲おうと爪を上げるが……
「遅いですわ、『八咫鏡』」
自身の体を光の粒子に変えた朱乃が光速でタイガーファングの頭上をとった。
「100万ボルト!『放電』!!」
そして100万ボルトの電流をタイガーファングに浴びせた、強力な電撃を受けたタイガーファングはふら付きながら地面に降り立った。
「終わりよ」
だが先回りしていたリアスさんが再び金髪になり奴の眉間に滅びの魔力を纏わせた指の一本突きを放った。その一撃は確実にタイガーファングの命を奪うのだった。
「終わったわよ、イッセー」
「凄いじゃないですか、リアスさん。いつの間に滅びの魔力を体に纏えるようになったんですか」
「私もただパワータイプなだけでいつまでも行けるとは思っていなかったから前にお兄様にコツを教えてもらったの。まあ今のところは体の一部に少しだけ纏う事しか出来ないんだけどね」
どうやら彼女は俺の知らない内に密かに特訓していたんだな、一部だけとは言うが一流の武術家でもある桜さんから教えを受けているリアスさんが使うとなればそれは恐ろしいほどの脅威になるだろう。
なにせさっきのタイガーファングにトドメを刺した一本突きがソレを物語っているからな、人間が相手なら心臓か脳にアレを喰らったらおしまいだ。
「あらあら、イッセー。わたくしは褒めてくれないのかしら」
「朱乃もナイスフォローだったな、光の力も上手く使えていたしバラキエルさんも喜ぶだろうな」
「うふふ、嬉しいわ」
俺はそう言って朱乃を抱きしめた、朱乃は幸せそうに俺の胸板に顔を寄せて頬すりをしてくる。
「さて、二人が捕獲してくれたタイガーファング……味の方はどうかな?」
そして俺はタイガーファングの死体を解体してみんなで食べ始めたのだが……
「やっぱり微妙だな……」
「うん、お世辞にも美味しくはないね」
俺と祐斗は顔をしかめながらそう呟いた、予想はしていたがマジで美味しくねぇ。
「うおおッ!?」
「な、なんだ!?」
すると突然ゼノヴィアの叫び声が聞こえた。
「イッセー、コイツの舌が凄く美味いぞ!信じられない美味しさだ!」
「なんだって!?」
俺はゼノヴィアからそう聞いてタイガーファングの舌を分けてもらった。
「う、美味ぇ……!最高級の牛タンみたいな味わいだ……!」
タイガーファングの舌は予想以上に美味かった、すると俺達の前にもう一体のタイガーファングが現れたんだ。
「グルル……」
俺達を威嚇するタイガーファングだったが俺とゼブラ兄は嬉しそうに笑みを浮かべて奴に襲い掛かった。そしてまた舌を食べたんだけど……
「あれ?今度は美味くねぇな……」
さっきの味が嘘のようになくて唯の不味い舌でしかなかった。ゼブラ兄も不満そうに食べている。
「さっきはあんなに美味しかったのにどうしてこの個体は美味しくないのかしら?」
「うーん……」
リアスさんの問いに俺は考えるが一向に答えが見つからないな、小猫ちゃんがいてくれたら直に分かったんだろうが……
考えても仕方ないので先を進むことにした、その最中で多くの猛獣と出会う事になったんだ。
「ミギャー!」
「うわ、ミノムシの化け物だ!」
通路を覆い隠すほどの『ミミックミノムシ』が俺達の行く手を阻んだ、毒ガスや噛みつきで襲い掛かってきたがルフェイの魔法で全員眠らせた。
「……チッ」
「あら、この子は美味しいですわ♪」
「朱乃が当たりを引いたか……」
ミミックミノムシの中身を取り出して食っていたがやはり硬い肉だった、だが朱乃だけは当たりを引いたようで笑顔で肉を食べていた。ゼブラ兄は不機嫌そうだったが……
更に先を進んで大きな階段を下っていると『イービルハンター』の群れが俺達を襲ってきた、今回は祐斗とアザゼル先生が対応してくれたぞ。
祐斗の剣とアザゼル先生の槍、二つの閃光が瞬く間に駆け巡りイービルハンターを切り裂いていく。
「うぅ……固くて食べられません」
「あっ!コレ美味しい!」
「当たり来たし!」
ギャスパーでは噛み切れないほど硬い肉だったがティナとリン姉が食べていた個体が美味しかったらしく、俺も分けてもらったが同じイービルハンターの肉とは思えないほど柔らかくて美味しい肉だった。
