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仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
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あとがき-Wake up again!The hero-

 ・はじめに
 この度は本作品を閲覧していただき、誠にありがとうございます。本項では、いくつかの項目に分け制作の裏側について深堀したいと思います。後書きに1話使うのはどうなのかと思いますが、自分の好きなライトノベル作家は後書きで本一冊出したいとか言ってましたので、それから比べれば可愛いものでしょう。

 ・執筆のきっかけ
 やっぱり、一番の理由は昨年の9月末に配信された某作品が影響していますね。たしかに、BLACKは当時ではハード路線と言われていましたが、別に政府批判や差別問題への問いかけとかとは程遠いものなので、情報が公開される度にこんなの間違っている、という気持ちが強くなり、BLACKの世界観を風化させたくないという気持ちが強くなりましたね。また、その作品の配信にあわせて、様々な特撮系ゆっくり解説動画でゴルゴムの珍妙さばかり取り上げる様子を見て、誰かがBLACKの守り抜いた正義を伝え続けないといけない、その思いで執筆を決めた次第です。

 ・作品のコンセプト
 ズバリ、『時代の変化』ですね。光太郎が戦っていたのは今から35年も前、それだけ時が経てば世論、価値観、文化などは大きく変化します。それだけの時の流れで変わったもの、変わらざるを得なかったもの、変わらなかったもの、変われなかったもの、様々なものがあります。なので、それこそ現在の東映ではありませんが、『今の時代ならではの仮面ライダーBLACK』を意識した作品にしました。

 ・文化の変遷
 先程も少し触れましたが、文明の発展は本当に凄まじいものがあり、特に電子・情報関係はここ15年で著しい進化を遂げたな、と実感しています。また、こういった技術を利用しないゴルゴムではないというある種の信頼感から作品にも取り入れやすかったですし、実際に第二話では捨てアカを利用した誘導作戦、第五話ではVライバーを利用した資金及び信者確保といった形で組み込めました。変わった文化といえば、男性による女性キャラクターのコスプレなんかもそうですね。昔ならネタや宴会芸でやらされるなんてパターンが多かったと思いますが、現代では男の娘文化が発達したことで自ら進んでするなんて方も増えていますね。それを反映したのが第十五話の内容でしたね。そういった形で、現代で発達したものや変容したものを考えて物語を構築するのは大変でしたけど、やりがいもありました。

 ・『現代ならでは』の負の側面
 コンセプトである『現代ならでは』は良い部分、悪に利用されやすい部分だけを書けばいいわけではありませんからね。例えば第三話で触れたように労働環境の変化を快く思わない人や、第六話のように自分の知識にない名前を愚弄する風潮、第十話での若い世代を侮る老人に対し老人をすぐに老害認定する若い世代、第十二話のように危機意識が過敏になりつつある食への安全、第十三話では欲しいコラボ商品があれば嫌いなメーカーであっても手のひらを返すような若年層。まあ、十三話の話のベースは実体験を元にしているんですけど(笑)。というのも、自分の好きなゲームがある飲料水メーカーとコラボするときには、自分が嫌っていることを土返しにして購入するさまを客観的に見たら、こう映るんだろうな、というのがアイディアになっていたんですよね。ネガティブな話はこれくらいで、次の項目に行きますか。

 ・ヒーローが作品の看板を背負う主役なら…
 個人的には、ヒーローは作品全体の主役ですが、各話ごとの主役は怪人なんだと思っているんですよ。というのも、ヒーローはある意味絶対的に怪人を倒して平和にしておしまい、で済んでしまいますが、怪人は能力や戦法、作戦やその話での行動で、登場する話の生き死にを決めてしまう存在だからです。たとえ弱くても行動でインパクトを与えれば話は生きますし、どれだけ強くてもパッとしない作戦とかなら話が頭の中を通り抜けてしまう。言わば、ヒーロー番組は怪人に作ってもらっていると言っても過言ではないんですよ。最近のライダーは仮面ライダーという冠名を残すために舞台装置としての機能をなしていない怪人ばっかりで魅力的な怪人がいないんですよね。そういう点では、九話のキツネ怪人は上手く活かすことができなかったなぁ、と反省したりしています。

