機動6課副部隊長の憂鬱な日々
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第41話:えっ、幼女の保護ですか?
俺が発令所に入ると,部隊長席にははやてが座っており,
その周りにはグリフィス・シンクレアと前線の隊長・副隊長が勢揃いしていた。
「遅くなってすまない。状況は?」
俺が誰ともなしに聞くと,シンクレアが俺に近づいてきた。
「エリオ君から報告があったのですが,クラナガン市内でケースに入った
レリック1個を発見したそうです」
「なら回収すれば事は済むだろ」
「はい。ですが,身元不明の女児がレリックの入ったケースとともに
倒れていたらしく,ケースは女児の足に鎖でつながれていたようです。
しかも,鎖にはもう一つケースがつながれていたような痕跡があるようで」
「なるほどね。で,どう動くの?」
後半ははやてに向かって言うとはやては俺の方を振り返った。
「とりあえずフォワード4人の休暇は取り消し。今,全員を合流させてる。
で,フォワード陣には残り1個のレリックを捜索させるつもり。
女児の方は意識不明やし,シャマルを派遣して応急処置させながら保護」
「レリック捜索の戦力は?」
「隊長・副隊長を全員合流させるつもりや。索敵にリインも付ける」
はやてがそう言うのと同時にアルトが慌てた様子で振り返った。
「部隊長!クラナガン南方の海上に飛行型ガジェットが出現。
数は数十機。なおも反応増大中です」
「わかった!作戦変更や。隊長・副隊長陣は飛行型ガジェットの迎撃。
ゲオルグくんはシャマルと一緒にヘリでフォワード陣と合流。
残るレリックの捜索を頼むで!」
「索敵は?」
「リインは空の索敵に回すからあかんし,シャマルは女児を回収したら
ヘリでこっちに帰還してもらうからあかん。索敵はキャロにやらせて」
「それはわかった。でもヘリの護衛は?」
「シャマルが居れば問題はないんちゃうか?」
「そうだね。では,ロングアーチ02はフォワード陣と合流しレリックの捜索に
あたります」
そう言うと,はやてに敬礼をしてヘリがいるであろう屋上に向かった。
屋上に向かって走っていると,なのはが俺の横に並んできた。
「ゲオルグくん,気をつけてね」
「おう!なのはこそ,無茶すんなよ」
「うん!」
屋上に上がると,空の迎撃に上がるメンバーは各々のデバイスを
セットアップして空へと上がっていった。
俺は,すでに出撃準備が完了したヘリに乗り込む。
ヘリの中には既に白衣を羽織ったシャマルが座っていた。
「揃いましたね。離陸しますよ!」
「頼む!」
俺が操縦室に向かって叫ぶとヘリはすぐに離陸して高度を上げていく。
「シャマル。現地に到着したら,女児を乗せてすぐに隊舎に戻れ。
応急処置はヘリの中で。あと,敵の襲撃も無いとは限らんから,
警戒を怠るなよ」
「判ったわ。ゲオルグくんは?」
「俺は,フォワード陣を指揮してレリックの捜索だ」
「了解。気をつけてね」
「シャマルこそ。ヘリにはお前しか頼れるのが居ないんだから気をつけろよ」
「ええ」
俺とシャマルがそんな会話を交わしている間に,ヘリは目的に上空に
到達し,徐々に高度を下げていた。
「ゲオルグさん,シャマルさん。着陸しますよ」
「「了解」」
ヘリが着地すると同時に俺とシャマルはヘリを降りた。
ヘリから出ると,スバルが俺とシャマルを女児が発見された現場に
案内してくれた。
そこには,蓋の空いた地下水道へのマンホールがあり,
片方の足に鎖のつながれた金髪の女児が寝かされていた。
「ゲオルグくん。この子は私が連れていくわね」
「ああ,頼む」
シャマルが女児を抱きかかえてヘリに向かっていく。
「ティアナ,レリックは?」
「こちらです。すでに私が封印処置をしておきました」
俺が聞くと,キャロがケースを持ってきた。
「よし。じゃあヘリに運んでおいてくれるかい」
「はい」
キャロは返事をするとヘリにケースを置いて戻ってきた。
俺はフォワードを集めると,全員の顔を眺めた。
4人とも,引き締まってはいるものの固さは感じられなかった。
「全員状況は把握しているか?」
「「「「はい」」」」
「よし。ではこれから地下水道に入りレリックの捜索を行う。
だが,みんなも知っての通り,空にガジェットが出現しており,
リイン曹長は隊長や副隊長とそちらの迎撃に当たっている。
シャマル医師は先ほど保護した女児を隊舎に移送中だ。
よって本作戦ではキャロに索敵とレリックの反応追跡を頼むよ」
「はい。解りました」
「何か質問は?」
俺が4人に対してそう言った時,通信が入った。
『ロングアーチよりロングアーチ02。応答願います』
「ロングアーチ02だ。何か?」
『今,陸士108部隊のギンガ・ナカジマ捜査官から通信がありまして,
6課の現場責任者と話がしたいそうなのですが,つないでもよろしいですか』
「いいよ」
俺がそう言うと,通信画面にスバルに似た雰囲気の女性が現れた。
『陸士108部隊で捜査を担当していますギンガ・ナカジマ陸曹です』
「機動6課副部隊長のゲオルグ・シュミット3等陸佐だ。
で,早速で申し訳ないがどんなご用かな?」
『私の方で捜査をしている別の事件とそちらで保護された女児との間に
関係があるのではないかと思われまして,私もそちらの作戦に
合流させていただきたいのですが』
「申し訳ないが,時間に余裕が無い。ロストロギア捜索のために地下水道内の
探索を行う必要があるのでね。しかも敵よりも早く。
君がこちらに合流するのを悠長に待っているわけにはいかんよ。
それに,そういうことには部隊長の許可が必要だ」
『八神部隊長には先ほど許可をいただきました。
私も地下水道に別ルートで入りますので,途中で合流ということでは
いかがですか?』
「いいだろう。では君の提案通りで行こう。合流位置は任せる」
『了解!』
そう言ってナカジマ陸曹は通信を切った。
俺は4人の方に向き直ると,今の通信で決まったことを話した。
すると,スバルが妙にはしゃいでいた。
事情を聞いてみると,先ほどのナカジマ陸曹はスバルのお姉さんらしい。
気持ちはわかるが,戦闘になる可能性もあるのではしゃぐなと注意すると,
スバルはもとの引き締まった表情に戻った。
「では作戦開始だ!」
俺はそう言うと地下水道へと身を投じた。
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