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田舎から出て来て

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第二章

「帰るのね」
「そうしてるわ、それで帰ったら」
 そうすればというのだ。
「凄くね」
「嬉しいのね」
「そうよ、東京にずっといたいけれど」
「実家に帰ることは嫌じゃないのね」
「それはそれでね、東京にいたくても」
 それでもというのだ。
「実家はいいものよ」
「そういうことね」
「ええ、だからこれからも」
 葉月はさらに言った、今度は自分から。
「実家に帰られたらね」
「その時は帰るのね」
「そうしていくわ」
「成程ね」
「ええ、やっぱり実家はいいものよ」
 またこう言うのだった。
「何かあったらね」
「帰るのね」
「就職してもね」
 笑顔で言ってだった。
 葉月は友人達とその十勝のことを話した、それは明るいものであり。
 そしてだ、友人達に言い切った。
「皆も一度北海道に行ってみたらいいわ」
「十勝にも」
「そうしたらいいのね」
「凄くいいところだから。大自然に囲まれていてね」
 そうしてというのだ。
「行って悪いことはないから」
「東京もいいけれど」
「十勝もまたいい」
「そういうことね」
「そうよ、その時は私の実家にも来てね」
 笑顔のままの言葉だった、葉月は東京にいて十勝のことを明るく話した。そこには東京に向けるのとは別の想いがあった。暖かく優しいそれが。


田舎から出て来て   完


                    2022・7・20 
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