 ・怪人の目線に立つ
 正直、作品の主役がヒーローである以上怪人の活躍は限界があり、必ず倒される存在になります。その中で重要になるのは、一般の怪人はどういう策を講じてライダーといい線までの戦闘が行えるのか、この点に限ると思うんです。逆に、幹部級の怪人はライダーと互角以上の戦闘が行えるので大規模で迫力のある作戦が必要とされると思うんですよね。
 
 ・選ばれる怪人もいれば…
 実際、当初の予定では30体くらい怪人の案じたいはあったんです。ただ、本作品は最初から全24話構成と決めていましたので、そこからボツとなり選ばれなかった怪人もそれなりにいたりします。例えば、ヒラタクワガタ怪人なんてサイ怪人のリブート版として登場を考えていたりもしましたが、虫が多すぎるという理由であえなくボツにしたりもしています。だからこそ、怪人には個性が重要なんですよ。

 ・三神官について
 三神官の中でプロットの段階から色々決まっていたのはリシュナルだけで、他は登場怪人の選定の途中で怪人のモチーフや名前なんかを決めていきました。また、三神官の名前にはそれぞれ由来がしっかり定まっていて、リシュナルはビシュヌ神のアーヴァターラの一つで知識の神であるクリシュナ、エピメルはギリシャ神話でプロメテウスの弟であるエピメテウス、ソフィルは古代ギリシャにおける知識人の総称であるソフィストとなっており、知識に関するものが由来になっています。その中でもリシュナルとエピメルの由来は互いに神の名、エピメルとソフィルはギリシャが由来、リシュナルとソフィルが知恵者に対してエピメルは後の知である、といったように2人が共通するものを持ち、1人が外れるを全員に与えていたりします。

 ・歴史をつなぐものとしてのリシュナル
 リシュナルは結構特殊な立ち位置の存在で、歴代の仮面ライダーの敵の力を複数所有していたり、研究資料を持っていたりと過去から現代までの繋がりを意識した存在にしていたんですよね。最近の仮面ライダーは過去からの繋がりを断とうとする雰囲気を感じてしまっていて、それに対しての疑問がこういう形になったんだと思います。

 ・リシュナルの裏モチーフ
 それで言うとリシュナルだけ他と違って明確な裏モチーフがありまして、仮面ライダーシリーズとはまるきり無関係になってしまいますが、モンスターハンターシリーズに登場する嵐龍アマツマガツチがコンセプト的には裏モチーフになっています。嵐を扱う点や、強化体になると体が黒ずんで血管が浮き出るところなんかは人によってはもしかして、と思われたかもしれませんね。

 ・クリムゾンエクリプスについて
 個人的に、ゴルゴムのメンバーで日食の日に生まれたのが光太郎と信彦の2人だけとは限らないのではないか、という考えから誕生したキャラクターで、金環日食を意識した深紅の体色にBLACKの身長とシャドームーンの体重でそれっぽさを出そうと考えました。クリムゾンエクリプスはどこまでいっても世紀王っぽいもの、にしたかったので。

 ・初期案にはなかった亡霊創世王
 実は最初期の時点では亡霊創世王は登場しないで、クリムゾンエクリプスを倒しておしまいにする予定でしたが、第六話を書いている途中から出したほうがいいなと思って急遽決めたキャラクターでした。その中でも細かなディティールに仕上げようとした部分は「誰しもがはじめは拒む」というセリフ。ここは初代仮面ライダーの1シーンが元ネタです。やっぱり、BLACKのコンセプトは『仮面ライダーの原点回帰』ですから。身長に関しては創世王の心臓が大きいから、とりあえずBLACKの2倍にしとけって感じで決まりました。

 ・歴史の取りこぼしとなったダロム
 アイディアの元になったのはスーパーヒーロー大戦GPで大神官ダロムが登場していたのを思い出して、コレはいけるなとなり、そこから剛の死が取りこぼされたようにダロムの存在も取りこぼしとなり、かつて自身が行おうとした行為を悔いる話が出来上がったのでした。

