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おっちょこちょいのかよちゃん

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289 屋敷での手がかり

 
前書き
《前回》
紂王の屋敷にてさりや長山達はガンマンに怪獣達と交戦する。各々の道具および能力を上手く使いこなして徐々にガンマンと怪獣を追い詰めていく。一方、藤木との再会を果たしながらも拒絶されてしまった笹山はフローレンスからの声援を受けて絶望から立ち直り、再び藤木を探しに向かう!! 

 
 さりの護符で出した銃の攻撃、さきこのサファイアの能力(ちから)で得られた絶好の勝機、もと子の影の攻撃、そして長山の念力とさきこのルビーの能力(ちから)によるガンマンの硬直、全ての条件が合わさり、ガンマンが倒す機会は整った。さりの銃撃ともと子の攻撃がガンマンを襲った。
(やった・・・?)
 さりはこれで止めを刺せたのか疑わしかった。だが、ガンマン達は虫の息だった。
「お、前、ら、の・・・、か、ち、だ・・・」
 ガンマン達は息絶えて消滅した。
「・・・倒したのね」
「何とかやりましたね、羽柴さりさん」
「ええ・・・」
 だが、その時、長山は不穏な空気を感じた。
「何か、様子が変な気がするよ」
「え?」
 さり達は見回した。しかし、次の敵が攻めてくるような気配はない。
[和光晴生が出したラドンとやらの怪獣と西部劇のガンマンを倒すとは護符の所有者達もなかなかのものだな]
 どこからか声が聞こえた。
「この声は・・・!!」
 さりはこの声は以前にも聞いた事があった。
[まあ、護符も杖と同じ方角上にあるというのならば東側を一気に追撃できるであろう]
「あんた、戦争主義の世界の長でしょ!?」
 さりは天に向かって問答した。
[その通りだ。今貴様らがいる地は杯の所有者を監禁し、その後、杖の所有者が藤木茂という小僧を争奪する為の戦闘が行われた場所でもある]
「ここが・・・!?」
[我々の世界の領土が消えるのは悔しいものだが、貴様ら平和を正義とする世界の守護としてその境界が我々の真の世界に近づいた時、護符も頂こうではないか。おお、そうだ。博識なる少年よ、貴様も共にいたのだったな。名は確か長山治と・・・]
「ぼ、僕の事かい!?」
 長山は自身の名を呼ばれて悪寒がした。
[我が強化、そして我らの世界のさらなる強化と共に貴様の能力(ちから)も最上位の道具と共に頂戴する事になる。せいぜい負け戦を楽しみにするがよい]
 そして声はそれ以上言ってこなかった。
「・・・、何が言いたかったのかしら?」
 さきこは沈黙の数秒後、我に返った。
「そうだ、長山治、お主の神通力の眼鏡を使用してこの屋敷の廃墟にて過去に何が起きたのかを確かめよ」
 清正が提案した。
「え?うん」
「それでお主らの友である杖の所有者によって何かよい手がかりを与える事ができるかもしれぬ」
「よし、やってみるよ!」
 長山は神通力の眼鏡の能力(ちから)を行使した。天耳通を作動させた。その場で起きた過去の声が長山に聞こえて来た。
[だ、誰っ!?私をどうするつもりよっ!?杯を返してっ!!]
(この声はおそらくりえちゃんがここに連れて来れられたばかりの時だな・・・)
[それで、りえちゃんは、その、そうだ、ピアノ、頑張ってるのかい?]
[うん・・・。でも、こっちに来てからは弾いてないわ]
(りえちゃんと藤木君の会話か・・・)
 まだ長山は能力を使用し続ける。
[皆様、お越し頂きありがとうございます。それでは新郎新婦の結びをお楽しみください。新たなお嫁さんとお婿さんのご入場です!]
 聞き慣れぬ声だったがこの屋敷の人間の声だと長山は察した。おそらくりえはここで藤木と無理矢理結婚ごっこをさせられていたのかと長山は推測した。そして別の声が聞こえた。
[ところで例の杯はそっちで保管しているのか?]
[はい]
(杯?ここに杯はあったのか!?)
 長山は杯という言葉を聞いて驚いた。そしてよく耳を澄ます。
[煬帝殿、これを一旦貴様に預けておこう。もし危機を感じたら別の物に譲渡するのだ]
[ああ、解った]
 長山は決定的な会話を聞きつける事ができたと確信した。
「・・・、何が解ったんだ?」
 尾藤が聞いた。
「杯が何処に行ったかだよ」
「え!?」
「それで何て聞こえたの?!」
 さりが落ち着きを失い、質問した。
「煬帝って人に渡されたみたいなんだ!」
「そっか、私、従弟や姉貴に連絡するわ!」
 さりは通信機を取り出した。
「こちら羽柴さり!健ちゃん、湘木君、冬田さん、聞こえる?」
『はい、どうしました?』
 三河口が応答した。
「今かよちゃんが戦ってたっていう場所にいるんだけど長山君の眼鏡で調べて貰ったらね、ここの屋敷の人は杯を煬帝って人に渡したらしいわ!」
『煬帝に!?ありがとうございます!俺達も丁度その煬帝ってのを手掛かりに動いていた所でしたからありがたい情報です!ゆりちゃん達にもお教えしておきます!』
「いいの、うん、ありがとう」
 連絡が終了した。
(健ちゃん、頑張って・・・!!)
 護符の所有者は従弟を応援するのだった。

