フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです
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第2章 天狼島編
第5話 再会
ギルダーツ帰還後、フェアリーテイルは相変わらず波乱万丈であった。
エドラスというアニマによってつながるもう一つの世界での戦い。
例にもれず、悪戦苦闘の戦いであったが、ナツやエルザ、皆の力を合わせ、エドラス勢力に勝利し、ドロマ・アニムという竜型のドラゴンにも勝利を収める。
このエドラスでの戦いにより、ミストガンがエドラスの王子であったこと、そして、この世界の魔力を消し去り、新たなエドラスの王となった。
また、エドラスのリサーナが、実はアースランドのリサーナであることが発覚し、ミラやエルフマンと再会し、本当のフェアリーテイルへと帰還した。
エドラスの件が落ち着いたころ、フェアリーテイルのギルド内は、いつも以上に盛り上がっていた。
その正体は、フェアリーテイルS級魔導士昇格試験の出場者の発表であった。
会場は天狼島である。フェアリーテイルの聖地と呼ばれている場所であった。
出場者は10名。ナツ、グレイ、ジュビア、エルフマン、カナ、フリード、レビィ、メスト、カグラ、ウルティア、ジェラールである。
11名という大人数だが、なんと、この中で合格者は2名のみということであった。
誰が合格するのか、皆大盛り上がりであった。
「まったく、相変わらず騒がし…ッ!」
ウェンディの猫、シャルルがいつものようにやれやれといった様子で言葉を発していたが…。
「どうしたの?シャルル?」
「べ、べつに…」
ウェンディの問いかけに、何ともない様子を見せる。シャルルは怪訝な表情を見せる。
(いま、一瞬…)
シャルルの頭の中に、未来見による、謎の映像が流れ込んできた。
崩壊する木々、大泣きのカナ、動揺しているナツ、倒れこむ誰かの手、黒い謎の男、血だらけで視点が定まらないエルザ…。
(何よ…これ…)
このシャルルの未来視が示したものの真相はが分かるのは、もう少し先の話になる。
今回のS級昇格試験は、2人1組で行われる。
ナツ&ハッピー、グレイ&ロキ、ジュビア&リサーナ、エルフマン&エバーグリーン、フリード&ビッグスロー、メスト&ウェンディ、レビィ&ガジル、カナ&ルーシィ、ジェラール&リオン、カグラ&ユキノのチームとなった。
S級昇格試験は順調に進むかに思われた。だが、悪魔の心臓の襲撃にあい、試験は一時中断となった。更に、メストが評議員の諜報であったことが発覚する。
悪魔の心臓の襲撃に対し、徹底抗戦を敢行したフェアリーテイルは、各々が七眷属を何とか撃破し、残るは悪魔の心臓のマスター、ハデスのみとなった。
しかし、フェアリーテイル側の損害も激しく、マカロフ、ミラ、エルフマン、ガジルが戦闘不能で意識を失っており、残るメンバーも損傷が激しかった。
アレンの修行によって、いくらか鍛えられ強さを増していたとはいえ、やはり悪魔の心臓の力は増大で、悪戦苦闘であった。
そんな中、エルザ、ナツ、グレイ、ウェンディ、ルーシィ、カグラ、ウルティア、ジェラール、リオンが、ハデスとの戦闘に臨むべく、悪魔の心臓の船へと乗り込む。
また、ハッピー、リリー、シャルルは、船が再び動くことを防ぐため、動力源の捜索と破壊に向かった。
船内は、あらゆる場所が破壊されており、戦闘の激しさを物語っていた。
ナツたちは床にひれ伏し、苦悶の表情を浮かべていた。
ハデスの魔力、魔法は絶大であり、加えて先の七眷属との戦いで疲弊している。まったく歯が立たなかった。傷一つ、つけられていない様子であった。
「それにしても、当時は驚いたものだ。まさかうぬが、我を裏切るとは、ウルティアよ」
(まさか、ハデスの力がこれほどまでだったとは…侮っていた)
そんな言葉に、ウルティアはキッとハデスを睨みつける。
「あの男の影響かな?…まあ、今となってはどうでもよい話…」