 ・海の怪人達
 海の怪人達で最後の戦いに参加した殆どの怪人達はショッカー怪人に同種が存在するものを選びました。多分、該当しないのはテッポウエビくらいだと思います。まあ、その理屈だとダロムがザンブロンゾになってしまいますけど(笑)。ここらへんは単に覚えやすいから選んだってくらいで深い理由は特にはないですね。

 ・霞のジョーに負担が…
 光太郎の話し相手の殆どが霞のジョーになってしまったな、という感覚がありますが、これは仕方なかったなと思っています。というのも、光太郎のサポーターって女性が多くて、同世代で話せる相手が霞のジョーしかいなかったから、必然的に話すシーンの多くが霞のジョーに振られたといった具合ですね。

 ・六話へのこだわり
 ヒラタハムシ怪人の話ですね。この話は初期構想の頃から話が固まっていました。現実世界でも今から2、3年前に多くの生声系の動画配信者がトゲアリトゲナシトゲトゲの名前で紹介していたのを見て、「こんな和名をつけるのか?」という疑問があり、調べてみたら適切な和名が出てきたので、なんで誰も紹介しないんだと思っていました。というのも、自分の本名もあまり一般的ではなく、ある程度学がないと言葉の意味すらわからないといった名前で、学生時代なんてそれこそ、本当にひどい目にあっていました。だからこそ、名前を馬鹿にするような人が許せなくて話が構成されていきました。また、光太郎の話していた「RXがいれば〜」のくだりの元ネタは漫画『時空英雄仮面ライダー』でたしかバルフォーゼだったかな?を追いかけ、溶岩地帯ではロボライダーで、原始の硫酸の海ではバイオライダーで対応する様子を見てスーパー1が「ここはRXにまかせよう!」と言うシーンのセリフを「もうあいつひとりでいいんじゃないかな。」という嘘セリフに変えたコラ画像が流行りRXがチートだと馬鹿にされる風潮に嫌気が差して話に組み込んだ次第です。両者の共通点は『面白ければ何をしてもいい』が根底に根ざしていることだと思うんですよね。面白いからで相手を侮辱し続ければ、いずれ痛いしっぺ返しに合う、それがこの話のコンセプトなんですよね。

 ・キツネ怪人について
 スターが変身する銃を扱う狐、おそらく多くの人があのスターオブザスターズオブザスターズを連想したでしょうが、実は自分はギーツをほとんど見てなくて、メリーの退場くらいまでしか知識がない状態で、英寿の「世界は救う、願いを叶えるついでに(意訳)」を聞いて、それが作品の看板を背負う主人公の言うことか、と思い書いた次第です。当初はただ銃使いというだけだったんですが、それだと銃を使う理由付けが必要だと思い、そこで考えたのが、寄生虫を感染させる害獣としての狐の側面だったんですよね。まぁ、この話は無理矢理感が拭えなかったので、もう少しうまく扱えたら良かったな、と反省していますね。

 ・十話で感じ取る人間性
 この話では高齢層を若返らせて若年層との対立煽りをモチーフとしています。互いに相手の年代を批判している様子はネットに触れていれば多々見かけますが、個人的にはこれは昔からあるものなのだと考え、自身が生きている世代以外をテリトリーに入れないようにするのが人間という生物の本能なんだろうなと思いながらも、助け合おうとする精神に年齢は関係ないと思う部分もあり、そこら辺を表現した作風に仕上げました。自分は、親としっかり話す機会があり、親の世代、丁度光太郎と同年代の人達が若い時代にどんなふうに生きていたのか聞いていたので、それを参考にできたのは良かったな、と思います。

 ・RXだって完璧ではない
 十一話では大怪人の連携とクリムゾンエクリプスの初陣でRXに黒星をつける話となっています。RX本編でシャドームーンがRXのフォームチェンジに対応できたように、明確な弱点は設定されているんです。ただ、怪人達はそれに対応できないだけなんです。だからこそ、バイオライダーのゲル化能力解除にあわせてエピメルが設置技で対応したりと弱点を理解した話の運びが必要な話でしたね。