その後も沢山の猛獣に襲われながら撃退し誰かが美味しい個体を味わうといった流れを繰り返していた。そして……
「……よし、戻ったな」
「ゼブラ兄、声が戻ったんだな!」
猛獣を食い終えたゼブラ兄が喉に触れながら声を軽く出した、それを聞いた俺はゼブラ兄の声が戻ったことを喜んだ。
「ゼブラ兄!今すぐ小猫ちゃん達の居場所をマップで探ってくれ!頼む!」
「ガタガタうるせぇよ、言われなくてももうやってる……!」
そう言っていたゼブラ兄の顔が急に険しい物になった。
「小娘ぇ!!そっちに行くんじゃねぇ!!」
「うおッ!?」
珍しく焦った様子でそう叫んだゼブラ兄に俺は思わず驚いてしまった。
「ゼブラ兄、どうしたんだ!」
「小娘どもがやべぇ奴と遭遇した。『吠え弾』もかき消されたしマズイな」
「なッ!?」
俺はそれを聞いて更に驚いた、今のゼブラ兄の吠え弾をかき消せるって事は捕獲レベルは間違いなく85以上はある!そんな奴と鉢合わせたってのか……!!
「イッセー、近道するぞ。幸い小娘達との距離はそう遠くねえ」
「えっ?」
ゼブラ兄はそう言うと大きく息を吸い始めた。
「皆、耳を塞げ!」
「サウンドバズーカ!!」
次の瞬間凄まじい衝撃が部屋内に放たれて一気に崩壊させた。
「ハッハッハ!この方が早ぇからなァ!近道だァ!」
俺達は崩壊する部屋に空いた大きな穴の中に落ちていった。
「小猫、アーシア!待っていてくれ、今すぐに行く!」
俺は強敵との戦いを予感し武者震いしながらも愛する女を守るために覚悟を決めて落ちていくのだった。
―――――――――
――――――
―――
side:小猫
「な、なんとか逃げ切れましたね……」
「はい、一先ず安心ですね……」
私とアーシアさんはニトロから逃げて別の場所に来ていました。仙術で探ってみましたがニトロの氣は感じないので巻くことは出来たようです。
「あれ?小猫ちゃんさっきの部屋で見つけた本を持ってきちゃったんですか?」
「はい、内容はさっぱりですがこれは間違いなく貴重なレシピ本です。持って帰って調べれば何か凄いことが分かるかもしれません!」
「小猫ちゃん、珍しい食材を見つけた時みたいに目を輝かせてますね」
私が興奮気味にそう言うとアーシアさんは可笑しそうに笑いました。
「ざっと読んでみたんですけど多分このグルメピラミッドに生息してる生物には捕獲する際に決まった手順があると思うんです。このエスカルアゴみたいな生物の絵は殻を縦に割っているような絵が描かれているんです!」
「うーん、確かにそう見えますね……後小猫ちゃん、本を押し付けすぎですよ。顔に当たってますよ」
「あっ、ごめんなさい……」
私は更に興奮してアーシアさんに本を見せつけます。アーシアさんはちょっと困った顔をしながら苦笑していました。
「フフッ、小猫ちゃんが楽しそうで私もおかしくなって来ちゃいました」
「は、恥ずかしい所を見せてしまいました。取り乱して申し訳ありません」
「全然いいんですよ、そんなに夢中になれる事があって羨ましいくらいです」
「あはは……」
私はそう言いながら顔を赤くして頬を掻きました。
「あっ、それイッセーさんも恥ずかしい時にやるクセですね。小猫ちゃんにも移っちゃいました」
「えっ、そんなことをしていましたか?まあイッセー先輩と一心同体になれたみたいで悪い気はしませんが……」
ニトロの恐怖から解放されたからかおしゃべりが弾んでしまうわたしとアーシアさん、しかし私は今まで感じた事の無いヤバイ氣を感じてしまい声を止めてしまいました。
「小猫ちゃん、どうし……」
アーシアさんが話そうとしたので私は彼女の口を押えました。そして通路の陰から先を顔だけ出して覗いてみると……
「ひッ……!?」
私の視線の先には恐ろしい化け物がいました。その生き物はライオンのような体に蛇のような尻尾、大きな翼に長い鬣……そして鬼のような形相をした文字通りの化け物でした。
(大きさはリーガルマンモスと比べれば小さいけど感じる恐怖は今までのどんな猛獣よりも上……!)
