冒険酒場のおかみ
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第一章
冒険酒場のおかみ
イーダがやっている店は酒場それも冒険者が集い仕事や仲間 を求め情報を交換し合いくつろぐものである、それでだ。
あちこちから冒険者が集まっている、実に色々な職業や種族の冒険者達が毎日店が開くと集まってきてだった。
酒場と一緒にやっている宿屋にもいつも冒険者達が泊まっている、いつもモンスターや賊と戦い財宝や名誉を求めている彼等はというと。
荒くれ者ばかりだ、それで人間の若い戦士の男がある日イーダにこんなことを言ってきた。
「大変だよな、こうした店をやるのよ」
「大変って言ったら大変だよ」
イーダも否定しなかった、艶っぽい感じの顔立ちで切れ長の目と細長い眉にも色気がある。やや浅黒い肌で紅の小さな唇も先の細い顎にもそれがある。
背はやや高めで胸が大きい、それが目立つ赤いブラウスと黄色い長く幅のあるスカートという恰好だ。
「もうね」
「やっぱりそうか」
「ここは荒くれ者が多いからね」
外見に似合う艶のある声で答えた、やや低くそれが余計に色気を出している。
「もう喧嘩なんてしょっちゅうだよ」
「飲んでるしな、皆」
「博打もやってね」
「飲んでだと余計に荒れるな」
「それにだよ」
イーダはさらに話した。
「酒代や宿代が払えないとかもね」
「あるか」
「そんな奴もいるしね」
「何かとあるんだな」
「うちのお店をそうしたお店や宿屋と思う奴もいるよ」
今度は笑って話した。
「だからお店の娘にだよ」
「声かけたりするんだな」
「酌しろとか一晩相手しろとかね」
「ここはいい娘多いしな」
戦士はイーダのその話には笑って返した。
「そうなるよな」
「あんたも納得するんだね」
「俺的にはあの娘好みだぜ」
魔族の薄紫の髪に切れ長の琥珀色の目と漆黒の長い髪を持つウェイトレスの娘の一人を見つつ話した。
「実はな」
「あの娘かい」
「いけてるな」
「いけてても声はかけちゃ駄目だよ」
イーダは今話したことを戦士にも話した。
「うちは本当にそうしたお店じゃないからね」
「だから声かけるなってんだな」
「女の子の服見たらわかるね」
そもそもという口調での言葉だった。
「そうだね」
「スカートも長いし胸も出してねえな」
「真面目な服装だろ」
「エプロンも奇麗でな」
「そうしたお店じゃないよ、けれどね」
「冒険者ってのはそうした奴も多いからな」
戦士は笑って話した、木造の酒場のカウンターの木製の背のない丸い椅子に座ってそのうえでウイスキーを飲みながら話す。
「だからな」
「酔うと余計にだね」
「調子に乗ってな」
そうしてというのだ。
「言い寄るんだよ」
「そういうものだね」
「姐さんもわかってるよな」
「あたしはこのお店のおかみだよ」
これがイーダの返事だった。
「だったらだよ」
「わかってるよな」
「ああ、それがわかってないでやってるなんてね」
この店をというのだ。
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