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おっちょこちょいのかよちゃん

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290 掃除の多忙化

 
前書き
《前回》
紂王の屋敷で七人のガンマンと怪獣を倒したさり達は戦争主義の世界の長の声を聞く。その声はさりの護符のみならず長山も奪取する事を仄めかすような発言をする。そして長山はその屋敷にてりえと藤木の結婚式が行われた事を神通力の眼鏡を通して察知する。そしてその結婚式の時、紂王が煬帝という人物に異世界の杯を渡していたことが明らかになる!! 

 
 りえは杉山と共に部屋を出て廊下を歩いていた。
「杉山君、どうして私と藤木君を引き合わせようとしたのっ?」
「赤軍の奴に聞いてみたらお前が藤木の嫁に相応しいような事言ってたぜ」
「でも、その間、祝言を挙げてから私がおかしかった気がしたのは何だったのかしら?私が藤木君を好きになっているような態度だったみたいだけど・・・」
「そんな事があったのか?誰かに藤木を好きになるようにしろって暗示か洗脳でもしてたんじゃねえのか?」
「とぼけないで頂戴っ!アンタなんか知ってるでしょっ!?」
「・・・、それ以上は知られるとこちらも困るのでいう事はできん」
 急にレーニンの姿に変わった。
「言ってもいいがその場合、口封じとして貴様を殺す。それでもいいのか?」
「う・・・、解ったわよっ・・・」
 りえはそれ以上問答しなかった。そしてある部屋に入室した。モニターがあった。
「映像を見て貰うぜ」
 杉山は姿をレーニンに変え、機械を操作する。
「これから観て貰うのは俺達の一種の思い出の一つだ」
「思い出の一つ・・・?」
 りえは杉山の言う事が理解できぬまま映像を視聴し始めた。

 かよ子達は昼になり、少し空腹になった。
「はあ、お腹すいた~。お昼ご飯まだ~?」
「儂ももう腹ペコじゃ~・・・」
 まる子と友蔵は昼食が我慢できなくなっていた。
「全く、しょうがねえな」
 毎度の事でありながらと思いながらも大野は呆れる。そんな中、かよ子は藤木を取り逃がしてしまった事で反省する事ばかりだった。
(あの時に妲己とか紂王って人達を倒せて藤木君を取り返せたらこんな苦労しなかったのに・・・)
「藤木君はりえちゃんと一緒にいたけど、今はどうしてるのかな・・・?」
 かよ子には今も藤木とりえが共にしているのか、それとも別にいるのか、考えても解らない。
「長山治の情報では藤木茂と安藤りえは祝言を挙げておったようだが、おそらく安藤りえは拒絶したのではなかろうか?」
 石松はそう推察した。
「それにこれ以上一緒にさせていても煮雪あり達の一行と我々の一団が纏めて襲い掛かって来る恐れを懸念しているであろう。それにあの時の襲撃には杯を探す三河口健に冬田美鈴、湘木克也の者も混ざっておったからな」
 かよ子は状況を整理する。思い出せば紂王の屋敷での戦いでりえは杉山(レーニン)に連れられて行った。今は彼女は杉山と共にいるかもしれない。そう考えて羽根を進めているうちに本部から昼食が支給された。

 入江小学校の3年4組の教室。欠席者が多い為に給食はかなり余っていた。この日は鶏の唐揚げに塩もみ野菜、野菜スープにプリンだった。
「うおお、今日も唐揚げに野菜スープが食い放題だぜ!!」
 食い意地の張った男子・小杉太にとっては給食の時間は極楽だった。
「小杉、今日も凄い食べっぷりだね・・・」
「うん、大盛りにしてくれって頼んだのにお代わりするなんてね・・・」
 たまえととし子は小杉の恐ろしい食欲に今日も驚くのだった。
「おい、小杉、自分だけお代わりするなんてずりーぞ!」
「俺も唐揚げ貰うぜ!」
 他の男子達も食い下がらない。お代わり合戦となった。

