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Fate/WizarDragonknight

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悪の軍団

 鎮火するまで、多少の時間がかかった。
 小石が溶解するほどの事態に、ハルトと真司は唖然とする以外の手立てがなかった。
 クウガが消滅し、ディケイドはしばらく自らが焼き尽くした焦げ跡を眺めていた。やがてベルトについているケータッチを外し、一度見たらもう忘れられないディケイドの姿はフィルムの虚像となり消失。本来の姿である士に戻った。

「アンタ……洗脳されてなかったのか……何であんな騙すようなことを……?」

 ポケットに手を入れたままの士に、ハルトは問い詰めた。
 士は鼻を鳴らし、振り返る。

「言っただろ。聖杯戦争がどんなものか見てみたいだけだと。まあ、さすがにあの教会に安置されている、なんてことはなかったがな」

 詰まらなさそうに、士は足を何処かへ向けた。だが、その前に海東が立ちふさがる。

「待ちたまえ、士」

 ディエンドライバーを向ける海東。銃口を向けられながらも、士は大して驚く様子も見せずに「またか」とため息を付いた。

「海東……このパターン、前にもあったぞ」
「いいじゃないか。僕は君の追っかけだ。だが……君のやり方は、やっぱり気に食わないね」
「そもそも追っかけてくれと頼んだ記憶はない」

 ぶっきらぼうに吐き捨てて、海東とは別方向へ進もうとする士。だがどうやら彼は、海東が纏わりつくせいで上手く進めないらしい。
 そんな二人を見ながら、真司はハルトに耳打ちした。

「なあ、ハルト。あの二人、なんかあんまり仲間って感じがしないな」
「俺に言われてもなあ……そういえば真司、この前連絡したとき、仮面ライダーって名前に結構反応してたよね?」
「ああ」

 真司は苦笑した。そんな彼へ、ハルトは尋ねる。

「結局、その仮面ライダーってのは何?」
「ああ……仮面ライダーっていうのは……その……」

 真司はなにやら言葉を濁している。

「上手く言えないけど、俺が知ってる仮面ライダーと、二人が言ってる仮面ライダーってのは、何か違う気がする」
「違う?」

 ハルトが首を傾げていると、声が飛んできた。

「ハルトさん!」

 振り向けば、それは可奈美だった。
 見滝原山の荒野、そこに面する森から飛び出してきた、美濃関学院の制服を纏った可奈美は、手にした千鳥とともに、あっという間に森からハルトの目の前まで接近した。

「ハルトさん!」
「可奈美ちゃん? ……って、ストップストップ!」

 ハルトは慌てて可奈美を静止させようと両手を突き出す。
 だが、刀使の銃弾に匹敵する速度はそう急には止まれない。可奈美の両手がハルトの肩に触れた時には、すでに彼女の勢いは弾丸となり、ハルトの腹に頭突きという形になった。

「ぐはっ!? か、可奈美ちゃん……!」

 そのまま倒れ、白目を剥いたハルトへ、可奈美は安心したように息を吐く。

「ハルトさん、無事でよかったよお……」
「たった今無事じゃなくなったけどね……」
「だってぇ……ハルトさん、朝からいなくなっちゃうんだもん……朝の鍛錬から帰ってきてもいないから、何かあったのかなって……」
「大丈夫。大丈夫だから……!」

 泣き出しそうになる可奈美に弱りながら、ハルトは起き上がる。

「可奈美ちゃんも来てくれたんだ……」
「だって……」

 しゃがみ込みながら、ハルトの膝を掴む可奈美。
 ハルトは可奈美を起こし、何とか泣き止んでもらおうと話題を考えた。

「真司から聞いたんだけど、他の皆も探してくれてるんだって?」
「うん! あ、ハルトさんが見つかったことを皆に伝えなきゃ!」

 可奈美はそう言って、全員のグループトークに投稿する。
 早朝、クラーケンからの連絡でラビットハウスを飛び出してきたハルトは、今スマホを持っていない。どんなやりとりが行われていたのか、ハルトには知る由もない。

「あ、みんなこっち来るって」
「本当? わざわざそんなことしなくても……」
「まあまあ、気にすんなって。それより、合流したら早く戻ろうぜ。ハルトお前、今日誕生日なんだろ?」

 肩を抱いてきた真司のその言葉に、ハルトは顔を一瞬強張らせた。

「あれ……? なんで真司がそれを?」
「だって、可奈美ちゃんがさっき言ってたから」
「可奈美ちゃんにもそれ伝えた覚えが……?」
「あ、ごめん! もしかしてあまり知られたくなかった?」