ハデスは一つため息をつくと、
「妖精に尻尾はあるのかないのか、永遠の謎、故に永遠の冒険。ギルドの名の由来は、そんな感じであったかな」
あまりの疲労と痛みに、ルーシィとウェンディは涙を浮かべていた。
ハデスは、ゆっくりとナツたちに歩みを進める。それを感じ取ったナツは、応戦しようと体を起こそうとするが、頭をあげることで精いっぱいだった。
「しかし、うぬらの旅は、もうすぐ終わる」
ハデスはそうつぶやくと、ナツの頭を踏みつける。
「メイビスの意思が私に託され、私の意思がマカロフに託された。しかし、それこそが間違いであった」
ハデスは思い耽るようにして過去を思い出す。
「マカロフはギルドを変えた!」
「ぐっ…。変えて、何が悪い!」
ハデスの踏みつけに抗うように、ナツは顔をあげ、反論する。
「魔法に日の光を当てすぎた」
「それが、俺たちのフェアリーテイルだ!」
エルザ達も何とか体を起こそうとする。
「てめーみてーに死んだまま生きてんじゃねーんだ!命がけで生きてんだこの野郎!変わる勇気がねーなら、そこで止まってやがれ!」
「やかましい。小鬼よ」
ハデスは、指を銃のように形つくり、紫色の魔法を銃弾のように放つ。
「ぐわっ!」
「ナ、ナツ…」
グレイが、声を絞り出す。
しかし、ハデスの攻撃は止まらない。何発もナツの体に撃ち込まれる。
「恨むなら、マカロフを恨め。苦しみながら、死に絶えよ」
「ぐあああああꪪぁぁぁぁっ!」
「く、くそ、ナツ…」
ジェラールがなんとか助けようとするが、身体が言うことを聞かない。
「やめてー!」
ルーシィが悲痛の声をあげる。
「「よせー!」」
エルザとカグラも悔しそうに叫ぶ。
ウェンディはただただ、涙を流し、悲しんでいる。
ナツの体がぴくぴくと痙攣したように震えている。
「もうよい、消えよ」
ハデスが止めの一撃を喰らわせようとした、その時、船に雷撃が落ちる。
その雷撃は、ハデスの腕に直撃し、ナツへの攻撃を中断させるに至った。
雷撃はそれだけに留まらず、人の形をとなる。
「こいつがじじいの仇か、ナツ」
「ラクサス…」
ナツの顔に笑顔が浮かぶ。
ラクサスはハデスの頭へと雷を纏った頭突きをしようとする。
刹那、ハデスは、そんなラクサスの姿を見て、若かりし頃のマカロフの面影を見る。
「小僧!」
バチィという轟音とともに、ラクサスの頭突きを受けたハデスは大きく後ろにのけぞった。
場面は変わり、簡易キャンプ。
ここでは、傷ついたマカロフ、ミラ、ガジル、エルフマンが療養し、それも守る形で、レヴィ、フリード、ビックスロー、リサーナ、カナがいた。
ここにいない、ギルダーツなどのほかのメンバーは、敵の殲滅などで、このキャンプにはいなかった。
エルフマンは、先ほど目が覚め、リサーナの治療を受けている。
レヴィとフリードは、敵が来た時のために、防御の術式を展開していた。
そこに、ビックスローが帰ってくる。
「どこ行ってたんだ、ビックスロー」
「敵をイカダに括り付けて、川に捨ててきた。目を覚ましたら、また襲ってくるとも限らんからな」
ビックスローは続けて言葉を発した。
「そんなことより、エルフマン、お前もう動いて…ガッ!」
その言葉は途中で遮られることになった。
目を覚ました悪魔の心臓の、犬のようなヨマズと鶏のようなカワズが襲い掛かってきたのだ。
ビックスローは腹を魔法で貫かれ、その場に倒れこむ。
卵爆弾のような攻撃で、完成しかけていた防御魔方陣が破壊される。
「くそっあともうすこしだったものを…」
ヨマズとカワズはここぞとばかりに、手負いのフェアリーテイルへ襲い掛かる。
そこに相撲取りのような華院=ヒカルも加わり、フリードたちは一気に劣勢に立たされる。
…そんなときであった。横になっているマスターの胸元、ペンダントが淡い光を放つ。だが、その光に気付くものはいなかった。いや、気付く必要などなかった。
「ふふふ、貴様らにはもう、戦う力は…ぐはっ!!」