私は猛獣の強さを本能で察しました、先ほど遭遇したニトロにも負けないくらいの恐怖です。間違いなく今までで一番の捕獲レベルだと思いました。
(とにかく逃げないと……向こうはまだこちらに気が付いていない、ゆっくりと去りましょう)
今の状況であの猛獣と戦闘になるのだけは避けたいです、そう思った私はアーシアさんに合図を出してゆっくりとこの場を去ろうとします。
(お、お願い……気が付かないで……)
その時でした、私の足元からパキッという乾いた音がしたんです。視線を下にするとそこには動物の骨がありました。
(しまった!仙術で氣を探っていたから足元がおろそかになっていた!)
仙術は氣を探って生き物を探せるレーダーにもなるので死角の多いグルメピラミッド内で多用していました。
でも仙術にも欠点があって氣の無いものは察知できないんです、既に死んで骨になった死体には氣がないので骨を踏んでしまうというミスを犯してしまいました。
当然この音をあの猛獣が聞き逃すはずもなくまるで爆弾が連続で爆発したかのような大音量の雄たけびを上げると前足を軽く振るいました。
「きゃあっ!」
「うわぁぁっ!」
猛獣からすれば軽く撫でる程度の動き、しかしそれだけで壁が切り刻まれて私達は吹き飛ばされてしまいました。
「う、うぅ……」
ゼブラさんの音の鎧のお蔭でダメージは無かったですがこのまま攻撃を喰らい続けるのは危険です、そう思った私はアーシアさんを連れて逃げようとしましたが……
「アーシアさん!?」
なんとアーシアさんの下半身が崩れた瓦礫に挟まれていたんです。
「アーシアさん!大丈夫ですか!?」
「は、はい……ゼブラさんの音の鎧のお蔭で潰れてはいません。でも挟まれて動けないです」
「待っていてください、今瓦礫を……!」
私は瓦礫をどかそうとしましたが不意に何かが飛んできたのを察して後ろに飛びました、それは猛獣の舌でした。
猛獣の舌は一瞬で軌道を変えて私の方に曲がってきたんです、空中で軌道も変えられなかった私はモロにそれを受けてしまいました。
「げほっ……!」
肋骨がいくつか折れる感触と共に私は吹き飛びました、そして地面に横たわります。
「がっ……!はぁ……あがぁ……!」
痛む胸を抑えながら呼吸を整えようとしますが猛獣はその巨大な前足で私を押しつぶそうとしてきたんです。
「ぐぅっ……!!」
私は戦車の駒の怪力と音の鎧で何とか腕を受け止めます、しかし音の鎧がどんどん薄れて行ってしまい私自身も大きなダメージで力が入らないんです。そのまま前足が下りてきます。
「助けて……皆……姉さま……ゼブラさん……」
私はこのまま殺されてしまうのかと思い目に涙を浮かべて助けを求めました。
「助けて……イッセー先輩!!」
「しろねぇぇぇぇぇえええっ!!!」
その時でした、天井が崩れて赤い鎧を纏ったイッセー先輩が猛獣に体当たりをしたんです。バランスを崩した猛獣を更にイッセー先輩が押してそのまま転倒させました。
「白音、大丈夫か!」
「イッセー先輩!」
私は助けに来てくれたイッセー先輩に抱き着きました。先輩も鎧を解除して私を強く抱きしめてくれます。
「白音、無事で良かった……嫌な予感を直感で感じたから鎧を使って一気に来たけど正解だったぜ……!」
「先輩!私、怖かったです……!」
「ごめんな、俺が油断していたばっかりに怖い思いをさせて……」
「いいんです、だって先輩はこうして助けに来てくれたんですから……」
私は痛む胸も忘れて先輩に強くしがみ付きます。先輩の温もりを感じるだけで恐怖が薄れていきます……
「小猫、大丈夫!」
「助けに来たよ!」
「わたくし達が来たからにはもう好きにはさせませんわ!」
「部長!祐斗先輩!朱乃先輩!」
部長や他のメンバーも皆来てくれました!
