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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第50話:新兵器登場


その日,俺は珍しく自分からデバイスルームを訪れた。
中に入ると,シャーリーが作業をしていたが,集中しているのか
俺が入ってきたことに気づいていない。

しばらく部屋に入ってすぐのところで待っていると,作業が一段落したのか
シャーリーが顔を上げた。

俺がシャーリーに声をかけると,驚いた様子でこちらを見た。

「ゲオルグさんじゃないですか,どうしました?」

「この前の戦闘でAMFC発生装置を使ってみたんだけど」

「あ,どうでした?」

「問題なく機能したよ。でも,運用上の問題点を洗い出すところまでは
 使う機会が無かった」
 
「そうですか」

シャーリーはそう言うと,少し残念そうに視線を落とした。

「ただ,正常に機能して,きちんと効果があることは確認したから,
 前線メンバー全員分の装置を作ってほしいんだ」

「いいんですか?」

「こういうことは早めに動いた方がいい。使えるならとりあえず数が欲しい」

「解りました」

シャーリーはそう言って頷いた。

「あとな,運用上の問題点洗い出しのために,訓練スペースでAMFC発生装置の
 シミュレーションをやりたいんだが,データを組むのにどれくらい必要だ?」

俺が尋ねると,シャーリーは少し考えて口を開いた。

「それくらいなら今日中にやっておきますよ」

「そうか,じゃあ頼む」

「了解です」



シャーリーとの話を終えてデバイスルームを出た俺は,
その足で部隊長室に向かった。

部隊長室に入ると,はやてとなのはがいた。

「なのはもいたのか。ちょうどよかった」

「どうしたんや?」

「前に報告した携帯用AMFC発生装置の件だけど」

「ん?ああ,あれか。試作品のテスト中やったっけ」

「ああ。で,この前の戦闘で俺が試作品を実戦で使ってみたんだが,
 問題なく作動して,効果もあることが確認できたんで,前線メンバー分の
 製作にかかってもらおうと思うんだが,構わないか?」

「ええよ。そやけど,問題は洗い出せたん?」

「機能上の問題はない。ただ,運用上の問題を洗い出せる程には使えなかった」

「そやのに量産するんか?ちょっと判断が拙速やろ」

「運用上の問題と機能上の問題は別だよ。で,運用面の問題を検討するのに
 提案があるんだけど」

「なんや?」

「訓練システムにAMFC発生装置の模擬プログラムを組み込む」

俺がそう言うと,なのはが頷いた。

「いいアイデアかも。あのシステムはAMFの模擬プログラムも実装されてるし」

「だろ?で,隊長陣で何度かテストして運用面の問題点を洗い出したら,
 フォワード陣にもAMFC使用の訓練をすればいい。どうせ,人数分揃うのに
 時間がかかるから,実戦投入までにそれくらいの余裕はある」

俺はそう言ってはやての方を見た。
はやては,腕組みをして考え込んでいたが,しばらくして顔を上げると
俺の顔を見て,頷いた。

「ええやろ。報告書を見る限りは有用なんは間違いないしな。
 そやけど,フォワード陣への訓練に導入するまでに十分問題点を出しといて」

「了解。じゃあなのは。今日中にはAMFCのシステムへの実装が終わるから
 とりあえず1回目のテストに付き合ってくれるか?」
 
「いいよ。明日なら時間とれるし」

「了解。じゃあな,はやて」

「はいはい」



・・・翌日。
朝の訓練を終え,朝食を食べた俺となのはは,訓練スペースに来ていた。
訓練スペースの前ではすでにシャーリーが準備を進めている。

「お待たせ。シャーリー」

なのはがシャーリーに声をかけると,シャーリーが俺達の方に振り返った。

「あ,なのはさんにゲオルグさん。準備はできてますよ」

「了解。じゃあ,早速始めますか」

「うん」

そう言うと,俺となのははデバイスをセットアップし,訓練スペースに入った。
今は,機能のテストなので建物のようなものは特に出していない。

「シャーリー,まずはAMFを最大強度で」

『了解です・・・いいですよ』

その声を聞いた俺は,レーベンに魔力を纏わせようとする。
が,魔力結合ができずレーベンに魔力を纏わせることができない。

なのはの方を見ると,魔力弾を生成しようとしているようだったが,
やはり生成できないようだった。

「すごいね。まったく魔力結合できないよ」

「だな,まだ実戦ではこれだけのAMFに出くわしたことはないけど」

なのはと言葉を交わすと,俺はシャーリーに呼びかけた。

「AMFは問題なし。AMFC起動」

『了解・・・どうぞ』

シャーリーからの返信を受けて,俺はもう一度レーベンに魔力を纏わせる。
今度は,レーベンが俺の魔力光で青黒く光る。

そのとき,なのはが魔力弾を前方に飛ばした。
なのはの魔力弾は途中までは形をとどめていたが,10m程先で四散した。

「見た?」

なのはの声に俺は小さく頷く。

俺は,右手を前にかざすと,砲撃魔法を撃った。
俺の砲撃魔法は,5mくらいまでは元の太さを保っていたが,
そこから先はだんだん細くなり,20mくらい先で完全に消えてしまった。

「こうなるんだね」

「ああ。原理から言ってこうなるのが当然なんだけど,実際に見ると驚くな」

『お2人ともどうですか?』

「システムは問題なく機能してるみたい」

『じゃあ模擬戦モードにしますね』

シャーリーがそう言うと,目の前に廃棄都市区域を模擬したビルが立ち上がる。
そして,少し離れたところにガジェットが出現した。

俺となのはは目を合わせ,小さく頷きあうとガジェットに向かった。



1時間ほどいろいろな状況を想定して,対ガジェット戦でのAMFCの効果テストを
実施した俺となのはは,シャーリーのところに戻った、

「どうでした?」

シャーリーの問いに対して,なのはは首を振った。

「私にとってはあんまり意味無いかな」

「なのはさんは砲撃型ですもんね」

「そうなの。基本的にガジェットとの接近戦はやらないから。
 唯一利点があるとすると,不意にガジェットに近寄られても,
 防御の強度が落ちないことだけど,稼働時間が5分じゃね・・・」

「そうですか・・・」

シャーリーは肩を落としていた。

「俺はすごい楽になるけどな」

「だってゲオルグくんは接近戦が主体だもん」

「まあね。そう考えると,こいつは使い手を選ぶな」

「うちの前線メンバーだと私とキャロ以外は使える場面があるんだね」

「そうなるな。残念だったな,なのは。新兵器が使えなくて」

俺がそう言って,なのはの肩を叩くと,なのはは頬を膨らませた。

「いいもん。私はこんなのなくてもちゃんとできるもん」

「ちゃんとできるもんって・・・子供じゃないんだから」

「にゃはは。そうだね」

なのはが笑ったので,俺は内心で胸をなでおろした。

「じゃあどうします?全員分は作るのやめますか?」

シャーリーがそう尋ねてきたので俺は少し考えた。

「いや,一応全員に配備しよう。狭い空間での戦闘になれば,
 なのはやキャロにも防御面でのメリットがあるだろ」
 
「解りました。じゃあ人数分プラスアルファで作るようにしますね」

「頼む。あと,ヴィータやシグナムにも一度使ってみてもらわないとな」

「そうだね。2人の意見も聞いてみたいし。じゃ,戻ろっか」

なのはの言葉をきっかけに俺達は隊舎へと向かって歩き出した。

 
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