パチンカスもたまには
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第一章
パチンカスもたまには
本田信夫の趣味はパチンコである、大学時代からのことで就職してからもやっている。仕事帰りや休日はいつもだ。
パチンコ屋に寄っている、そして家ではいつも煙草を吸いながらパチンコ雑誌や攻略本を読みネットでも勉強しているが。
厄介になっている姉夫婦の家では甥の佐藤邦衛がいつも母つまり信夫の姉に言っていた。
「お母さん、パチンコってよくないよね」
「そうよ、只の無駄遣いよ」
母はあどけない顔立ちで黒髪をショートにしている夫によく似た息子に話した、優しい顔立ちで紫に見える黒髪を束ね左肩から垂らしている。かなり見事なスタイルである。
「賭けごと全体がね」
「じゃあ叔父さんみたいになったら駄目ね」
「そう、絶対に駄目よ」
信夫に聞こえる様にして言うのだった。
「あんな大人になったらいけないわよ」
「うん、僕叔父さんみたいにならないよ」
「ちっ、借金作らないし家に金入れてるからいいだろ」
信夫はこうした時いつも煙草を吸いつつ眉を顰めさせてこう言った、濃い黒髪を真ん中で分けている。威勢のいい感じの顔立ちで顔は細めだ。背は一七五程で均整の取れたスタイルだ。
「家事も手伝うしな」
「いやあ、それでも子供にギャンブルは教えられないからね」
姉の夫彼から見て義兄の利治が言ってきた、優しい顔立ちだが一八〇ある大柄な身体で逞しい。黒髪を短くしている。彼の趣味はジムとサウナに入ることである。
「だからだよ」
「それで、ですか」
「奥さんもこう言ってるんだよ」
自分尾妻つまり信夫の姉もというのだ。
「そうなんだよ」
「それはわかりますけれどね」
「だから言われたくなかったら」
「パチンコ止めることですね」
「そうなるよ」
「それは出来ないですね」
信夫は缶ビールを飲みつつ応えた。
「俺は」
「パチンコが生きがいだからだね」
「ええ、ですから」
それでというのだ。
「これだけはですよ」
「それじゃあこれからもだよ」
「姉ちゃんに言われてですか」
「うちの邦衛にもね」
彼にもというのだ。
「そうなるよ」
「やれやれですね、まあそれでもです」
「言われてもだね」
「パチンコはやりますよ」
こう言って実際にだった。
彼はパチンコを続けた、そして姉と甥に言われ続けたが。
ある日姉夫婦が休日どうしても家を空けねばならなくなってだ、信夫は姉に言われた。
「邦衛のことお願いね」
「ああ、今日はだな」
「面倒見てあげてね」
「わかったよ」
信夫は何でもないという顔で答えた。
「それじゃあな」
「ええ、けれどね」
ここで姉は厳しい声で言った。
「わかってるわね」
「今日は一日家かよ」
「パチンコに行かないのよ」
いつも行っているがというのだ。
「邦衛を連れて行くのもよ」
「駄目だってんだな」
「若しそんなことしたらね」
その時はというのだ。
「怒るからね」
「いや、姉ちゃんが怒ったらな」
弟としてその時どうなるかよく知っていた。
「洒落になってねえからな」
「じゃあわかるわね」
「ああ、今日はな」
「邦衛お願いね」
「家でな」
「そうしなさいね」
「それじゃあな」
姉の言葉に頷いた、そうしてだった。
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