突然、ヨマズとカワズが背中から血を流して倒れこむ。
突然の出来事に、フリードをはじめ、皆が目を見開く。
「な、なんすか…ガッ!」
何が起こったのか理解できないまま、ヒカルも背中から血を吹き出し、倒れる。
「な、なんだ?動き回って、傷でも開いたのか?」
先ほどまで倒れていたビックスローであったが、やられたふりをしていたらしく、ケロッと起き上がり、状況を確認する。
「俺が斬ったんだよ」
ビックスローの、少し離れた位置から、男の声が聞こえた。
「ああ?誰だ、てめー…」
フード付きのマントを被っているせいか、顔が見えない。その男はニヤッ笑うと、一人ひとりに指をさしながら話し始めた。
「ビックスローに、フリード…レヴィに、リサーナ…そしてエルフマンにカナ、あっちで寝てんのはマスターとエバとミラか?マスターは変わらねーけど、みんな大分大人びたな?…なんか一人知らないやつもいるが、新しい仲間かな」
男は名前を言い終えると、テントに近づく。それを見て、フリードたちは警戒する。
「な、なに、こいつ、なんで、私たち全員の名前、知ってるの?」
リサーナは半歩身を引きながら答える。
「知ってるも何も、リサーナ、俺はお前がこんなちっちゃいガキの頃から知ってるよ。まあでも、成長しても結構わかるもんだな」
その言葉を聞き、リサーナは目を見開き、口をあんぐりと開ける。
「え…?」
そんな様子を見て、一番最初に気付いたのは、カナだった。
「うそ…まさか…そんな…」
全身を震わせ、目尻に少し涙を浮かべながらじりじりとその男の元へと歩み寄る。
そうだ…この声、あの体格…あの剣…。
男はフードごと、マントを脱ぎすてる。
その場にいたフェアリーテイルのメンバーは、声にならない呻き声をあげていた。
「遅くなって悪かったな、お前ら、7年ぶりくらいか?」
「ア、 アレン…?」
「う、嘘だろ…?」
リサーナとエルフマン、が震えた声をあげる。
カナが駆け寄る。涙を流して駆け寄る。そして、思いっきりアレンの懐に飛び込んだ。
「アレーン!!!!」
「おっと、なんだ、ボロボロの割に、元気じゃねーか、カナ。にしても、本当に大きくなったなー」
カナは大粒の涙を流し、アレンを強く抱きしめる。
「しんじ…しんじでだ!絶対に、絶対に生きてるって…信じてた…!」
リサーナ、レヴィ、エルフマン、フリード、ビッグスローも涙を浮かべている。
「すまねえ、心配かけたな…」
カナはぐすっと鼻をすすると、くしゃくしゃになった顔をアレンへと向けた。
「うっ…ぐすっ…遅すぎだ!バカヤロー…」
アレンは、カナが落ち着くまで頭を優しく撫で続けた。
「なるほど、S級試験中に悪魔の心臓に襲われたのか…」
テントで横になっているマスターやミラたちが命に別条がないことを知ると、アレンは今の現状をカナたちに教えてもらっていた。
「うん、今、ナツやエルザ達がマスターであるハデスと戦ってる」
「ハデス⁉…ウルティアを利用しようとしていたやつか…」
アレンは少し考え込むようにして顎に手をやる。
「アレン…ナツたちのところに行ってあげて」
カナの言葉に、アレンは迷うそぶりを見せる。
「ここはもう大丈夫、私たちが絶対にみんなを守るから」
続けて、リサーナもアレンの背中を押すように言った。
フリードとビックスローは、先ほどアレンが仕留めた3人?を縛り上げている。
アレンはふっと笑うと、「わかった」といって立ち上がる。
「アレン」
カナは小さな声でアレンを呼び止めた。そんな声をアレンはきちんと聞き取り、振り返る。
「今度は、ちゃんと、はやく帰ってきてよ…」
そんなカナの言葉に、アレンは目を見開きながら、
「ああ、約束しよう」
そう言い残し、アレンはナツ達のもとへと向かった。
それを見送ると、カナは横になっているミラを見て、ふふっと笑った。
「どうしたの?カナ?」
レヴィが不思議そうに問いかける。
「ん?いや、ミラが後から知ったら、「アレンが帰ってきた瞬間に寝てたなんて…」って悔しがるだろーな、と思ってさ」