 午後の授業も終了し、帰りの学級会が始まった。その時、掃除係の前田ひろみが立ち上がり、前に出た。
「掃除係からのお願いです!最近掃除をサボる人が多いです!ただでさえ今人がいないので掃除の時間を増やします!」
「はあ!?」
「冗談じゃねえぜ!」
「私、ピアノのお稽古あるのに増やされたら遅刻しちゃうわ!」
 多くの生徒達が文句を言った。まるでデモのようだった。
「仕方ないでしょ!!ただでさえ休んでる人が多いんだから!!掃除当番が人手不足で片付かないんだよ!!」
 前田も逆切れした。
「だからってアンタ達掃除をしなきゃいいって思ってるんじゃないでしょうね!?何が何でもやってもらうよ!!」
「勝手に決めるなよ!」
 この論争は終息しそうにない。
(ど、どうしよう・・・!?)
 たまえはこの場をどう治めるか自分には考えが出てこなかった。
「ちょっと、丸尾君、アンタ学級委員なんだからどうにかしてよ!!」
「え!?わ、ワタクシがですか!?」
 丸尾は急に自分に振られて気を取り乱した。
「あ、いや、その・・・!?」
 頼みの綱であるはずの学級委員でさえも最善の策が思いつかなかった。
「まあ、まあ、皆さん、落ち着いてください」
 戸川先生が立ち上がった。
「確かに今は欠席者が多いので掃除の人手不足に困る前田さんの気持ちも解らなくはないですが、前田さんも自分の決めた事を皆に決めて押し付けるのもいけませんよ」
「う・・・」
「掃除当番を決めるよりも皆でやった方が早く終わるでしょう。ただし、さぼってはいけませんよ」
「は、はい・・・」
「ちっ、しょうがねえなあ」
 男子の一人が文句を呟きながらも掃除は全員で行うという事で決定となった。そして皆で掃除が始まる。
「それじゃあ、箒と塵取り持ってって!足りなくなったら後は皆雑巾がけと窓拭きだよ!」
 前田のてきぱきな指示(ただし、端から見ると怒鳴り散らしているだけにしか聞こえなくもないが)で掃除はいつもよりは早く終わった。
「よし、皆、やればできるじゃない!!明日からもこの調子で皆で掃除やるよ!」
 前田は掃除が捗ったからか気分が良かった。
「たまちゃん、帰ろうか・・・」
「うん・・・」
 たまえととし子は共に下校した。
「これじゃあ、暫く毎日掃除になりそうだね」
「うん、前田さん、掃除に関しては凄く厳しいからね・・・」
「でもまるちゃん達、ある意味楽かもしれないよね」
「確かに掃除しなくていいけど、異世界(むこう)の方がもっと大変なんだよね・・・」
 たまえやとし子は親友や他に出動している者達が気になった。
「そういえば笹山さんもあれから一週間休んでるよね」
「うん、もしかしたらまるちゃんやかよちゃん達と会ってるかも・・・」

 夕方。かよ子の父はこの日も寂しい帰宅となった。
(はて、この日はどうしようか・・・?)
 家に帰っても食事は自分で用意しなければならない。その上妻がやっていた家事を自分が引き受けなければならないので大変だった。
(母さん、かよ子、何としても勝つんだぞ・・・!!)
 そして自分ができる事は何なのか。ある事を思いつくのだった。

 こちら杯の奪還に向かう祝津ゆりの一行。ゆりは通信機で従弟と連絡を取っていた。
「え、杯の手掛かりが解ったの?」
『はい、奪い取った本人と思われる妲己と紂王に問い詰めてみたたところ、奴らは「煬帝」という奴に渡したとの事です。最初は本当か嘘か解らなかったのですが、その藤木君やりえちゃんがいた屋敷からさりちゃんと一緒にいる小学生に調べて貰った所で確信しました』
「その煬帝ってのはどこの方角だって?」
『北の方角です』
「ありがとう。そうだ、結局・・・」
『はい?』
「かよちゃん達もあり達も結局は藤木って子や杯の持ち主の子を取り返せなかった訳ね」
『はい・・・』
「まあいいわ。領土攻撃班の侵攻で着々と領土は平和主義の世界に戻って来ているから探せる範囲も狭まるでしょう。頑張って追いついてきてね」
 ゆりは通信を終えた。
「ゆりさん、杯の場所、解ったんですか?」
 光江が聞いた。
「ええ、北の方の煬帝って所を目指すわよ」
 ゆり達も進路を定めるのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「西部の領土では」
りえは杉山によって藤木の過去の映像を視聴させられ、りえは藤木の辛い過去を知る事になる。一方、戦争主義の世界の領土を西側へ侵攻して領土の奪還に進むすみ子達組織「義元」は夕刻の休息中、敵の襲撃を受ける。その敵は嘗て倒した人物と関連深く・・・!? 
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