 ・食の安全の元ネタは…
 十二話でのナツメグを利用した薬物のオーバードーズに近い反応を発生させるという話の元ネタは、昔某掲示板で書かれた『メシマズが致死量に等しい量のナツメグをハンバーグに練り混んだ』という話が元ネタですね。ただ、それを料理店で再現するには難しいものがあり、考えた結果が、成分を濃縮して致死性を高めるというものでした。実際、自分もハーブや香辛料を料理で使いますが、使う量は常に気をつけています。また、料理店では子供が、一般スーパーなら独身世帯が危険に晒されやすいという住み分けがされていたなと感じました。

 ・神敬介と泊進ノ介
 再生怪人軍団にライダーが駆けつけてくる展開はいつの時代も熱いものがありますよね。今回は先輩ライダーと後輩ライダーの中から光太郎と何かしらの接点や共通点のある2人を選出して、ゲスト出演させました。進ノ介はスーパーヒーロー大戦GPでの共演の縁ですが、敬介に関しては光太郎と意外な共通点があったので選出しました。その共通点は、『悪の組織からの協力要請を拒否した父親が命を奪われている』というものでした。ただ、最初はそれくらいの理由で選出したのですが、書いていてこの2人にも、乾巧=ファイズとの接点があることに気がついて、最後のシーンを追加しました。また、敬介の人物像は新SPIRITSでの神啓太郎と平成対昭和での敬介の両者を参考にしました。

 ・クライシスの生き残り
 これはもう、完全に願望の類です。RX最終回の描写を考えれば、地球で活動していたとしても心中に巻き込まれていると思うんですが、それでもこういう話を書きたかったのであったかもしれない可能性ってことで許してくだい。

 ・信彦として、シャドームーンとして
 クリムゾンエクリプスとの最終決戦では、月のキングストーンの力で信彦の意思を持つシャドームーンが復活する展開となりましたが、人によってはやめてほしいと思われたかもしれませんが、個人的には紛い物の世紀王に操られたくないという月のキングストーンの意思が信彦として復活したと考えて物語を作りました。

 ・現代風にアレンジ、とは
 お見苦しいかもしれませんが、ここからは愚痴が続きます。まず、ここ数年の傾向として昔の作品を現代ならではのリメイク、リブートと称して作品が作られていますが、その多くが過度な暴力的表現、流血描写、性的描写を彷彿とさせる演出ばかりで、現代らしさを感じられない。というのも、そういった描写って30年以上前に『真・仮面ライダー〜序章〜』でやっているから、今更感が拭えないんですよ。そして、あれが元々大人向けの仮面ライダーとして作られたのは事実ですが、そういった表現が大人向け、というわけではないのに若年層や現在の東映は勘違いをし、真で本当に伝えたかった部分が抜け落ちたただの暴力的で倫理観の崩壊した作品にしかなっていないのが、真に対する侮辱としか思えなくてならないですね。

 ・瞬間瞬間を必死に?
 ジオウの映画ではRXのバッタモンが敵として出てきただけでも気分が悪いのに、「平成は滅茶苦茶だから舗装する」とかいう謎理論を展開する体たらく。挙げ句の果てにはジオウの「みんな瞬間瞬間を必死に生きている!」という発言。瞬間瞬間を必死に生きていたのは昭和の人だって、いや、この世に生まれたすべての人間が瞬発的な取捨選択を迫られて生きていた。その中で協調性を持つことが次代へバトンを繋ぐのに適していると理解しただけの話なのに、瞬間を大事にしているんだからバラバラでいいというのは、あまりにも無責任すぎる。そういうのは必死に生きているとは言わず、その場のことしか考えていない、後々のことに責任を負う気がないと言うんです。

 ・最後に
 ここまで後書きを読んでいただき、ありがとうございます。現代的にアレンジを利かせすぎてしまい、皆様のBLACK像を崩してしまったかもしれませんが、個人的には、これが現代の仮面ライダーBLACKと意識しています。この後書きをもちまして、『仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜』は完全完結とさせていただきます。最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。 
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