それを聞いたレヴィも、ふふっと笑い、「そうだね」と答えた。
「でも、それ以上に喜ぶと思うよ、ミラ姉は…」
リサーナが続けていった。
「ミラだけじゃない、ナツも、エルザも、皆、アホ面さらして喜ぶだろうな…」
「それ、さっきまでアレンに抱き着いて、ぎゃんぎゃん泣いてたお前が言うことかよ」
ビックスローがカナをからかうようにケラケラと笑いながら挑発した。
「なっ!うるせー!お前も少し泣いてただろうが!」
カナが照れを隠すように声をあげる。
「ふっ、アレンのことを知っているギルドの仲間で、アレンが戻ってきて泣いて喜ばないやつがいるものか」
フリードがそう呟くと、皆が爆発したように喜びを分かち合うように笑い、そして涙をぬぐった。
ハデスとの戦いは、ラクサスの参戦により、戦局が大きく変わっていた。先の先頭によるダメージがないラクサスは、1対1でハデスと壮絶な戦いを繰り広げていた。
そんな戦いの様子を見ていたナツたちは、バトルオブフェアリーテイルの時のラクサスとは比べ物にならない強さに、驚きを隠しきれなかった。
しかし、やはり実力はハデスの方が上。圧倒的なスピードで戦いを繰り広げていた両者であったが、ついに、ラクサスが片膝をついてしまう。
「おやおや、どうしたね。大口を叩いた割には、膝を着くのが早すぎぬではないか」
「ラクサス!」
ナツが心配そうに叫ぶ。
「あいつ、まさか…」
エルザはラクサスの様子をから、あることに気付く。
「さっきの魔法を喰らっていたんだ…」
カグラが苦虫を噛んだような表情を浮かべた。
先ほどハデスが放った天照式の強力な魔法を、避けきれず、喰らっていたのだ。
「はぁ、はぁ…世界ってのは、本当に広い…アレンもそうだが、こんな強いやつがいるとは…俺も、まだまだ…だな」
ラクサスは悟ったように呟く。
「何言ってんだよー」
「しっかりするんだ!」
「そうだ、しっかりしろよラクサス!」
ナツ、ジェラール、グレイが鼓舞する。
「やってくれたのう、ラクサスとやら。だが、それもここまで、うぬはもう、消えよ!!」
紫と黒を足したような、禍々しい魔力が、ラクサスを飲み込まんと迫る。
「立て!ラクサス!」
エルザが力いっぱい叫ぶ。
「アイス、メイク…ぐっ、くそ、魔力が…」
ラクサスに襲い掛からんとする魔法を、リオンが止めようとするが、魔力切れで魔法を発動できない。
カグラやウルティアも身動き一つとれずにいた。
ハデスの魔法が、ラクサスに迫る。
「くそっ…俺は、まだ…こんなところで…」
ラクサスの頭の中には、幼少期のマカロフとの思い出、そして、アレンの顔が浮かんでくる。
「じじいの仇をとるまでは…お前を超えるまでは…死ねないんだよ…アレーン!!!!!」
ラクサスは顔をあげ、天を突かんばかりに大声をあげた。
刹那、ラクサスに襲い掛かっていた禍々しい魔力、魔法が弾き飛ばされ、ラクサスの頭上へと上がり、船の天井を突き破って空高く打ちあがる。
そんな様子をみて、周りにいたものは目を見開く。
ラクサスはいつまでも自分を襲ってこない魔法に疑念を抱き、ゆっくりと目を開いて前を見る。
「そんな大声出さなくたって、ちゃんと聞こえてるよ」
ラクサスは一瞬で視線を前に戻し、目を見開く。聞き覚えのある声だった。憧れていた、あいつの声だった。
ラクサスだけではない、ナツやエルザ、ほかの皆も、驚きのあまり、思考が正常に働かない。聞き覚えがありすぎる声だったのだ。
「遅くなった、ラクサス」
ラクサスは目を見開いて驚いていたが、すっと目を閉じる。そして再び目を開く。
その目には、ほんの少しだけ涙が浮かんでいた。しかし、表情はにこやかなものだった。
「馬鹿野郎が…遅すぎなんだよ…アレン…!」
右手に太刀を構え、ハデスに向かうように仁王立ちするアレンの姿があった。
今ここに、フェアリーテイルに、アレンが、戻ってきたのだった。
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