 ハルトの反応に、可奈美は手を合わせた。

「タカヒロさんからの手紙、勝手に読んじゃって」

 手紙。
 反射的にハルトは、上着の懐に触れる。

「落としてたのか……でも、俺の誕生日何て気にしなくていいのに……」
「ダメ! お祝いしたいよ! 真司さんだってそうでしょ?」
「ああ! もちろんだぜ!」

 可奈美の言葉に、真司も同意する。

「これでハルトも二十歳だよな! パーティーはパァーっとビール飲もうぜビール!」
「それは真司さんとコウスケさんだけしか楽しめないじゃん! みんなで楽しく剣技会とかやろうよ!」
「それこそ可奈美ちゃんだけしか楽しめないじゃねえか!」

 可奈美と真司が楽しそうに言い合っている。
 二人を眺めながら、ハルトは恐る恐る声をかける。

「あ、ね、ねえ。別にパーティーなんてしなくていいよ。それより、早くラビットハウスに戻ろうよ。俺今日シフトだし、このままお店開けておくのも心配だからさ」
「ダメだよ! ちゃんとみんなでお祝い、やろうよ!」
「そうだぜハルト。そもそも何でそんなに誕生日なんて隠してるんだ?」

 可奈美の質問に、ハルトは固まったまま返事が出来ない。
 だが、それ以上可奈美たちからの追及は来なかった。

「……ひぃひぃ……」

 その時。
 その声に、ハルトたちに緊張が走る。
 アマダム。
 情けない声を上げた彼は、銀色のオーロラから転がるようにその姿を現した。

「お前……無事だったのか!」
「もう……いやじゃ……」

 アマダムはそう言って、士を睨む。

「おのれディケイド……こうなったら、もう奥の手を使うしかないじゃけん……」

 アマダムはそう言って、腕を掲げる。

「出でよ、我が悪の軍団たちよ!」

 アマダムの号令とともに、荒野には変化が現れた。
 より大きな銀色のオーロラ。それが通過すると、今度はより多くの邪悪な存在がその場にいたのだ。

「あれは……!?」

 ハルト、可奈美、真司が同時に警戒する。
 現れたのは、無数の悪意。
 それぞれの世界において、世界を脅かしてきた悪の化身。それぞれ特有の姿をしている怪物たちは、どれ一つとして同じ異形はいない。
 グロンギ、アンノウン、オルフェノク、アンデッド、魔化魍、ワーム、イマジン、ファンガイア、ドーパント、ヤミー、ゾディアーツ、インベス、ロイミュード、眼魔、バグスター、スマッシュ、ヒューマギア、メギド、デッドマン、ジャマト……
 それぞれが声を上げながら、ゾンビのようにハルトたちへ歩み寄ってくる。

「またこのパターンか……可奈美ちゃん! 真司! 行くよ!」
「ああ!」
『ドライバーオン プリーズ』

 ハルトの号令とともに、真司がカードデッキを突き出す。
 すると、やはり見慣れたVバックルが彼の腰に装着された。真司はそのまま、右腕を

「「変身!」」
「写シ!」
『フレイム プリーズ』
「っしゃあ!」

 龍騎はいつもと同じように、自ら気合を入れる。
 千鳥とドラグセイバーが左右の視界に入るの同じく、ウィザードは背後に控える士と海東へ尋ねた。

「アンタたちも、戦ってくれるのか?」
「どっちにしろ、アマダムは以前倒した奴だ。落とし前は付けるさ」

 士は即座にディケイドライバーを腰に付ける。歩み、ウィザードの隣に出ながら、海東にも促す。

「お前も来い海東。後始末だ」
「嫌だなあ士」

 だが、士に対する海東の返事はあっさりしたものだった。

「今の僕に戦う理由があるのかい? お宝も手に入りそうにないのに」
「……まあ、そうだよな。変身」
『カメンライド ディケイド』

 そうして、士の体はディケイドの虚像に包まれていく。
 変身を終え、手を叩いた士は、ライドブッカーを撫でる。
 襲い来る、軍団たち。

「来る!」

 まず、ウィザードへ斬りかかって来たのは、人工知能搭載人型AIヒューマギアの一体、ベローサマギア。
 その、カマキリにも似た鎌をウィザーソードガンで受け止め、鍔迫り合いとなる。
 そのまま、ベローサマギアは何度も緑の斬撃を放ってくる。