「小猫、無事で何よりだ。アーシアはどうしたんだ?」
「アーシアさんは向こうにいます、瓦礫に体を挟まれて動けなくなってしまって……」
「そうか、なら私達が助けに行く。友を守ってくれて感謝するぞ」
「後は私達に任せて!」
ゼノヴィアさんとイリナさんはそう言ってアーシアさんの元に向かいました。
「その小っせぇ鼓動はまだ動いているようだな、小娘」
「白音、無事で良かったにゃん。今仙術で痛みを薄めてあげるからね」
「ゼブラさん!姉さま!」
ゼブラさんと姉さまも来てくれました、姉さまの戦術が私の体の痛みを和らげてくれます。
(……俺が纏わせていたサウンドアーマーが消えてやがる、相当な攻撃を受けたみてぇだな)
ゼブラさんは立ち上がった猛獣に鋭い視線を向けます。
「ゴァァァァァァァッ!!!」
猛獣は先程と同様に爆発のような雄たけびを上げて私達を威嚇します、しかしイッセー先輩とゼブラさんは涼しい顔でそれを受けていました。
「……強いな、コイツ。今まで戦った奴の中で一番かもしれん」
「関係ねぇ、俺の報酬を危うく殺しちまうかもしれなかったんだ。音の鎧も壊されたしその代金は……」
「ああ、白音やアーシアを恐怖させたツケは……」
そして鋭い視線で猛獣を睨みつけたんです。
『てめぇの血肉だ』
そして二人はそう言うと猛獣に向かっていきました。
「ボイスミサイル!」
ゼブラさんの口から放たれた巨大な音の衝撃が猛獣の体に直撃して大きくのけぞらせました。
「15連!釘パンチ!」
そこにイッセー先輩の釘パンチがお腹に直撃して猛獣の体が後ろに下がっていきます。
「ボイスカッター!」
「フライングナイフ!」
そしてゼブラさんの音の斬撃と先輩のナイフが猛獣の全身を切り裂いていきます。
「落ちてきな……音の雷!サンダーノイズ!!」
「喰らえ!」
そしていつの間にか上空に浮かび反響していた音が凄まじい勢いで猛獣に落ちてきました、それに少し遅れてイッセー先輩がドラゴンの炎のブレスを吐きます。
猛獣はそれらをまともに浴びてその場に大きな砂煙を立ち上げます。
「うおぉっ!容赦ねぇな、アイツら!」
「でもあれだけやればさすがに死んだんじゃないの?」
アザゼル先生は容赦のない連続攻撃に驚きティナさんは猛獣は死んだと言います。
「ッ!」
しかしその時でした、砂煙を引き裂いて先程私がやられた伸びる舌の攻撃がゼブラさんに向かっていったんです。
「音壁」
ゼブラさんは音で出来た壁を出して防御しようとします、しかし舌が器用に曲がり音壁をすりぬけてしまいました。
「ゼブラ兄!」
一瞬反応が遅れて攻撃を受けそうになったゼブラさんを先輩が押して攻撃を回避しました。二人のいた場所に舌が直撃して綺麗な穴を開けます。
「ゼブラ兄、無事か!」
「余計な事しやがって、あれくらい簡単に避けれた」
「そうかい、ならいいさ」
そんな軽口を叩きながら二人は猛獣に視線を向けます。
「……俺の釘パンチやナイフが効いていないな。ケロっとしてやがる」
「奴からはウィークポイントボイスが見当たらねぇ、こんな奴は初めてだ」
二人の連続攻撃を受けても大したダメージの無い猛獣を見て私達は大層驚きました。
「イッセー!ゼブラ!今のどさくさに紛れてソイツの捕獲レベルを図ったんだけどヤバイし!ソイツは『サラマンダースフィンクス』!捕獲レベルは脅威の92だし!!」
「92だと!?今までで出会った猛獣の中で最高レベルじゃないか!?」
リンさんの話を聞いて先輩や私達は更に驚きました、強いとは思っていましたけどまさか捕獲レベル90以上だったとは……!!
