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とある3年4組の卑怯者

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86 不幸

 
前書き
 藤木が不幸の手紙を出した事で丸尾は1時間目に緊急学級会を開く。その場で丸尾に激怒された藤木は泣いてしまい、リリィと笹山も彼に怒りが込み上がる。一方、テストを終えたみどりは放課後にスケートしに行くのを楽しみにするのであった!! 

 
 1時間目が終了した後も後も藤木への非難は続いた。藤木は被害者のはまじを始め、ブー太郎、関口に責められた。
「おい、藤木、不幸の手紙出すなんてわりーぞ!!」
「そうだブー、お前卑怯すぎるぞブー!謝れブー!!」
「藤木、お前とはもぅ一緒に遊んでやんねぇぞ!!」
「ご、ごめんよ・・・」
 藤木は泣きながら謝った。そのとき、みぎわから黒板消しで叩かれ、チョークの粉が藤木の方へ飛ぶ。
「ちょっと、邪魔なのよ!」
 藤木は黒板から離れようとすると今度は丸尾に睨まれた。そして逃げようとする。その時、花輪がハンカチを差し出した。
「Hey、涙を拭きたまえ、不幸なsenhor(セニョール)、藤木クン」
「ありがとう、花輪クン・・・」
 藤木は自分に救いを差し伸べてくれる人がいて安心した。しかし、すぐにリリィがまる子、たまえ、とし子と共に花輪を呼ぶ。
「花輪クン、藤木君に優しくなんかするもんじゃないわよ!」
「そうだよ、藤木なんてほっとこうよ!」
「アタシゃあいつにムシャクシャしてんだよ!!」
「私も!花輪クンも藤木なんかに関わらない方がいいよ!どんな卑怯な事されるか分かんないよ!」
「ふう、sorry藤木クン、lady達がうるさいんで失敬するよ」
 花輪はそう言って去った。
「そ、そんな・・・」
 さらにリリィは藤木に向かって「悪いけどもう私達に顔合わせないで!」と吠えた。藤木はリリィに嫌われたと感づいた。そして藤木の元に永沢と山根が現れた。
「藤木君、悪いけど今回の事は僕達もう君を見損なったよ!」
「山根君・・・」
「悪いけど僕達はもう君とは絶交だよ。不幸の手紙を出す卑怯者なんかとは友達でいられないからね・・・」
 永沢はそう言って山根と共に去った。
(そ、そんな・・・)
 その時、後ろから野口が現れた。
「あ~あ・・・、嫌われちゃったね・・・、知~らない、知~らない・・・」
 野口は不気味に笑いながら去った。
(四人に出したのに不幸になった俺って一体・・・!?)

 みどりはテストを受験していた。終わったらスケートしに行ける事を楽しみにしながら。その為、昨日はテスト勉強に必死になっていた。
 テストが終わった。みどりは気分が非常によくなった。
「吉川さん、なんか嬉しそうね。上手くできたの?」
 堀が聞いた。
「はい!」
「そう、よかったわね。スケート楽しみにしてるわ」

 また別の休み時間、藤木は笹山から声を掛けられた。しかし、いつもとは違い、冷たい口調だった。
「藤木君、昨日は不幸の手紙の事でそわそわしてたの?」
「う、うん・・・、実はそうなんだ・・・」
「・・・じゃあ、なんであの時私に相談してくれなかったの!?言ってくれれば止める事ができたのに!!味方になってあげられたのに!!」
 藤木は笹山が怒りと共に涙が滲んでいるのが見えた。
「そうやってはっきりと言わないから皆から卑怯って言われるのよ!!」
 笹山は藤木をビンタした。それも勢いよく。
「笹山さん・・・」
「藤木君なんてもう知らない!悪いけど私もリリィさんも藤木君の想いには応えられないわ!!」
 笹山はそう言って去った。
(笹山さんに嫌われた・・・)
 藤木は笹山からも嫌われた事が確定したと気付いた。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という(ことわざ)がある。自分が好きなリリィと笹山、両方から嫌われた今の藤木に相応(ふさわ)しい表現だった。また、その上友人の永沢や山根にも絶交を言い渡され、藤木に同情してくれる者は皆無だった。自分を悪く言わない人ならわかってくれるかもしれないと思い、藤木は長山を見つけると助けを乞おうとした。
「長山君・・・」
「な、何だい、藤木君!?」
 長山は困惑した。
「長山君は僕の事をそんなに悪く見えるかい!?不幸の手紙が来てそのまま出してしまった僕が・・・」
「え、その・・・」
 長山は返答に困った。
「藤木っ!長山君に味方にしてもらおうなんて本当に卑怯ねっ!あんたが悪いんでしょっ!長山君が困ってるじゃないっ!!」
 城ヶ崎が現れた。
「長山君、もう藤木なんて無視していいわよっ!人として最低な事したんだからっ!!」
「う、うん・・・」
 城ヶ崎に言われて長山は藤木から離れた。
(そ、そんな・・・)
 もう誰も友達ではなかった。授業が終わり、藤木は前田から不幸の手紙の罰として掃除をさせられた。やっと解放されると、藤木は責められた悲しさでいっぱいだった。
(もういいや、スケートしに行くぞ・・・。俺の唯一の取り柄で今日の事なんて忘れてやる!!)
 藤木は走って下校した。家に帰るなりすぐにスケート用ウェアに着替えて自前のスケート靴を引っ張り出してスケート場へと駆けていった。途中で藤木は笹山とすれ違った。しかし、笹山は目を逸らした。藤木は少し走るペースが遅くなったが、挨拶もせず、向こうからされる事もなかった。藤木はこれからは笹山やリリィへの想いも忘れるよう努力しようとした。
(ふん、藤木君はほんとスケート以外何もできないんだから!)
 笹山は汚物を見てしまったような思いでピアノ教室へと向かった。

 みどりは家に帰ると、堀の家に向かった。堀は清水のスケート場の場所を知らないので自分で案内するためだった。
「お待たせ」
 堀が戸を開けた。下はスカートから長ズボンに履き替えていた。
「それじゃあ、行きましょうか」
 みどりはようやくスケート場に行ける事になってさらに気持ちが高まった。
(藤木さん、いるかしら・・・?)
 
 スケート場に到着した。走り続けた為、息が切れていた。藤木は少し息を整えようと出入り口で立ち止まった。その時・・・。
「あ、藤木さ~ん!!」
 藤木は声のした方向を向いた。
「みどりちゃん・・・?」 
 

 
後書き
次回:「本性(ひきょうもの)
 みどりに堀と遭遇した藤木は三人でスケートをする事に。藤木はスケートで学校の事を忘れようとするも、中々できず、みどりと堀は藤木の悲しげな表情が気になり・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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