「うわっ!?」

 周囲に爆発を引き起こすベローサマギアの斬撃。飛び退いたウィザードは、バク転を繰り返しながらその斬撃を交わし続け、やがてウィザーソードガンをガンモードに切り替えて発砲。
 銀の弾丸は斬撃を反れ、ベローサマギアの胸部に集中して火花を散らしていく。動きを大きく鈍らせたベローサマギアへ、ウィザードは銃を剣に変形させ、容赦なくベローサマギアの体を切り裂いていく。
 隣では、可奈美が本の魔人(メギド)、カリュブディスと対峙していた。
 カリュブディスの体が大きく開き、その体内からはツタのような口が飛び出している。それは可奈美の捕食を目論むが、可奈美は自慢のスピードを駆使してそれを躱し、反撃のチャンスを窺っている。
 可奈美の体を捕えようとするカリュブディスの口を切り刻みながら、可奈美はだんだんとカリュブディスに接近していく。

「やあっ!」

 赤い斬撃となって、カリュブディスの長い口を切り開いていく。
 そのまま、折り重なった口を足場にカリュブディスの頭上へ飛翔。長いリーチの斬撃が、カリュブディスの体を上から下まで火花を走らせていく。
 そしてもう一体の怪人は、人が内に宿す悪魔、デッドマン。長い首が自慢のブラキオデッドマンの暴走を、龍騎が食い止めていた。

「この……っ!」

 長い首には、チェーンソーのような刃が走っており、取っ組み合うごとに、龍騎の体がチェーンソーの刃に切り裂かれていく。

「くそっ、どうするんだよ!」

 龍騎は肩に抉られた傷を抑えながら、カードデッキに触れる。

「……っ!」

 そして、龍騎は顔を上げた。
 また襲い掛かってくるブラキオデッドマン。入れ替わりを続けるブラキオデッドマンの刃に対し、龍騎はカードをドラグバイザーに装填した。

『ソードベント』

 召喚されるドラグセイバー。縦長の胴体を横殴りで倒し、チェーンソーの刃、その端のところにドラグセイバーの刃先を差し込む。
 チェーンソーの流れが阻まれ、悪魔の体に動作不良が発生する。

『フレイム スラッシュストライク』
「迅位斬!」
『ストライクベント』

 三人のそれぞれの決め技が、三体の怪物を大きく転がす。
 赤い炎と斬撃にあぶられた三体。だが、まだ体力は残っているようで、再びウィザードたちへ迫り出す。
 だが。

『バッファ ゴー バッファ バ バ バ バッファ』
「我流・撃槍衝打ッ!」
「勇者パンチ!」

 猛牛、激槍、そして桃色の拳が、横殴るように三体の怪人たちに炸裂していった。
 すでにウィザードたちとの戦闘で消耗している彼らが、更なる攻撃に耐えられるはずもない。
 ビースト、響、友奈。
 普段からよく知る者たちの攻撃が、それぞれ怪人たちを爆発させていく。

「よぉハルト! 誘拐されたって聞いたけど、結構元気そうじゃねえか!」

 ビーストは手を上げながら、ウィザードの肩を叩く。

「コウスケ……それに皆も!」
「心配したんだよッ!」
「無事でよかった!」

 響と友奈もそれぞれウィザードの姿を見て喜ぶ。

「あ、ああ……」
「可奈美ちゃんも真司さんもお疲れ様……ああっ!」

 友奈は、ディケイドの姿を見て響の腕を掴む。

「あなたは、この前の!」
「ええっと……ディケイドッ!」
「ふん」
「ああ、大丈夫大丈夫! 今はもう味方だから。ね?」

 全く自らの弁明をしようとしないディケイドの間を取り持とうと、ウィザードは説明する。
 だが、ディケイドは全く取り合おうとしない。友奈と響を全く無視しながら、一番前に現れた敵___聖杯戦争同様、願いをかけた戦い(デザイアグランプリ)(ジャマト)の一体、ダンクルオステウスジャマトを切り裂いた。

「さっさと終わらせるぞ」

 ディケイドはそう言いながら、自らの紋章が描かれたカードを取り出している。
 ダンクルオステウスジャマトは吠え、その手に持つ大剣を地面に突き刺す。すると、まさに古代魚、ダンクルオステウスのような生物が地面より出現、その大きな口でディケイドを食らい尽くそうとする。
 だが。

『ファイナルアタックライド ディ ディ ディ ディケイド』

 発動したディメンションキックには、全く歯が立たない。
 ディケイドの蹴りは、巨大な古代魚ごとダンクルオステウスジャマトを蹴り貫き、両者を同時に爆発させる。
 さらに、なだれ込んでくる悪の軍団。アマダムは、その最奥部で高みの見物を決め込んでいる。
 ディケイドは手を叩き、顎でウィザードへ促す。

「おい。行くぞ」
「ああ!」 
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