 かよ子達は北の方角へと進む。
(折角藤木君を取り返すチャンスだったのに失敗しちゃった・・・。また振り出しか・・・)
「それにしても長山からの連絡遅いブー」
「もしかしたら長山の方も敵と戦ってる所でそれどころじゃないのかもしれねえぜ」
 大野が推察した。
「うん、そうかもしれないね・・・。そういえば長山君もなんだかんだで向こうにも狙われてたんだっけ・・・?」
 かよ子は思い出した。長山がオリガという女性に連れて行かれそうになった日を。
「そうだったなブー・・・」
「私も探してみるわよ」
 のり子は人形を利用した。
「本当にできるのかブー?」
 ブー太郎は聞いた。
「探知ぐらいできるわよ!」
 キャロラインは不機嫌に答えた。人形が探知作業を始める。
「・・・方角は変わってないわ。そのまま安心して進んで」
「うん、ありがとう」
 藤木救出班はそのまま北へ進む。

 りえは夢を見ていた。その場には藤木がいた。
「藤木君っ!?」
 りえは藤木が泣いているのが解った。
「来ないでくれよ」
「えっ?」
「君は僕が嫌いだったんだろ?もういいよ、どこにでも行ってくれ!」
「そんな、私、藤木君が嫌いなわけじゃっ・・・」
「何言ってんだい!?最初紂王さんの屋敷に来て貰った時も嫌がってたみたいだし、それに折角結婚式を挙げてからやっと僕を好きになってくれたと思ったのに・・・!?何で僕が嫌になったんだよ!折角僕の唯一の取り柄のスケートを見せる事ができたってのに!あれは演技だってのかい!?」
「演技・・・!?」
「もういいんだ、恋なんてしないよ・・・!!僕は誰が好きになっても皆嫌われるんだ!!」
「そんな、私は嫌ってるわけじゃっ・・・」
 藤木の姿が見えなくなる。りえも頭の中が真っ黒になった。

 りえは目を開けた。レーニンの威圧の能力(ちから)で気絶させられて暫く意識を失っていたのだった。ここは自身が軟禁された部屋や藤木と二人で過ごしていた部屋とも異なる個室だった。
(私はあの屋敷から杉山君によって連れ出されて・・・)
「よう、りえ、気が付いたか」
 その場には杉山がいた。
「杉山君っ・・・!!」
 レーニンの姿ではなかった。
「ここはどこなのっ!?」
「さっきの紂王の屋敷よりも北の方さ。藤木はお前を取り返そうとしている奴に引き渡そうとしてたが、俺はお前にやって欲しい事があるんだ。それに付き合ってもらうぜ」
「やって欲しい事っ・・・!?」
 りえにとって杉山が何を要求するのか、解ったものではなかった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「掃除の多忙化」
杉山はりえにある事をやらせようとするが、それはモニターのある部屋にて行う事だった。かよ子は藤木を取り戻せなかった事を反省しつつ、昼食にする。一方、かよ子達がいない学校では男子達が給食のお代わりをし放題だが、人手が足りないという事で掃除係の一方的な提案に皆が反発し・・・!? 
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