機動6課副部隊長の憂鬱な日々
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第42話:ミッション・アンダー・グラウンド
地下水道に降りると,女児がレリックのケースを引きずったらしい
跡が続いていた。
俺達は,その跡の続いている方向に向かって走り出した。
先に進んでいくと,キャロからガジェット1型が数機接近との報告があった。
俺は,ポケットの中にあったAMFC発生装置にカートリッジを起動すると,
速度を上げて,前方のガジェットとの距離を一気に詰めると,
レーベンを振りかぶって,1列に並んで進んでくるガジェットを
一太刀で斬り捨てた。
(すげえな,マジでフルスペックだよ・・・)
その後も,ガジェットと何度か遭遇しながら先に進んでいくと水路が
池のように広がっているところに出た。
俺が,その手前で立ち止まるとキャロからレリックの反応が近いとの
報告があった。背後を振り返ると,俺の方に向かって走ってくる
4人の姿が見えた。
俺は4人に止まるように伝えると,俺の少し手前で4人が立ち止まった。
[キャロ,レリックの反応は?]
[すぐ近くです。たぶんこの池のどこかにあると思います]
[解った。俺がちょっと探してくるからそのまま待機な]
俺はそう言うと,ステルスを使って姿を消し,足音を立てないよう慎重に
通路を歩く。
水路の方に目を凝らしながら先に進むと,水路の中にレリックの
ケースらしきものを発見した。
俺は,飛行魔法で浮かび上がると,ケースの方に向かって飛んで行った。
ステルスを使っていても俺自身の体が消えるわけではなく,
水の中を歩けば水面に波紋ができてしまうので,それを防ぐためだ。
ケースらしきものの上まで行くと,それはやはりレリックのケースだった。
俺がケースの持ち手を掴んで持ち上げた瞬間,左側で水音が聞こえた。
次の瞬間,俺は何者かに弾き飛ばされ壁に叩きつけられた。
レリックのケースを握っていた右手を確認すると,手を離してしまったようで
ケースは無かった。
俺の周りには俺が叩きつけられて壊れた壁を目印にしたらしく,
フォワード陣が俺を守るように立っていた。
俺は,魔力消費を抑えるためにステルスを解除して立ち上がると,
通信をつなぐことにした。
「ロングアーチ02よりロングアーチ,現在未確認の敵と交戦中。
応援を要請する」
しばらくして,アルトの声で返信があった。
『ロングアーチよりロングアーチ02。現在航空戦で手いっぱいです
応援は出せません』
「ロングアーチ02了解」
俺が通信を終えた時,水路の奥から紫色の髪をした少女が歩いてきて,
俺が落としたレリックのケースに近づこうとする。
俺がティアナに目で合図すると,ティアナは少女に駆け寄り,
クロスミラージュを突きつけた。
「悪いけどこれは危険なものなの。近づいちゃだめ」
その間にキャロがレリックのケースを回収しようとする。
その時,キャロの正面で陽炎のように景色の揺れているところが見えた。
(さっき俺を弾き飛ばしたのは奴か・・・)
俺はスピードブーストを使うと,レーベンを構え陽炎に向かって突っ込んだ。
陽炎にレーベンで斬りかかると,何かを斬った感触があった。
俺が振り返って確認すると,虫のようにも見える人型の物が胴から体液の
ようなものを流しながら立っていた。
「ガリュー,下がって」
少女がそう言うと,虫のような奴は消えてしまった。
(召喚獣か・・・)
少女を捕縛するべく歩きだしたとき,水路の奥から炎が飛んできて,
レリックを回収したキャロと少女のそばにいるティアナに襲いかかった。
爆発による砂煙からキャロを抱きかかえたエリオと
ティアナを抱えたスバルが飛び出すのを見て,俺はほっと胸をなでおろした。
「ったく。ルール―が勝手に出かけるからだぞ」
声のした方を見ると,リインくらいのサイズの女が飛んできた。
「このアギト様が来たからにはおとなしくそいつを渡してもらうぜ!」
女はそう言うと,自分の周りに花火のようなものを打ち上げていた。
(アホか?こいつ・・・)
俺はそんなことを考えながら,相変わらず花火を打ち上げまくっている
女のそばまでステルスで姿を消して近づくと,バインドで拘束した。
「あー。危険魔法使用・殺人未遂および公務執行妨害の容疑で拘束する」
ステルスを解除してそう言った俺に,アギトとかいう奴は卑怯だなんだと
騒いでいたが無視して,状況を報告するために通信で隊舎を呼び出した。
「ロングアーチ02よりロングアーチ。レリックを確保,交戦中の敵を拘束した」
『ロングアーチ了解。スターズ02がそちらに向かってますので
合流してから連行してください』
「ロングアーチ02了解。ちなみに航空戦は終了したのか?」
『まだです。大量の飛行型ガジェットが出現したため,
現在八神部隊長が出撃して迎撃中です』
「はやてが!?で,両隊長は?」
『上空で待機中です』
「状況はわかった。ありがとう」
俺は通信を切ると,キャロにレリックを封印するように言って,
ほっと息を吐いた。
その時,水路の壁が突然破壊され,108部隊のナカジマ陸曹が現れた。
「遅くなりました・・・って,もう片付いてます?」
「そうだね。でも,まあ,ありがとう。ナカジマ陸曹」
「なんか役に立てなくてすいません・・・。あと,ギンガで結構ですよ,
シュミット3佐」
「俺もゲオルグでいいよ,ギンガ」
その場で少し待機していると,ヴィータが現れた。
「応援を呼んだ割にはあっさり片付いてるじゃねーか」
「まあね。じゃあ連行しますか」
その時,バインドで縛られている少女が口を開いた。
「連行するのはいいけど,大事なヘリは放っておいていいの?」
それを聞いた時,俺達全員が凍りついた。
少女はさらにヴィータの方を向いて口を開く。
「あなたはまた,守れないかもね」
それを聞いたヴィータは逆上しているように見えた。
さらに少女は俺の方を見た。
「あの子は,あなたのお姉さんと同じ運命を辿るんじゃない?」
その言葉を聞いた俺は,全身の血液が沸騰するような感覚を覚えた。
「ロングアーチ02よりロングアーチ!ヘリは!?」
『高出力の砲撃を受けましたが,なのはさんたちが何とか間に合いました』
それを聞いた俺達が一瞬気を緩めたその時,ギンガが叫んだ。
「キャロちゃん!足元に何かいる!」
全員の目がキャロの足元に向いたとき,キャロの足元から現れた水色の髪の女が
キャロの抱えていたケースを弾き飛ばした。
俺は,とっさに水色の髪の女に体当たりして,ケースを確保する。
すると水色の髪の女は少女に近づき,少女とともに地面に潜っていった。
さらに,バインドで縛っていたはずのアギトとかいう女も,
全員が目を離した隙に姿を消していた。
「反応・・・ロストです」
キャロの報告にその場にいた全員が消沈した。
「起こってしまったことは仕方ない。レリックは確保できたんだし。
全員地上に戻るぞ」
「「「「・・・はい」」」」
少し肩を落としながら元来た道を戻る5人を見送りながら,
俺はまだ少しこわばった顔をしているヴィータの肩に手を置いた。
「・・・大丈夫か?」
「・・・ああ。すまねー,浮足立っちまって」
「それは俺も同じだな。あの場に居た全員があの少女の言葉に
浮足立ってた。ま,レリックは確保できたんだし,合格点でしょ」
極力軽い感じを出しながらそう言ったが,レーベンを握る俺の手は,
怒りで震えていた。
「・・・そうだな」
俺とヴィータは先に行った5人を追った。
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