「……ゼブラ兄、俺は今回の目的であるメロウコーラについてある情報を研ぎ師メルクさんから得てるんだ」
「情報だと?」
その時でした、イッセー先輩が以前ヘビーホールで出会ったメルクさんからメロウコーラについて何か情報を貰っていると話しました。
あの時にそんな事を教えてもらっていたんですね、私達は知りませんでした。
「メロウコーラはある猛獣の体内で熟成された液体だとメルクさんは言っていた。多分このサラマンダースフィンクスがそうなんだ」
「なんでそう言える?」
「匂いだよ。コイツから甘~い糖分の匂いがするんだ」
「なるほどな」
イッセー先輩は涎を垂らしながらサラマンダースフィンクスを見ます、それを見たゼブラさんは確信したように怖い笑みを浮かべました。
「てめぇの食い意地はハンパじゃねーからな、その顔をするならまず間違いなさそうだ」
「うるせぇ、人のこと言えんのかよ」
二人はそう言うと戦闘の構えを取ります。
「なら話は早ぇ、コイツをぶっ殺してメロウコーラを頂くとするか」
「ああ、久しぶりに協力して戦うぞ
「はっ!足を引っ張ったらぶっ殺すぞ!」
イッセー先輩とゼブラさんの背後にグルメ細胞の悪魔が現れてサラマンダースフィンクスを威嚇します、それを見たサラマンダースフィンクスは怯えるどころか挑発するように前足を振りました。
その軽い動作で二人の立っていた地面に数本の亀裂が走りました。
「ぐおっ!?腕を振っただけでこの威力かよ!やっぱりコイツ相当強いぞ!」
「はっはっは!やはりシャバは楽しいもんだな!こうでなくちゃ殺し合いにならねえからなぁ!」
そう言ってイッセー先輩&ゼブラさんVSサラマンダースフィンクスの戦いが始まりました。
「凄いレベルの戦いだ、手が出せない……!」
「悔しいが今は何もしない方が良いな、足手まといにしかならない」
祐斗先輩は目の前の戦いが凄いレベルのモノだと言いゼノヴィアさんは悔しそうにそう呟きました。
でも私はこんな状況だと言うのにレシピ本の方が気になってしまいつい中身を読んでしまいました。
「え~と、この言葉の意味は……」
「これは蒸すって意味だよ」
「姉さま?」
すると姉さまが私の側に来て意味の分からない単語の読み方を教えてくれました。
「それってこのピラミッドで手に入れたの?」
「はい、そうです。あっごめんなさい……こんな状況で呑気な事をしてて……」
私は姉さまに注意されると思い謝りました。二人が全力で戦ってるのにこんな事をしてたら駄目ですよね……
「……白音、意味が分からない単語が出たら教えてあげるからその本をもっと読み進めなさい」
「えっ?」
「最悪私がヒントを出そうと思ったけど気が変わったにゃん、貴方がイッセー達の助けになるの」
姉さまはそう言ってじっと私を見ていました。
「……分かりました。お願いします、姉さま」
姉さまは意味の無い事を言う人じゃありません、きっとこの本にメロウコーラについて何かヒントが書いてあるはずです。
私はそう思いレシピ本の解読に入りました。
(イッセー先輩、待っていてください!必ず私が何かヒントを得てみせますから!)
後書き
ゼブラだ……あん?次回予告をしろだと?めんどくせぇ……まあ後で小娘が飯を食わせるって言っていたししょうがねえからさっさと終わらせるか。
チョーシに乗ったデケェ猫をぶっ殺そうとしたが流石に強ぇな。だが殺し合いとはこれでこそだ、久しぶりに血肉が湧いてきたぜ。
だが小娘が急に訳の分からない事を言い始めやがった。俺達を使いたい?……良い度胸じゃねえか、なら俺を使いこなしてみろよ。出来なきゃ殺す。
おい小娘、後はお前が言え。
はいはい、分かりましたよ。まったくゼブラさんは……
次回第117話『死闘サラマンダースフィンクス!小猫よ、四天王を使いこなせ!』でお会いしましょうね。
次回も美味しくいただきますにゃん♪
いいかてめーら、チョーシにのるなよ?俺に適応しろ。
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