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田舎から出て来て

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第一章

                田舎から出て来て
 大西葉月は北海道の十勝から大学進学で上京してきた、背は一六三程でスタイルはよく色白で顎の先が尖ったやや面長の顔ではっきりした切れ長の大きな目と気の強そうな感じの眉ときりっとした赤ィ唇を持っている。
 その彼女は上京して大学の寮に入って友人達に言った。
「いや、別世界に来た気持ちよ」
「北海道とそんなに違うの?」
「あんたのお家十勝の牧場らしいけれど」
「そんなに違うの」
「だから別世界よ」
 友人達に自分の部屋で一緒にお菓子やジュースを飲みつつ話した。
「高層ビルなんてないし牛ばかりでもないでしょ」
「まあそれはね」
「東京で牛はないわね」
「流石にね」
「そうでしょ、草原と山と川ばかりで」
 十勝はというのだ。
「大自然、こんな都会じゃないわよ」
「そう言われると別世界ね」
「十勝と東京じゃ」
「本当に」
「こうして食べるものだってよ」
 葉月はチョコレート菓子を食べつつ言った。
「全く違うから」
「お菓子もなの」
「そうなの」
「自然のものだから」
 店で売っている様なものでなくというのだ。
「それか北海道限定のもので飲みものはうち酪農だから」
「牛乳?」
「それなの」
「それ飲んでるの」
「そうなのよ、いや東京来て嘘みたいよ」
 今はファンタのグレープを飲みつつ話した。
「本当にね」
「全く違うのね」
「十勝とは」
「別世界って言う位に」
「そうよ、来てよかったわ」
 同じ寮生達に目をキラキラとさせて言った、そして大学の近くの居酒屋でアルバイトもはじめ東京の各地を歩いてだった。
 東京を満喫した、それでまた寮で友人達に言った。何時しかお洒落も覚えて部屋にあるものもそうなっている。
「東京最高よ、もうね」
「十勝に戻りたくない?」
「そうなの」
「就職もこっちよ」
 東京だとだ、葉月は明るく言った。
「他ないわ、牧場はお兄ちゃんが継ぐしね」
「けれど凄く大きな牧場なんでしょ?」
「牛が何百頭もいる」
「物凄く広くてしかも収入もかなりいいっていう」
「そんな牧場なんでしょ」
「それでも東京にいる方がずっといいから」
 友人達に満面の笑みで話した。
「もうね」
「十勝には帰らない」
「就職も東京で」
「あっちには帰らないのね」
「そうするわ」
 紅茶にケーキを楽しみながらの宣言だった、だが。
 ここでだ、友人の一人が葉月にこう言った。
「けれどあんた夏休みと冬休みと春休み実家に帰ってるでしょ」
「それがどうかしたの?」
「帰らないって言ってるのに」 
 就職も東京だと言っているのに、というのだ。
「それでも長いお休みの時には帰ってるじゃない」
「いや、長いお休みがあったら」
 その間はとだ、葉月は答えた。
「寮も閉まるし」
「だからなの」
「その間はね」
「仕方なく?」
「そう言われるとね、何もないところだけれど」  
 それでもとだ、葉月はあれこれ考えていることがわかる実に複雑な表情でその友人に対して答えた。
「やっぱり生まれ育った実家だから」
「それでなのね」
「家族とも仲いいし」
 このこともあってというのだ。 
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